第二章 13話『『元』究極メイド、収穫祭に参加する4』
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アミナとローザは2人の冒険者との戦闘を終え、その冒険者達を紐で縛って見下ろしていた。
剣を使っていた方の男の顔面はパンパンに腫れ、ダガーを使った方は頭から血を流して気が気じゃない顔をしていた。
「さて、本当に何も知らないのか確かめさせていただきましょうか」
つい先程目を覚ました2人は不貞腐れているような顔をしている。
「……さっさと殺して向こうに戻せよ」
「こうなりゃ俺達の負けだ。リタイアにさせろ」
ほう、想像より潔いな。
まぁ自暴自棄になって開き直っているのかもしれないが。
「念の為お聞きしますが、本当に何も知らないのですか?果実の在処のヒントとか。それを所持している魔物の情報とか」
「そんなもんありゃとっくに俺達で有効活用してるっつーの」
まぁ確かにその通りだ。
この冒険者の人達が果実に関する情報を持っていないのは大体察していたけれど、本当に何も知らなかったのか。
無駄な戦闘をしてしまった……という訳では無いかな。
アミナは心の中でそう呟いてローザの方を見る。
すると彼の表情はなんだか生き生きとしており、この冒険者の人との戦闘で少しだけ自信がついたのかもしれない。
そんな風に考察をしているアミナの横に立っていたローザが口を開く。
「なぁお前等。俺達と協力してラムダの果実を見つけねぇか」
それは思いがけない提案だった。
自身を馬鹿にし、恩人であるアミナを貶した相手にまさかの協力を申し出たのだ。
先程までのローザでは想像できない超展開であり、アミナも驚きの一言だった。
「な、なんで俺達が!!」
「そうだ!!俺達はお前等を襲ったんだぞ!!」
「んーー。でも翌々考えてみればアミナちゃんに煽るように目配せしたの俺だし、結局こういう展開になるのが読めてたっていうのにわざわざ焚き付けたのもこっちだ。それに、目的の食材を持って帰るってのがいつも通りなら、この人数でクリアしても全員がクリアした事になるハズだ。だったら、今協力しておいた方がお互いの利益になるんじゃねぇかな」
最もだ。
最もな事をローザが言っている。
その言葉も先程までの彼の口からは出るハズの無い言葉だった。
「そうですね。私もそちらの方が良いと思います。冒険者の方が2人もいると一般人の私達も心強いですしね」
「お、俺の顔面を一撃でパンパンに腫れさせたメイドに言われても説得力があんまし感じられねぇが……分かった。俺等で良ければ喜んで協力するぜ!!なっ!」
「おうよ!この際何でも良い!!どこまででもお前等について行ってやらぁ!!」
冒険者の2人は笑顔で互いの顔を見てアミナとローザに言った。
本当に仲が良いのだろう。
アミナは2人の拘束を解き、4人で顔を見つめ合った。
「それではこの4人でこの収穫祭、乗り越えていきましょう!!」
アミナの掛け声に他の3人が「おー!!」と拳を振り上げた。
「そういえばお2人のお名前は?」
「俺がリッポル、こっちのダガー使ってたほうがロクトだ」
剣を使ってアミナの相手をしていた方がリッポルでダガーを使用してローザと戦っていたのがロクト。
よく見るとお互いの武器には同じ文様が入っていた。
それはリッポルの剣に刻まれていた射程を誤認させる魔法を組み込んだ時に出来たものでは無く、元々入っていた模様のようだった。
「そうかロクトっつーのか。中々強かったぜ」
「あんたもなローザ。おっさんだと思って甘く見てたぜ」
「この野郎、言いやがる」
ローザが自身より少し小さなロクトにヘッドロックをして頭をグリグリと優しく殴った。
それがくすぐったいのか、ロクトも笑って「やめろよおっさん」と言い合っている。
「この際ですので聞いてみますけど、お2人はどうして収穫祭に参加なさったのですか?私の勘違いなら良いのですけど、リッポルさんとロクトさんはスターターの冒険者では無いですよね?」
「あぁそれな。実は俺達は西の方の街から来た冒険者なんだ」
意外な答えが帰ってきた。
確かにスターターで見た事は無かったが、まさか他の街からわざわざ出向いてきた冒険者だったとは。
たまたまこの街に滞在しており、たまたま参加した訳では無く、収穫祭が目的でこの街に来る冒険者もいるという事か。
「へぇ、この街の収穫祭は色んな所から商人が来てるだけあって冒険者も結構来るんだな」
「いやぁ、実はそうじゃねぇんだな」
ロクトが意味あり気に言った。
その様子が気になったアミナは立て続けに訊いた。
「そうじゃないとは?」
「実は俺達、雇われてこの収穫祭に参加してんだ」
雇われて?
一体何故?
アミナがそう聞く前にローザが「なんだそりゃ」と言ってくれた。
「俺達も詳しい事は知らねぇんが、どうやら今回の収穫祭はいつもと違うらしい」
「いつもと違う?どの辺がだ?」
「そりゃぁお前ぇ……参加した事ねぇから俺にも分からねぇけどよ。俺等の雇い主がそう言ってた」
「その雇い主ってどなたですか?」
リッポルとロクトが顔を見合わせてしばらく黙った。
2人は言っても良いものなのだろうか悩んでいるようだった。
冒険者と依頼者の間では個人情報等が取り扱われる事が多いと聞く。
その為2人はお互いに確認しあって言って良いものなのかを判断しているのだろう。
そして、頷いたと思ったらリッポルが話し始めた。
「それが結構変な名前でな、そいつの名前は―――」
気付いた。
そう、気づいた瞬間には全てが遅かった。
アミナの斜め前に立っていた剣を使った冒険者、ローザの斜め前に立っていたダガーを使っていた冒険者。
彼等の額には一際大きな風穴が空いており、そこからは赤い血潮が飛び散った。
「なっ――!?」
「かっ――!?」
2人は困惑のあまり声も出ず、そのまま前のめりに倒れた。
アミナは咄嗟に2人の体を庇って周囲に防壁を作り出した。
「リッポルさん!!ロクトさん!!」
「おい!!しっかりしろ!!」
アミナの必死の呼びかけに2人は答えない。
彼女が必死で声をかけている数百メートル先で、リッポルとロクトを攻撃したであろう者が草むらの中で立っていた。
―――
「やはり口を割ったか。猿どもが」
冷酷な口調で話すその人間はしばらくアミナ達の様子を伺っていた。
―――
アミナは必死に声をかけ続けた、しかし一向に声は返ってこない。
そして、そんな状態になっているアミナをローザが止めた。
「駄目だアミナさん。こいつ等もう、向こうに戻ってる」
向こうとは現実世界、つまりスターターの街だ。
これで彼等と会うにはこのゲームを諦めて死ぬしか無くなってしまった。
「一体誰が……!!」
憤った様子を見せたローザの横で、アミナは2人の穴の空いた顔を見つめていた。
――頑張ろうと言い合った。
出会いはあまり良いものでは無かったけれど、仲良くなれない訳では無さそうだった。
2人だって呼ばれたからには優勝してやろうと思っていたハズだ。
これをやったのはきっと、彼等の雇い主だ。
2人は依頼者の名前を言おうとした瞬間に頭を貫かれた。
それから考えられる事実はたった一つしか無い。
そうに違いない、そうでなければ、2人が強制退場させられる理由はない。
やはりこの収穫祭は――何かがおかしい。
アミナは決意したような眼差しをし、壁を崩して外に出た。
そして周囲をキョロキョロと見回した。
「アミナちゃん、どうしたんだ?」
ローザは訊いた。
それに対してアミナは静かに答えた。
「お2人の頭を貫いた何か……恐らく魔力の弾でしょう。それってどちらから飛んできたと思いますか」
アミナにそう聞かれ、ローザは「あっちじゃねぇかな」と2人が背にしていた延長線上を指差す。
しかしその様子を見ていた犯人は「馬鹿め。そっちは真逆だ」と嘲笑気味に呟く。
ローザの言葉に「なるほど」と返したアミナはその反対側へと視線をやり、そこを鬼の形相で睨みつけた。
その視線に犯人は思わず後退してしまった。
―――
馬鹿な……平原とはいえ1キロは離れているのだぞ。
しかも狙撃しやすい背の方向では無く、その正面から。
それに気がついたとでも言うのか?あの少女が……?
なんという洞察力だ……
―――
するとアミナは方向を見定め、地面に落ちていた手頃な岩を両手で包んでスキルを発動させた。
その岩はアミナの手の中で高速に回転し始めた。
私のスキルは発動中、どんな物の物理的変化を受け付けない。
それは破壊であっても再生であっても融合であっても、私がスキルを使用している物に干渉は出来ない。
それ故に私がスキルを使用している最中であればこの物体は私の手の中でなら自由自在。
だからもっと回せ、もっと、もっと、もっと速く回転させろ。
撃ち出した瞬間に物理法則を受け入れ、最速になるように。
回転させながら岩を形作れ。
できるだけ大きく、鋭く、硬く。
先端から螺旋を模した刃を形成し、貫通力と殺傷能力を付け足せ。
絶対貫通の矢の時の応用だ、難しくはないだろう。
次第に岩は円錐形をのような形へと変化していき、岩の回転速度も、もはや目で追えるものでは無くなっていた。
そして全てが十分に達した時、アミナはスキルを解除し、ほんの少し、発射する方向に力を加え、それを撃ち出した。
「砕け散れ、『砲天源衝』」
その岩は回転しながら空気を捻り切るようにして飛んだ。
速度は音速ならばとうに超えているだろう。
岩は1キロ離れた、崖の上にある森林の一部である草むらの中に突撃し、大爆発を引き起こした。
その爆発音はその荒野……いや、この空間全てに響き渡っていてもおかしくない爆音を轟かせ、何十メートルもありそうな土煙を発生させた。
―――
「フッ……フフフフ………!!」
犯人は静かに笑った。
アミナの放った岩の弾丸を、顔を最低限逸らす事で回避していたのだ。
しかし犯人の耳はその回避に間に合わず、ポトリと地面に落下した。
「まさかあんなヤツがいたとはな……」
犯人は地面に落ちた耳を拾った。
「”精彩”――」
拾った耳を口で咥え、ニヤリと笑ってそう呟いた。
―――
スキルで作り出した岩の弾丸を撃ち出したアミナは、弾丸を放った方向を見つめながら呟いた。
「人の思いを踏み躙って、勝手に雇って勝手に手放す……ここまでコケにされたのは久しぶりだ……」
「アミナ……ちゃん?」
アミナのただならぬ雰囲気にローザはビクビクしながら声をかけた。
しかし、彼女からの言葉は返ってこなかった。
「――ない」
小さくアミナは呟いた。
ようやく喋ったと思ったローザはよく聞こえず聞き返した。
「え?」
「絶対に許さない。あの雇い主って野郎……絶対にとっ捕まえてやる」
アミナの目には明確な敵意と殺意が籠もっており、揺るがない意思を、強く握った拳が物語っていた。
そんな様子のアミナを見てローザは、ただ彼女を見て、立ち尽くしている事しか出来なかった。
最後までお読み頂きありがとうございます!
初?アミナの技らしい技が炸裂しました!!……って言っている場合じゃないですね。
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