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第二章 46話『『元』究極メイド、街を出発する』

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とある店の店主が販売していた偽物の回復薬の件を暴いたアミナは、その事を街の代表に感謝され、何かあれば是非頼ってくれと言われた。

しかしそういった好意に甘えるのが苦手なアミナは、カイドウにその事を突かれながら宿屋へと帰ったのだった。

そして時は過ぎ、日が暮れ、すっかり辺りは暗くなっていた。

アミナ一行は宿屋の1階にある食堂で食事を摂りながら談話していた。


「ここの飯は美味ぇな」


皿に乗った大きな肉を美味しそうにたいらげながらメイが言った。

周囲の宿泊客のほとんどがメイの事を見つめていた。

それに気がついたメイは、自身を呆気にとられたような顔をして見つめているアミナやカイドウの方を見た。


「なんで他の連中は私の事見てんだ……お前等もだよ……何見てんだおい」


「いやぁ……」

「だって……」


アミナとカイドウが目の前に積み上がった皿の山を見上げて呟く。


「いくらご飯付きの宿だからって食べ過ぎじゃないかい……?」


「もしかしてメイさん、いつもご飯足りてなかったんですか?だったら遠慮せずに言ってくれればよかったのに」


「んいや、別に食わなくても食っても別にどっちでも良いんだ。私は食事がいらねぇんだ。でも飯は美味いから食う、そんな感じだ」


そう言ってから再び食事に手を付けた。

食べても食べなくてもどっちでもいいというのは便利だが、少し勿体ないような気がする。

空腹にもならなければ満腹にもならない。

生きているという実感が薄れそうで、少しだけ怖い。

するとカルムが椅子から立ち上がり、アミナにも立つようにアイコンタクトをした。

不審に思いながらもアミナは立ち上がってカルムについて行こうとする。


「ん?どうしたんだい2人とも?」


「すみません、お手洗いに行ってまいります」


「えっと……私も」


アミナもカルムに同意して彼女の後ろをついて歩いた。

席から立った2人は少し離れた柱の裏で会話を始めた。


「急にどうしたんですか?」


アミナはカルムに問いかける。

一体何を言われるのだろう、とアミナは内心ドキドキだった。

今まで結構メイを雑に扱ったりしてきたからその事を咎められるのだろうか等、思い当たるフシはそこそこあった。


「メイ様がお食事を摂っても摂らなくてもいい……そう仰っていましたよね」


「え?あ、はい。それは聞いていましたけど……」


「実はそれは呪いによるものなのです」


突然言われた事にアミナは「え?」と聞き返してしまった。

呪い――それは以前にもメイ本人から聞いた事があった。

それは存在そのものに宿り、死んでも壊れても無くなる事は無い――確かそんな感じだった。


「メイさんに……呪いが……?」


「はい。食事だけではありません。寝る事も息をする事もあの方は必要としていないらしいのです。私と出会った時から既にあの状態でしたので詳しくは知らないのですが、本人曰く『恩着せがましく押し付けられた祝福だ』と言っていました」


「呪いの事を祝福……強気なあの人らしいと言えばあの人らしいですけど」


「……ですが、あの方にはまだ秘密が多いように感じられます。メイ様があれだけの短い期間で人に心を開く事など滅多にありませんでした。……アミナ様ならあるいは――」


カルムはそう言いかけて口を噤んだ。

「ん?」と首を傾げたアミナは特に言及もせずに「そろそろ戻りましょうか」と言ったカルムについて席に戻った。


「おぉ遅ぇぞ、もう酒に手出しちまったからな」


「僕も頂いてるよぉ」


「みゃ〜う〜」


2人がトイレという体で席を立った少しの間にカイドウとメイはおろか、フィーまで出来上がってしまっていた。


「あぁ!フィーちゃんにも飲ませましたね!」


「いいじゃねぇか興味ありそうだったんだしよ」


「全く……まぁランクS+の魔物なら多少の毒なら耐性があって解毒出来るから大丈夫だとは思いますけど……。はぁ、煙草を禁止にした次はお酒ですか……当分はお酒も禁止ですね」


そんな2人と1匹の振る舞いに呆れながらも、殺伐としていた昼間の空気を忘れさせてくれた。


―――


食事を終えたアミナ達はそれぞれの部屋へと戻り、就寝の準備をしていた。

隣の部屋のメイとカルムはまだ起きているようで、反対側の部屋はとても静かで、カイドウは既に寝ているようだった。


「なんだか、お仕事に比べれば色々あったような1日でしたね……」


アミナは独り言を呟く。

朝にスターターを出発し、昼間にはよく分からない犯罪組織に出くわして頭が追いつかない内に目の前で謎の死を遂げられた。

そして昼過ぎには偽物の回復薬の件を解決して、ご飯の時には新しい事実が頭の中を襲った。


「私にはやはり難しい……」


そう呟くとフィーが隣のベッドから下りてきてアミナの布団の中に入ってきた。

もぞもぞと入ってくるフィーに満更でもなさそうなアミナはフィーを抱きながら布団に潜った。


「はぁ、相変わらずフィーちゃんは甘えん坊さんですね……うん、あったかい」


先程まで冷たく感じていた布団が急に暖かく感じられ、アミナはそっと目を閉じた。

するとあっという間に意識は深く落ち、暗闇の中に身を預けた。


―――


「さぁ、行きましょうか」


カルムが馬車の御者台に乗ってアミナ達に馬車に乗るように促した。

朝早くにアミナ一行はバザールラザールを後にし、街の外に出ようとしていた。


「ここからはまた道なりに進みます。しかしこの先にはしばらく街がありませんのでご注意下さい」


念の為にとカルムが言ったが、一同はやるべき事も特に無かった為、すぐに馬車に乗り込んで街の出入り口まで馬車で向かった。

馬車の中では相変わらずメイは寝ており、大きくなったフィーを抱いて寝ている。

その向かい側ではアミナの顔色を伺ったカイドウが声をかけていた。


「アミナさん、なんだか顔色が昨日より良いみたいだけど……何かあったのかい?」


「いえ……ただ、大変なのは私だけじゃない。それを知ったら、皆の為に私はもっと頑張れる気がしてきていて。……なので安心して下さい!カイドウさんは私が守ってみせますので!」


久しく見る彼女の笑顔にカイドウは「それは頼もしいね」と笑いかけた。

バザールから出た一行の馬車は、再びコルネロ帝国に向けて出発した。



最後までお読み頂きありがとうございます!


さーて、今回は旅のほんの一休みが終わり、また新たな旅の道を進む事に!

コルネロ帝国までの道はまだ長い?


それでは次回をお楽しみに!!

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