第二章 27話『『元』究極メイド、収穫祭に参加する 終』
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アミナとローザは、ガーベラの作り出した仮想空間に囚われていたが、仮想空間内にいた収穫祭の主催者側の人間である、ラウ・シェンメイを倒した事で、元の世界に戻ってくる事が出来た。
無論、街の住人や雇われた冒険者達も、スターターに帰ってきたのだ。
「ここは……」
青い空、白い雲、半壊した街並みに、意識なく倒れている街の人々。
面影は無いが、そこは間違いなくスターターだった。
「リラ!ドイン!」
街に到着するやいなや、そう叫んでローザは走って行った。
リラは奥さん、ドインは息子の名前だろうか。
必死に叫んで中央広場から冒険者ギルドの方へと走って向かう。
それに対してアミナはしばらく周囲を見回していた。
「ここにいる人は皆気絶しているだけなんですよね……シェンメイさ――」
アミナがそう呟いて後ろを振り返る。
そこにはシェンメイがいるハズだからである。
しかし、振り向いた時にアミナの視界に入ったのは、長身の美人な女性などでは無く、ただ破壊された街並みだけだった。
「あれ……どこ行っちゃったんだろ……?」
本来なら捕まえておかなければならないけれど、狙われる事を了承してしまったし、何よりあの人のお陰で皆が街に戻れたのも事実だ。
またそのうち、ひょっこりと顔を出して私と戦おうとか言ってくるんだろうか。
その時は勝てるか分からないが……できる限り頑張ろう。
「おぉーーい、アミナさーーん!!」
聞き馴染みのある声だ。
先程通話して声を聞いたのになんだかとても久しぶりに聞いた気がする。
アミナは、自身の名を元気よく呼んでいる男の方を向いた。
「良かった!戻ってこれたんだね!」
「はい、カイドウさんもよくぞご無事で……って、傷だらけじゃないですか!」
カイドウの方を見たアミナは、彼の体中にある傷に目を見開いて驚いた。
しかし心配させまいとカイドウは笑顔を作って頭を掻いた。
「いやぁ、大した事は無いよ。見ての通り歩けはするからそこまでって感じかな」
「そこまで、じゃありませんよ!後でリヴァルハーブを家から持ってくるので待っていて下さいね」
アミナが心配してそう言うと、カイドウは体をビクッと反応させた。
そして自分の体を抱いてくねくねした。
「……はぅ!!ここで待てと!!犬のように命令され、何が起きても動く事を許されず!!最終的に僕はここに固定され……なふっ!!!」
いつもの調子に戻ったカイドウを見て、やっぱり回復薬使わなくてもいいかな、と思い始めたアミナなのであった。
そんなくだらないやり取りをしている内に、地面に倒れていた街の住人や冒険者の人々が意識を取り戻し、各々が独り言を言ったりして状況を整理しようとしていた。
しかし誰も仮想空間内の記憶がある様子が無く、どうやら仮想空間を破壊してしまった事で、雇われた冒険者だけでなく、仮想空間に入った一般人の記憶も無くなってしまったのかもしれない。
「皆さん、無事に意識を取り戻して良かったですね」
アミナは呟いた。
地面に寝転んでいるカイドウは「あぁ、本当にそうだね」と優しげな表情で言った。
「おっ、そういえば。今日の最優秀者がそろそろ来るんじゃないかな」
「最優秀者……?この戦いにおいてのですか?」
「うん。まぁでも『者』って言うより『にゃ』って感じかな」
ニコっと笑ってカイドウは言った。
すると、なんだかドコドコと大地を蹴る音が聞こえた気がした。
しかしそれは気の所為なんかでは無く、明らかに近づいてきていた。
アミナはその足音のする方角を、ほんの少しの期待と喜びを抱きながらゆっくりと振り向いた。
しかし完全に振り向き終える前に、後方から押し倒された。
その感触はモフモフのフワフワ。
ずっしりとくるが優しい乗り方。
そして何より、背中に感じるぷにぷにもちもちの感触。
期待が確信に変わり、振り返った。
するとまっさきに顔全体をベロベロ舐められた。
「フィーちゃん!!!!」
ここ一番の笑顔を最愛の相棒に向けて歓喜した。
それに返すようにフィーも「にゃおう!」と大きな声で鳴いた。
顔は大きな猫の魔物でいつも通りだが、声色は心から喜んでいるようだった。
「フィーちゃんが主催者の人達を倒してくれたのですか!?」
アミナのその問いに、フィーは首を大きく縦に振り、アミナの体に自身の顔を擦り付けた。
まるで褒めて欲しそうにゴロゴロと喉を鳴らしている。
そんな彼の体を撫でていると、アミナはフィーの体の無数の傷に気がついた。
そこには粗が目立つが丁寧に巻かれた包帯で止血がしてあった。
「フィーちゃん!?どうしたんですかこの傷!!……まさか、その戦闘で!?」
心配するようにフィーの体をまさぐるアミナに、カイドウは補足の説明を入れる為に立ち上がった。
「ガーベラは、この街の建物を切り取って持ち上げ、それを街に落として、フィアレーヌ君や僕、街の人達ごと街を潰そうとしたんだ。それを防ぐ為に彼は今までにない程まで体を大きくして瓦礫を防ぎ、僕らを守ってくれたんだ」
傷跡を優しく撫でながら、アミナはフィーの体を見る。
たくましい肉体につけられた無数の傷。
大切な家族を傷つけられた事や、何もしてあげられなかった自身への憤りを感じるが、それよりも先行して、街と人を守ったフィーへの称賛の思いが出た。
「そうだったのですか。……ありがとうございます、フィーちゃん。私の言った事をただやっただけではなく、自分の身を犠牲にして街の人を守った。……貴方は本当に優しい子です」
魔物はそんな言葉言われ慣れていない。
優しい笑顔で言われたフィーは、照れ隠しなのかただ甘えたいだけなのか、アミナに体を擦りつけ続けていた。
―――
だいたい数時間が経過した。
ガーベラやブロッセ等の収穫祭の主催者側の人間は、王国から派遣された衛兵に連れて行かれた。
死刑になるかは分からないが、牢屋から出られる事はまず無いらしい。
そして町の人はおそらく全員目を覚まし、壊れた街を見て唖然としていた。
しかし中には何が起こったか覚えている人もいた為、その人が冒険者や町の人達に指示をして復興を進めていた。
その中には冒険者ギルドの受付嬢もいて、指揮はそこそこ高くなっていた。
かくいうアミナやカイドウも街の復興の為に働き、アミナは壊れた家をスキルで一時凌ぎになる程度の修復をし、カイドウは瓦礫の撤去作業をしていた。
そんな時、壊れている部分が少なかった為最初にアミナが直した冒険者ギルドの建物に、彼女は呼び出された。
何の話か心当たりが無かった彼女は、不安を抱えながらフィーとカイドウと共にギルドの中に入った。
するとそこには受付嬢のお姉さんが立っていた。
「作業中でしたのに申し訳ありません」
「いいえ、そんな。何か私に御用ですか?直すものがあれば出来る限りの修復は致しますが……」
すると受付嬢のお姉さんは何やらモジモジしている。
まさかカイドウと同じ……という訳でも無さそうだ。
恥ずかしい、というより言い出しづらそうにしている感じだった。
アミナは彼女が話しやすいように「何でも仰って下さい」と言った。
そう言われてもなお言いづらそうにしている彼女は、遂に「その……」と口を開いた。
「実は……街の被害は想像を絶するものでして……建物は破壊され、街の景観を大きく損なっている状態なんです……」
「それは、まぁ見れば分かりますけど……そのお手伝いなら喜んで協力しますが……?」
やはり何か言いづらそうだ。
さっきからずっとバツが悪い様子だった。
そんな風なやり取りが続いた時、受付嬢は申し訳無さそうに眉を上げて一つの木板を差し出した。
何やら文字が書かれているそれを見て、アミナは声もあげずに驚愕した。
「この街の修繕費をファルスタの費用から捻出しようと思っていたのですが……何分あちらもカツカツだったらしく、ここに来てくださった商人の方々に代金をお支払いしたら殆ど残らない始末でした。……ですので、全額とは言いませんが、国が補填した分の一部をお支払い頂けたら……と上の者から……」
アミナが大口を開けて驚きながら見ている木の板を、カイドウとフィーも覗き込む。
すると顔はドンドンと青ざめていき、カイドウが大声で叫んだ。
「請求額金貨30000枚ぃぃぃ!!!???」
アミナはその場にヘナヘナと座り込んだ。
しかしそんな彼女を他所に、カイドウは抗議をした。
「こんなのおかしいじゃないか!!アミナさんがいなかったらこの街はおろか、住人の人も助からなかったんだぞ!!」
「す、すみません……国の方からも一部補填されたのですが……それでもやはり足りずで。ここ一帯を収めている領主様も支出してくださったのですが、今は経済的に難しい時期らしく、全額工面は出来ないと言われてしまいました……」
「そんな……。でも、アミナさんのスキルがあればこんなにお金を必要としないんじゃないか?」
「……それは無理です」
へたり込んでいるアミナが低く呟いた。
その様子を伺うようにフィーは優しくアミナの頬を舐めた。
「私には建築の知識がありません。あの建物達もあり合わせの材料で作りましたし、次の建築の目処が立つまでのその場しのぎにしかなりません……。そう長くは持たないと思います……」
「そうだったのかい……?」
「はい……一部を直すなら難しくありません。……そう、一部なら。全部を直すとなるとどうしても建築の知識が必要となります。建築家の方々に指示を受けながらやるとしても、私がイメージと現実が噛み合わなければたちまち崩れます……」
しばらくの間、この場に静寂が広がる。
恩着せがましく言うのが好きではないアミナだったが、今だけは、助けたのに、と思っていた。
しかし「はぁ」と一つため息を付いて頬をペチンと叩いた。
「……分かりました。その借金何とかしますので、手続きはそちらでお願いします」
それだけを言い残し、アミナはフィーを連れてギルドの出口へ向かった。
「ちょっとアミナさん!」とカイドウは呼びかけるが、振り返ってはくれなかった。
―――
「はぁ……これからは商売のもっと本腰を入れなくてはなりませんね」
アミナは、フィーのお陰で無事だった自宅へと帰った。
彼女の負わされた借金にはさすがのフィーも同情している。
「まぁ決まってしまった事は仕方ありません。これを踏み倒したらお国的には私が犯罪者になってしまいますからね」
そう言って彼女は自宅の扉を開けた。
すると、誰もいない我が家から「おう、おかえり」と声が聞こえた。
声の方向を見ると、なんとそこには数時間前に姿を消した、殺し屋のラウ・シェンメイの姿があった。
「なぁぁーーーーんでここにいるんですか!!」
ソファで寝てくつろいでいる彼女はまるで我が家のようにアミナの家を使っていた。
もう色々あり過ぎてテンションがおかしくなっていたアミナは声を荒げた。
そしてフィーに「噛みついておしまい」と言って噛みつかせに言ったが、あっさり手で閉じる口を抑えられてしまった。
「いや、だって狙われても文句ねぇんだろ?じゃあこの家に住まわしてもらうぜ」
「それよりも!!なんでここが私の家だって分かったんですか!!」
「あ?だって外にでっかく書いてあったじゃねぇか『アミナ雑貨店』ってよ」
「なっ……。で、でも、他に行くアテは無いんですか?」
「無いね。私色々な国渡り歩いて恨みばっか買ってるから、どこも受け入れちゃくれねぇんだ」
「そのせいでずっと強かったのか……」
いい加減呆れてきたアミナは肩を落とした。
そしてフィーに「戻っておいで」と言って傍に寄せ、フィーを抱いて地面に座った。
「んま、よろしく頼むぜ。これから世話ンなるからよ。私の事は今後『メイ』とでも呼んでくれ。シェンメイだと、正体がバレかねぇからな」
全く悪気のない笑顔と言い方をし、彼女は再びソファに寝転んだ。
アミナは気が抜けたように天井を見上げ、声にならない唸り声を上げながらフィーを顔面に擦り付けて、そっと目を閉じた。
全く予想もしていなかった収穫祭から一転し、莫大な借金と迷惑過ぎる居候を手に入れたアミナ。
借金を返す為、そして何よりこの大陸で生きる為の彼女の物作り屋としての人生は、これからが本番のようだった。
最後までお読み頂きありがとうございます!
収穫祭はてんやわんやな感じで終わりましたね。
そしてアミナ雑貨店には新しい仲間(居候)であるシェンメイが加わりました!
これから更にどんな厄介事があるのか!
それでは次回もお楽しみに!!




