第二章 31話『『元』究極メイド、遺品修理を請け負う』
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「親類縁者の誰も見た事が無い……謎の遺品が見つかったのです」
店に入ってきた時と同様、神妙な面持ちでライラは言った。
しかしアミナは疑問に思い、ライラの言葉に質問を返した。
「えーっと……お祖父様の遺品は大量にあったんですよね?」
「はい、ざっと数百点ほど」
「なら知らない遺品の一つや二つあるのではないですか?」
出て当然の疑問を投げかけた。
するとライラは首を横に振って答えた。
「有り得ません。私は幼い頃から祖父の冒険者時代の話を何度も聞かされていました。その話には祖父の遺品が必要不可欠でしたので、祖父は毎回違う品を持ってきました。私はその話を聞くのが好きだったので話は全て覚えています。なんでしたら、今ここで全てをお話する事も可能です」
アミナは自信に満ち溢れたライラの目と言葉に、マジか……、と思い、後ろに立っている2人の顔を見た。
するとその言葉が事実であるように、2人は同時に頷いた。
恐らく夫であるジグや娘であるネレは、母親からその話を何度も聞いていたのだろう。
「しかしだからと言って見知らぬ物があっただけでそこまで重く考える必要は無いと思われますが……」
「……やはりそう思われますか。……ではもう1つ、その遺品が異質な理由をお話します」
まだ理由があったのか、とアミナは心して聞いた。
だが理由があるにこしたことはない。
なぜなら、アミナはまだ今しがた言われた事だけでは納得がいっていなかったからだ。
「その遺品も壊れている物の1つなのですが、それには……『呪い』がかかってるかもしれないのです」
突如として言われた言葉に、アミナは「の、呪い……?」と疑問の色を示す事しか出来なかった。
呪い――
その言葉に聞き覚えはあれど、いまいちピンとこない。
それがなんなのか、呪いとはそもそも。
アミナには分からない事だらけだった。
すると、1つの声がアミナとライラの会話に割り込んできた。
「……呪いっつーのは魔法とはまた違ったモンだ」
横に座って酷い姿勢で寝ていたメイが口を挟んだ。
ようやく目が覚めたのだろう。
彼女なら聞かないフリをすると思っていたが、そこだけは意外だった。
アミナはそう言った張本人に「では具体的には何が?」と説明を求めた。
するとメイは体を起こしてしっかりと椅子に座り、説明を始めた。
「まず魔法の源である魔力はその生物の核に宿る。いわば心臓だな。それが潰れれば生物は死に、魔法も使えなくなる。だから仮に、生きているが心臓が無ぇ奴がいれば、そいつは魔法が使えない」
「でも私は元々魔法なんて使えませんけど……」
「それはそういった教育を受けてねぇからか、冒険者じゃねぇから使い方を知らねぇだけだ。今言った通り、魔力ってのは全員持ってんだ。それを知ってるか知らねぇかの違いだな」
メイはそう言いながらアミナの方を見た。
そして追加の説明をする。
「冒険者は魔法使い職になる時基本の魔法は覚えられるし、自動的に使えるようになる。そっから自力で勉強して魔法を強くしていくんだ。だから魔法使いや僧侶なんかは他の職業よりも地道に研鑽しなきゃならねぇ」
その説明にアミナは「なるほど」と呟き、次の呪いの説明について促した。
「呪いはその物質の存在そのものに宿る。だから壊しても殺しても呪いが晴れる事は無ぇ。逆に壊したり殺したりする事で呪いが強くなるケースもある。しかも、こいつが厄介なのは生物だけじゃなく物体や事象にも宿る事だ。その遺品が本当に呪われてるんだとしたら、物質に宿った呪いって事で一応筋は通る」
メイの説明に一層顔を青くした3人に向かってメイは追い討ちするように「呪いが祓いてぇなら専門家に行った方がいいぜ。壊れてんなら尚更だ」と、更に危険度を知らせるような発言をした。
「ま、何にせよ実際に見ねぇとなんとも言えねぇわな」
そう言ってメイは再び目を閉じた。
今度はタオルを目の上に置いて本格的に寝に入るようだ。
そして眠るメイを見送ったライラはアミナの方を向き直った。
「……こちらの従業員さんも仰った通り、実際に見て頂いた方が何か分かるかもしれません。……請け負って頂けるかはその品を見て頂いてからで構いません。ですので一度、我が家に来ては貰えませんか?」
そう言う彼女と、彼女の後ろから向けられる視線を浴びせられ、アミナはしばらく腕を組んで考えた。
もはや内容は遺品修理の依頼では無くなっていたが、一応壊れている物もあるらしいから直すというのも依頼内容として入っている。
何より困っているならば見過ごせない。
……だが、呪いについての知識が無い私で力になれるのだろうか。
いや、それよりも今は不安に思っている心を救わなければならない。
「……分かりました。私でお力になれるかは分かりませんが、出来る限りの事はしてみせます。皆様のご自宅に案内して頂けますでしょうか」
アミナのその言葉を聞くと、3人は安堵した様子で顔を見合せた。
しかしその中にはまだ不安が残っているように見える。
それを取り除いてあげるのが、今回の目的となりそうだ。
「それではこれから向かおうと思うのですが……」
「はい、問題ありません。それよりも、こちらのメイも同行させたいのですが、よろしいですか?」
アミナはそう言って手をメイの方へ向けた。
急な呼び掛けに起き上がって「は?」と嫌そうに言った。
呪いへの知識は明らかにメイの方が多い。
それに今回はフィーも疲れて休んでいる為連れて行きたくは無い。
そうなると必然的に彼女が今回のお供になる。
アミナが無言で頷くと何かを察したのか、嫌そうな顔で「へーへー」と言って手に顎を置いた。
「構いません。それでは早速向かいましょう。コルネという宿屋に馬車を待たせていますのでそちらに乗って下さい」
ライラとジグとネレは入口の方へと歩いて行った。
アミナには準備してから来てくれとだけ言い、お辞儀をして店を出ていった。
店内に残った2人は、3人を見送った後会話を続けた。
「……どー思うよ。あの女が言ってる事、本当だと思うか?」
「私には魔法の知識も呪いの知識もありません。ですので何とも言えませんが……困っているのなら見過ごせません。メイさんも準備を整えたら宿屋へ向かいましょう」
アミナの決意に満ちた目を見ると、もう止めるのは不可能だと察し、メイは自室に戻って旅の準備を始めた。
アミナも自室に戻ると、疲れて眠っているフィーの頭を撫でて「行ってきますね」と小声で囁いた。
そして2人は店の外に出て宿屋コルネを目指して歩いた。
これから、元メイドと元殺し屋の異質経歴を持つ2人で行う、初めての出張お仕事が、息を潜めてただ始まりを待っていた。
最後までお読み頂きありがとうございます!
アミナとメイの2人で行く初めての出張!
その先で何が待っているのか……!!
それでは次回もお楽しみに!!




