第二章 41話『『元』究極メイド、今度は刺客を問い詰める』
よろしければブックマークや感想の方よろしくお願いします〜!
今回少し長くなっております!
なんという事でしょう。
あの狭いとまでは言わずとも、複数人で入るには少々手狭だったアミナの家の1階の右側部分が見事に吹き飛ばされ、開放的な一室に早変わり。
朝型やお昼頃には眩しい日差しが意気揚々と差し込み、涼しい風も気持ちよく入ってきます。
そして何より注目すべきポイントはここが人のよく来るお店だという事です。
地面に散乱した素材達、壊れた家具などがダメージ系がお好きな方には大好評間違いなしでしょう。
そんな劇的変化を遂げた物件の中で、その家主であるアミナはリフォームを担当した刺客を正座させていた。
「――で、どういう事か説明して頂けますか」
いつにない怒りの表情だ。
借金を背負わされた元凶であるメイを問い詰めた時よりも更に怒っている、そんな様子だ。
そしてメイの事を「我が主」と呼んだ刺客の少女に問いかけた。
「あ、改めまして……名をカルムと申します。ラウ・シェンメイ様の付き人をさせてもらっている者です。先程の無礼をここに謝罪致します、アミナ様」
深々と頭を下げてカルムは謝罪した。
その頭を掌で上下に揺さぶりながらメイが言う。
「ったく、私の睡眠の邪魔しやがって。ちゃんと反省しろよ。あと、ここでは私はメイで通ってんだ。シェンはつけるな」
「うぅ……面目次第もございません」
カルムの酷く落ち込んだ様子にアミナの中の怒る気がほんの少しだけ失せた。
メイへの忠誠はきっと本物なのだろう。
「ま、まぁとにかく家の事はまだいいです。……それで、貴女はどうしてこの家を襲ったのですか?」
「はい、メイ様がお仕事でスターターに旅立たれたのは知っていましたが、そこから消息が不明となって早一ヶ月。するとスターターでメイ様そっくりの御方がアミナ雑貨店という雑貨屋で労働なさっているといった情報が入ってまいりました。我が主に限って無理矢理働かされているという事は無いだろうとは思ったのですが……その店が実在すると確認するや否や、我を忘れて主を奪還する事だけが脳を支配していました」
そうか、我を忘れて本能のまま戦ってたからあんまり喋らなかったのか。
でも本能だけで戦ってあの戦闘能力って、意識があったら一体どれだけ強いんだろうか。
「なるほど、貴女がこの街に来た経緯は理解しました。……それで戦闘中ずぅっと気になっていたのですが、その赤い刃を持つ剣はなんですか?」
アミナはカルムの隣においてある片刃の剣を指差した。
するとメイが「剣っつーか、刀だな」と補足の説明をした。
それに続いてカルムが鞘から刃を見せながら説明を始めた。
「こちらは『赤刀・ダムネス』というそうです。ライデンと呼ばれる名工が生み出した、この世にたった十二振りの名刀でございます」
そう言われてアミナは戦闘中に感じた事を思い出した。
彼女の持っている刀がエルミナの持っている黒刀・ニヴルにどこか似ているという事を。
十二本ある内の二本を目の当たりにする事になろうとは。
今度会ったらエルミナに自慢しよう、アミナはそう思った。
「何やら特殊な効力があるらしく、物質の本質を斬り裂く事が出来るそうです」
「物質の本質……?」
彼女の言っている言葉があまり理解できなかったアミナは首を傾げて言葉を繰り返す。
うーむ、物質の本質ってなんだ?
本質の定義も分からないし、どうなっているんだろうか。
「私もあまり実感した事は無いのですが、道具に例えてみましょう。例えばアミナ様がトンカチを持っていたとします。そして、それを私がこの刀で斬りました。するとそのトンカチは不思議な事に、トンカチとしての役割、すなわち打ち付けたり叩く等の行為が全く果たせなくなるのです」
アミナはその説明に「スゥーーーッ」と息を吸った。
うん、よく分からん。
「まぁとにかくエルミナさんと同じ位列の武器という事ですね」
「エルミナ様……という人は存じ上げませんが、同じ桃源十二刃の一振りを持っているのだとしたら、そういう事になりますね」
桃源十二刃?とアミナは聞いた事の無い言葉に首を傾けそうになったが、ライデンという武器職人が作った十二本の武器の総称なのだとすぐに理解した。
「それでは本題に戻ろうかと思うのですが、何故貴女はこの街へ?メイさんの奪還だけが目的なのですか?」
アミナが改めて目的を聞こうとすると、カルムは何かを思い出したかのようにメイの方へ向いて懐から紙を出した。
紙が貴重なこの大陸で簡単に懐から紙を出すという行為を見ただけで、アミナはただならぬ要件だという事を察した。
「メイ様。実はコルネロ帝国から文を預かってきております」
そう言う彼女の手には確かに手紙が握られていた。
それを見たメイは「ぐっ」と何か腹部に攻撃を受けたかのような、苦虫を噛み潰したような、そんな反応をした。
「……お前が来たって事はやっぱりそうなのか……」
恐る恐る手紙を受け取るメイ。
何故メイが手紙を受け取るのが嫌なのか、アミナは訊いた。
するとメイの代わりにカルムが答えてくれた。
「コルネロ帝国とは、ここレリック王国から東に450キロの所にある大帝国の事でございます。メイ様はこの国に来るまではそこで王族専門の殺し屋をなさっていました。勿論私も同行していたのですが……仕事だから、と私を置いてこの地に行ってしまわれました。なので置いていかれた私は勿論コルネロ帝国に残っていた訳です。そしてメイ様の情報が入るや否や、皇帝陛下の側近の方が私にメイ様宛の文をお渡しになりました。なので仕事的な目的はこちらになりますね」
カルムは淡々と答えた。
そして手紙を読んでいるメイはドンドンと嫌な顔をしていっている。
あれほどクールでマイペースでニヒルな笑顔が似合う女性が、今は80代の老婆に見える。
「なんて書いてあったんですか?」
アミナはぴょこっと背伸びをしてメイの読んでいる手紙に目を通した。
その後、書いてあった事をそのまま読み上げる。
「『ラウ・シェンメイよ、やはり生きていたか。貴様の様なしぶといドブネズミが簡単に死ぬ訳もなかろうか』……ってなんですかこれ!ほとんど悪口じゃないですか!そりゃメイさんも80歳の老婆みたいな顔しますよ!」
「いや、そこじゃねぇ。もっと後半だ」
少しだけ若返り、70代くらいの顔になったメイが言う。
後半もどうせ悪口なのだろうと考えていたアミナは読む気が失せていたが、仕方無く目を向ける。
「えーっと『我らが帝国で少々問題が発生した。仕方無く貴様の力を借りてやる。カルムからこの文を受け取り次第出立せよ。 コルネロ帝国大臣 ネブロ・コルネディア』……これの何がそんなに嫌なんですか?」
アミナは手紙全体を見るが、特に嫌がるところは無いように思えた。
確かに偉そうなのは腹立たしいが、それを気にするメイでは無いだろう。
しかし今の彼女は少し老けて75歳の顔だ、何も気にしていない訳でも無かろう。
するとメイが理解していないアミナの為に元の顔に戻って説明した。
「その手紙実はな、宛先に到着すると差出人がそれを感知できるようになってるんだ」
なんだそのとんでも設定の手紙は。
でもそれを出したのは大帝国とまでよばれる国の大臣だ。
それくらいの魔法は使えるのだろうか……。
「じゃあ、受け取ったら行くしか無いって事なんですか……?」
メイはため息をついて「まぁ、そういうこった」と心底残念そうに落ち込んだ。
すると次第にプルプル震えてきた。
その時アミナは思った、これを届けたカルムにメイの怒りの矛先が向かうのではないか、と。
咄嗟にカルムの方を見る。
だが彼女は手紙を届けた事をなんとも思っていない様子だった。
「メ、メイさん……カルムさんも悪気があった訳では……」
アミナがそう言いかけると、メイは立ち上がってカルムの前に立った。
地べたに正座して行儀よくしているカルムはメイを見上げる。
やばい!メイさん、多分キレてる!
メイの手がカルムへと伸びる。
のっそりと、そしてゆっくりとカルムへと近づく。
早まっちゃダメだぁぁ!!
腕を伸ばしているメイに向かってアミナは止めに入ろうとする。
しかし、メイはカルムの手を掴んで「そんじゃあ行くか」と立ち上がらせただけだった。
飛び込んで空振ったアミナは家の床に顔を打ち付ける。
「あ?何やってんだお前」
「な、なんでもありません……くぅぅぅ……」
早とちりと勘違いで恥ずかしくなったアミナはしばらくうつ伏せのままになった。
しかし紅潮する耳だけは隠す事は出来なかった。
「ま、そういう事だからよ。行くぞカルム、アミナ」
「はい、どこまでも」
「うぅ……はい。……って、なんで私も行かなきゃならないんですか!!つい癖で返事をしてしまったじゃないですか!」
カルムは従順に返事を返したが、アミナはメイドだった時の癖でつい反射的に返事を返してしまった。
この事から分かるように、アミナは行く気が全く無かった。
「必要とされてるのはメイさんじゃないですか。私が行く理由は無いです」
「そう硬ぇ事言うなって。ただでさえ私以外敬語のヤツに囲まれてるってのに、なぁ頼むぜ、あそこにはここじゃ手に入らねぇ素材やらなんやらもあるんだぜ?」
珍しくメイに懇願され少し戸惑うアミナは「しかし……」と呟く。
そこにカルムが口を挟んだ。
「私からもお願い申し上げます、アミナ様。ネブロ大臣は私にこう仰られていました。『あのラウ・シェンメイを無理に労働させるとはその店の主はとてつもない強者の可能性がある。その者も連れてまいれ』と」
おいおい嘘でしょ。
まさかの帝国の大臣から直々に連れて来いって言われてたのか。
い、いやだなぁ……。
でも多分、断ったら酷い事されるんじゃなかろうか……。
「……はぁ、分かりましたよ」
アミナは呟く。
強く言われると断れない彼女の性格はまだまだ直りそうにない。
「ここ最近お店はずっと開けっぱなしだったので、休みも兼ねた旅行という面目でついて行きますよ」
「よっしゃ、やったぜ。ナイスアシストだカルム」
根負けさせたカルムの言葉をメイは褒めた。
そして「では早速」とカルムは店の壊れた所から外に出、「馬車の用意をして参ります」と言ってどこかに行ってしまった。
「えっ?馬車で来てたら用意なんて必要でしょうか……?まさか、450キロを歩きで来てた……?」
「まぁ、あいつはストイックなところがあっからな。これも鍛錬だつってやってそうではあるな」
この2人はどこまで……と呆れの言葉すら出なかったアミナはふと思い出した。
「そうだ、折角ですからカイドウさんも誘いましょう。収穫祭では大変お世話になりましたし。……フィーちゃん!いますか?」
アミナは2階に向けて大声で言った。
すると部屋の奥の階段が少し揺れる音がし、カウンターの後ろの扉が開いた。
今日にドアノブに体重をかけて回転させ、扉を開く。
「にゃう?」
呼ばれたフィーは不思議そうに首を傾げてカウンターの上に立つ。
すると破壊された家の残骸を見て「に゙ゃあ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!??」と叫び声を上げた。
そしてアミナにいくつもの言葉を投げかけているようだったが、アミナにその内容の全ては伝わらず、「えっと……この件はとりあえず後で説明しますね」と頬をかいた。
「それよりも、フィーちゃんにお願いがあります」
「にゃ?」
「これから私はメイさんの都合でコルネロ帝国に向かいます。ですが私はあまり乗り気ではありません。ですので、フィーちゃんやカイドウさんも連れて旅行として行こうかと思います。ですのでカイドウさんを連れて来て欲しいのです。彼には収穫祭の時にお世話になりましたし、少しは恩返しをしなければなりません。……出来そうですか?」
アミナの問いかけにしばらく黙って家の壊れた部分から外に出たフィーは、お安い御用だ、と言わんばかりの表情をした。
それを察したアミナは紙にカイドウへの手紙を書き、それをフィーに持たせた。
「それではお願いしますね」
フィーはアミナの言葉に頷くと、とてつもない速度で走り出し、すぐに見えなくなった。
この分なら一時間もあれば帰ってきそうだ。
「……さて、じゃあ私は壊れた家の修復でもしますかね」
メイに手伝うよう促し、家に残ったアミナとメイは家の修復を始めた。
重い瓦礫をメイに持たせ、家と瓦礫を同時に触れてくっつけていく。
幸い、そこそこの期間住んでいたので、詳細な記憶があった。
その為正確に修復する事が出来た。
そして小一時間、家の細かな修復を終えたところで、直したばかりの家の扉が叩かれた。
アミナがその扉を開けると、そこには案の定カイドウがいた。
「手紙読ませてもらったよ。折角アミナさんが誘ってくれたんだ、同行させてもらう事にするよ」
と来たからには一緒に来てくれるんだろうと予測はできていたが、いい返事を聞けた。
アミナは小さくなってカイドウの頭に乗っていたフィーに「ありがとうございます」とお礼を言った。
フィーが「にゃー」と返事をしたと思うと、外から馬の鳴き声が聞こえてきた。
「来たか」とメイは呟き、一同は外に出た。
すると、家の前にはそこそこ大きな馬車が待機しており、御者台にはカルムが座っていた。
「皆様お待たせ致しました。どうぞお乗り下さい、これよりコルネロ帝国に向かいます」
カルムのその言葉から、メイが最初に乗り、その次がカイドウとフィー、そして最後にアミナが乗り込んだ。
「皆様乗られましたね。それでは出発致します」
そう宣言し、カルムは馬の手綱をペチンと鳴らして馬車を発進させた。
街の風景がゆっくりと流れていく中、アミナはこれから向かうコルネロ帝国へと思いを馳せる。
一体どんな国なのだろう、皆が楽しめる旅になればいいな、と。
そうして一同は、スターターの街を出発し、コルネロ帝国までの道を進み始めたのだった。
最後までお読み頂きありがとうございます!
なんとアミナは突然メイの都合で他の国へ行く事に!
でも折角ならってだけで魔物の大陸を旅行気分で移動するのはやっぱり只者じゃないですね……
次回は帝国までの道のりのお話になると思います!
それでは次回をお楽しみに!!




