第二章 40話『『元』究極メイド、刺客に襲われる』
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呪いの遺品の件から早数週間。
アミナは日々順調に依頼を熟しながら街の修復を手伝っていた。
そして収穫祭の事件から一ヶ月と少し経過し、遂にスターターの街は完全に元の姿を取り戻した。
日々来る冒険者や旅人、商人の数も以前と同様まで回復した。
犯罪を防止する為の新たな警備体制の元、街の活気は以前にも増してきていた。
だが、だからと言ってアミナの借金が減ったり無くなったりする訳では無く、少しずつ返済をしていき、今は元々あった借金額の金貨30000枚の内、お店経営に支障が出ない程度に捻出して金貨100枚程を返済した。
残りの借金返済額は金貨29900枚――まだまだ途方も無い額だ。
しかし希望が全く無い訳では無い。
アミナがこの大陸に来た当時よりも店の評判は良くなっており、依頼の量も増えてきた。
なんと遂には、他の街から噂を聞きつけて依頼に来る人もいたのだ。
ここまで来れば借金返済は時間の問題、そう考えながら、アミナは1人で朝早くから開店準備を進めていた。
「全く、メイさんはまだ寝てるんですか。いい加減早起きを覚えてもらいたいものです」
アミナは愚痴をこぼしながらも、開店の準備を終えた。
最近になってアミナは、メイに武術の手解きをしてもらう機会が増えた。
この大陸で更に生き抜くには、もっと強くならなければならない、そんな考えがアミナの中に浮かび上がり始め、教えるメイ自身も、相手が強い方がおもしれぇ、と言って協力的になった。
「まぁ、昨晩も手伝ってくれましたし、寝かせてあげましょう。お昼くらいまでは私1人でもなんとかなるでしょうし」
そう呟いてアミナは準備が終わった店内を見回す。
きっちり整理整頓された素材の棚。
お客さんにサンプルとして見せる為に事前に作った見本。
ホコリ一つ無い床に、汚れ一つ無い綺麗な窓ガラス。
そして外は明るくなり始め、雲一つ無い晴天。
あぁ――なんと清々しい日だろうか、こんな日は私でも歌を歌いたくなる。
アミナは小さく口を開けて息を吸い、口を開けてその美声を披露しようとした。
「どこまでも続く空へ――」
歌い出しを軽快に口ずさんだ瞬間だった。
突然窓ガラスが次々と音立てて割れ、アミナ雑貨店の1階の壁が砕かれ、木っ端微塵となって室内に飛び込んでくる。
「えぇぇぇぇぇ!!???」
驚きよりも疑問が勝ち、歌詞の最後の母音がそのまま伸びて叫び声となる。
そして瓦礫の煙の中から、一筋の赤い閃光がアミナの目に映った。
それは光では無く、赤い刀身による刃だった。
土煙を斬り裂いて振るわれる剣をアミナはしゃがむ事で回避した。
すると刃が届いていないのにも関わらず、彼女の後ろにある素材や本などを入れた棚が斬り裂けた。
しかも一片の木くずも出さずに、綺麗に刃が通った部分だけが斬れていた。
それを見たアミナは、敵が只者では無いのを察すると目付きを変えた。
そして机の上に置いてある短剣を取りだして獲物を狩る獣の如き瞳をした。
振るった剣にアミナの手応えが無かった事を不審に思った刺客は、彼女の安否を確認すべく不注意にもカウンターの中を覗いた。
すると顔を除き入れた瞬間、頭を鷲掴みにされ、そのまま前方へと叩きつけられた。
店の扉を破壊しながら、地面に頭を擦り付けられていく。
力ずくでその手を剥がそうとするが、アミナの手は剥がれるどころかドンドン力を増していった。
「人ン家に何してくれてるんですか……!!」
低く凄味のある声で言い、アミナは刺客を手から離して投げ飛ばした。
刺客はアミナの家を出てからすぐのところにある家の壁に激突しそうになった。
しかし体を翻して受身を取り、壁に着地した。
そして地面に降りた刺客は赤い剣を両手で握り直した。
まともに見ていなかった刺客の姿を、アミナはこの時初めて詳細に認識した。
目の前にいたのは、なんとアミナと同い年にしか見えない少女だった。
髪の毛は緑色で少し短め、ワイシャツに似た服に緑色のベストを着ており、アミナと同じくカチューシャをつけているが、そのカチューシャにはアミナの物とは違い、リボンが着いていた。
そして腰には見た事が無い形状の鞘がある。
誰なんだこの人……。
赤い刃の剣も、この人にも見覚えは無い……。
やはりどこからかの刺客と見て間違いは無いのだろうけど……
アミナは言葉に詰まった。
そして深く深く思考を巡らせる。
本っっっ当に狙われる覚えが無いんだよなぁ……
何で私狙われてるの?
おかしくない?
何か悪い事したかな……?
お店を開けた初日にやって来た強面の男達が今更復讐に来た?
いやいや、目の前にいるのは明らかに女性だ。
あぁいった人種は絶対に女性に頼れない呪いにかかってるから多分違うな……だったら何故……
急いで思考を巡らせていると、刺客の少女は片刃の剣の刃を空に向けるようにして構え、アミナを改めて見すえてきた。
攻撃が来る、そう思った瞬間にアミナも戦闘態勢を取り直す。
そして案の定、次の一撃が繰り出された。
一蹴りでアミナに急接近し、刃をくるりと回転させて振り下ろす。
しかしアミナはそれを短剣で防ぎつつ、無防備になった刺客の腹部に強烈な蹴りを入れた。
ドゴッという鈍い音がし、刺客は飛び退いた。
次にアミナは、刺客の持っている赤い剣に注目した。
刀身が赤い……。
それにあの剣の形状……あそこだけ見るとエルミナさんの黒刀・ニヴルによく似ている気がする。
それに触れた感覚も妙だ。
完全に防いだハズなのに短剣の内側にダメージがきている。
長期戦は不利になりそうだな……。
そう判断したアミナは、今度は自身から攻めの体勢をとった。
まず地面に落ちている自宅の瓦礫を大量に蹴り上げ、刺客へと放った。
それと同時に家の瓦礫の一部をスキルで破壊し、粉塵として目眩しに使う。
刺客の視界を塞ぐ程の瓦礫と粉塵を、刺客は一つ一つを斬って激突を回避した。
そして、全てをたたき落とした後、正面にいるハズのアミナの方へと顔をやる。
しかしアミナはそこにはいなかった。
急いで周囲を見回すが、彼女の姿は見受けられない。
一言も発さない刺客の顔が焦り始める。
すると突然、上からのしかかるような衝撃を受け、刺客は地面へと倒れ込んだ。
彼女の上に乗ったのは、やはりアミナだった。
そして首元に短剣を突きつけて堂々と作戦名を叫んだ。
「周りにある物はなんでも生かせ、と師匠から言われているんですよ。名付けて『刺客の死角大作戦!』なんつって」
アミナの絶望的過ぎるネーミングセンスは相変わらずだが、彼女自身も強くなっているという実感が湧いてきていた。
今だって突然の強襲に対応し、刺客を追い詰めた。
今ならメイさんにも勝てるんじゃなかろうか、と冗談半分で考えていた。
そんなおふざけ的な考えを浮かべていると、突然自分の足元にいる刺客の少女がプルプルと震え出した。
何事かと思ったアミナは再び警戒し、首元に突きつけた短剣を握る力を一層強くする。
すると、目の前の少女から発揮されているとは到底思えない力がアミナに働く。
そして上に乗っているアミナを力だけで跳ね飛ばすと、一定の距離を保って剣を構え直した。
その少女から発せられる殺気と覇気から、次の一撃だけは今までとは桁違いという事だけを察して身構えた。
「赤刀・ダムネス……」
その時初めて少女は言葉を発した。
なんだ、喋れない訳じゃ無いのか、とアミナは静かに驚いた。
すると少女は刀を一度鞘に仕舞い、居合の構えをとった。
「『断魂流居合――』」
少女がそう呟いた瞬間、とてつもない気迫が周囲一帯を包み込んだ。
そして、来る……!と確信した時、刺客はアミナの眼前まで迫り、アミナも迎え撃とうと短剣を繰り出す。
そんな緊迫した空気の中、一つの間の抜けた声が2人の耳に届いた。
「ふぁぁ……朝っぱらからうるせぇぞ、アミナ」
その声が響いた瞬間、2人は同時に刃を止めた。
2人の剣の刃は、お互いの刃同士でぶつかり合っていた。
しかしほんの少しだけ、アミナの方が押しているようだった。
「メイさん……!邪魔しないでください!このどこの馬の骨とも分からないヤツはこの私が――って、あれ?」
アミナは正面に向き直って不思議そうに呟いた。
何故なら、その目の前にいる少女がメイを見てから全く動こうとしなかったからだ。
「お、カルムじゃねぇか。よく来たな」
メイは遠くから親戚が来たようなノリで言った。
しかし、カルムと呼ばれた少女はそんなノリでは無く、もっと重苦しく、そして嬉しそうな顔をして涙を流し、メイに飛びついた。
「シェンメイ様ぁぁぁ!!!我が主、探しましたよぉぉぉ!!!」
アミナは一瞬思考が停止した後、朝早くのスターターの街に「はぁぁぁ!????」という大きな叫び声を轟かせてしまった。
最後までお読み頂きありがとうございます!
なんとメイを主と呼ぶ少女が登場!
今回は長くなるのでここで切ります!
次回は新たなアミナのドタバタ劇の序章の部分となります!
それでは次回をお楽しみに!!




