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第二章 57話『『元』究極メイド、手がかりを掴む』

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街の灯りがまだほとんど点いている夜の街。

そんな民家や建物の屋根の上を猛スピードで走り抜けている男がいた。

その者の速度は風の如く速く、大地を蹴る足は炎のように力強く、走る様は水の如き流麗さを誇りながらも、野性味を感じさせる荒々しさも残っている。

彼は懐から出した通信用の小型水晶を取り出す。


「こちらベルリオ、現況は」


『目標は街の西の広場へと逃げています』


「分かった、追跡を続けろ」


『了解』


ベルリオは通信を切って街の西へと足を向ける。

そして再び建物の屋根の上を颯爽と駆け抜け、現場へと急行する。

ネブロから報告を受けたアミナ達も同様、城からすぐに出て、帝都の西へと走る。

アミナは西へ直進し、メイは東から回り込み、カルムは南から、カイドウとフィーは北から迫る。

犯人である魔人会を絶対に逃さないための陣形だ。


ベルリオと同様にアミナは屋根の上から目指し、カルムとメイは街の中にある道を使って怪しい人物がいないか注意深く見ながら進み、カイドウとフィーは怪しい人間の臭いを探りつつ広場を目指す。

凄まじい速度でメイとカルムが横を通り過ぎる度に住人達は振り返って今のが何だったのかを確認する。

しかし彼女等の姿を捉えられる者は少なく、住人はただの風と錯覚してまた元に戻る。


「何故今、騒ぎなんかを起こしたのでしょうか……!!」


アミナは屋根の上を走りながら呟く。

先程まで気が抜けていた事もあってか、なかなか加速しない。

しかしそんな状況でも、状況判断をする為に頭の中で様々な事を思考する。


どうして騒ぎを起こした。

カルムさんの言っていた通りの、混乱という隠れ蓑が、そこまで効果を発揮しているとは思えない。

第一、私達は西の広場に向かっているし、ベルリオさんや他の騎士の方々も追跡をしているそうだ。

相手の戦力がハッキリしていないからなんとも言えないが、騎士団の本部があるこの帝都で騒ぎを起こすならば、それなりの実力者が来ていると考えてもいいのだろうか。

……分からない。

魔人会の連中は分からない事だらけだ。

口を割らない為に自害はするし、意味の分からないタイミングで暗殺するし、今だって帝都で騒ぎを起こしている。

自殺にも等しい行為だというのにわざわざ騒ぎを起こした理由は何なのだろう。


「……いや、意味なんて無いのかもしれませんね。ただ馬鹿騒ぎしたいだけの人達かもしれませんし」


アミナはそう呟いて西の広場への足を早める。


―――


アミナよりひと足早く西の広場付近へと到着したベルリオ。

周囲を見渡しながら走り続け、遂に目標と思われる魔人会の構成員を発見した。


「あいつか……!!」


膨れ上がる怒りを制御しながら建物を伝って降りていく。

しかしまだ距離的には遠く、先んじて追跡していた騎士と構成員の戦いを見ながらドンドン下っていく。


「止まれ!さもないと撃つぞ!」


走って追いかけている騎士の1人が魔道銃器を構えながら大声で叫ぶ。

しかし魔人会の構成員は少し振り返ってその言葉を無視すると、少しだけ走る速度を下げた。

仮面をしている為顔は見えなかったが、自分の事をおちょくっているのだけは事実だと確信し、騎士は発砲する。


バンッ!!


乾いた銃声が街に響く。

最初に撃ち出した1発は木箱へ着弾し、2発目3発目と次々に発砲する。

しかしどれも全く当たらず、家の壁や地面に落ちる。

そして4発目と5発目を撃った時には息切れし、走る速度が落ちていた。


「はぁ……やっぱりイーリル様の言っていた通りだな……」


騎士の走る速度が遅くなったのに気が付くと、構成員が体を翻してきて騎士へと迫った。


「なっ!!」


すぐさま腰から剣を引き抜こうとするが間に合わず、袖から取り出された鋭い刃に体を斬り裂かれた。

構成員は斬り裂いた傷口を手から放った炎で焼け焦げさせ、騎士にさらなる苦痛を与えた。

騎士はあまりの痛みに転んで悶えた。


「くそっ!!なんてやり方だ……!!」


ベルリオは走る速度を上げた。

しばらく走ったのち、遂に構成員の真後ろまで接近すると、腰に携えた剣を引き抜いて斬撃を一つ放つ。

だがその斬撃はいとも容易く躱されてしまい、また距離を取られた。


「なかなかの逃げ足だな……なら」


そう呟いて口に剣を咥える。

そして前傾姿勢になって四つん這いになる。

獣のような目と体勢は、獣人の本性をよく現していた。

先程よりも地面を強く蹴り、更に速度が速くなった。

加速した足は、いとも容易く構成員に追いつく事を可能にした。


もらった……!!


ベルリオは確信して、調整してもらったばかりの右腕で構成員の肩を鷲掴みにする。

彼の獣ゆえの気配を消す走り方によって、接近に気がついてなかった構成員は驚いたように振り返り、その手を振り解こうとする。

しかし調整したばかりの魔道義手の握力は侮れず、一瞬にして抑えつけられ、人気のない広場に2人は着地した。


お互いに様子を見て静かに間合いを取っている。

そんな中、街の静寂を裂くように、轟音とともに火の柱が立ち上った。

燃えさかる炎の向こうに佇む影。

黒い外套を翻し、冷たい眼差しを向ける男。

相手は無言の殺し屋。

その袖の奥、薄闇に紛れるように潜む鋭利な刃。


対するベルリオ。

鍛え上げられた獣の筋肉が隆々と盛り上がる。

彼は唸るように息を吐き、拳を鳴らした。


「いくぜ」


獣人ならではの鋭い眼光が、敵を貫く。

先に動いたのは魔人会の構成員だった。

無駄な動きのない踏み込み。袖の中から鋭い閃光が走る。

細く、狡猾な短剣が、ベルリオの頸動脈を狙って一直線に伸びた。


しかし、ベルリオはその一撃を見切った。

頭をわずかに傾け、切っ先を紙一重で回避。

そのまま、逆の腕で相手の手首を掴もうとする。

だが構成員はその腕を見越してか、すでに後方へ跳んで距離を取っていた。


「結構動きやがるな……」


予想外の事にベルリオは前傾姿勢を取る。

そして——獣の跳躍。

音を置き去りにするかのような速さで、一気に間合いを詰める。

その巨大な拳が唸りを上げ、構成員の胸元を狙って叩き込まれた。


しかし、構成員もただの小物ではないようだった。

寸前のところで腰を落とし、すれ違うようにベルリオの横を滑る。

その動きと同時に、もう片方の袖から新たな刃が放たれる。

それがベルリオの脇腹をかすめた。

赤い筋が一筋、彼の毛皮を濡らす。


「チッ……!」


しかし、ベルリオは痛みなど意にも介さなかった。すでに彼の拳は振るわれていたのだから。

構成員の逃げ道を塞ぐように、獣の足が地を蹴り、横から鋭い蹴りを放つ。

だが、その瞬間、構成員の指先が小さく動いた。


次の瞬間には爆ぜるように炎が弾ける。

ベルリオの蹴りが届く前に、構成員の足元から火の魔法が爆発的に噴き上がった。

赤熱した空気が一瞬で周囲を包み込む。

吹き飛ぶ瓦礫と熱風。

その炎を受け、ベルリオの体が吹き飛ばされるかと思われた。

しかし——


「こんなもんかァァァ!!」


ベルリオはその場で踏みとどまった。

身体を覆う毛皮が焦げる。

しかし、その瞳に宿る光は、一切揺らがない。

彼は燃え盛る炎をものともせず、一気に前へ踏み出した。

それは負の感情ゆえだった。

同法を傷つけた怒り、君主を殺された恨み。

それらが今燃え盛る業火の如く爆発し、彼に力を与える。


構成員が刃を再び構える。

だがもう間に合わない。


ベルリオの巨体が、獣のごとき勢いで迫る。

そのまま、太い腕を横薙ぎに振るった。

ドンッ!

大気を裂く衝撃。

構成員の身体が宙を舞う。

まるで人形のように吹き飛び、背中から石畳に叩きつけられた。

衝撃で地面がひび割れる。瓦礫が跳ね上がり、煙が舞う。


ベルリオはゆっくりと息を吐いた。

構成員は微動だにせず完全に意識を失っていたと分かった。


アミナがそこに辿り着いた時には既に、戦闘はそうやって終わっていた。


―――


カイドウや他の皆もその広場へと集まり、縛り上げた構成員を見下ろす。

そして、城からの到着を待っていたイーリルがその場に現れる。


「こいつが……魔人会の構成員か……」


彼は静かに言うが、その言葉の節々からは怒りが漏れているのが感じられた。

彼も皇帝に恩を受けた者の1人だ。

そうなっても仕方が無い。

だが魔人会が皇帝殺しの確証もない。

今はそれを証明する為にイーリルを呼んだのだ。


イーリルは構成員の頭に何か小さな魔道具を取り付けた。

「これは何?」とカイドウが訊く。


「これは精神攻撃系の魔法陣を組み込んだ魔道具さ。気絶してたり戦意を喪失している相手に使用すると、操る事が出来る」


説明をし終えると、膝を曲げて目線を構成員に合わせた。

そして問いを投げる。


「お前は魔人会の構成員か?」


「……はい」


少しの間を置いて答えた。

どうやら魔道具は正常に作動しているようだ。

それを確かめる為の分かりきった質問だ。


「何故今日、騒ぎを起こした」


「……騒ぎを起こして逃げ回れと命令されました」


「それを指示した人間の名は」


「……分かりません」


そんな回答もありなのか、とアミナは思った。

強制的に喋らせるとはいえ、知らない事は話せないのは当たり前だ。

しかし組織内でも知らないという事はかなり上の人物なのか、この男がかなり下っ端の人間なのかのどちらかだ。


「お前達の組織の拠点はどこにある」


「……ありません」


「無いだと?そんな訳あるかよ!言えよ!どこにあるのか吐け!!」


ベルリオは脱力した男の胸ぐらを掴んでそう怒鳴る。

しかし男は「ありません」とだけ言って変わらない。

その内「よせベルリオ」と言ってイーリルに止められた。


「……陛下を殺害したのは、貴様等か」


踏み込んだ質問を投げる。

その場にいた騎士達はその事実を知っていた為、特に隠さず訊いた。

すると男は「……はい」と言った。

再び怒りが爆発しそうになるベルリオを、イーリルは制止する。

普通ならば抑えの利かない感情だが、イーリル自身の怒りを知っていたベルリオは仕方無く黙る。


「とりあえず、今日の最後の質問だ。――お前達の次の目的はなんだ」


イーリルは一際強調して言う。

構成員の男は口をパクパク動かした後、その口から声を発した。


「……ザストルクの壊滅」


男はそう呟いた。

それを聞いたアミナ以外の全員が驚愕した。

自分だけがその状況を分かっていないアミナはベルリオに「ザストルクとは何ですか?」と訊いた。


「ザストルクってのは、帝都パラディンからしばらく行った所にある街の名前だ。そこはこの国の物流や交通面の管理をしている、パラディンの次に重要な街だ。……まさかヤツ等の目的がそんな事だったとは……!!」


悔しそうに握り拳を作ったベルリオは、己の故郷の事を思い出していた。

バルグレア会戦の時に故郷が戦争の最前線とされ、無惨に破壊されていった。

それがまた繰り返されようとしている。

ギシギシと義手が軋む程に力んだのち、着ている服を翻し、広場から歩き去る。


「行くぞ……!ザストルクへ!!」


そう命令し、集まった騎士は複数人で構成員の男を担ぎ、彼について行った。

それを後ろから見ていたアミナは思考した。


ようやく掴んだ――ヤツ等の尻尾。

これを逃せば次はいつになるか分からない。


「私達も同行します!!」


ベルリオの背中にアミナが言う。

彼はそれに対して振り返って「感謝する」と言ってついてくるように催促した。

これから一同は城に戻ってザストルクへ向かう準備をする。

失敗の出来ない任務を完全に遂行する為に。



最後までお読み頂きありがとうございます!


遂に手がかりを掴んだアミナ一行と騎士団達。

そして帝都に到着したと思ったら、次の目的地は流通と交通の街ザストルク。

そこでどんな事が起き、魔人会によって何が成されるのか!


それでは次回もお楽しみに!!

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