第二章 15話『『現』ランクS+魔物、街を奪還する1』
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しばらくフィーの視点とアミナの視点が交互になると思います。
あらかじめご了承下さい。
あと今回あんまり動きませんでした。
すみません。
オレは今、とある頼りにゃい男を連れて走ってる。
今日は城門に見張りがいにゃくて、体が大きくても入れた。
そして街の重要施設である冒険者ギルドにゃる場所へ向かっている。
何故オレがこんな事をしているかというと、事の発端はほんの1時間程前に遡る。
―――
主人に置いていかれた。
オレの存在を忘れていたのか、にゃたまたオレはアミナについて行けなかったのか、それは分からにゃい。
だけど置いていかれた。
それだけは確かにゃ。
フィーだけが残った中央広場は静かだった。
しかしその静寂はすぐに破られた。
「さぁ、観覧がご希望の方は広場にお集まり下さい!ここで映像を映して、共に誰が一番にクリアするのか予測して楽しみましょう!」
なんだか派手なカッコをした男が言った。
(あれがアミナとおっさんが話していたガーベラってヤツかにゃ。
汚い金の臭いがプンプンする。
いけ好かにゃいな。)
フィーがそう考えている反面、街の住人は恐らく全員が中央広場に集まっていた。
人の波が押し寄せる中、フィーはアミナの鞄を引っ張りながら中央広場から遠ざかった。
(あんな臭い人間の所になんて長時間いられにゃい。
でもそうにゃると暇だにゃ。
アミナいにゃいし。)
広場から数十メートルは遠ざかったフィーは道の端に寄って毛ずくろいをしている。
そしてチラチラと映し出されている映像を見ていた。
臭い人間の側にはいたくないが、アミナの同行は気になるらしい。
そして十数個程ある映像の中にアミナを見つけた。
フィーが見ていたアミナは、ローザに土下座をされ、手を繋いで歩いている時のだった。
その様子を見て、フィーは毛の下にある額に血管を浮かべた。
(なんにゃおっさん。
なんでアミナにそんなベタベタなんにゃ。
オレだって手を繋いで歩くのなんてしてにゃいのに。)
……四つん這いだからかにゃ。
フィーは憤りながらも、自身のぷにぷにで最高に可愛い肉球を見つめていた。
するとその横で歩きながら「あなた……」と赤面し、フィーと同じく額に血管を浮かべている女性がいた。
その女性はフィーに構わずそのまま広場へ向かって行った。
今のおっさんの嫁かにゃ。
終わったら恐ろしい事ににゃるだろうにゃ。
まぁ、そこはアミナにデレデレしたバツだと思うがいいにゃ。
そう心の中で呟いてフィーは自宅の方へと歩いて行った。
しかしそうしようとした瞬間、背後で嫌な臭いを感じた。
それは誰かが嘘をついている時に発される臭いで、嗅覚を刺激する不愉快な臭いだ。
フィーは思わず振り返り、中央広場の様子をじっくりと観察する。
(なんにゃ……誰から出た臭いにや……。
嗅いだ事のにゃい、嫌な臭い……。)
フィーが警戒している真っ只中、ガーベラは人の集まりが途絶えたのを感じ取り「そろそろいいか」と呟いた。
「おい、やれ」
ガーベラは横に待機していた部下に指示した。
何をする気にゃ、とフィーはまだ警戒を解いていない。
「降臨せし天使は、徒労者に安らかなる休息を与えん『ハイネス・スリープ』」
ハイネス・スリープ。
それは睡眠系の魔法『スリープ』の上位互換。
収穫祭の映像を見ている街の住人全員が、頭上に現れた巨大な魔法陣から発せられる眠りの魔力によって、その場にバタバタと倒れていった。
――!!
やりやがったにゃ……!!
嘘の臭いはあいつからだったのかにゃ……!!
「よし、全員寝たな。ギルド内に運べ」
「はい」
ガーベラは更に後ろから出てきた部下に街の住人全員を運ばせた。
その人相は先程ルール説明した時とは異なり、優しさの欠片も無い冷徹そのものだった。
どうする……。
今この場で全員を噛み殺す事は……3秒あればいけるにゃ。
決して難しくはにゃい、難しくはにゃいが……
フィーは巨大化して全てを蹂躙しようとする魔物本来の本能を押さえ込み、理性を働かせる。
……その場合、アミナはどうなるにゃ。
多分あの派手野郎のスキルでアミナは飛ばされたにゃ。
本体を倒したらスキルの効果が切れるなんて楽観的過ぎるにゃ。
確証も無い内に殺してアミナが帰ってこなかったら……。
そう考えているとフィーはおもむろに後方へかけて行った。
その光景を一瞬ガーベラに見られたが、彼は「フン」と鼻で笑う程度だった。
そして街から完全に出たフィーは巨大化し、全速力で走った。
(シャクにゃが、あいつの所に行くしかにゃい!!あぁもう!!これだから人間は面倒なんにゃ!!)
フィーは風を切って走る。
今の体の大きさで出せる最高速を出してひた走る。
途中にある草原地帯の草を巻き上げ、通った後には突風と巻き上げられた草だけが揺れる落ちる。
そして次第に森林へと入って行く。
そこは不便とは言い難い直線の道が続く珍しい森だった。
通り過ぎる瞬間の風で次々に木が薙ぎ倒されていくが、フィーにそれを気にしている暇は無い。
やがて、人気の無い森には似つかわしくない一軒家が見えてきた。
その一軒家はオンボロのボロ屋で、幽霊が住んでいてもおかしくない程の廃屋だった。
しかし、ここに住んでいるのは幽霊では無い。
フィーが信頼はしていないが唯一頼れる男が住んでいた。
フィーは家の前に着くなり、小さくなり、その廃屋の扉をガリガリと削った。
その音でここの家主が出てくると思ったからだ。
数分程その行為を続けたが、家主は出てこなかった。
いい加減イラついていたフィーは再度巨大化し、その家の屋根を捻り取った。
メキメキと音を鳴らしてちぎれる木材は、その被害の大きさを表していた。
「ん?なんの音――って、のあぁぁぁ!!」
(あ、いたにゃ)
「って、君はさっきアミナさんが連れていた魔物の……どうしてまたこんな所へ?何か忘れ物かい?」
フィーは屋根を元あった場所へそっと置き、小さくなった。
そして扉が開くのを待った。
「ま、まぁとりあえず入って」
この頼りない男の名はカイドウ。
ついさっきアミナに紹介された魔道具マニアにゃ。
人間の感覚じゃイケメンらしいが、猫界で言えばドブスにゃ。
それでも知識だけは一丁前らしく、アミナが不思議なババアに押し付けられた頭飾りの解析を請け負ってくれたヤツにゃ。
フィーは家に入るなり、魔水晶の一種である通話水晶を探した。
透明でガラスのような物で作られた球体は、魔力を込めた分だけ、対応するもう片方を持っている相手と通話が出来る。
それで連絡を取ろうとした訳だ。
部屋を片っ端から散らかして探す。
最初はあまり散らかさずに探していたのだが、途中から、どうせ最初から散らかっているのだから今更だろう、と開き直っていた。
「あーあー。僕の宝物達が……。でも、こうやって散らかされるのも嫌いじゃない!!片付けなくちゃならないという苦行が僕に襲いかかる……!!何たるご褒美だ!!」
(こいつうるさいにゃぁ……!)
お前自体には用が無いんだよ、と言いたげにフィーは黙々と通話水晶を探した。
しかし、それらしき物は全く出てこなかった。
フィーは後ろで騒いでいるカイドウへのイラつきと、見つからないもどかしさで息切れをしていた。
その様子を見たカイドウがしゃがんでフィーに話しかけた。
「で、君は何しに来たの?」
フィーは一旦冷静になる事にした。
もしかしたら、この男に伝える事が出来るんじゃないかと思ったからだ。
するとフィーはおもむろにカイドウの方を向いてジェスチャーを始めた。
最初は、買い物をする様子を表す為にプルプルと震える二本足で立ち、周りを見渡した。
次に、偉そうに前で喋るガーベラの真似をし、その後はアミナや他の人間が別空間に飛ばされた事を表す為に、高速で移動して消えたように演出した。
最後に床に寝転んで街の住人が寝てしまった事を表現し、アミナと連絡を取る為に通話水晶が欲しい事を、前足で球体を描いて伝えた。
一連の行動を見たカイドウは興味深そうにフィーを見つめていた。
伝わったか!?とフィーは淡い期待を抱いた。
そしてポンと掌を叩いて「なるほど!」と自信満々に言った。
「アミナちゃんが後ろに手を組んだまま高速で移動して僕を痛めつけて気絶した僕をスキルで球体状にする……そう言いたいのか!!あぁ……カチューシャの調べ物も始めたばかりで立て込んでいるというのになんたる仕打ち!!なんたるご褒美だ!!」
(あぁ、駄目にゃこいつ。自分がアミナにシバかれる事しか考えてないにゃ)
フィーは呆れ、自身だけで事を収める為に帰ろうとした。
しかしドアの方へ振り返った刹那、カイドウの腕が光り輝いているのが見えた。
それは腕のリングに付いている小さい球体だった。
最後の希望として、フィーはそれに飛びかかった。
「どうしたんだいフィアレーヌ君、急に飛びかかったりして!?……って、これはアミナさんと繋がっている通話水晶。……ん?待てよ。通話水晶に、わざわざ君が1人でここへ来た君……もしかして、アミナさんに何かあったのかい!?」
(気づくのが遅すぎるにゃこのバカイドウ!!)
心の中で呟きながらカイドウを貶す。
この男に今の罵声が聞こえていたらきっと喜んでいただろう。
「ん?じゃあさっきの扉をガリガリする音は君が、来た事を知らせる為にやっていたのかい?」
(聞こえてんにゃら最初から出やがれにゃあ……!!)
「そうか……じゃあアミナさんに何かあったというのを加味するとさっきの動きは、買い物をしていた時に何者かが現れて、その場にいた全員を何処かへ消し飛ばした。その後残った人を何らかの方法……恐らく魔法によって眠らされた。そして君はアミナさんと連絡が取れる水晶を持った僕の所へ来た、こんな感じか」
(……なんにゃろ、こいつ。気がついて欲しかったのは事実にゃけど、なんかムカついてきたにゃ。最初からその考察能力発揮しろにゃ、このダボ)
しかしどんな形であれ伝わったのなら好都合だ。
フィーは小さいながらも溢れる力でカイドウを外へ引っ張り出し、その後巨大化してカイドウを背中に乗せた。
「街まで僕を連れて行く気か……なら僕は街に着くまでに水晶に魔力を溜めておく。それでアミナさんと連絡が取れるかやってみよう」
その提案にフィーは頷いた。
そして、カイドウが耐えきれずに吹き飛ばない程度の速度で走り出した。
「ぬわっぽ!!」
意味の分からない奇声を上げるカイドウは無視し、フィーは走った。
それは行きとは比べ物にならない程遅く、緊急性に欠けていた。
しかし馬鹿ながら賢いカイドウがいなくては、アミナを助け出す方法も聞き出せないまま殺してしまう可能性も十分にあった為、やむを得ず速度を落とす。
その間にカイドウは水晶に魔力を込める。
どこへ飛んだか分からない事もあって、念入りに、それも大量に魔力を注ぐ。
そして数十分ほど走っただろうか、行きの倍以上の時間がかかってしまったが、ようやくスターターの街が見えてきた。
遠目から見ても人の気配は全く感じられず、フィーの耳は人を運んでいる人間の声しか聞き取れなかった。
「見えた!!」
カイドウがそう言った瞬間、既にフィーは街に入っていた。
すると、魔力を込め終えたカイドウが水晶に話しかけていた。
どうやらアミナとの対話に成功したらしい。
カイドウが街の様子と街に来た経緯を語った。
『――ある子って……?』
アミナの声だ。
聞き間違うハズが無い。
「君の頼りになる……”相棒”さ!!」
カイドウは口角を上げ、自信満々にそう言った。
―――
そして、現在に至る。
「――という事は、僕等はこれからそのガーベラって人を叩けばいいんだね」
お互いの情報をすり合わせながら2人は相談をし、結論を出した。
アミナとローザが仮想空間で雇い主を撃破、フィーとカイドウはギルドに囚われている人達の救出となった。
『はい、そちらはよろしくお願いします!こちらは雇い主という、ガーベラの協力者を追います!』
敬称がすっかり抜けている。
アミナはかにゃり憤っているようにゃ。
あんな可愛い子を怒らせるなんて、やっぱり人間は下らにゃい。
「そっちで雇い主って人を倒して帰ってこれる保証はあるのかい?」
『一応あります。彼等が本当に仲間なのだとしたら、仮想空間から出る術を知っているハズです。それを聞き出すか実行させて脱出してみせます。ですのでフィーちゃんとカイドウさんは街の人の救出と街そのものの奪還をお願いします!』
作戦が完全に決まった。
カイドウは水晶に込めた魔力が切れる最後に「了解」と言って通話を切った。
そしてタイミング良く、全員を運び終わったであろう中央広場に到着した。
広場には、まだガーベラの部下と思しき人物が十数人いた。
「あ?なんだあの魔物」
「ってあの化け猫、人連れてきやがったぞ!」
「どうする、この状況を見られちゃ不味いぞ」
部下の人間は一瞬うろたえた。
しかし少し仲間同士で相談したと思ったら、急に冷静さを取り戻した。
そして、全員が武器を引き抜き、同じ言葉を発した。
「じゃあ……殺すしか無いな」
その言葉に一般人であるカイドウはひるんだが、自身が一緒にいる魔物の事を思い抱いたら、そんな気持ちはどこかへ消えてしまった。
「じゃあ行こうかフィアレーヌ君!!『スターター奪還作戦』、開始だ!!」
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