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第一章 7話『『元』究極メイド、お店を開く……準備をする』

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物作り屋を開く――

言葉で言うのは簡単だった。

しかしそれを実行しなければその本当の難易度を知ることが出来ない。


アミナは先日、半ば強制的に購入させられた祖母の家のリビングで顎に手を当てて考えていた。


「さて……自分で言っといてあれだけれど……お店をやるのに必要な物って何かしら……?」


アミナはとりあえず思い浮かぶものを机の上に置かれた紙に書き出していった。

今思いつく限りで出されたのはこれらだった。


『素材』

『入手難易度の高い特殊な素材』

『図鑑』

『根性』

『道具の説明書』

『道具の設計図』

『スクラップ回収箱』

『気合』


「……とりあえずこんなところかしら」


まず『素材』や『特殊な素材』というのは言わずもがな、物作りには素材が必要だ。

いくら依頼者から持ってきてもらうとはいえ、お店を開き始めた頃の信用も何もない状態で、貴重な素材を預けてもらえるとは思えない。

ならば最初の内は物作り屋さんとしての下積みをするために、様々な物をお客さんの目の前で作ってそれを販売しよう。


次に『図鑑』、『道具の説明書』、『道具の設計図』だが、図鑑は素材の性質が載っている図鑑がほしい。

私のスキルは素材となる物の性質を知らなければその後の物を作ることは出来ない。

ならば知らない物質をなるべく減らす為に様々な素材の載った図鑑が欲しい。


『道具の説明書』、『道具の設計図』も同様の理由だ。

作る物の造形や構造を理解する事は、物を作る際には何よりも必要な要素だ。

それにどんな物がこの世の中に溢れているのかを知る事で、特定の文化を持つ依頼者にも対応出来る上に、デザインによる機能の快適性も変えられるかもしれない。


そう考えると私はまだ作る物に対する造形が浅い。

先日直した少女の物は土鍋というメイドの時の私には慣れ親しんだ物だった為何とかなったが、これからもっと複雑な物の修復を頼まれたりやる事になったら明らかに知識が足りない。

それを加味するとこの二つは特に必須事項だ。


その次の『スクラップ回収箱』というのは正直いるかは分からない。

しかし先日少女と出会った集合ゴミ捨て場を見る限り、色々と使えそうな物が捨てられているのが目立った。

自慢じゃ無いけれど、私は断捨離が作業の中では苦手な方だ。

メイドになりたての頃、断捨離を任された時に何を捨てていいのか分からず、結局サルバンと共にやったのはいい思い出だ。


しかし私のスキルのいい所は、廃棄物でもやりようによっては新品同様に作り直せるというところだ。

だから街の人が捨てる勿体無い物や、私が作った物が不良品だった場合はそこに入れてもらって、私が新たに物を作るのに再利用する。

これならば無駄な資源はなるべく減らせる。

断捨離が苦手で、物を捨てることに抵抗のある私にはうってつけだ。


『根性』と『気合い』は……まぁ、うん。

今まで通り変わらない。

力仕事や体力仕事はメイドとしては当たり前だ。

だが流石に何日も荒野を歩くのは厳しい。

頭だけではなくもう少し体も鍛えなくては……。

今後一人で素材集めをしないとも限らない。


素材収集の為にどこか遠くの地へ赴いて知識不足、体力不足で死んでしまってはいい笑いものだ。

そうなる事だけは避け、魔物蔓延るこの大陸で生き延びる為に体を鍛える機会も儲けよう。


「うーむ……この中で一番手を出しやすいのはどれだろうか……」


紙に箇条書きになっている言葉達を見て悩む。

素材系は私の実力が伴わない可能性が高いから無理として、気合いと根性があっても今はどうしようもない。

気合いと根性だって何も無い状態でから回っても仕方ない。

街での信頼が無い今の私が、勝手にスクラップ回収箱なる物を設置してしまっては何かしら文句を言われるのは目に見えている。


やはり図鑑や説明書の類が一番手を出しやすいだろうか。

お金が勿体無いと言ってもたかが本やカタログ数冊だ。

どんなにかかってもせいぜい金貨2枚といったところだろう。


「まぁ……それくらいなら許容範囲かしら……お財布に痛くないと言えば嘘になるけれど」


お店を開店する為に必要な物を考えた後、次に必要なのは、内装や看板、お客さんの集客等の経営に関係するものだった。

私はこの地にコネやツテは何一つ無い。

知り合いはおろか、土地勘すらもまだ無い。

そんな明らかな『余所者』がこの土地で働くならば、まずはやはり街の住人の信頼を得る事が最優先だ。

その方法を考えなければ……


そう考えていると、アミナは自然と口からため息が出た。


「はぁ……」


先日これを思いついた頃の私の頬を、全力でビンタしてやりたい。

何が、現実味を帯びてきた、だ。

想像しているよりも多くの事を考える必要があり、それは私だけが抱えて済む問題だけでは無い。

私の挙げたこれら全てを実行する為にどれほどの労力と住人達の協力が必要なのか、軽率な私はやはりビンタされるべきだ。


「誰かの為の労働ならなんとも思わないのに……」


これはあくまで私がこの魔物の巣喰う大陸で生き延びる為の方法だ。

これが誰かの為になる訳では無い。

しかし今更この大陸の領主の元へと向かってメイドとして雇ってもらうのも何か違う気がする。


アミナは顎に手を当てて考えた。


仮に私が今、この土地で偉い人の家に仕える事になったとして、この家を離れたら、長年維持費に苦しめられてきた冒険者ギルドの人達は今度こそは私の許可を取らずにこの家を壊してしまうだろう。

半ば強制的に買ってしまったとはいえ、祖母との繋がりを失う事になる。

それだけは……やってはいけない気がする。


アミナは一通り考え終わると、またしてもため息をついた。

しかしそのため息は、ネガティブなものではなかった。

気持ちを切り替えるためについたため息だと、その表情からは伺えた。


「……よし、今は考えてても仕方無い。まずは行動。……とりあえず、"あの方法"をしてみよう。」


アミナはそう呟いて、鞄の中に様々な道具や家の中にあったガラクタを詰め込んで家から飛び出した。

これから彼女の『物作り屋』を開店する為の計画が始まる。


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