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第二章 39話『『元』究極メイド、全てを露にする』

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「この屋敷が……魔法陣?」


不思議そうにライラが呟く。


「はい。先程お見せした通り、この部屋に来るまでの通路は、明かりがついている通路を全て重ねると魔法陣の形をしています。しかも歩いて計測してみた結果、屋敷の外周と地下通路の外周の距離が一致していました。恐らく、この屋敷を建てる前から、ライラさんのお祖父様はこの構造を考えていたのでしょう」


「し、しかし……どうしてそんな事を……?」


ライラは顎に手を当てて考えるようにして問いを発する。

するとアミナが「お祖父様に、ご病気か何かはありませんでしたか?」と問いかけた。

しばらく「病気……」と呟いて、ライラは考え込む。

そして最終的に目を見開いてハッとした。


「ありました……!祖父から直接聞いた訳では無いのですが、子供の頃母に言われました。祖父は昔、冒険者の時に受けた攻撃のせいで心臓付近に魔力が溜まってしまう奇病を発症したと……。いつそれが破裂しても不思議では無い事もあり、心臓がいつ止まってもおかしく無いとも言われてました」


「魔力溜まり……『魔法腫瘍』だな」


腕を組んで立っていたメイが口を挟んだ。

病気に対する見識が無い一同は、疑問に思い、アミナが「魔法腫瘍?」と問いかけた。


「相当高位の魔法を受けたか行使しようとしたみてぇだな。圧倒的に強い魔力から体を守ろうとして、その魔力を自分の魔力で覆っちまうと発病する病だ。どっちで発病したかは知らねぇが……ま、身の丈に合わねぇ事をしたってのは確かだな」


要するに、体が耐えきれない魔力の塊が体の中に出来てしまっている。

しかし、体が耐えきれないのだからそれを覆っている自身の魔力がいつ限界を迎えるか分からない。

だからそれが心臓付近にあるライラの祖父はいつ死んでもおかしく無い、と言った感じだ。


「恐らくその病気は屋敷を建てる前、既に結婚して子供が生まれ、その子供にも子供がいる。そんな状況の中発覚したのでしょう」


ライラに確認するようにアミナは言う。

祖父がいつ頃屋敷を建てたのか、それを思い出しながらアミナの話に耳を傾ける。


「祖父が亡くなったのは4年前、享年は96歳です。そしてこの屋敷を建てたのが40年前になります。その時私はまだ子供でしたが、祖父が屋敷を建てたから皆でそこに住もうと両親から言われたのをよく覚えています」


時系列を思い出しながらライラは言った。

彼女の発言で、自身の言葉に更なる確信を抱いたアミナは話を続ける。


「屋敷を建てる前のライラさんのお祖父様はそんな中、とある事を考えたのだと思います。この先、生きているか死んでいるか分からない未来に、自身にまつわる過去の記憶を残そう……と」


「過去の……記憶?」


ジグが呟く。

この件に関して言えば彼は蚊帳の外になってしまうが、彼自身それを悪く思っている様子は無さそうだ。


「簡単に言ってしまえば、思い出ですね。ライラさんのお祖父様は凄腕の魔法使いだと私は予測しました」


アミナがそう言うと、ライラは「はい、合っています」と答えを言ってくれた。


「この屋敷を建てて日々起こる出来事を魔法で記録し、それをこの部屋の中央にある台座に刻み込んだ。しかし、当時は恐らく映像を映し出せる魔水晶などあまり普及していなかったのでしょう。記録したは良いものの、記録した思い出を取り出す術がありませんでした。だから、ライラさんのお祖父様は事前に屋敷そのものを魔法陣と見立てる事で、膨大な量の記録を一気に取り出せる魔法陣を作り出したのです。この部屋に来るまでの地下通路は、それを発動する為の魔法陣の模様の役割を果たしていたのです」


「じゃ、じゃあ……通路にあった魔法の火は……」


「はい。魔法陣の発動に必要な魔力の道筋を担っています。何年、何十年、何百年と保てるように」


その言葉に3人は絶句した。

なんという凄まじい計画だろう、と。

一体どれだけの力と発想力があれば実現が出来るのだろうか、と。

そしてアミナは台座の近くに寄る。


「先程私がはめ込んだ銀の懐中時計。これこそが、ライラさんのお祖父様が直接記憶を刻み込んだ魔道具だったのです」


アミナは台座の穴の中の懐中時計を押し込むと、懐中時計時計は手前に出てきた。

すると画像達はたちまち消え、その場にいる全員に懐中時計の錆びた部分を見せた。


「銀は日常生活では錆びる事はまず無いのですが、この時計のリューズからベゼルにかけてあるこの錆。逐一様々な記憶を魔力として注いだ事で、ライラさんのお祖父様の膨大な魔力のエネルギーが、懐中時計の銀を酸化させたのだと思います」


アミナが予測した仮説の説明はこれで全部だろう。

それを聞いたジグは

鬼気迫る表情でアミナに問いを投げた。


「……なら、彼女の両親や私の両親が突然死んでしまった事はどう説明がつくんですか?」


「それに関して言えば……申し訳ありません。今の私にはそれを確かめる手段や知識を持っていません。都合良く解釈してしまうのなら、偶然としか言いようがありません。しかしこれだけは確実です。この懐中時計に、呪いはありません」


そう確固たる意思で言うアミナの言葉を聞くと、ライラは震えながら「では……呪いは……無いんですね」と呟いた。

それに対してアミナは「はい、ありません」と断言した。

その言葉を聞くとライラは、安堵したように涙を流して膝をついた。

何故彼女が唐突に涙を流したのか、それは彼女自身が語ってくれた。


「良かった……ネレがこの時計に触れてしまった時はどうなる事かと……!」


そういう事だったのか、とアミナは納得した。

ずっと以前からこの時計の存在が明らかにはなっていたが、別段誰も触れていなかったし、この時計が原因でライラとジグの両親が死んだとするには確信が持てる程結果が出ていなかった。

しかし、2人の両親が亡くなった事で、時計のせいで死んだのだと確信した。

その矢先にネレが時計に触れ、今回それを解決する為にアミナの店を尋ねた、という訳だ。

誰も見た覚えのない、というのは少しでもアミナの興味を引くための嘘だったのかもしれない。


しかし実際には呪いなど無く、愛する娘すら失いそうになっていた恐怖から解き放たれたのだ。

それは泣きたくもなるだろう。

それを見たネレも、自身が死ぬかもしれないという呪縛から解き放たれ、母と同じく膝をついて涙した。

その2人を優しく包み込むかのように、ジグは2人を抱きしめた。


「良かったな……!ライラ!ネレ!」


「えぇ……!本当に……!」


涙しているライラとネレを抱きしめているジグの頬にも涙が伝っていた。

するとネレが急に顔を上げ、アミナの方を向きながら泣き顔から笑顔に変えた。


「アミナさん……ありがとうございました……!」


鼻の赤くなった笑顔を見てアミナは優しく微笑み、「どういたしまして」と返した。



―――



「今回のご依頼、お代は結構です」


翌朝になってスターターへ帰る為に馬車の前に来たアミナは言った。


「そんな!折角ですのでお支払いしますよ!」


ジグが本気で引き止める。

しかしアミナは「今回、壊れた遺品の修理はしていません。それなのに物作り屋がお代を頂く訳にはまいりません」と返した。

そして続いて「それよりも」と言った。


「ライラさん、ネレさん、ジグさん。お祖父様の思い出を大切にしてあげてくださいね」


アミナは笑顔で語りかける。

自身の娘を間に挟んだ夫婦は、娘やお互いと顔を見合せ、最終的にはネレが笑顔で返事をした。


「はい!アミナさん、道中どうかお気をつけて!」


自身より小さなアミナに向かってネレは言い、アミナも「ありがとうございます」と握手を交わして答えた。

するとネレが何かを思い出したかのように屋敷の方を振り返って言った。


「そういえば……メイさんは中で何をしてるのでしょうか……?」


「すみません、すぐ出てくるとは思うのですが……」


ネレの疑問にアミナは彼女の勝手な行動を謝罪し、豪邸の扉の方を見た。

本当に彼女は何をしているんだろう、と心の中で呟いた。



アミナ達が先に外に出て馬車へ向かっている時、メイは机の上に置かれた懐中時計を手に取って、無言でそれを眺めていた。

そして文字盤に刻まれた文字を声に出して読み上げる。


「"みらいのたからものたちへ"、ねぇ……」


メイはそう呟いて懐中時計を机の上に置き、アミナが待っている馬車に向かう為、その豪邸の玄関へと向かった。

その銀の懐中時計は、日の光をひび割れた風防と小綺麗な銀のベゼルで反射し、淡く、そして美しく光り輝いていた。


―――


「悪い悪い、ちょっと便所にな」


遅れて屋敷から出てきたメイは、アミナに詫びながら言った。


「もう、貴女だって女性なんですから。もっと慎みを持ってくださいよ。便所では無く、お手洗いです」


「はいはい、ウチの店長はうるせぇなぁ」


2人の掛け合い漫才のようなものを見て、ライラ達は笑った。

そして改めて2人にお礼を言った。


「アミナさん、メイさん。この度は本当にありがとうございました。この事は我ら一族、子々孫々に至るまで、決して忘れません」


ジグのその言葉を初めに、3人は深々と頭を下げた。

するとアミナは「先程も申し上げた通り、そのような事よりも、お祖父様の大切な記憶を忘れないであげてくださいね」と返した。

その言葉を聞いたメイは心の中で、どこまでも頑固なヤツだな、と呟いた。


「それじゃあ、出発しますよ」


御者のおじさんが声をかけた。

アミナとメイはその馬車に乗ってスターターへと帰る。

ライラ達は、馬車が見えなくなるまで手を振り、アミナも窓の外から手を振って返した。


アミナが見えなくなると、ネレは小さく呟いた。


「アミナさん……かっこよかったなぁ……」


それに同調するようにジグも呟く。


「あぁ、とても強い。昔の母さんそっくりだ」


「やめてよ、恥ずかしい」


2人は笑いあった。

すると突然、ネレが両親の方をくるりと向いた。

そして、一つの事を宣言した。


「私、将来アミナさんみたいな人と結婚するわ!」


急な告白にライラとジグは顔を見合せて唖然としたが、決して文句は言わなかった。

それどころかライラも「えぇ、あの人は素敵な方でしたもの」と言い、ジグは「やっぱりお前は父さんの子だな」とも言って、3人は笑い合いながら屋敷の中へと帰っていった。


―――


「人たらし」


メイが呟いた。

その不名誉な言葉にアミナは「えっ?」と聞き返した。

自身のスキルによって様々な五感が研ぎ澄まされているメイは、今のネレの宣言が聞こえてしまったのだ。

しかしそんな事をアミナは知らない。


「それより良かったのか?報酬受け取らなくて。借金減らねぇぞ。あんくらいの家なら借金の2割くらいは出せるんじゃねぇのか?」


メイは合理的な事を言った。

この大陸で死なない為にという目的から、借金を返済する為の商売へと変わったが、アミナの心情は変わっていなかった。


「私は守銭奴ではありたくないんです。……それに、家族との思い出は、大事にしないといけません」


すこし暗い雰囲気になったのを察したのか、メイはそれ以上、この事について言及しなかった。

淀んだ空気を払拭するようにアミナがパチンと手を叩くと、言葉を発した。


「さぁ、帰ったらまたお仕事です!メイさんにはもっとしっかり働いてもらいますよ!」


狭い馬車の中でアミナは立ち上がった。

そして笑顔をメイに向け、それに対してメイも笑顔で返す。


「フッ……期待しとけ」


そんな会話をしながら、2人はスターターへと帰るのであった。



最後までお読み頂きありがとうございます!


呪いの遺品のお話はこれにておしまい!

次なる依頼が彼女たちを待ち受ける……!!

それと、次の更新は夜だけになると思います……!!


それでは次回もお楽しみに!!

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