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第二章 45話『『元』究極メイド、街に恩を売る』

よろしければブックマークや感想の方よろしくお願いします〜!

今回もちょっと長いです!



「もー本気で置いていかれた時はどうしようかと思ったよー」


アミナに置いていかれたカイドウは満更でも無いような顔をしてアミナに追いついた。

しばらく無視して歩いていたが、ようやく反省したようだったので振り返ってあげた。


「はぁ……公衆の面前であぁいった事をするのは控えて下さいね」


アミナはそう言って振り返ったのだが、カイドウは無視された事すらも嬉しそうにしているので、もういっそこの街に置いていってしまおうか、とも考えて再び無視して前を向いて歩き始めた。

すると前方に何やら一際人集りがあるのが見えた。


「あれはなんでしょうか?」


「確かに他より目立って人がいるようだけど……とりあえず行ってみようか」


カイドウのその言葉にアミナも同意して少し先にある人集りの方へと向かった。

近づくにつれて、そこがこの街に数多存在する店の1つだという事が分かった。

人混みの間をすり抜けながら、2人は顔をひょっこりと出して様子を伺った。


「さーあ、よってらっしゃい見てらっしゃい!今回ご紹介させて頂く商品は、なななーんと!冒険者ギルドの無いこの街には無縁の良薬!だがしかし圧倒的な回復力で病も怪我もたちどころに治っちまう便利過ぎる1品!」


店主と思しき男がガラス瓶に入った青緑色の液体を人々に見せびらかした。


「淡い青緑色に輝くこいつは冒険者御用達の回復薬!!しかもこいつぁただの回復薬じゃあねぇ!!通常の回復薬は切り傷や火傷、ちょっとした病気しか治せねぇ……が!!なんとこいつぁ上回復薬(ハイポーション)っつー普通の回復薬の数倍の効果があるときた!さぁさぁ買った買った!」


店主の男がそう大声で売り文句を叫び終わり、集まった客に商品を買うように煽った。

どうやら男の言っている事は本当のようで、集まった人々は揃いも揃って回復薬を買い求めてそれぞれが声を上げていた。


「私に頂戴!息子が病気なの!」

「俺に回してくれ!俺の子供も病気なんだ!」

「お姉ちゃんが怪我しちゃったの!だから私に!」

「怪我が治るってんなら売ってくれ!いくらでも出すぞ!」


流石の人混みになってきた為、アミナは一旦カイドウにアイコンタクトをし、2人は人混みから抜け出して顔を見合せた。


「なーんか怪しいと思わないかい?」


「……カイドウさんもそう思いましたか」


2人は再び先程の店の方へと向き直る。


「上回復薬の定価は銀貨3枚と銅貨2枚……でもあの人が言っているのは――」


アミナは店主の声を聞き取ろうとする。

すると、「さぁさぁ買った買った!銀貨6枚からだよぉ!」と聞こえてくる。


「転売で安く売ってあげようって考えでも無さそうだし、手数料にしては取りすぎだよね……」


お互いにそう言い合って2人は同時に沈黙した。

そしてその後すぐに「ふっふっふっ」と同じような笑い方をして肩を静かに揺らした。

その瞬間、2人の頭に同じ考えが思い浮かべられた。


「魔道具に詳しいカイドウさんと――」


「魔道具を作り出せるアミナさんに――」


2人は静かに呟く。

そしてその後、同時に顔を上げて先程の店の方を勢い良く見据えた。


「目をつけられたのが運の尽きだったようですね!!」

「目をつけられたのが運の尽きだったようだね!!」


―――


「すみません、ちょっとよろしいですか?」


店主は横から丁寧な口調で話しかけられ、「あいよ!」と元気よく返事をした。


「おや!可愛らしいメイドさんに二枚目な旦那!お2人も買っていったらどうだい?なんとあの上回復薬が大特価の銀貨6枚からだよ!」


「まぁ、とてもお安いのですね……しかし――」


アミナは口ごもった。

それを不思議に思った店主は「どうしたんだい?」と問いを投げてきた。


「私、回復薬を見るのが初めてでして……一体どれほどの効果があるのかを知らないのです」


「ほう、そりゃ確かに買うには困っちまうな」


「はい、ですので一度、この回復薬の効果を実際に見せていただけないでしょうか?」


そう言った瞬間、店主の男は「えっ!?」と大きな声を漏らした。

その後は目があちこちへ泳ぎ、汗をダラダラをかいていた。


それを後ろで見ていたカイドウは、アミナさんって役者だなぁ、と感心しながらその後の様子を伺っていた。


「いやぁ〜あの〜それはなぁ、メイドのお嬢ちゃん。こいつぁ貴重で大事な商品で1品しかねぇんだ。だから実践をしてる余裕がねぇんだ。悪いな」


店主は一言謝って軽く頭を下げた。

しかしアミナは引き下がらない。


「そこを何とかお願いします。……きっと皆様も、この回復薬の効能が目に見えて理解出来れば、もっと大金を払ってくださるかもしれませんよ?」


1歩も引かないアミナの提案に店主の男は「うーんでも……」と悩むだけで先へは中々進まない。

だったらこれでどうだ、とアミナはもう1つ提案する。


「もしこの回復薬の効能が本物なのでしたら、金貨10枚をお支払いしたします」


アミナは自身の財布の中から言った通りの金貨10枚を見せ、店主にその意を伝えた。

だがしかし、アミナにはこの男が売っている物は回復薬ですらないと確信があった。

無論、金貨10枚を払うつもりも払う義理も無いという訳だ。


「でもどうやって本物か証明してやろうか……」


店主が唸っていると、今度はカイドウが店主に向かって声をかけた。


「だったら僕が提案するよ。これが本当の回復薬かどうかをね」


そう言ってカイドウは店主が使っていた机の上に、売り物の回復薬を置き、自身の人差し指に何やら力を入れていた。


「んぬぬぬぬ……『ファイア』!」


カイドウが力んでそう叫ぶと、彼の人差し指の先には小さな炎が灯った。

心做しか、火を出したカイドウは息切れしているように思えた。

そして回復薬を買いに来ていた客達は「おぉ!」とこれから目の前で行われるであろう事に歓喜してまじまじと見た。


「回復薬っていうのは通常、少しの粘性を持っているんだ。リヴァルハーブの水分と回復の効能があるエキスの割合が1対3くらいだから粘性が少しだけ強い。そして回復薬は熱するとそのエキスが凝固して、サラサラと動く水分と、ドロドロとあまり動かないエキスで層が出来るハズなんだけど……」


カイドウがしばらく指の先にガラス瓶を持ってきて熱する。

しかしいつまで経ってもその反応は現れない。


「おい、何も起きないぞ!」

「まさか偽物なのか!」

「どうなってんだ!」


次第に店主の男へと野次が飛んだ。

慌てふためく店主は、負けじと反論をした。


「おいあんた!商売の邪魔だ!あんたのせいで偽物だと思われちまったじゃねぇか!」


「なら、こちらをお試し下さい」


憤る店主の横から声がかかる。

店主はその方向を見ると、自身が売っていた回復薬と似たような物が差し出されているのに気が付き、「これは?」と問いかけた。


「こちらもそちらと同じ回復薬です。しかしこれは作った時に効能が濃すぎて水で薄めてあります。カイドウさん、こちらも火に」


そう言ってカイドウにガラス瓶を手渡し、受け取ったカイドウは人差し指の上にしばらくそれを乗っけた。

最初はなんの変化も無かったその回復薬だったが、次第に沈殿する物質が目に見え始め、明らかに水の層とエキスの層がハッキリと別れた。


「おぉ!別れたぞ!」

「じゃあこっちが本物?」

「いやでも、効果を見てないからな……」


反応を示したガラス瓶に対してお客さんが色々言っている。

それを聞いたアミナは短剣を腰から引き抜き、自身の指先を少し斬って見せた。


「カイドウさん、回復薬を私の指に」


指先の火を消したカイドウが頷き、アミナの血が流れ続ける指に回復薬の蓋を開けて一滴たらす。

するとどうだろうか、たちまち傷が癒え、斬れた痕がどこかすらも分からない程に完璧に治癒した。

集まった客達は「おぉ!!」と大きな声で盛り上がった。


「皆さん、回復薬をお求めでしたら、こちらで用意させて頂いた物を配布致します。必要な方はそれをお受け取り下さい」


アミナはそう言うと店の下から回復薬が入ったガラス瓶を大量に取りだした。

勝手な事をしたアミナに対し、店主は「ちょっと!何やってんだ!」と声を荒らげるが、カイドウが肩に手を置き、凄みのある顔で睨みつけた事で黙った。


しばらくして、回復薬の入った瓶は全て持っていかれた。

店主の男は額に血管を浮かべて酷く憤っているようだった。


「本当に勝手な事してくれたなぁ……!!ただで配っちまうなんてよ!!」


アミナとカイドウは並んで店主の顔を見つめる。

するとアミナが小さな声で「はぁ……」とため息をついた。

そして店主の方を鋭い目つきで睨みつける。


「皆さんが貴方の言う事を信じて幸せになるのなら、見逃しても良かったのですが…… 実際にはこれ、汚れや不純物だらけのただの汚水に青緑色の色素を混ぜただけではないですか!これでは貴方の言った事を信じて傷口に垂らしたり、経口摂取した人達が本当に病気になってしまいます!」


「な、なんの事だよ!!」


「とぼけないで下さい!私がカイドウさんに手渡した瓶はこの屋台の下で発見した物です!しかもその中には貴方が先程皆さんに見せていた偽物の回復薬が入っていました!私はその中身を開けて手に垂らしました。そしたら小さなゴミと色素と水しか出てきませんでした!これのどこが回復薬なのですか!」


「ギクッ……!!」


「貴方は貴方の販売したこの汚物で人が傷つき、かかる必要の無かった病に冒され、衰弱していくのをなんとも思わないのですか!?」


アミナがそうぶつけると、店主の男は「ちっ!」と大きく舌打ちをした。


「あーあ、せっかくこの方法でしばらく儲けてたのによ。勝手にばらしやがってこのクソアマが」


「しばらく儲けていた……?どういう事ですか」


「そのまんまの意味だよ!俺がこの偽モンを売ってたのは今回だけじゃねぇ。変装やらなんやらして何回も売ってたんだ。んで、さっきの客に病人が何人かいたのは、俺の作ったこの水を飲んだり傷につけたりしたからなんだぜ?商業の街なのに目利きが出来ねぇ馬鹿ばっかで助かるぜ!なっはっはっは!!」


男は高らかに笑い声をあげた。

「こいつぅ……!!」とカイドウが憤りの声をあげるが、それをすぐに抑えた。

何故なら、この場で誰よりも憤っている人物の怒りに比べたらチンケなものだったからだ。


「既にやっていたとは……本当に救えませんね……」とアミナは低く小さく呟いて、男が持ってきた回復薬の偽物を手に取って鷲掴みにする。


「へっ、何すんのか知らねぇがやめときな。そいつぁ演出の為に頑丈に作ったガラスの瓶だ。そんな程度じゃ――」


バリンッ!

男が言葉を言い終わる前に、アミナの持っていたガラス瓶は粉々に砕け散った。

地面にはガラス瓶だったものが散乱し、それを持っていた彼女の手からは青緑色の水が滴っていた。


「ヒッ!ヒィ!」


「もうこの街では商売をしないでください。出来れば他の街でも。するとしてもマトモな商品を売ってください。もし仮に、私が次に貴方を見かけたとすれば……こうなるのは貴方ですからね」


そう低く小声で言い、アミナはカイドウと後方へと向きを変えて歩き去った。

店主の男は目の前で起こった出来事に失禁し、アミナ達が歩き去っても尚足が震えていた。


―――


「良かったのかい?あいつを突き出さなくて」


「はい、別に正義の味方がしたい訳では無いので」


「ふーん……だから人を散らせて誰もいなくなった後に説教したんだね。誰にも見られてないから本人の沽券にも関わらないし、アミナさんの作った回復薬を貰った皆も嫌な思いをしない……アミナさんは優しいねぇ」


それに対してアミナは答えない。

図星で少し恥ずかしかったからだ。

全く柄にも無い事をしてしまったなぁ、と内心少しだけ後悔していたが、それでも病気になる人が減ったりいなくなったりするのなら、やった甲斐もあったというものだ。


「おぉーい!お待ち下されぇー!」


後方から何やら大声が聞こえる。

だがそれは自身達に対するものでは無いだろう、とアミナとカイドウは振り返らずに歩いた。

しかし次には「そこのメイドのお嬢さんと隣の男の方ー!」と聞こえた為、「ん?」と思いつつも振り返った。

2人が立ち止まって振り返ると、そこには息切れしている初老の男性が立っていた。

妙に綺麗で清潔感のある服装に何のようだろう、と思いながら彼が言葉を発するのを待った。


「はぁ、はぁ。お2人ですか!回復薬を無料で配ったという方は!」


「えっと……まぁそうですけど。失礼ですがどちら様でしょうか?」


アミナが問いかけると、初老の男性は思い出したような顔をして改めて2人に向き直った。


「あぁ!申し遅れました。私この街の代表をさせて貰っているパルマ、と申します」


「それで、回復薬を配った事が何か?もしかして条例違反とか……?」


カイドウが恐る恐る訊く。

それもそうだ、商売の街と言っておきながら他者の商売を邪魔し、利益も出さずに回復薬を配っただけだったのだ。

怒られるかもしれない、2人はそう身構えたが、パルマの口から出た言葉は想像とは違った。


「いえいえ滅相もございません!!近頃何故か病を患う住人が増えてきていたのですが、その理由を解明なさったと私の部下が申しておりました!なんでも怪しい商人の偽物の回復薬を見破ったそうで!」


アミナとカイドウは必死に記憶を辿った。

全員帰らせた、と思っていたが、実際には少し離れた所に人がいたのかもしれない……パルマが言うからには恐らくいたのだろうが。


「このままでは商売も上手く回らない所でした!この度は本当にありがとうございます!このパルマ、お2人に深い感謝を」


そう言ってパルマは深々と頭を下げた。

「そ、そんな!やめてください!」と慌ててアミナが止めるが、「いいえ!この老人の軽い頭で感謝が伝えられるのなら、いくらでも下げさせて頂きますぞ!」と確固たる意志を示した。

頑固なパルマの態度にアミナは困惑している。

その様子を見たカイドウは苦笑しながら「アミナさんも普段、あれくらい頑固だよ?」と茶化した。


数十秒ほどして、ようやくパルマは顔を上げた。


「見た所お2人は旅の途中のようですね。何かご入用の際はお声掛け下さい。このパルマ、全力でお手伝いさせて頂きます!それでは……」


最後にもう一度礼をしてから、パルマは歩き去った。


「はぁ……結局恩を売った感じになってしまいましたね……」


「別にいいんじゃないかな、好意で言ってくれてるのを無下にするのだって悪いし」


「そういうものですかね……」


未だ納得した様子の無いアミナに向かって仕方無いな、と言いたげな表情をしたカイドウが言う。


「アミナさんはもう少し、他人に甘えるって事を覚えたほうが良いかもしれないね」


カイドウはそう言って笑顔をアミナに向けた。

言葉の意味を頭では理解しているが、実際に実行してみようとするといつもから回るアミナは、彼の言ったその言葉を小さく繰り返しつつ、カイドウと共にバザールラザールへと歩みを進めたのだった。



最後までお読み頂きありがとうございます!


今回はアミナがスキルを使って人助けをしましたね

しかも以前とは違ってカイドウという魔道具に強い仲間もいました!

なんだかこういうのは久しぶりな感じがしますね〜


それでは次回もお楽しみに!!

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