第二章 43話『『元』究極メイド、犯罪組織に遭遇する』
よろしければブックマークや感想の方よろしくお願いします〜!
「カイドウさんどうしたのですか!」
アミナとカルムは急いで外に出る。
2人はお互いに短剣と赤刀を鞘から引き抜いて馬車から飛び降りる。
「アミナさん!実はよく分からない人が道端に立っていて……!」
その言葉にアミナとカルムは道の先を見る。
そこには威嚇をしているフィーと、謎の仮面で顔を隠した複数の人物が馬車の前方を塞いでいる。
「貴方達は誰ですか!」
しかし道を塞いでいる輩達は言葉を発さない。
なんなんだ一体……とアミナは汗をかく。
するとカルムが刀を振り抜いて相手の一人を斬り裂いた。
目にも止まらない速度で血飛沫を振りまいた。
あまりの事にアミナはカルムの方を見る。
「カルムさん!?」
驚きと困惑でつい声が大きくなってしまったが、カルムは冷静だが鬼気迫る表情でアミナとカイドウに声をかける。
「気をつけてください!この人達はコルネロ帝国内で犯罪行為を繰り返す犯罪組織『魔人会』の構成員です!」
「へっ?な、何?魔人会?」
聞いた事の無い組織名にアミナは間の抜けた困惑した声を上げた。
赤い刀身に付着した真紅の血液を振り払いながらカルムは次の標的に攻撃を仕掛ける。
仲間が斬られた事で魔人会の構成員と呼ばれた人物達は袖の内側から刃を取り出し、カルムと応戦している。
突如として始まった戦闘にアミナは困惑を隠せずにいた。
な、何?魔人会って……?
でもカルムさんと戦っている。
カルムさんの言った事を事実か確かめる前に戦闘をするのは気が引けるが……そんな事を言っている暇は無い……!!
アミナは体勢を低くして短剣を逆手に持って構成員の懐に潜り込み、腹部を柄頭で殴りつける。
そして体勢が傾いた後に頭頂部を再び柄頭で殴打し、気絶させる。
その戦闘の仕方に驚いたようにカルムはアミナの方を見る。
その次にアミナは刃を鞘に仕舞い、短剣を殴る道具として利用する事にしたようだ。
小柄なアミナは次々に構成員の懐に潜り込んで短剣を振るう。
そしてあっという間に全てを圧倒し、カルムが斬り殺した初めの1人以外の全員を気絶させた。
「……ふぅ、何とかなりましたね」
アミナはそう呟いて相手の持っていた剣から鉄のワイヤーを作り出し、気絶している全員を縛った。
その後、カルムが最初に斬った者の脈を一応とる。
脈は無い、死んでしまっている。
既に死んでいるのなら、もうアミナの回復薬でもどうする事も出来ない。
「カルムさん。この方達を犯罪者と呼んでいましたけど……どういう事なのですか?」
その問いにカルムはほんの少しだけ躊躇して間を作った。
するとその間にカイドウが「僕が答えるよ」と言った為、彼にお願いする事にした。
「カルムさんも言ってた通り、彼等は魔人会と呼ばれる魔物を信仰する組織の構成員なんだ」
「魔物を……信仰?」
説明を受けたがあまり実感が湧かない。
本来ならば人間の敵である魔物に対して信仰心など起きるものなのだろうか。
……でも私とフィーちゃんは、信仰では無いけどかなり親しい。
うーむ……難しい。
「アミナさんは『開拓者』っていう人は知ってるよね」
「え?はい。確かこの大陸を開拓し、様々な魔道具や商業ギルドという概念を生み出した偉大な人物……と」
アミナの返答に「その通り」とカイドウは返して話を続ける。
「彼がこの大陸を開拓する前、この大陸には他の支配者がいたんだ。……それがこの魔人会の連中が信仰する『魔人』という存在だった。でも、『開拓者』がこの土地を拓いた時に漏れなく全員撃破されたんだ。しかしどこかで噂されてる。『魔人はまだ消えてはいない、いずれこの世に蘇る』と。魔人会の連中はそんな魔人の復活を目論んでいる犯罪者集団なんだ。なんで復活させたいのかは、誰にも分かっていないんだ。目的も不明、動機も不明。だからこの大陸では魔人会の構成員を見つけたら即戦闘即殺害が常識になっているんだ」
だからカルムは構成員の仮面を見るなり斬り殺したのか、おっかないな、とアミナは1人で納得した。
そしてカイドウが話を終えたようにアミナの方を見る。
しかしアミナにはまだ疑問が残っている。
「えっと……聞いてばかりで申し訳無いのですが、その魔人とは?」
すると今度はカルムが答える。
「魔人というのはこの大陸に太古よりいた凶悪な魔物の一種です。とても強大な魔力と圧倒的な武力で支配をしていました。彼等は全部で5体存在し、それぞれが自身の領土を持っていました。彼等は日々争い、その余波は他の大陸にまで及びました。それを止める目的も兼ね、『開拓者』はこの大陸を拓いたのです」
なるほど……この大陸にだけ戦いが収まっていたのなら別段文句は無かったが……他の大陸にまでその影響がいっているなら話は別だ。
「しかし魔人を倒したからとは言え、完全に安心は出来ないのです。彼等の強過ぎる魔力はこの地だけで無く、他の地にまで及び、その魔力を根付かせました。中でも魔人が長く住んでいたこの大陸は、その影響で魔物が多く生まれるようになってしまったのです」
魔物は魔力が集結し、その中に意識が生まれると魔物となる。
つまり、魔人の強過ぎる魔力がこの大陸に未だに残っている為、魔物が生まれ続けるという事だ。
『開拓者』がエーテリアの灯を作ったのは、そういった強く魔力が集結するのを防ぐ為だったのかもしれない、とアミナは思考する。
「それでは、後の情報はこの人達に聞くとしましょう。構成員だからこそ知っている事もあるかもしれませんし」
アミナは近づいて魔人会の構成員の仮面を取る。
するとまだ気絶しているようで明らかに顔がこちらに戻ってきていない。
「うーむ……困りましたね。早く起きないかな……」
まだ気絶している構成員の男の顔を往復ビンタする。
ベシベシと殴る音をカイドウは悶絶しながら聞き、その2人の異常とまで言える謎の状況にカルムは困惑しながらその音を聞いていた。
するとアミナが3番目に殴った男の1人が意識を取り戻したかのように目を動かした。
想定していなかった事に「あ、起きた」とアミナは静かに驚いた。
「さぁ、貴方の知っている事を洗いざらい吐いて頂きますよ」
アミナは短剣を突きつけて話す事を強要した。
しかしどうだろうか。
構成員の男はニヘニヘと笑うだけだった。
アミナが「貴方達の目的は?」と訊いても「何故こんな事を?」と訊いてもただ笑うだけ。
最初は何とも思っていなかったその笑顔に、次第に違和感と危機感をアミナは感じ取った。
そしてようやく言葉を一言、「私は尽くす」と呟いた。
意味の分からない言葉にアミナは「ん?」と声を漏らした。
「尽くす尽くす尽くす尽くす尽くす尽くす尽くぅぅぅすぅぅぅ!!!」
狂ったような笑顔をして奇声を上げている男を不審に思ったカイドウが「アミナさん離れて!」と叫んだ。
カイドウのその指示を聞き取ったフィーがアミナを咥えて後方に跳んだ。
すると男の1人の口の中が光り輝き、その後耳を突き刺すような爆音が鳴り響いた。
凄まじい衝撃の威力で地面が抉れ、そこには血溜まりと焼け焦げた血の匂いだけが残っていた。
仲間だったであろう者諸共吹き飛んでおり、情報を聞き出す云々の話ではなくなった。
目の前にいた男が自爆したと理解するのに、そう時間はかからなかった。
アミナは目の前で起きた不可解な出来事に「へ……?」としか言えなくなっていた。
そんな彼女の体をカイドウは起こす。
「これが彼等と出会ったら即戦闘の理由だよ。意味不明な事に巻き込んで人を傷つける。だから傷つけられる前に殺すんだ」
カイドウからそんな物騒な言葉が出てくるとは思わなかった。
アミナは頭を切りかえてその場からもう少し離れる。
「国が違えば文化も全然違うとは良く言いますけど……まだここはレリック王国の領土ですよね。何故こんなにも他国の者が……」
「スターターはレリック王国の中でもかなり国境線に近いんだ。だから高々数十キロの移動と甘く見てはダメなんだ」
カイドウが御者台に乗って馬を旋回させて道に戻った。
「さぁ行こう。まだまだ道は長いよ」
心優しいカイドウの冷たい態度や、出会って早々斬り捨てたカルムの行動。
アミナは自身がまだまだこの大陸の知識が乏しい事を思い知らされつつ馬車に乗り込み、次の目的地であるバザールへと向かったのだった
最後までお読み頂きありがとうございます!
なんとここで頭のおかしい犯罪者集団と交戦!
対して強くは無かったものの、その魔人への執着は狂気の沙汰。
さて次回はそろそろ街へと到着します!
それでは次回をお楽しみに!!




