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第二章 25話『『元』究極メイド、収穫祭に参加する10』

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頭を鷲掴みにされたアミナは先程戦闘をしていた渓谷に飛び出した。

すると背後には指示した通り、アミナの斬られた腕とローザ自身の右手を重ね、その2つの掌の中にある岩が高速回転しながら鋭利になっていっている。


「タイミングバッチリだぜ!アミナちゃん!!」


何故こうなっているのか。

それは、ほんの少しだけ前に遡る。


―――


先程、アミナが吹き飛ばされ、ローザの真横を通った時、彼女はローザに何か言葉を告げていた。


『私の腕を持って、川のある渓谷へ。着いたら手を重ねてください』


――と。


最初、その言葉が全く理解出来なかったが、腕が欠損しているのを確認済みだったローザは、言われた通りに腕を探した。


「アミナちゃんが言うんだ……!そう遠くには無いハズ……!!」


アミナが飛んできた方角へと戻りながら、ローザはアミナの左腕を探す。

大量に落ちている血痕を辿りながら腕を探す。


途中、不自然に血に濡れた葉を発見し、それを辿った。

何故不自然に感じたかと言うと、同じ場所にある葉でも、血液が付着している物とそうで無い物があったからだ。


朧気な彼女の腕の傷口を思い出すに、刃物で斬り飛ばされたハズだ。

ならば下方向からでも上方向からでも回転の力が加わる。

ならば傷口が回転しながら飛翔している為、血液の付いていない葉があったのだろう。


その特徴の葉をローザは黙々と追う。

すると、木の上から血液が垂れている場所を発見した。


「……ここか」


彼は木に登って確かめる。

最後の手を樹木の枝に引っ掛けて体を引き寄せる。

するとそこには案の定、細くしなやかな指と、白くて綺麗な肌を持ったアミナの左前腕部があった。


「あった……!」


その腕を持ち上げようとすると、何やら重い。

なんと、その腕は斬り飛ばされて尚、掴んでいた岩を手放していなかった。


「ふんぬ……!!」


腕力は一般人のローザがそれを頑張って持ち上げる。

アミナがそれを片手で持っていたのに驚く程に、その岩は重かった。


「これ片腕とか……どんな力してんだよ……!!」


最初、こんな意味のわからない岩など捨ててしまえばいい、と考えていた。

だがしかし、アミナはいつも自身の想像の遥か上を行く。

街にエルミナが来た時も、誰も予測しなかった方法で勝った。

きっとこの岩にも何か意味があるハズだ。

そう考えながら、腕を抱き抱えてローザは木から降りた。


「よし、次は渓谷を探すんだな。えーっと……」


大きな岩を片手でガッシリと掴んだアミナの前腕を抱え、走り出しながら考える。

今は数秒でも惜しいのだ。


一緒にいた俺が渓谷の場所を知らねぇのにアミナちゃんが知ってるって事ぁ、俺と別れた後に見つけたって事になるな。

じゃあ結局、まだ戻る訳か。


ローザは走って更に戻る。

ほとんど道ではない道へと足先は向き、大地を踏みしめる。

道なき道を進むとはまさにこの事だ。


「アミナちゃんは……一体、何をする気なんだ……?」


息切れしながら呟く。

今のローザには、彼女の考えは全くもって理解出来そうにない。

しかし信じてはいる。

彼女の言った事をやるのに、それ以上の理由は必要無い。


「……はぁ……はぁ……川のある……渓谷……」


ローザは渓谷の岩壁の上に立っている。

そこから真下を見下ろすと、岩壁に穴が空いている。

だが今はそんな事を気にしている場合では無い。

膝をついて抱えていた腕を持っ。

他人の腕を持つ。

こんな経験、もう二度と無いだろう。


「えっと……手を重ねろって言ってたよな……」


岩をアミナの手と挟むようにして「こんな感じか?」と呟いてローザは手を置く。

それは、考えた結果やった事では無い。

アミナがやっているのを見ていたローザが、たまたま無意識にやった事だ。

しかし、それが大正解だった。


「うおっ!!なんか光ったぞ!」


ローザが手を乗せると、アミナの掴んでいた岩が光だした。

その光が、アミナがスキルを使っている時の光と同じ色を放っていると気づくのに、そう時間はかからなかった。

その事に気がついたローザはニヤリと笑って「そういう事か」と呟く。


「ふんぬぬぬ……形よぉ変われぇ〜。形変われ〜」


確かアミナちゃんはこんな感じの光を出してから色々作ってたよな。

俺の手袋直した時もさっき尖った岩を作った時も。

だからもっと色々なイメージをしなきゃならねぇのかもしれねぇ。


「……一応さっき作ってたヤツみたいなのを想像してみるか。えっと……」


確かめちゃくちゃ回転してたよな。

えっと、回転しろ回転しろぉ……!!


ローザが心でそう念じると、岩はゆっくりと回転を始めた。

そして次第にその速度は速くなっていく。


「うおっ!回ったぞ!よし……多分もう時間もねぇだろ、次は尖らせろ……尖れ尖れ……!!」


強く意志を込めて何度も呟く。

頭の中でどんな形にしたいか等を考えながら、尖れ尖れと呟く。

するとどんどん形状は変化していき、回転しながら鋭利な岩を形作っていった。


よし!いいぞ!

このままキープだ……!


ローザはイメージを続けながらその岩をアミナの手と自身の手で挟み込む。

その時ふと、アミナの腕の断面が目に映る。

彼女の腕の断面図はあまりにも綺麗に切り取られてとり、千切れた痕など全く無かった。


「こんなんになってまで、あの子は勝とうとしてる。街の住人全員を助けようとしている……。そんなあの子を、俺がどの口で説教なんて出来んだよ……」


俺には何も救えない。

きっと足でまといになるから別の方向に行かされたんだ。

嫁も子供も、俺が助けに行ってやれない。

一番傍に居なきゃいけない俺が居なかった。

助けてやる事も出来ない。


ローザの中の岩のイメージがブレる。

すると岩は次第に速度を落としていく。

しかしそのすぐ後、岩の速度は先程より格段に上がった。


……いや違う。

あの時助けられなかったんだったら、今助けるんだ。

今、これから、この岩を雇い主の野郎向かってぶん投げて、それで俺が助けてやるんだ。

自分の家族も……そして、アミナちゃんも……!!


そう決意を固めて前を見る。

すると前方が何やら騒がしい。

ガサガサと木や草が揺れている。

そして、それは飛び出してきた。

ボロボロのメイド服を着た少女の顔面を大きな手で鷲掴みにしている黒い服を着た長身の女。


あれだ……!!


ローザは狙いを定める。

あれがアミナと、アミナの言っていた雇い主だという事を確認した為だ。

よく見てみると、アミナは何かを言っているようだった。

しかしその内容までは耳に入ってこない。


岩を撃ち出すタイミングを見計らっていると、アミナの右腕が天高く掲げられた。

それが全ての合図だと、ローザは確信し、呟く。


「タイミングバッチリだぜ!アミナちゃん!!」


―――


ローザは意識のままに、それを撃ち放つ。

するとローザの手とアミナの手から岩は発射され、シェンメイ目掛けて飛んでいく。

彼女は振り返って岩を捉えようとする。

だがしかし、空中にいるシェンメイにそれを避けるだけの手段は残されていなかった。


飛んでくる岩を見て舌打ちをした彼女は、岩が自身の体のすぐ近くに来るとニヤリと口角を上げて呟いた。


「……やるな」


ローザの放った岩の弾丸はシェンメイの腹部を丸々抉りとり、そのまま体を貫通して後方へと飛んでいった。

無論、岩が放たれる事を知っていたアミナは、何とか体を翻す事で岩の弾丸を躱し、渓谷の川へと落下していく。


「流石、ローザさんですね……」


アミナもそう呟いて無気力そうに落下していく。

川まではそこそこの距離があるように見えたが、ローザは迷いなく飛び出し、アミナとシェンメイを脇に抱えて川の中に落下した。


満身創痍の2人はが川に流されるのを防ぐ為だった。

水面から顔を上げ、震える両腕で2人を川の中から連れ出す。

シェンメイは朦朧とする意識の中地面に倒れ、アミナは何とか意識を保って立っている。

そして片腕を抑えながら、アミナはシェンメイの真横に立った。


「私の……勝ちです……」


「……あぁ、そうだな……」


「でも、貴女は私が勝つ事を奇跡と言った」


「ふっ……そう、だったな。……なんだか、あの時にとてもよく似ている……」


軽い受け答えしかしてくれない。

シェンメイの命は、もう残りわずかだろう。

それを悟ったアミナは残った右腕でベルトの中を漁り、一つの草を取り出した。

それは冒険者なら慣れ親しんだ物、リヴァルハーブだった。


「ローザさん……こちらに」


息切れして膝に手をついていたローザは、アミナに呼ばれてそこに行く。

するとアミナは、リヴァルハーブを握ったまま、ローザの左手を握った。


「……『究極創造(ウルティメイド)』」


2人の手の中が光り輝く。

そして、淡い青緑色をした液体が滴り落ちる。

それはシェンメイの体に落下すると、彼女の腹部に空いた大穴を修復するように肉が復活し、骨や神経なども繋がれていった。


「って……アミナちゃ――」


ローザは何かを言いかけるが、その口を紡ぐ。

彼女の意志はなるべく尊重したい。

そういった彼の思いだった。


数秒もしない内に彼女の腹部の傷は完治し、傷の痕は全く見受けられない。

それをやられたシェンメイは不思議そうに、そして怪訝そうにアミナを、睨んだ。


「どういうつもりだ……!」


傷が完治したシェンメイはアミナに憎しみの表情を向ける。

恐らく、彼女は自身より強いものを見れて満足しており、このまま生きていてもどうしようもない、といった心境なのだろう。

しかし彼女のそんな鋭いナイフのような視線にアミナは動じず、答える。


「……奇跡は、来るのを待つものではありません。自ら作り出すものです」


シェンメイは思わず「は?」と答える。

聞かれた事に答えていない、そもそも答えになっていない。

そう思ったのだろう。


「私はローザさんを人殺しにする気はありません。無論、私もなる気はありません。つまり、貴女を生かしたのは、"たまたま"そういった事情を全て統合した結果の、"たまたま"の最善策だっただけです。それはきっと、天文学的な確率で起こった奇跡でしょう。……だから、貴女にも奇跡が起こりました、良かったですねで、もうこの戦いはお終いです」


アミナはそう言って顔を背ける。

照れ隠しなのか、嘘が下手なのか、結局は戦った相手にも情けをかけたいという彼女の私情だ。

ローザはそれに気が付き、可笑しくなって吹き出しそうになった。


しかし、ローザが吹き出すよりも先にシェンメイがブッ、と口から息を漏らして爆笑した。

その笑い具合にローザは、自身の笑いがどこかへ行ってしまい、唖然として彼女の笑う様子を眺めていた。


一通り笑うとシェンメイは大きく息を吸い込んで再び地面に大の字になった。

そして、薄く目を開いて呟いた。


「これは敵わねぇな……私の、負けだ」


そう呟く彼女の表情は、とても穏やかで、そして静かだった。


とても長く続いたと思われるこの戦闘、実際の時間はたったの十数分。

それ程までに素早く激しい戦いだったが、その戦いを制したのは、アミナとローザの2人だった。

ガーベラの仮想空間内での戦闘を終えたアミナとローザは、これ以上の障壁が無い事に心から安堵し、胸を撫で下ろすのだった。



最後までお読み頂きありがとうございます!


アミナvsシェンメイ、遂に決着!

いやぁ、収穫祭のルールは用意しましたけどほとんど使いませんでしたね。


それでは次回もお楽しみに!!

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