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第二章 8話『『元』究極メイド、知り合いを尋ねる』

よろしければブックマークや感想の方よろしくお願いします〜!



ガレキオーラの一件から2日、アミナはフィーに乗ってとある場所を目指していた。


「この道を真っ直ぐ進めば見えてくるハズです」


アミナはフィーにそう指示する。

草原が周囲には広がり、街どころか、人っ子一人いない。

するとフィーは今どこに向かっているのか、と言いたげに語尾を少し上げて鳴いた。


「あぁ、そういえばフィーちゃんは会った事無かったですよね。到着したら紹介しますね」


その言葉ではいまいち納得がいかなかったフィーだったが、アミナにそう言われてしまっては仕方がない。

視線を前に戻し、フィーは歩みを早める。



―――



「さぁ到着しましたよ。ここが今日の目的地です」


アミナはそう言って目の前にあるボロボロの家をフィーに見せびらかした。

一度森に入り、深い所まで歩くと一つだけポツンと家があった。それが目の前のボロ家だ。

するとフィーは呆れた顔でアミナの服を引っ張って無理矢理連れて帰ろうとした。


「ちょっと!なにするんですか!」


自分の主がとうとう頭がおかしくなった、フィーはそんなつもりだった。

しかしアミナに口と服が引き剥がされ、引っ張るのを諦めた。


「ここに住んでる人に今日は用事があったんです。ほらフィーちゃん、ちっちゃくなって下さい」


アミナに促されるがままにフィーは小さくなった。

そして小さくなったフィーを抱きかかえて、アミナはボロ家の扉をノックした。


「ごめんくださーい」


反応はない。

扉は無言を貫いている。


「すみませーん、私です。アミナです」


名乗っても反応がない。

やはり自身の主は頭が狂ったか、とフィーは落胆した。

しかし扉の向こう側に人の気配は確かに感じていた。

同時にそれを察したであろうアミナはため息をついて「またですか……」と呟いた。

その後息を大きく吸い込んで大声で叫んだ。


「おい!早くこの扉開けないと、このまま扉ぶっ壊してお前の事全裸で縛りあげて、公衆の面前でセクハラするぞ!!!」


とんでもない台詞を吐き捨てたアミナに、目を丸くして驚いたフィーだったが、アミナの表情や匂いから、本心ではない事を察した。

すると、扉の向こう側で「はっふん!!」と気持ちの悪い声が上がった。

そしてようやく扉が勢いよく開いた。


「それだけはご勘弁をぉぉぉ!!!」


ボロ家の扉から出てきたのは一人の青年だった。

整った顔立ちの彼は何故だかモジモジとしている。


「カイドウさん……もうこれやめませんか。恥ずかしいですし、人を罵るのは私の趣味じゃありませんし」


「えぇ!?それは困るよ!!僕はメイドさんに怒られるのが夢だったんだ!!なのに僕の周りには何故か優しくて可愛い女の子ばっかり。僕は怒られたいのに何しても怒らない子ばかりでウンザリしてた所に貴女が現れてくれたってのにこれをやめろって……僕はそれでは死んでしまうぅぅ!!!」


再びアミナを連れて帰ろうと巨大化してアミナを咥えるフィー。

しかしジタバタともがくアミナを仕方無く地面に降ろした。

この間誰も声を発さなかったのが、とてもシュールだった。


「コホン。フィーちゃん、ご紹介しますね。こちらの方は『カイドウ』さんです。様々な魔道具の知識のある魔道具マニアの方です」


「やぁ、フィアレーヌ・ラピセリア・グランシエル・ノヴァリス・エテルナ君。改めまして僕はカイドウ。アミナさんの―――ペットさ!!」


自己紹介はさておき、最後の余計な一言にアミナは「違います」と言って頭頂部を殴った。


「フィーちゃんと出会う前に路地裏で何故か項垂れていたので、私が助けました」


「いやぁ、あの時は参ったよ。お腹が減る感覚が気持ち良すぎてね。飲まず食わずで過ごしていたらすっかり死にそうになっちゃって。あっはっはっは」


カイドウは高らかに笑った。

もうお気づきだろうか、彼は生粋のドMだった。

先程の彼の発言を補足しておくと、彼は整った顔立ちで女性にモテてしまう。


その女性達は自身にとても優しかった。

しかし彼はそうは望んでいない。

むしろ罵詈雑言を浴びせられて肉体的疲労や苦痛を与えられる事に快感を覚えるタイプだった為、女性からのアプローチを全て無視してきた。


そこに現れたのが、まだ仕事の見つかっていない時のアミナだった。

アミナは物を食べようとしない彼に無理矢理口の中に食料をねじ込む、水を飲ませた。

どうやらその強引さに、アミナの中の隠れた『S』を感じてしまったらしい。


しかし魔道具の知識は豊富で、それらを作る技術はないが、詳しい情報をよく知っていた。


「まぁ、とりあえず入りなよ。せっかく来てくれた訳だしお茶でも飲んでいって。フィアレーヌ君も、さぁ」


カイドウに促され、アミナは中に入る。

自身の呼びなれない呼び方になんだか違和感を覚えつつ、フィーも彼の家の中へ入った。


家の中に入ると、外見とは異なり中は普通の家だった。


「それで、今日はどうして来たんだい?もしかして僕を罵りに?」


お茶を淹れてテーブルに持ってきたカイドウは言った。

彼の淹れたお茶は、メイドだったアミナから見ても、とても美味しいお茶だった。

アミナは一口お茶を飲んでから喋り始めた。


「そんな訳ないでしょう。……実は、見て欲しい魔道具がありまして……」


彼の意見を否定しつつ、アミナは荷物の中を漁った。

そして取り出したのは、ガレキオーラの弱点となりうる情報をアミナが知る事の出来たキッカケであり、謎の老婆が置いていった謎多きカチューシャだった。


「これは?カチューシャかい?」


「はい、しかもこれ、どんな物でも知る事が出来る……らしいです」


物珍しそうにカチューシャを眺めているカイドウに、アミナは「着けてみて下さい」と言った。

それに頷いてカイドウはそのカチューシャを頭に着けた。


「着けたら、知りたい事の情報を箇条書きするように思い浮かべて下さい。知りたい事の詳しい要素を」


カイドウは目を閉じて何かを思い浮かべるようにして少しの間黙った。

アミナもフィーもその様子を黙って見つめている。


この魔道具が私以外の人にもあの時の感覚を味合わせるのなら、カイドウさんにも多少なり反応が見られるハズ。

その感覚を彼が知ってくれれば、この魔道具の正体に何か気がついて、教えてくれるかもしれない。


するとしばらくすると、カイドウが目をありえんばかりに見開いた。

その光景にアミナは、来た……!、と心の中で確信した。


「うぉぉぉ!!!」


カイドウは叫んだ。

恐らくアミナが体感した感覚を味わっているのだろう。

事前に説明しなかったのは申し訳無いが、これで彼もこの異質な魔道具に違和感を覚えてくれるハズだ、と心の中で呟いた。


そして叫び声が止まった後、アミナは「カイドウさん……?」と恐る恐る声をかけた。

どんな反応が返ってくるかある程度は予測していたが、彼の反応はそのどれとも違った。


「うおぉぉ!!これは凄い!!女性を怒らせる100個の方法だそうだ!!是非詳しく!!」


「って!!何知ろうとしてるんですか!!」


アミナの激しいツッコミが彼の頭に炸裂する。

すると殴られた拍子にカチューシャは地面へと転がった。


「あ、ごめんごめん。知りたい事って言われたからつい……」


「私は貴方に自身が気持ちよくなる方法を知ってもらう為にこの魔道具を持ってきた訳じゃ無いんですけど……」


カイドウは呆れるアミナから離れ、飛んでいったカチューシャを手にとって、ついてしまった汚れを少しだけ手で払った。


「でもこれは凄い代物に間違いないよ。僕は魔道具ならすぐに分かる。魔道具から放たれる魔力は人間や魔物が放っているものとはかなり違うからね。でもこれは実際に着けてみるまでただのカチューシャにしか思えなかった。そんな性質を持つ物体は、僕の知っている限りこの世に一種類しかない」


「―――古代魔道具……ですか」


カイドウは静かに頷き、カチューシャをテーブルの上に置いた。


「これがいつの、そしてどこの魔道具かは僕にも分からない。……アミナさんはこれをどうする気なんだい?」


そう聞かれ、アミナは一瞬考えた。

それは、この魔道具についてカイドウが何か知っているかもしれない、と思って彼の元を尋ねたのだが、彼ですら知り得ないものだった。


彼がカチューシャの事を知っている前提で来てしまった為に、その後のことを全く考えていなかったのだ。

しばらく考え、アミナは口を開く。


「このカチューシャは素性のよく分からないご老人が持ってきました。そして彼女はこう呟いた気がしたのです。「もっと我々の役に立っておくれ」と」


「一応聞くけれど、面識は無いんだよね」


「はい。この大陸に私の知り合いは少ないです。ですので一度見たり話したりすれば忘れません。しかしあの方にはどうも見覚えがなかった。だからこの魔道具の正体をカイドウさんに聞いて作戦を練ろうかと思っていたのですが……」


「僕でも分からない物体だから作戦が練れそうに無い……と」


アミナの心を見透かすように言われ、アミナはコクリと頷いた。


「……よし、僕の持っている資料からこの古代魔道具の文献を探してみるよ。何か分かったら連絡する」


「よろしいのですか?」


「あぁ。自称とはいえこれでも魔道具マニアだ。知らない物があるなら調べてみせるさ。……それに、僕はそんな不安そうなアミナさんの顔より、もっと強気でガツガツしていて、強引な方が好きかな」


「カイドウさん……」


カイドウがアミナの手を取って握る。

しかし、なんだかいい雰囲気……とはならない。

何故なら――


アミナは顔を上げてカイドウの顔を見る。

すると彼の表情はアミナと戦いたいと言っていた時のエルミナの表情そっくりだった。


そう、忘れてはならない。

彼は生粋のドMなのだ。

先程の言葉もそれを加味して考えると、いい意味に聞こえてこない。

とても頼りになる優秀な人だが、こういう所がなんだか勿体ない人だ。


―――


「ではすみませんがよろしくお願いしますね。カチューシャはカイドウさんが預かっていて下さい。本物があった方が何かと便利だと思いますし」


アミナは外に出てフィーに乗りながら言った。


「うん、そうさせてもらうよ。何かあったらこれで連絡するね」


カイドウはそう言って小型の水晶を投げ渡してきた。


「これは?」


「それは通話水晶。片方に魔力を込めると魔力を込めた分だけ水晶を通じてもう片方を持っている人と会話ができるんだ。第二大陸じゃ結構普及してるけど、第四大陸じゃ貴族とか王族とかしか使ってないかもね」


アミナはそう言われて思い出した。

確かにサルバンもそんな感じの物を使ってどこかと連絡を取っていた。

しかしここまで小型とは思わなかった。

当時見ていたのはそこそこの大きさで、とてもじゃないが持ち運びには適していない見た目だったからだ。


「ありがとうございます。それでは失礼しますね」


「あぁ、また遊びにおいでよ。魔道具関連じゃなくてもいいからさ。そして……僕をメタメタに罵ってそれで……アハッ……!!」


くねくねとしながら余計な一言を付け足した。

アミナは苦笑いしながら「それは別にしませんけど……」と否定した。

そして、彼に見送られながらフィーの背に揺られ、アミナは街へ戻った。


アミナが見えなくなるまで手を振っていた彼は、アミナが見えなくなると腰に手を当てて一息ついた。


「さて、ご期待に応えてみせますかね」


そう呟いていそいそと家の中に戻っていった。

その後、家の中からはガタガタとガチャガチャと、喧しい音が鳴り、静かな森が普段より騒がしくなった。




そして、アミナはと言うと、街に戻っている最中に呟いた。


「カイドウさんでも知らない古代魔道具……謎の老婆……わからない事だらけですが、今はお店の事に集中しましょう」


フィーにそう投げかけ、フィーもそれに返事をする。

風を切って走り抜けるフィーの背に揺られ、アミナは、スターターへと帰るのであった。



最後までお読み頂きありがとうございます!

今回ちょっとした箸休め回といいますか、まぁそんな感じです!


そしてよろしければブックマークや感想の方をよろしくお願いします!

評価も頂けるととても励みになります!!

それでは次回もお楽しみに!!

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