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第二章 12話『『元』究極メイド、収穫祭に参加する3』

よろしければブックマークや感想の方よろしくお願いします〜!



この空間内でも雨は降るようだった。

アミナとローザが洞穴で夜を明かし、外の様子を伺うと、弱い雨が降っていた。


「ここでも雨って降るんですね」


「俺も雨降ってんのは初めて見たなぁ……なんせ1日目でリタイアしちまってたからな……」


「でも、少し遠くを見る限りそこは雨が降っていないように見えます。恐らくこの空間は様々な場所がツギハギになって形成されているのでしょう」


「だから色んな植物とかがあったのか」


コング草は森林地帯、エイトマッシュは湿原地帯に自生する食材。

そしてラットハウンドは初心者に狩られやすく、その理由はどこからでもアクセスしやすい平原に生息しているからだ。

これらの事を考えるとガーベラのスキルは、切り取った土地や空間をツギハギに組み合わせ、それを本人の仮想空間として保存するもの、とアミナは予測していた。


「そうだとしたら凄いスキルですね……広さは分かりませんが、少なくとも3つの土地は保存できている。ガーベラさんは冒険者とかだったりしたんですか?」


アミナはローザに問いかける。

自身よりかはガーベラの事を知っている。

それくらいの感覚で問いを投げたのだ。

スキルを多用しているなら元冒険者でもおかしくはない。

それ以外の可能性も十分にあったが、今はその可能性を疑った。


「ん〜。俺もそんなに詳しく知ってる訳じゃねぇからなぁ……。でも、ちょっとだけ聞いた事あんのは、ガーベラさんは商業ギルド内でも指折りの実力者らしいぜ」


「それは戦闘技術って事ですか?それとも商人として?」


「戦闘技術においてだ。元々商業ギルド『ファルスタ』ってのは仕事を失った冒険者や街の住人で構成されてるんだ。でも誰でも入れる訳じゃなくてよ、その人の商売センスを見極めて勧誘してる完全招待制のギルドなんだ。だからその副代表が元冒険者でもおかしくないんじゃないか?」


「なるほど……」とアミナは少しだけ納得していない様子で頷く。

しかしこれ以上は疑いようも無く、これだけ疑り深くなっているのは今回が初めての参加だからだろう、とアミナは思う事にした。


「お、雨が止んだみたいだぜ。ラムダの果実探しに行こうぜ」


外の様子を伺っていたローザはアミナに言う。

外はすっかり晴れ、周囲の植物は恵みの雫を葉に滴らせていた。


「そうですね。他の方よりも先に見つけましょう」


アミナは一旦ガーベラの事を忘れ、収穫祭の目的達成に集中した。

自身がこの収穫祭に全力をかける理由を優先する事にしたからだ。


「さぁ行きましょう。奥さんとお子さんに良い所を見せてあげて下さいね」


笑顔でガッツポーズをし、アミナはローザに声を掛ける。

するとローザは、その笑顔に応えるように「おうよ!!」と拳を作って返した。


―――


「ここは荒野地帯のようですね」


アミナとローザはかなりの距離を歩いた。

そして辿り着いたのは周辺の木々が枯れ、大きな岩肌が露出している荒野地帯だった。

過酷な環境の為強力な魔物が生息している可能性が非常に高い土地だが、それ故に特殊な魔物がいるのではないかと予測し、遠くから見えたこの土地を目指したのだ。


「ここにローザさんの言う魔物がいるといいですね」


「あぁ、そう期待してる真っ最中だぜ」


そう言葉を交わして、2人は荒野を歩き出す。

乾いた風が吹き、砂が舞い上がる。

草木が生茂っている様子は極稀で、代わり映えのしない景色に、アミナはこの大陸に来た時の感覚を思い出していた。


「最初に飛ばされた地点がこういった過酷な場所である可能性もあるのでしょうか」


「そうだな。俺は何回か湖に落とされたり、こういう荒野……というか砂漠に飛ばされた事もあった。だから普通に参加者がいてもおかしくないな」


飛ばされる場所は完全ランダム。

流石に技量までは一瞬で判断はつかないか。

次に確認すべきは――


「私とローザさん以外にも2人、もしくは3人で飛ばされた人がいると思います。その基準とは何なのですか?」


「そりゃ単純明快だぜ。近くにいたヤツと飛ばされるんだ。でも俺が飛ばされた時は相方がすーぐどっか行っちまったから、全員が全員協力している訳でもねぇと思うぜ」


近くにいた複数の人間と同じ場所に飛ばされるという訳か。

協力をしたいと申し出る人はその人と協力すれば良いし、単独行動を好む人はそこで別れても良い。

どのみちあれだけの大人数が固まったいたんだ。

恐らく全員が誰かしらと一緒に飛ばされたに違いない。


アミナがそう考察しながら歩いていると、正面から突然「いた!!」という言葉が聞こえてきた。

その声に顔を上げると、そこには2人組の冒険者らしき風貌の男がいた。


「ようやく人が見つかったぜ」


「メイド服着たガキと……中年のおっさんか」


その言葉にアミナとローザはイラッときた。

そして同時に言った。


「私はもう18歳です」

「俺はまだ29歳だ!」


そう言われた冒険者2人は「お、おう……」とうろたえた様子を見せたが、言った本人たちも「え?」と顔を見合わせた。


「アミナちゃんって15歳くらいじゃないの……?」

「ローザさんこそ30代後半では……?」


謎の気まずい空気が、荒野の風をさらに乾かしたような気がする。

2人が生み出してしまった雰囲気に、ドスのきいた声で話しかけてきた冒険者も唖然としていた。

その空気をなんとか払拭しようと、アミナは咳払いをして冒険者達に声をかけた。


「それで、私達に何か用ですか?」


変な空気に目的を忘れそうになっていた冒険者は「そ、そうだったぜ」と言った。

本当に締まりの悪い4人だ。


「お前等はラムダの果実見つけられたのか?」


再びドスのきいた声で言う。

アミナはそのタイミングでどう答えるか迷った。

ここでハッタリを言うべきなのか、はたまた真実を答えて協力を求めるべきなのか。

しかしその間にローザが答えてしまった。


「まだ見つけられてねぇよ」


「そうか……でもそれだけ自信満々なら手がかりの一つくらいは手に入れてんだろ?」


今度はニヤニヤと笑っている方が言う。

その表情にはなんだか嫌な感じがした。


「おいおい、こんなガキとおっさんが手がかり掴めるハズがねぇだろぉ〜」


「おっと、それもそうだな。ギャハハハ!!」


2人揃って大笑いをした。

その2人を見て、アミナとローザの眉毛はピクリと動いた。


恐らく彼等も何も手がかりがないのだろう。

それを誤魔化して他者から引きずり出そうとする態度は頂けないな。

その上私はともかくローザさんを馬鹿にして……あれは人に何か言える状況なのだろうか。


するとローザはアミナに目配せし、ローザの心境を察したアミナはニヤリと笑ってから言った。


「……素直に仰ったらどうでしょうか。自分達は何も見つけられないド低脳なので、何か教えて頂けませんか?……って」


その煽り言葉に2人の冒険者はまんまと乗ってきた。


「あ?テメェこのクソガキ……今なんつった」


「言葉通りですよ。自身を有能と勘違いして、その自分達が分からないのなら周りの人も分かっていないと更に勘違いする。これをどう養護すれば低脳じゃ無くなるんですかね?」


アミナの口からは次々と言葉が出てくる。

目配せして合図したローザ本人でさえ、その事実に驚いていた。

しかしアミナもただ悪口を言いたい訳ではない。

他者の為に何も出来ない人間が、他者の為に何かを思う事が出来る人間を笑うのが、堪らなく許せなかったのだ。


「さっさとかかってきたらどうですか。どうせ最初からそのつもりだったのでしょう?」


アミナは手をひらひらと動かして更に煽る。

すると手前にいた冒険者が腰から剣を引き抜いた。


「クソ生意気な小娘が!!おい!!やっちまうぞ!!」


「あぁ!!殺したって向こうに戻るだけだ!!この収穫祭が終わったら覚えとけよ!!ぜってぇ酷ぇ目にあわせてやらぁ!!」


もう一人の冒険者はダガーを引き抜く。

完全に2人の頭に血を上らせる事に成功した。


「さぁ、ローザさん。お望みの時間ですよ」


アミナは短剣を引き抜かず、腰を落とした。

それに対してローザは自身に与えられた武器であるトンカチを手に持った。

その手は少し震えているようだった。


「別に望んじゃいねぇが、あいつ等ぶん殴れんのは願ってもねぇな。……まぁ、骨ぐらい拾ってくれよぉ!!」


冒険者の2人は一気に地面を蹴ってアミナとローザへ距離を詰めた。

アミナの方へは剣を持った男が、ローザの方へはダガーを持った男が接近してきた。

振るわれる刃をアミナは体を最小限の動きで躱し、ローザはなんとかトンカチで弾く事に成功した。

しかし、躱したハズのアミナの服に何故か斬れた痕が出来ていた。


なんでだ?

今の一撃は確実に躱したハズ。


「想像より速いですね。ほんの少しだけ侮っていたようです」


アミナはそう言って破けた服の部分をスキルで引き伸ばして修復した。


「へっ、さっきの大口はどーしたクソガキ」


手に持った剣を肩に乗せて余裕そうに言った。

ローザの方はというと、ダーガーのリーチの短さで辛うじて防げているようだったが、長くは持たないだろう。

何故なら相手は冒険者、ローザは一般人だからだ。


「言ったでしょう?"ほんの少しだけ"と」


余裕そうに肩に剣を乗せている間に、アミナは素早い動きで背後に回る。


「なっ!!速ぇ……!!」


男の目には、アミナが一瞬にして消えたように映った。

そして、背後に回ったアミナは体術で応戦しようと接近する。


「……って、そうなりゃ後ろに回るよな!!」


男は確信も無く、後方へ剣を振るった。

本来そのような無鉄砲な予測による攻撃は大きな隙を生むのだが、今回ばかりは成功と言わざるを得なかった。

刃がアミナの腹部寸前を通り過ぎ、アミナは咄嗟に体を後ろに仰け反らした。

あのままでは腸まで引き裂かれていただろうと思い、アミナは自身の身体を見る。

するとまたしても躱したハズの攻撃で服が破けていた。


「へっへっへ。やっぱし予測通りの動きしかしねぇなクソガキ」


まだ男は余裕そうな顔をしている。


何故だ。

何故あの男の攻撃が当たる。

あの程度の動きなら避けられないハズが無い。

それなのにどうして――


アミナは一度牽制の為に地面に落ちている石を拾って投げつけた。


「今更小賢しいぞ!!」


男はその石を剣を使って薙ぎ払おうとしたが、その石は男に接触する寸前で爆散し、砂の煙幕を作り上げた。

投げつける瞬間にスキルで分解し、意表を突いたのだ。

目に砂の入った男は剣を余計に振り回しながら砂煙を払った。

その時、アミナは男の振った剣に触れた砂の飛び散り方に違和感を覚えた。


「もしかして……」


彼女の中に一つの考察が生まれる。

それが事実ならばその男は早くもなんとも無いただの『誤魔化し野郎』という事になる。

この言葉が頭に思い浮かぶなり、アミナは口角を上げた。

その事実を証明したくなったからに他ならない。


「……やってやりますよ………」


アミナはニヤつきながら小さく呟いた。

するとその態度が気に食わなかった男はアミナに飛びかかって斬りつけてきた。

飛びかかってくる男の動きを見極め、アミナは地面に触れる。

そしてスキルを発動させて男の左右、上下、そして後方に岩と土を織り交ぜた頑丈な壁を作り出した。


「なっ!?何だこの壁!!どこから出てきやがった!!」


男は突然出てきた壁に戸惑う。

しかし数秒もしない内に正面が開いている事に気が付き、そこから出ようと試みる。

だがそれは不可能だった。

何故なら、そこにはアミナが立っていたからだ。


「さぁ、私を倒してここから出れますかね」


アミナは煽るような口調で言う。

今までの事から頭に血が上っていた男は怒りに任せて剣を振り抜こうとした。

その部屋の四方は男が剣を振るうには十分な広さをしており、男もその事実を確認しつつ剣を振るった。

堂々と攻撃を受けようとしているアミナの様子を戦いの中チラリと見たローザは「アミナちゃん!!」と心配の声を上げた。

だがすぐに「余所見してんなおっさん!!」と言われ、ダガーが振るわれた。


「死ねぇぇ!!クソガキがぁぁぁ!!!」


男が横薙ぎをしようと剣を横に大きく振りかぶり、アミナに斬撃を浴びせよとする。

完全に後ろに下げきった剣がアミナに襲いかかろうとしたその瞬間、何故か男の剣は壁のカキンッと当たって弾かれた。


「なっ!!」


男は弾かれた剣の方を見て驚愕した。

まるでひとつの事実を思い出したかのように。


「し……しまった……!!」


男が正面を向いた時には遅く、アミナの渾身のハイキックが炸裂し、その部屋ごと粉砕した。

アミナは男を踏みつけながら言った。


「やはり貴方のスキル……いや、この場合は剣の能力といったところでしょうか。剣の間合いを誤認させる魔法が組み込まれているようですね。貴方の頭に血が上っていて助かりました。自身でもその事実を忘れてしまうだなんて、本当におバカな方ですね」


アミナは足を退けて潰れた男の顔を見た。

男は「ち、ちくしょう……」とだけ呟いた気絶した。

自身の戦闘を終えたアミナは急いでローザの方を見た。

しかし、心配はいらないようだった。

ローザはローザなりに戦いを進めていた。


「オラッ!!オラッ!!」


「くそっ!何だこのおっさん!!こんな粗末なハンマーしか持ってねぇくせに!!」


男はダガーで応戦するが、ローザに体格的にも武器の質量的にも勝てずに力負けし、ダガーを弾き飛ばされてしまった。

そして最後に一発、ローザに頭を渾身のハンマーでぶん殴られ、頭から血を流して気絶?してしまった。


「はぁ……はぁ……ざ、ざまぁ見やがれ……これがお前等の馬鹿にした……中年親父の力だ……!!」


ローザは息切れを起こし、そのまま地面に倒れた。


「くはぁーー!!疲れたぜ畜生!!喧嘩なんてしばらく振りだったからよ。俺も衰えたもんだぜ」


掌を空に向けて伸ばしたローザの手に、アミナは水を渡した。


「お疲れ様です。1人でよく勝てましたね」


「我武者羅だっただけさ。アミナちゃんも頑張ってっし、俺もやんなきゃなってなってよ。てか普通、さっきの言葉は大人が言うべき言葉なんだろうけどよ、なんだかしっくりくるのが悔しいぜ」


ローザは起き上がって水を一口飲んでからアミナの顔を見つめた。


「アミナちゃん。助けてもらってすま――ん゙ん゙っ。ありがとうよ」


「私は助けたつもりは無いのですけど……まぁ、どういたしまして」


2人はお互いに手に取った水を飲み、戦いの余韻に包まれた。

事そのものは何も進んでいないこの戦いだったが、少なくともローザにとっては、初めて何かを成し遂げた感覚を得れた、いい機会となったのだった。



最後までお読み頂きありがとうございます!

そしてよろしければブックマークや感想の方をよろしくお願いします!

評価も頂けるととても励みになります!!

それでは次回もお楽しみに!!

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