第二章 19話『『現』ランクS+魔物、街を奪還する3』
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アミナが、商業ギルド・ファルスタに雇われた殺し屋であるラウ・シェンメイと戦っている頃、フィーとカイドウは街の奪還を急ぐべく、ファルスタの幹部の1人であるブロッセを拘束した後、冒険者ギルドの前に戻ってきてた。
ギルド内にはこれから奴隷として他国に売られてしまうであろう街の住人が大勢捉えられている。
街の住人と、街そのものを奪還すべく、1人と1匹は決意を固めていた。
「せーので行こう」
カイドウがフィーにそう提案する。
人間ってのはどいつもこいつも形ばっか気にするにゃ、とその提案を無視し、1匹でギルドの扉へ近づいた。
「あ、ちょっとま――」と、カイドウが止める間もなく、フィーは扉を前足で蹴破った。
蹴破った、というよりはぶん殴った、という表現のほうが正しい。
ギルドの木製の扉がメキメキと音を立てて吹き飛び、その代わりに「グエッ!!」という悲鳴が上がった。
どうやら中にいた誰かに直撃したようだ。
「あぁぁ、どうするんだい今の悲鳴!もし今のが街の人の悲鳴だったら――」
カイドウがそう心配の言葉をフィーに投げるが、フィーの目線は一つに絞られていた。
彼が何を見ているのか気になったカイドウは、言葉の途中でフィーの向いている方向へと目線をやった。
するとそこには、葉巻を2本ほど口に咥え、眠っている人達を上から眺めている、ガーベラ・カーリンの姿があった。
カイドウは、その男がガーベラという事を知らなかったが、放たれる異質なオーラから、今回の事件の全ての元凶なのだとすぐに察した。
「なんだテメェ等。街の住人は全員眠らせたハズだろ」
その雰囲気は、華やかで明るい口調で皆の前で話していたガーベラとはまるで別人のようだった。
「街の人達を今すぐ解放しろ!」
「はぁ?なんでだよ。折角捕まえてこれから売り払おうってのによぉ」
葉巻から落ちた灰がギルドの地面へ落下するのを見た後、もう一度口で咥えた。
「それに、もう先方にも話をつけてある。今更取引中止だなんて看板に傷がついちまうぜ」
「こいつ……」とカイドウは憤りの姿勢を見せ、フィーは怒りよりも呆れの方が先行した。
(これだから人間ってのは……つくづくくだらにゃい。アミナを見ててその考えを正そうかと思った日もあったが……やっぱり人間は救いようのないクズ肉にゃ)
フィーの体が力む。
そして少しずつ巨大化し、ギルドの建物内で動ける程度の最大サイズへとなった。
「へぇ、魔物のクセに良いスキル持ってんだな。巨大化か……だが、魔力までは大きくならねぇらしいな」
ポケットに手を突っ込んだまま飛び降り、フィーの前に着地した。
「おいそこのクソガキ」
「ん?えっ?僕の事?」
「そーだよ。危ねぇから下がってろ」
ガーベラは予想外の事を口にした。
その言葉を聞いたカイドウは一瞬、僕を心配しているのか……!と思ったが、その真意は違った。
というか、全く真逆だ。
「てめぇも大事な商品だ。傷なんてついちまったら値段が下がんだろうが」
まぁ、そんな理由だろうと誰もが察していたところだ。
しかしフィーは懸念していた。
彼がこんな罵声にも近いものを浴びせられれば、たちまち木偶の坊に化すのでは無いか、と。
フィーはチラリとカイドウに目をやった。
だが、彼の表情は真剣そのもの、一遍の曇りも無い真っ直ぐな眼差しだった。
「フィアレーヌ君。安心していいよ」
フィーの視線に気がついた勘のいい彼は、フィーの方を向かずに言う。
こちらもまた予想外の返事にフィーは黙る。
「僕は確かに攻められるのが好きだ。……けど、自身の面子を誰かで補う人の攻めなんて、これっぽっちも気持ち良くない」
決意したような眼差しでカイドウは言う。
それに対しフィーは、言ってる事は理解出来にゃいが、評価を改めてやるとするか、と少しだけカイドウへの好感度が上がった。
だが自身への冒涜だと受け取ったガーベラは額に血管を浮かべ、歯をギリギリと鳴らしていた。
「俺が……てめぇ等の世話になってるって言いてぇのか、ガキィ……!」
「あぁそうだ!僕等一般人を奴隷として他国に売っているんだろ!?誰かに頼らないと成り立たない商人をしているクセに、その誰かを蔑ろにするなんて許せない!商人として恥ずべき行為だ!」
歯ぎしりをして怒りを押さえ込んでいたガーベラは突如、ギリギリという音から一変し、クククと何か笑うような声を発した。
それに、体が心做しか震えている。
「………ククク、アーッハハハ!!」
「何がおかしい!?」
「いやぁ?俺の事を商人だのなんだの言ってくれてんのが笑けてきてよ」
「……?どういう意味だ。お前は商人じゃ無いのか」
ガーベラの真意を問いただそうと、カイドウは質問を投げる。
答えをまともに返すかも分からない相手へ疑問を投げるべきでは無かったと後悔したが、ガーベラは素直に答えた。
「俺ぁよ、商人なんかじゃねぇ。だが、ファルスタの副会長ってのは本当だぜ」
「副会長とはいえ、こんな独断を許す程、この大陸の司法は甘くないだろう!」
「甘ぇ甘ぇ、そこが甘ぇ。俺はな、この大陸全土で共通の司法の穴を突いた」
自信満々にガーベラは言う。
カイドウはそのまま喋らせる為に黙って聞いている。
それはフィーも同じだった。
「簡単だよ。"商業ギルドを冒険者ギルドの隠れ蓑にする"んだ」
「……どういう事だ?」
「そのままの意味だ。この大陸の冒険者ギルドと商業ギルドの法律は大体同じだ。だが、唯一違うのが権威の順だ。危険な大陸を歩く商人の方が、冒険者よりも多くの権限を与えられているんだ。だから、表面上は商業ギルドを名乗って、やる事自体は冒険者ギルドと変わらない。そうすりゃ、商業ギルドの権威を使って色んな事がやりたい放題なのさ」
「だが、それがこの事件を無視される理由にはならない!」
カイドウが意見を述べる。
しかし、それを否定する準備が整っていたかのように、ガーベラは言葉を続ける。
「それに、街への介入も商業ギルドなら面倒な手続きは無しになる。この大陸で唯一の安置と言える街に、物騒な冒険者なんかコロコロ介入させられねぇからな」
「……多くの権限が与えられている商業ギルドだから多少の事には目を瞑られる。それに、お前等の奴隷取引相手は各国……だからその国で起きている誘拐は見過ごされる……」
「ま、そういうこった」
「……なら、会長はどうしてるんだ!お前は副会長だろ?こんな事を了承しているというのか!」
カイドウが憤りを顕にし、熱っぽく喋っていると「――いや」と声が聞こえた。
その声は正しく目の前にいる男の声だった。
「会長は了承してねぇ」
「じゃあなんで――」
その問いかけに嘲笑するように鼻で笑った後、ガーベラは答えた。
「この俺が殺したからだよ」
「へ……?」
驚きのあまり、間抜けな声をあげてしまった。
しかし、翌々考えれば、先程の彼の発言から推察出来た事ではあった。
「言ったろ。頭をすげ替えりゃ商業ギルドの皮を被った冒険者ギルドになれるってよ。俺は職に溢れた元冒険者だった。そんな飢えた俺の乾きを潤すのは金じゃねぇ……血なんだよ。だが、会長はそれを理解しちゃくんなかった。だから殺した。この計画も俺が一から立てた。誰の力も借りず!俺一人の力で!だからファルスタはここまで大きくなった!つまり!俺のやり方が正しかったんだ!アッハハハ!!!」
奴等の取引相手はこの大陸の国々。
そんな彼等は法律をも決めている。
だからこんな大掛かりな奴隷の商売を見過ごされている。
本当に腐ってるな……!この大陸は……!
僕等の敵は危険な魔物だけじゃなかった。
同じ人間ですらこんなに憎くい!
「ま、ケツから言や、俺達は国に公認でこの奴隷販売をやってる訳だ。国にも利益があんだから利口な判断だよなぁ?……でもこの街は駆け出し冒険者の街だから後回しにしろって言われてたんだがよ、待ちきれなくて今回実行したって訳だ」
事の全てを説明した。
そんな感じでガーベラは言葉を終わらせた。
カイドウは握り拳を握り締め、フィーは静かにガーベラの方を見つめている。
「ほんじゃあ、本題に戻そう。……何モンだてめぇ等」
饒舌に喋っていた態度がまた一変し、鋭い目つきでカイドウとフィーを睨んだ。
情緒が安定しないのに暴論を振りかざす人が、どれだけ厄介で面倒か。
「僕等はお前を止めに来た!街の人を解放する為に!」
「あぁ……そうか。やっぱり邪魔者か。なら……いや、殺すのは惜しいな。危険度ランクS以上の魔物と頭がキレるガキ……高く売れるぜぇ……」
(人間だけでなく魔物まで値踏みするのか。
つくづく呆れた人間だ)
今までの会話でフィーとカイドウのポテンシャルを見抜き、殺して口止めよりも売った方が金になると判断したガーベラ。
そんな彼はニヤニヤと笑っていたのをいきなり止め、葉巻を一吸いで全て灰にし、大量の煙を吐いた。
そして改めてカイドウとフィーを睨みつけ言った。
「俺の計画は邪魔させねぇ……そろそろ計画も最終段階だ……その前にてめぇ等を再起不能にしてまとめて売っぱらってやらぁ!」
煙草臭い怒号を吐き捨て、ガーベラは戦闘態勢をとった。
カイドウとフィーによる、街の奪還作戦のラストバトルが始まろうとしていた。
最後までお読み頂きありがとうございます!
次もまだフィーとカイドウのパートとなります!
次回もお楽しみに!!




