第二章 9話『『元』究極メイド、他の街の商人達が来る』
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謎多きカチューシャを魔道具マニアであるカイドウの元へ預け、アミナはスターターへ戻ってきていた。
そしていつも通りフィーを小さくして鞄に隠し、城門をくぐって街へ入る。
「いい加減これも慣れちゃいましたね」
鞄を少しだけ開けてアミナは小さくなったフィーに声を掛ける。
サイズによって声をも変わるようで、甲高い子猫のような声で「にゃー」と鳴いた。
「でももっとスムーズに入れれば楽でいいのですが。フィーちゃんもいちいち小さくならなくて済みますし」
しかしそれは無理な相談だった。
本来街に魔物が入ることなど言語道断。
たまたまフィーがアミナに懐いているから被害が出ていないというだけで、本来ならば人間を喰らったり、建物を破壊したりと、もっとやりたい放題するハズだ。
忘れてはいけないのは、フィー自身が危険度ランクがS+という事だ。
可愛い仕草をするが、攻撃力は人間のそれを遥かに上回っている。
だからアミナは時たまフィーに「人を傷つけてはいけません」と言ったりしている。
「皆がフィーちゃんくらい賢い魔物だったら、いつか魔物と人間の共生も出来るかもしれませんね」
そんな夢物語を語りつつ、アミナは家の方向へ歩いていた。
すると何やら街の中央広場の方が騒がしかった。
「何でしょうか?」
アミナは家への道を逸れ、中央広場へと向かった。
その道中も何やら人数が多く、見慣れない服装をしている人も様々。
それに加えて荷物を持っている馬も大量に見受けられた。
「何かお祭りでもあるのでしょうか」
アミナは、ありえないな、と思いつつそう呟く。
何故なら、彼女もこの土地に住み始めてもう一ヶ月弱経過している。
そんな彼女の元にも最近になって、街の状況などが知らされるようになってきたのだ。
最初はやはり皆アミナの事を警戒していたようだが、便利な雑貨屋が出来て街の人はすっかりアミナを信用しているようだった。
そして、アミナは中央広場へと到着した。
そこで彼女が目にした光景とは――
「凄い……なんですかこの人の数…!!」
アミナが中央広場で目にしたのは、溢れんばかりの人で埋め尽くされた中央広場だった。
普段なら朝早く起きてジョギングをする人、仲睦まじい様子を見せるカップル、パフォーマンスや露店で何かを売っている人、そんな人しかいない中央広場が、今人で溢れかえってるのだ。
自由市場の時でさえ、もう少し人が少なかった。
アミナは早足で中央広場に近づいて行った。
そして何が起きているのか見ようと、人混みの後ろからぴょんぴょん飛び跳ねた。
しかし、ジャンプ力が足りず、見たくても見えない。
今ほど自身の身長の焦れったさを感じる事は無いだろう。
すると隣りにいた住人の一人がアミナに声をかけてきた。
「おう、アミナちゃんじゃねぇか。革手袋の時はありがとうな」
アミナはそう言われてその人の顔を見た。
その人はアミナが路上でスキルを使って物を直すという一種のパフォーマンスに近い事をしていた時に、一番最初に声をかけてくれた男性だった。
名前はローザという。
「この人混みが気になるか?」
「はい。今中央広場で何をやっているんですか?」
アミナが問いかけると、ローザは「見たほうが早いな」と呟いて、人混みの中へからだをねじ込んでいった。
ローザはアミナに「俺の後ろを歩いておいで」と言って、そのまま進んで行く。
疑問に思いつつもローザの言葉に従い、アミナは彼の後ろをついて歩き、無理矢理切り開かれた道を歩いた。
人混みの数は遠くで見たよりもずっと多そうで、何度かローザの姿を見失いそうになったが、なんとか持ち前のフィジカルで進んだ。
そして、人混みをなんとか抜けると、中央広場に到着する事が出来た。
するとアミナは目の前の光景に目を見開いた。
「これって……!!」
ローザは驚くアミナの表情を見て「いい表情するね」と呟いた。
「これがこの街で不定期に行われる商人の祭り――『収穫祭』だ」
中央広場のあちこちに、見た事の無い風貌の商人が何十人といた。
彼等は更に見た事の無い物を売り、見た事の無い種族もいた。
「あれは……エルフにドワーフ。あちらには獣人まで」
「ここにいる人全員が、自身の街や故郷、土地の特産品や自慢の品を持ってきて売りに来ているんだ。何せ、この街にはアミナちゃんが来るまでマトモな雑貨屋が無かったからな。それを気にした商業ギルドを運営してるお偉いさんが、不定期だがこの街にいろいろな街の商人を集合させるっていう計らいをしてくれてたって訳よ」
ローザは淡々と説明した。
その口調から察するに、彼も何度かお世話になっていたのだろう。
しかしアミナは、そんな事は頭の隅に追いやり、目の前に広がっている未知に興味を唆られて仕方が無かった。
ワナワナしているのをローザに察され、「店やってる身として、見に行ったらどうだい」と言われた。
「は、はい。そうさせて頂きます!!」
アミナは早足でローザの元を離れ、すぐに人混みの中へ消えた。
「わあ……!すごい、すごい!」
まず目に入ったのは、異国風の香辛料を扱う屋台だった。
店主は陽気な笑みを浮かべた褐色の男で、彼の前には小さな袋に詰められた色とりどりの粉が並んでいる。
「これは……! すごく鮮やかな赤色ですね! もしかして、火山の近くで採れる唐辛子だったり?」
「お嬢さん、鋭いね!これは『焔唐』って言ってな、山の神の祝福を受けた大地で育った唐辛子だよ。ほんのひとつまみで、どんな料理も情熱的な辛さになるぜ!」
その言葉とその考え方、そして何より火山地帯から来たであろうその商人は、第二大陸の最西端に位置する火山と共生する国、『バルア』の商人だった。
彼等は山で採取できる様々な鉱石を売っている事が多いが、その土地特有の植物もかなり有名だった。
「山の神の祝福……なんだかロマンチックですね!お一つ頂きます!!」
アミナはそう言って1袋分の代金を払い、焔唐を受け取った。
興奮したアミナは次の屋台へと足を向ける。
そこでは見たことのない形の果物が山積みにされていた。
手に取ると、表面はツルツルしていて、少し冷たい。
「これ、何ですか?なんだか宝石みたいに光ってる……」
「お嬢さん、これは『氷果』だよ。俺の故郷の『ラームル』で採れる果物でな、中の果汁が冷たくて、真夏にゃぴったりなんだ」
今度はこの大陸の最北端に位置する国『ラムール』の商人だった。
年中雪が降る彼等の生活も独特で、雪の中を裸で何日も耐える事で、神への感謝を伝える行事があったり、わざわざ凍らせた食べ物を食べるというのもあるらしい。
「冷たい果物ですか……そんなものがあったとは。お一つください!」
またしても1袋分の代金を支払い「はい、毎度!」と言われて受け取った。
アミナは購入した品を手のひらにのせたままじっと眺める。
すると、横から子供たちの笑い声が聞こえてきた。
その先に目をやると、小さな屋台で不思議な形のお菓子が売られている。
「この形、手作業でやるにはかなりの技術が必要とお見受けしますが……これはどうやって作るんですか?」
「これはね、『トロンビー』っていう魔物の蜂蜜をゆっくり煮詰めて、風の魔法を使いながら丁寧に引き伸ばすの。そうすると、こういう繊細な形になるんだよ」
トロンビーとは、南の方に多く生息している魔物だ。
危険度ランクはD、温厚な正確でとても友好的だ。
それを加味すると、この女性の商人は南の方角の国の商人である可能性が高い。
しかし南の国は特に人口も国も多く、そのどこの国かまでは分からなかった。
「風を感じるお菓子……凄い技術ですね!こちらもくださいな!」
そう言ってお金を払い、アミナはそれを口にした。
するととろけるような甘さと、トロンビーの蜂蜜特有の少しのほろ苦さが良い具合に調和し、コクのあるとても美味しいお菓子だった。
次に立ち寄ったのは、鍛冶屋の屋台だった。
金属の光沢が眩しい短剣や細工の施されたアクセサリーが並んでいる。
アミナはひとつの指輪を手に取った。
「これ、すごく軽いですね。でもすごく丈夫そうです」
「そいつぁ『霧銀』っつー特別な金属でできてるんだ。見た目は繊細だけど、普通の鉄よりもずっと強いんだぜ」
「軽さと強さを両立するとは……私も見習わなければ……」
どの屋台に行ってもアミナの興奮は収まらず、どんどん新しい発見をしては感嘆の声を上げる。
「えっ、この布、手触りが全然違います!これは何の繊維ですか?」
「お嬢さん、それは『星羊』の毛で織った布だよ。夜空の下で育つ羊の毛だから、まるで星のように輝くだろう?」
「これは人の手では再現できませんね……今度星羊を探してみるのもありかもしれませんね」
そんな感じでアミナは様々な屋台を回っては様々な物を購入した。
そしてしばらくしてローザの元へ戻った。
「よぉアミナちゃん。どうだった……って、聞くまででもねぇか」
ローザは手一杯に色々な物を抱えているアミナに向かって言った。
彼の方向へ歩いて来ているアミナの表情は、それはそれは満足そうだった。
「いやぁ〜大満足ですよ。これだけ自分の知らない土地の知らない物があって、食いつかない人はいませんって」
「そう言ってもらえたんなら、教えて正解だったぜ……でも、実はこれで終わりじゃないんだなぁ」
何か含みをもたせるような言い方をしたローザの顔はなんだかニヤついていた。
アミナは「まだ何かあるんですか?」と聞き返した。
するとローザは、その質問を待っていた、と言わんばかりの謎のドヤ顔をかました。
「ふふふ……そいつぁ、これから分かると思うぞ。……ほら、丁度今回の代表が前に出てきた」
そう言われてアミナは中央広場の更に中央部分へと目をやった。
そこには一人、身なりがとても整った男性がいた。
その男性は水晶を口に当てて喋り始めた。
「皆様、今日は収穫祭にご参加頂きまして、誠にありがとうございます。私、収穫祭運営最高責任者兼、商業ギルド『ファルスタ』の副代表を務めさせて頂いております『ガーベラ・カーリン』と申します」
男の声は水晶を介して大きくなったようだった。
その水晶の名は拡声水晶。
水晶の中に特殊な魔力が込められており、それを通り過ぎた声や音は大きくなるらしい。
しかしこれも第四大陸ではあまり見かける物では無かった。
「さて、収穫祭商業部門はそろそろ幕引きとなります……」
アミナは「ん?」と呟いた。
その男の言葉が疑問に思えたからに他ならない。
ローザにどういう意味か訪ねようとすると、ガーベラは再び口を開いた。
「それではこれより、収穫祭――お客様参加型のサバイバル部門を開始したいと思います!!」
ガーベラのその宣言に、その場にいた全員が「うぉぉ!!」と雄々しい声を上げた。
しかしアミナだけは「え」とだけ呟いてガーベラの方を見る。
「ルールは毎年恒例、私が指定した食材をサバイバルをしながら集めて頂きます!協力するもよし、奪い合うもよし!ここは冒険者の街、スターター!!冒険者らしい活躍をご期待しております!!」
ガーベラはそう言って指をパチンと鳴らした。
すると空中に何やら映像が映された。
彼のスキルだろうか、とアミナは困惑の中考察した。
「今回の食材はこちら――『ラムダの果実』です!!」
そう言って手をかざした所に、ラムダの果実と思しき映像が映し出される。
その形状は果実とは思えないほどにゴツゴツとした異質な形状をしていた。
「さぁ皆様はこの果実を手に入れ、収穫王になれるのか!!」
正直アミナは心の中で、別になりたくはない、と呟いた。
しかし、そんな事はお構い無しで、周囲の冒険者達は騒いでいた。
「これから、私の作り出した空間へ皆様を飛ばします!!そこでは死なず、一人一つ武器が与えられ、それを駆使してサバイバルしつつ、目標の食材を発見し、森から脱出して下さい!」
サラッと凄い事を言っていた気もするが、あのガーベラという人、只者ではない。
彼のあれがスキルかどうかは私には分からないが、サラッと自身の空間へこの場の全員を送るというのは中々の強者である事に間違いはない。
そしてその後、ガーベラは右腕を空高く掲げ、振り下ろしながら指を鳴らした。
「収穫祭、サバイバル部門の開始です!!」
指が鳴った瞬間、アミナ含めその場の全員が一瞬にして別空間に飛ばされた。
ただ気になって見てみた収穫祭。
その結果が思わぬものになろうとは、この時のアミナは全く思っていなかった。
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