第二章 10話『『元』究極メイド、収穫祭に参加する1』
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――状況を整理しよう。
私はカイドウさんにカチューシャの古代魔道具を預けた。
それからスターターに帰ってきてみたら中央広場がなんだか騒がしかった。
何かと思って見に行ったらローザさんがいて、中まで案内してくれた。
そしてこの催しが『収穫祭』と呼ばれるものだと教わった。
人混みの中には色々な国や街の特産品等の目新しい品が並んでいる出店が沢山あり、私はそれを片っ端から買った。
そしてその後、この催しの代表者が出てきて演説を始めた。
すると今行っているのは商業部門だと言い、そのすぐ後にサバイバル部門をやると宣言した。
彼が一度指を鳴らすと、私の目の前には豊かな緑が広がっていた。
「うん―――なんで?」
状況を整理してもなんだか納得がいかない現状。
ルールとしては特定の品を持って森から出ればいいらしい。
お買い物を楽しんでいただだけなのにこんな事をやるハメになってしまった。
しかも奪い合いありって物騒過ぎませんかね。
まぁ一応死んだりはしないらしいけれど……それでも初めてやる私からすれば不安だ。
「さて……ローザさん。ご説明願いましょうか」
アミナは振り向いて言った。
そしてローザは正座しており俯いている。
「私、こうなるならあの場に行かなかったんですけど。何故答えるのを焦らしていたんですか」
淡々とアミナは言う。
商業部門は楽しかったが、このサバイバル部門は想定外だしやりたいとも思わない。
しかしサバイバル部門があると知っているハズのローザには色々と問いたださなければならない。
「そ、それは……」
ローザの目は泳いでいる。
何か疚しい事でもあるのだろうか。
すると何か覚悟を決めたような表情をして、ローザは顔を上げた。
「じ、実はな。俺毎回サバイバル部門に参加してるんだけどよ、一回も指定された食材を持って帰れた事がねぇんだ。普段は尻に敷かれてる俺だが、そんな俺でも良い所見せたくてよ……お前の親父、収穫祭で優勝したんだぞって、自分の息子の自慢になりたかったんだ」
なるほど、そういう事か。
「はぁ……」とアミナはため息を一つ吐く。
「この行為そのものがカッコ悪いってのは分かってる。……だけど頼む!!俺にアミナちゃんの力を貸してくれねぇか!!」
ローザは地面に頭を擦り付けて頼み込んだ。
その様子を見てアミナは頬をポリポリと掻いた。
うーむ……どうしよう。
別にローザさんをここでほっぽりだす意味も理由も気も無いし。
ここまで熱心に頼み込まれちゃ断れない。
――つくづく押しに弱いな、私って。
「分かりました。私も負けるのは嫌いです。やるからには勝ちますよ。いいですね?」
ローザは顔を上げてパアッと明るくなんた表情をアミナに見せた。
「詳しい話を聞きたいので、少し歩きながら話しましょうか」
アミナは正座をしているローザの手を取って立ち上がらせた。
するとローザは「恩に着る!!」と立ち上がっても頭を下げてきた。
そのまま動こうとしないローザを、アミナは手を引いて連れて歩く。
その様子はまるで子供の手を引く親のようだった。
「でも、奥さんやお子さんにかっこいい姿を見せるって、どうやるんですか?脱出するまでそのにこちらの様子は見えませんよね?」
「その辺は大丈夫だ。この空間はガーベラさんの魔力によって作られた仮想空間。だからここの中でならあの人の視点は自由自在。それでここの光景は外に中継されて映像として映し出されるんだ」
「え。じゃあ不味くないですか?さっきの土下座も手を引かれて歩いてる様も奥さんやお子さんに筒抜けじゃないですか」
ローザはその言葉を聞いた途端、氷のように熱が引いていき、岩のように硬直していた。
『しまったぁぁーーー!!!』
映し出された映像からはとてつもない声量の叫び声がスターターの街に響き渡った。
その様子を見ている町の人達は大口を開けて爆笑しており、その中の一人の女性は「あなた……」と額に血管を浮かべながら赤面していた。
―――
「これからどこを目指しましょうか」
アミナは項垂れて歩いているローザに声を掛ける。
「ひ、ひとまず歩いてみるしかないな……」
彼の周りには、何か紫色の嫌な色が見える。
相当落ち込んでいるようだ。
「もう過ぎた事ですし、そんなに落ち込まないでくださいよ」
慰めの言葉をアミナが言う。
しかし彼の周りの嫌な雰囲気は消え去る事は無かった。
すると突然ガバっと顔を上げてアミナに熱弁し始めた。
「だって考えてみてもくれよ!メイド服着てる少女に土下座して手を繋いでもらって!!他の人の目にどう映るか!!」
「まぁ、女の子にメイド服着せて土下座して手を繋いでもらっているヤバい人じゃないですかね」
「そこまでハッキリ言わなくても良いじゃねぇかって言いたいけどその通りなんだよ!!」
アミナは包み隠さずバッサリと言い切ってしまった。
だがそれは仕方の無い事だ。
何故なら、それが事実だからである。
「それで、あの『ラムダの果実』というのはどこにあるのでしょうかね。まさか一つの木に全て生っている訳では無いでしょうし」
「ど、どうしてそれが?」
ローザはアミナの言葉に驚いて聞き返した。
「考えてもみて下さい。一箇所に全てあるとしたら一番最初にそこへ辿り着いた人が全て持ち去る事が可能になってしまいます。ですがバラけた所に設置すれば、少なくとも一人がすべてを独占する事は無くなります」
ローザは、アミナの洞察力に心底驚いた。
ローザも初めて参加した時、アミナが言っていた通りの説明を受けたからだ。
思えば最初に革手袋を直してもらった時もそうだった。
彼女はローザが何も言わずとも革の性質を観察して理解し、最適な方法で修復をしてくれていた。
彼女とならもしかしたら――ローザの中にそういった希望が生まれた。
「……食材を手に入れる方法は主に2つある」
ローザは意を決したように顔を上げて呟いた。
その続きの話をアミナは真剣に聞く。
「それは『見つける』か『奪う』だ。『見つける』は言わずもがなだ。この空間の何処かにある食材を見つけるだけ。そして、参加者の多くが利用するのは『奪う』だ。最初に食材を手にしたやつに襲いかかるんだ」
「でも一般人の方は丸腰ですよね。その場合ってどうなるのですか?」
「そこも心配はねぇ。武器を持っていない人にはそれぞれランダムで何かが配られる。アミナちゃんはベルトに差してある短剣があるから何も貰えなかったみてぇだけど、俺の場合は……ほら」
ローザは体中を弄ったり、地面を探したりした。
そして地面に落ちているトンカチを拾ってアミナに見せた。
「なるほど……武器はひとりひとつ持たされ、尚且つ死ぬ事は無い……。確かに一般人でも気軽に冒険者を相手できますね」
「あぁ。それにプラスで死ぬ時ゃ痛くねぇ。何度も死んできた俺が保証するぜ。死んだら死んだで向こうに戻るだけだ」
ローザは何故かドヤ顔気味に言ってきた。
そんなに胸張って言う事だろか。
しかしそれなら……って思いそうだったが、誰かしらトラウマを抱えそうな気がする。
まぁその場合は二度と参加しなければいいとうだけの話か。
「それと、奪うってのは別段人からじゃなくてもいいんだ」
「人以外にも目的の食材を狙っているものが?」
「あぁ。毎回恒例なんだがよ、森の中には7体の特殊な魔物がいるんだ。そいつらを倒して食材を手に入れる事も出来る。倒してゲットだから、まぁこれも奪うだな」
アミナは「なるほど」と呟く。
ざっくりとローザから教わったルールをまとめるとこうだ。
勝利条件は目的の食材を持って森から脱出する事。
その手段は、隠されたり設置されている食材を『見つける』か、先に見つけた他者や、至る場所に設置されている特殊な魔物との戦闘に勝ち『奪う』か。
参加者全員には何かしら武器が配布され、それで協力するもあり、強奪するもあり。
怪我を負っても痛みはないし、仮に死んだとてリタイア扱いとなって現実に戻される。
……こんな所だろうか。
サバイバルと言うからには何日もかかるのか、ガーベラさんが意図して設置した罠等はあるのか。
幸いスキルは使用できるらしいから、最悪どうにかなるか。
「大体分かりました。それではここがどこの辺りなのか確認してきます」
アミナは地面に手をついた。
そしてスキルを発動させ、自身の足場を周辺の木々より高くし、ドンドン上に上がった。
「もう少し」とアミナが呟いた瞬間、頭に何か硬いものが当たり、「ごえっ!!」と鈍い悲鳴が上がった。
「いっつつ……なんですか一体……」
地面に落下したアミナは頭を抑えながら呟いた。
そして空を見上げると、何やら透明な壁のようなものが見えた。
「大丈夫かアミナちゃん!」
「は、はい……。しかしなんですかあれは?何か壁があるような……」
「この空間には限界があるんだ。そこを越えようとすると壁があって、それは誰にも破れない」
「能力……というかスキルの限界という訳ですか……それがズル防止にも機能している……色々と考えられていますね……」
大きめなたんこぶを抑えながらアミナは感心する。
人間数百人を収容できる仮想の空間に、徹底された安全設計とズル対策。
正攻法でやれって事ですね……
「無闇矢鱈に歩き回るのは正攻法とは言えないと思いますが……」
アミナはそう呟いて立ち上がる。
そしてローザに声を掛ける。
「ローザさん」
「は、はい!なんでしょう!!」
凄い語気で言うアミナにローザは思わず敬語になってビシッと立つ。
「やるからには勝ちますよ!!」
アミナは気合を入れるようにそう宣言し、それにローザは「お、おう!!」と少し気の抜けた、しかし勝つ意思だけは感じられる、そんな返事をした。
「さぁて……収穫祭攻略を始めるとしましょう……」
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