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第二章 53話『『現』魔道具マニア、他国の魔道具を見る』

よろしければブックマークや感想の方よろしくお願いします〜!



アミナと別れた後、カイドウは先程ネブロと会った部屋まで戻っていた。

あそこにはお付きの人が常時待機しているらしく、何か分からない事があれば聞いてくれと言われていた。


「えっと確か……あっ、いたいた。おーい!使用人さーん」


カイドウはその部屋まで戻れた。

そして部屋の前にいた使用人に向かって手を振った。


「これはこれはカイドウ様。どうかなさいましたか?」


「実はこの国で大量生産されている魔道銃器って魔道具に興味があってさ。それを見せて貰えないかな?勿論他言はしないし、ネブロさん騎士団員のポルコさんには多分大丈夫だって言われてるんだけど……どうかな?」


それを聞いた使用人はしばらく考え込むと、ふと胸元から通信用の水晶を取り出して何かを喋っていた。

顔は反対側に向けているし、手で覆われているから何を話していたのかは理解出来なかったが。

そして少しして水晶を元あった場所に仕舞ってカイドウの方を向いた。


「確認が取れました。どうぞ自由にご見学下さいとの事です。よろしければ案内致しましょうか?」


「良かったぁ〜。それじゃあ頼んじゃおうかな」


カイドウが魔道具を見れる事に安心して胸を撫で下ろし、使用人に案内を頼むと「かしこまりました。それではついてきて下さい」と言って使用人はカイドウの先をゆっくりと歩き出した。

それにカイドウはついて行き、心と頭は魔道具の事でいっぱいになった。


―――


「さぁ、到着致しました。ここが我が帝国の誇る兵器開発部門の研究室でございます」


「おぉぉ!!!凄い!凄い!凄いぞぉ!!」


カイドウは目の前に広がる研究室の光景に興奮を抑えきれず、思わず叫んでしまった。


「危険な物は危険だと分かるようになっておりますので自由に試して頂いて結構だそうですよ」


使用人はそれだけを言い残して研究室の扉から出ていった。

しかしそれに気が付かない程、カイドウは研究室の資料や物達に興奮していた。


壁一面に積み上げられた書物は、分厚い革表紙の魔導書から、羊皮紙に手書きで綴られた古文書まで、多種多様だ。

それらは魔力の影響を受けているのか、時折表紙が微かに発光し、まるで呼吸をするかのように波打っている。

中には自動でページがめくられているものもあり、何者かが見ているわけでもないのに、ふとした瞬間に呪文が囁かれるような気配を感じさせた。


「やっぱり国の研究室ともなると書物がいっぱいなんだな……!!」


天井からは無数のランプが吊るされている。

しかし、それらは炎ではなく、魔鉱石が封じ込められた光源だ。

青白く煌めくもの、赤々と脈打つもの、妖しく紫に蠢くもの――それらはまるで生きているかのように光を放ち、部屋全体に神秘的な陰影を落としていた。


中央に鎮座する巨大な魔法陣は、床一面に精密な紋様を刻み込まれており、淡い金色の光が脈動している。

陣の中心には奇妙な球体が浮遊していた。

透明な結晶でできたそれは、内部に混沌としたエネルギーを秘めており、たまに黒い影のようなものが渦を巻いていた。

カイドウは思わず目を奪われ、手を伸ばしかけたが、すんでのところで引っ込めた。


「いかんいかん……他の人は仕事中だし邪魔になっちゃうよな……」


そう呟いて先程とは反対側の壁の方を見た。

すると壁際には無数の魔道具が並んでいる。

杖や指輪、短剣の類はもちろん、見たこともない装置も多数あった。

例えば、銀の枠に収められた円形の鏡は、時折映る景色が変化している。

さらに奥には、大小さまざまな瓶やフラスコが詰め込まれた棚がある。

そのいくつかは内部で液体が蠢いており、目を凝らせば微細な生物のようなものが蠢いているのが分かる。

カイドウが手に取ろうとすると、突然、瓶の表面に文字が浮かび上がった。


「開封厳禁。爆発の危険あり」


カイドウは思わず喉を鳴らし、そっと瓶を棚に戻した。

しかしそれだけではない。

部屋の隅には、透明な魔力の膜に覆われた試験体が安置されていた。

それは人間の腕のように見えたが、血管の代わりに魔力の奔流が流れており、指先からは青白い霧が漂っている。カイドウは目を輝かせた。


「 凄い……!なんて場所だ!」


彼の声が研究室に響き渡る。知的好奇心が刺激され、興奮を抑えきれなかった。

まるで宝の山を見つけた少年のように、カイドウは次々と魔道具に手を伸ばし、目を輝かせながらそれらの機能を確かめ始めた。


「気に入って貰えたかな?お客人」


目をキラキラと輝かせているカイドウの後ろから声がかけられた。

カイドウは振り返ると、そこには長身で細身の男が立っていた。

彼はメガネをクイッとあげると微笑みながらカイドウを見た。


「うん!どれも凄い物ばかりで驚いてばっかりさ!……って、そういえばお邪魔してるのに名乗って無かったね。僕はカイドウ、ただの魔道具マニアだよ」


「私は兵器開発部門代表、『イーリル・ノート』だ。君の話は武装騎士団の者から聞いているよ。早速見て欲しい魔道具があるんだ。ついてきてくれ」


カイドウは言われるがまま、イーリルについて行き、研究室の奥へと進んだ。

広い研究室内を足元に注意しながら進むと、奥の方に扉が見えた。

イーリルはそこに入って行き、カイドウにも「ここだよ」と言って入るように誘導してきた。


カイドウが部屋に入ると、そこは先程カイドウが興味津々に話を聞いていた魔道銃器の製造場と、試し撃ちが出来る試射場となっていた。


「どうだ?中々広いだろう。ここだけで全てが完結するようにするのに数年かかったがね」


イーリルは目の前に広がる広大な製造所と試射場をカイドウに見せながら呟いた。

「確かに凄い……!!」とまだまだ興奮を抑えきれていないように言った。


試射場の壁には練習用だろうか、多くの魔道銃器が飾られており、イーリルはその中の一つを持ってカイドウに持たせた。

思わず受け取ってしまったカイドウはそれをよく観察する。

銃身には複雑な魔法陣が刻まれ、銀色の魔鉱石らしき物が埋め込まれている。

それらを前にして、カイドウはわずかに口元を歪めた。


「なるほど……やっぱり見た目の割にはかなり魔術寄りっぽいな……」


銃身は重厚感があり、精緻な装飾が施されている。

引き金を引けば魔力を弾丸へと変換し、敵へと撃ち放つ仕組みだ。


「どうだい?」


イーリルが腕を組んで問いかける。

彼は白衣をまとい、金色の眼鏡の奥でカイドウを鋭く見つめていた。

カイドウは銃口を僅かに傾けながら、バランスを確かめる。


「んー……悪くはないんだけど……偉そうな事言ってもいいかな?」


念の為の確認だ。

イーリルはカイドウの言葉を了承して話すように促した。

彼も研究者だ、いい意見だけが今後に繋がる訳では無いのをよく知っていた。


「ただ、重量バランスがちょっと良くないかもね」


「へぇ?」


「重心が微妙に前寄りになってる。これじゃ長時間の使用には向かないし、照準の安定性にも欠ける。撃つたびにブレが生じてあんまり長期間の戦闘には向いてないかも。特に狙撃なんかは」


そう言いながら、カイドウは銃のグリップを握り直し、仮想の敵を狙うように構えた。

やはり構えただけで微妙な前傾感がある。


「それと……これの魔力消費量はどれくらい?」


「個人差はあるが、一般兵が五発撃てば息切れするほどだな」


「やっぱり……。これじゃ継戦能力に難があるね。短期決戦ならいいけど、長期戦じゃすぐにガス欠になっちゃう」


イーリルは目の前の男の意見に思わず微笑を浮かべた。


「面白い。見ただけでそこまで分かるとはな」


「まぁ何となくはね。でも、欠点だけじゃなくていい点も勿論あるよ」


カイドウは銃の側面を指でなぞった。

埋め込まれた魔鉱石が微かに光を帯びる。


「まず、魔力変換率が異様に高い。撃ち手の魔力を限りなく効率よく弾丸へ変換してる。これなら少ない魔力でも、相当な威力を出せるね」


そう言ったカイドウだったが、ウチの連れは皆なんとも思っていないようだったけど……という言葉を飲み込んだ。


「ほう、全く持ってその通りだ。この銃の魔法陣は、従来のものよりも変換効率を三割向上させている」


「だろうね。でも、それが逆に魔力消費の速さに繋がってる。威力は高いけど、使い手を選ぶ銃って訳だね」


カイドウは軽く笑いながら、他の銃も手に取った。

それぞれ形状が異なり、長銃や短銃、連射型など多種多様なバリエーションがあった。


「この連射型、試してみてもいい?」


「ああ、構わん。あそこの標的を狙え」


イーリルが指差したのは、試射場の奥に設置された魔力障壁付きの標的だ。

カイドウは短銃型の魔道銃器を構え、軽く魔力を込めた。


「……っ!」


引き金を引いた瞬間、銃口から紫色の魔力弾が連続して放たれる。

弾道は真っすぐだったが、反動が強く、二発目以降は僅かにズレが生じた。

ズバババッ!!と魔力障壁が震え、標的にいくつもの穴が開いた。

カイドウはすぐさま分析を終える。


「僕の肉体と魔力が貧弱ってのもあるけど、連射性能の割には、反動制御が追いついて無いかもね。やっぱり撃つたびに照準がズレる。このままじゃ精密射撃には向かない」


カイドウは魔道銃器を降ろして立ち上がった。

するとイーリルは「フフフ……」と静かに笑った。


「……その通りだ。そこが今の課題でな」


イーリルは満足そうに頷く。

彼は不思議ととても嬉しそうだった。


「うーん、改良点はいくつかあるけど……」


カイドウは銃を分解しながら提案を始めた。

もはや許可を取る事すらしなかった。

しかしカイドウには、分解しても元通りにできるくらいの自信はあった。

それを感じたのか、イーリルもそれを咎めたりはしなかった。


「まず、グリップの角度を微妙に変えれば、持ちやすさが向上するね。次に、反動制御用の補助魔法陣を追加すれば、連射時の精度も安定すると思う。あと、魔力消費を抑えるために、撃ち手の魔力量に応じて弾丸の威力を調整できる機能をつければ、長期戦にも耐えられると思う」

 

「なるほどな……」


イーリルは腕を組みながらカイドウの言葉を噛み締める。

その様子を何か不快に感じたと勘違いしたカイドウが少し申し訳無くなって一言謝った。


「あっ、ごめん。口で言うのは簡単だよね。僕の言った事なんて研究者の全員が理解してる事だろうから、もっと技術的な助言をしろって思うよね……。僕、魔道具作る事に関してはからっきしでさ……好きだけど作れないんだ。だから技術的な助言も出来無さそうでごめん……」


突然の謝罪にイーリルは可笑しくなって笑った。

そして謝ったカイドウに対して「何を謝る。君の意見で解決策が複数見えてきた。感謝しているよ」と心の底から感謝の意を述べた。

それを聞いて安心したのか、カイドウはホッとして息を吐いた。


その後、カイドウとイーリルが会話をしていると、重厚な鉄扉が軋みながら開かれた。

そこに現れたのは獣人の男だった。

逞しい体躯に漆黒の軍服を纏い、銀の義手を携えた武装騎士団総団長――ベルリオ・ナーダ。


彼の鋭い黄金色の瞳が、試射場の中央で魔道銃器を弄っているカイドウと、その隣に立つイーリルを捉えた。


「おい、イーリル。てめぇの作った義手がまた調子悪くなったぞ」


ベルリオは不機嫌そうに義手を掲げ、ガシガシと指を動かして見せる。

確かに動作にぎこちなさがあり、関節部分がわずかに軋んでいるようだった。


「ほぅ、これはまた随分と雑な使い方をしたな。もしかして、お前、またこの義手で剣を振り回していたんじゃないだろうな?」


イーリルは呆れたように腕を組み、ベルリオの義手をじっと見つめた。


「当然だろうが。義手だろうと、俺の手には変わりねぇんだからな」


「はぁ……いいかベルリオ。何度も言っているが、その義手は精密機器だ。お前みたいな筋肉バカが、無茶な使い方をすれば壊れるのは当然だ」


「チッ、いちいちうるせぇな。だったらもっと頑丈に作りゃいいだろ」


「お前の怪力に耐えられる義手なんて作れるか、馬鹿め。だったら最初から魔道義手なんかじゃなく、鉄の塊でもつけていろ」


「それじゃ細かい動きができねぇだろうが! それに、俺はお前の義手を使ってやってるんだぞ。感謝しろよ、イーリル」


「……は?」


イーリルの眉がピクリと動く。


「感謝? 俺が? お前に?」


「ああ、俺がこの義手を使って戦果を上げることで、お前の技術が証明されるんだ。ありがたく思えよ」


「……」


イーリルは数秒間ベルリオを睨みつけた後、大きく息を吐いた。


「いいか、ベルリオ。お前は本当にバカだな」


「なんだと?」


「そもそも、この義手を作ってやったのは俺の好意だ。お前が『右腕を失った俺には、もう剣を握ることすら許されないのか』と、まるで捨てられた子犬のような顔をしていたから、仕方なく作ってやっただけだ」


「誰が子犬だ!」


ベルリオが憤慨して吠えるが、イーリルは意に介さず続ける。


「それを『使ってやってる』? ふざけるなよ。むしろ俺に感謝すべきはお前のほうだろうが」

「はんっ、何を偉そうに」

「偉そうも何も事実だろうが。少しは謙虚になれよ、ベルリオ」

「……お前な、俺とお前のどっちが戦場で役に立ってると思ってんだ?」

「はぁ? それはお前だろうな」

「だろ? なら俺のほうが偉い。よって、偉い俺は偉そうにしても問題ない」

「お前、本当にバカだろ」

「おう、イーリル、お前こそ理屈っぽいだけの根暗技術屋だろうが」

「……ふん、少なくとも俺は、バカじゃないだけマシだ」

「はぁ!? てめぇ今なんつった!」


言い合いがヒートアップし、互いに睨み合う二人。

しかし、そのやり取りを見ていたカイドウは苦笑しながら肩を竦めた。


「……2人共、仲いいね」


二人が同時に振り向き、声を揃えて言った。


「よくねぇ!!」

「よくない!!」


「えへへ……でも息ピッタリじゃん」


目の前の自身より小さな男に図星を突かれた2人は照れたようにお互いの顔を反らした。

カイドウは呆れたように言いながら、ベルリオの義手を見た。


「で?義手の調子が悪いんでしょ? どこがダメなの?」


「指の動きが鈍い。あと、握力が微妙に安定しねぇ」


ベルリオは腕を組みながら答えた。カイドウは軽く顎に手を当てながら考え込む。


「……なるほどね。多分、関節部の魔力伝導率が低下してるんだと思う。おそらく摩耗してる」


「確かに、その可能性は高いな」


 イーリルも頷く。


「それに、魔導回路の接続部分に緩みが生じている可能性もある。分解して調整すれば直るかな」


「つまり、どうすりゃいい?」


「簡単だ。今すぐここで分解して調整してやる」


「お、さすがイーリル。頼むわ」


「お前がもっと丁寧に使ってくれれば、俺の手間も減るんだがな」


イーリルはため息をつきながら、ベルリオの義手を調整し始める。

その様子を見ながら、カイドウは再び苦笑した。


「……やっぱり、仲いいね」


イーリルは無言で睨み、ベルリオは苦虫を噛み潰したような顔をした。

だが、こうして兵器開発部門と騎士団の間の奇妙な関係は、今日も続いていくのだった。


「さぁ、直ったぞ。さっさと訓練に戻れ」


「へーへー直してくれてあんがとよ。……お客人もありがとな」


「いやいや、お安い御用だよ」


カイドウに向かってニッと笑顔を向けたベルリオは部屋を出ていった。

お客人と呼んだあたり、カイドウの事を誰かから既に聞いていたのだろう。


「……そう言えば、なんでベルリオさんは義手なの?」


ふと思いついた疑問をカイドウはイーリルに投げた。

しかし今まで饒舌に語り合っていた彼の態度が一変し、言葉を発するのに躊躇しているようだった。

しばらく沈黙が続いた後、イーリルはカイドウに「こっちで話そう」と小さく言ってきた。

なんだろう、と思いながら、カイドウはビーカーに入ったコーヒーが出された場所に座った。

そして、これから話されるであろう話の内容を何も考えずに待っていた。



最後までお読み頂きありがとうございます!


はい!という訳で今回はカイドウ視点ですね!

本当はこの一話に収めたかったんですが……文字数的に次回にします!

こんな感じでメイとカルムパートもあるのでそちらもお待ち下さい!


それでは次回もお楽しみに!!

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