第二章 59話『『元』究極メイド、探索を開始する』
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ザストルクへと到着したアミナ達を出迎えたのは、見渡す限りの馬車や荷物、そして多くの作業員だった。
「凄い……人も馬車もとても多い……」
圧倒的な人の量と、出入りしている馬車の迫力にアミナは圧倒される。ここまで来ると、どれだけ自身が田舎者なのかを思い知らされる。
それは帝都に到着した時も思った事ではあったが、行き来する人々の熱量はこちらの方が遥かに上だった。
「一応……まだ襲われていないようですね」
馬車から降り、そう呟いたのはカルムだった。
彼女のその視線に続いてアミナも街の中を見回す。見た所、まだ平和で活気に溢れた街、という印象しか受け取れなかった。
喧騒はあれど、悲鳴は無い。ならばまだ魔人会の手は及んでいない事になるだろう。とりあえずの一安心にアミナは胸を撫で下ろす。
「でも良かったじゃないか。襲われる前に僕等が到着できた訳だし、被害が大きくなる前に僕等で対応出来る。しかも街はまだ平和そうだし」
「あぁ……だが、漏れ出る殺気ってのは隠せねぇ。私のセンサーがビンビンに反応してる」
メイが何かにウズウズしているように、片手の指を折り曲げてをパキパキと音を鳴らす。
ニヒルな笑顔を浮かべている彼女の内心は、戦いが出来る事への喜びか、皇帝殺害の報復が出来る事への喜びなのか、アミナには判断がつかなかった。
「……いるぜ、間違い無く。魔人会のビチグソ共は、既にこの街の中によぉ」
確信を持った彼女は、更にニヤリと笑ってその言葉を口に出した。
メイの一言に全員が息を呑んで、緊張の二文字を心に刻む。
「皆、気を引き締めてくれ……」
ベルリオがそう呟いて街の中へと歩みを進めていく。その後ろをアミナ達もついて進む。
―――
街の検問はそこそこ厳重だったが、武装騎士団総団長であるベルリオの顔と、兵器開発部門代表であるイーリルの顔で、スムーズに入る事が出来た。彼等の顔パスはきっと帝国中で通用するだろう。
しかし念の為の荷物チェックと、形式上アミナ達の署名を木板にサラサラと記入して街の入口から中へと入る。
武器を持ち込んだ総団長が来たという事もあり、門番の男は何があったのか訊いてきたのだが、ここで情報を何か漏らして魔人会の連中へとそれが伝われば、少数精鋭でこの街に来た意味が無くなる。
その為門番には「彼女達の護衛任務だ」とだけ伝えた。それを聞いた門番は不思議そうな態度を取ったが、それ以上は詳しく訊いてこなかった。
街の中に入ると、外から見た通り平和で活気に溢れていた。
人々は己の仕事に精を出し、それぞれが自身のやれる事に精一杯努力している様子が伺える。充実した街というのは本来こういったものなのかもしれない、とアミナは思う。
「それにしても凄いなアミナさん達は」
イーリルが驚いたようにアミナ一行に言った。
何の事かさっぱりだった為に「何がですか?」と素直に訊き返した。
「失礼ながら、貴族や王族でも無いのに識字率が100%だとは思わなかったんだ。私やベルリオは故郷にあった学校で学んでいたのだが……レリックにはそこまで質の良い学び舎があるのか?」
「いえ、私は元々第四大陸でとある領主に仕えるメイドをしていました。ですので字の読み書きはその時の領主に教えてもらいました」
「僕も魔道具の資料を読む時に字が読めないと困るからなんとか独学で勉強したよ」
「私はこの大陸に来てから字を学んだな。それまでは一切読めなかったんだが、困る事が多いもんでな。私も独学で学んで、カルムにそれを教えた」
「はい、メイ様に教えていただいて今では読み書きや計算、大体の事は出来ると思います」
「にゃーあ」
それぞれが字を読めて書ける理由を説明し、イーリルは逐一それに納得した。どうやらこの国では字を読めない者がいても不思議じゃないらしい。それは彼の態度で何となく察しがつく。
「さ、気を取り直して行くぞ。宿屋で大まかな作戦を改めて伝える。お前は馬車を停めてきたら、門番達に怪しいヤツが来なかったか聴き込んだ後、彼等の仕事に加われ。そういった指示が出た、と言えば納得するだろう」
ベルリオは御者台に乗っている騎士に言った。その騎士は「了解」と一言言って街の東の方へと向かった。
「僕達も早く宿屋に行こう。いつ何が起こるか分からない訳だし」
そう言ってカイドウは宿屋の看板が見える方へと顔を向ける。
ここからそこまでの距離は無く、すぐ近くにあったのが幸いだった。
アミナ達はその宿屋で名前を記入し、期間が分からない事もあってか、とりあえず一月分の金額をベルリオが支払い、それぞれの部屋に荷物を置いてイーリルの部屋へと集合した。
「私が伝える大まかな作戦、それは馬車の中で話したのと変わらず、魔人会の人間を見つけたら即戦闘だ。アミナさんの、構成員が自爆したという話を聞く限り、捕まった仲間を助けるような連中には思えない。よって即戦闘、即殺害となる。派手に動く事は敵にこちらの動きを悟られる可能性があって難しい。その為隠密とまでは言わないが、慎重になって構成員を探してくれ」
彼のその説明へ「質問よろしいでしょうか」とアミナが手を挙げる。
それに対してイーリルは無言で頷いて承諾する。
「とても初歩的な話で申し訳無いのですが……魔人会の構成員はどうやって発見したらいいのでしょうか?何か特徴などがあったり?」
「それに関して言えば……すまない。ヤツ等に関する事で分かっている事と言えば、魔人復活を目論んでいるという事と、何かを起こす時は必ず同じ仮面、同じ装束を纏うという事だけなんだ」
申し訳無さそうにイーリルは言った。
しかしその言葉に続いて「だから」とも言った。
「我々がヤツ等を抑えるには、何か小さな出来事も見逃さない事が重要なんだ。どんな事でもいい。小さな違和感や、街中で発生した小さなトラブル。それ等を見逃さずに、全てをヤツ等と重ねて考える。そうしてジリジリとにじり寄っていくしかない。皆もその方向で頼む」
円形のテーブルの上にザストルクの地図を広げ、それを見下ろしている全員に向かってイーリルは言った。
それぞれが地図に目を落としたり彼の目を見たりしながら頷き、作戦の内容は伝えられた。
作戦を聞いた一同は宿屋の外に出て、それぞれが探す街の方角へと散らばる。
イーリルとベルリオは街の東、メイとカルムは街の南、カイドウとフィーは街の北、そしてアミナが街の西を探索する事になった。
「こういう場合いつも1人になる……」とぼやきながらも、アミナは西へと向かう。
メイとフィーとベルリオは各々の鼻が何かの役に立つかもしれないと、ペアを組んで捜索するのだが、アミナにそんな特殊能力は無い。1つ息を吐きながら、アミナは気合を入れ直す。
「よしっ。絶対に見つけてやりますからね……魔人会……!!」
小さく、しかし決意は大きく、アミナは呟いた。
そして違和感がないように走らずに、落ち着いた様子でザストルクの西部へと向かっていった。
最後までお読み頂きありがとうございます!
ようやく魔人会の捜索が開始しました。
果たして未然に発見して事件を防ぐ事は出来るのか!!
それでは次回もお楽しみに!!




