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第二章 4話『『元』究極メイド、特殊な矢を作る2』

よろしければブックマークや感想の方よろしくお願いします〜!

少し加筆してタイトルを作る物でまとめる感じにしました。

あと次回は恐らく夜になると思います!

明日以降はお昼に一つ、夜に一つか二つ上げる予定です!



アミナは謎の老婆に半ば無理やり押し付けられたカチューシャによって、アーチャーの冒険者が求めている矢が、シュバルドンという魔物の牙から作られている事を知った。

半信半疑ではあるが、今はその情報に縋るしか無く、依頼から2日目の早朝にアミナはシュバルドンが生息しているとされている荒野へ向かった。


「フィーちゃん、今回もよろしくお願いしますね」


アミナはフィーに乗って荒野を移動している。

主人にそう言われ、「にゃあ」と低い鳴き声で反応した。


小さい時はあんなにも可愛らしいのに、大きくなるとここまで逞しく頼り甲斐のある生き物が他にいるだろうか。

まぁ、大きくても可愛い事には変わりないが。


「シュバルドンの住処は荒野の水辺付近だそうです。水辺に住んで、水を求めて近づいてきた生物を奇襲して捕食するらしいです」


先程から「そうです」や「らしいです」等言っているのは、カチューシャの情報が正しいか半信半疑だからに他ならない。

しかし頼れる情報はそれしか残されていない為、アミナとフィーは荒野の水辺へと足を運ぶ。


「不肖このアミナ、またまた一狩り行きます!!」


―――


スターターを出発してフィーの足で半日、普通に歩けば2日はかかっていただろう。

そこは巨大な荒野のオアシス、『ナタ湖』。

湖の周囲がおよそ十数キロの、荒野では珍しい巨大な湖だ。

近くに川は無いが、枯れることは無い。

なんでも地下にとてつもなく巨大な大洞窟があり、そこから水が吹き出したらしい。

水が吹き出して湖が出来た年から年に数回、水が吹き出る為湖は枯れないそうだ。


「この湖にシュバルドンが……。彼等は水陸のどちらでも生きられるそうなので、私達は陸上で待ち構える事にしましょう。今のところ彼等の影は見受けられませんし」


アミナはフィーから降り、一緒に湖の周辺を歩くことにした。

当たり前だが湖には遮る物が無く、対岸までよく見えた。

湖そのものも穏やかで、とても危険度ランクAの強力な魔物が住んでいるとは思えなかった。


「穏やかな場所ですね。街の喧騒も最近は悪くないと思えるようになってきましたが、これだけ穏やかだと第四大陸での暮らしを思い出します」


アミナのその言葉にフィーも穏やかそうに「にゃあ」と返す。

素材回収の為に魔物を狩りに来たつもりが、すっかりただのハイキングになってしまった。

折角なのでアミナとフィーはナタ湖に来るまでに遭遇した魔物を使って料理をし、少しだけ早めの昼食を摂る事にした。


アミナは革袋の中から細長い魔物を取り出した。

その魔物はサンドワーム。

危険度ランクDの魔物。

荒野や砂漠に広く生息し、主な食事は地中に住んでいる微生物や枯れた植物等だ。


「サンドワームのお肉は雑菌が広がりにくいという特性を持っているので生で食べる事が出来ます」


アミナはそう言って切り出したサンドワームの一部をフィーにあげた。

続いてアミナも生肉を口にする。

サンドワームは全身が筋肉な為、肉の弾力が強いのだが、体に水分を保たなければ干からびて死んでしまうので、肉の保湿性能も高い。

その為肉は比較的しっとりとしている。


「味は……豚に近いですね。程よい塩加減です」


アミナは肉を薄く切り始め、街で買っておいた水分を多量に含むレインレタスを取り出し葉を何枚かちぎる。

そしてパンに切れ込みを入れてそこに先程の材料達を挟んでいった。


「じゃじゃーん、ここに来る途中で狩ったサンドワームでサンドイッチを作ってみました。……サンドだけに」


アミナの寒いダジャレを寒い表情でフィーは見つめた。

まるで大罪を犯した犯罪者を見るかのような目で。

アミナは今の言葉を無かったことにしたかのように一瞬黙ってから口を開いた。


「……フィーちゃん、どうぞ召し上がれ」


フィーは差し出されたサンドイッチを器用に食べ始めた。

きっと美味しかったのだろう。

フィーは嬉しそうな声で鳴いた。

それに続いてアミナもサンドイッチを口に運んで「うん、百点」と自画自賛の様子だった。

具材そのものはシンプルだが、わざわざ挟んで食べるというひと手間と、誰かと一緒に食べるというだけで随分と食事の豊かさは変化する。


そんな第二大陸では珍しい平穏な時間が流れていた中、フィーは食事が終わると湖に近づき、水をちょいちょいと触った。

アミナはその様子をニコやかに見つめる。


「フフ、そうですよね。よくよく考えればフィーちゃんは森に住んでいたんですもんね。湖だって見た事無いハズです」


フィーちゃんの住んでいたクヌフ森林には川はあったが、湖は無かった。

物珍しく思うのも当然だろう。


そんな事を考えていると、フィーの近くの水がボコボコと泡を立て始めた。

その泡を見るなりフィーは後退し、威嚇するような姿勢を見せた。


「あの泡……まさか……」


フィーの異様な反応と水面に浮かぶ泡から、アミナは急いで短剣をベルトから引き抜き、低く構える。

すると次の瞬間、湖が大きな飛沫を上げ、視界が水の壁で覆われた。

そしてその中から現れたのは、平たい体を持った鰐の様な生物だった。

大きな口から飛び出た巨大な牙が特徴的で印象的だ。


「これが……シュバルドン……!!」


その大きさは軽く4〜5メートルはあった。


「フィーちゃん!あれが今回目的の牙を持っている魔物です!一緒に戦ってください!」


フィーはアミナの言葉に返事をするより早く巨大化し、「シャーッ!!」と叫んだ。

そして先制攻撃をするように巨大な爪を振り下ろした。

しかし素早く水に潜ってしまったシュバルドンには当たらず、ただ水飛沫を上げただけだった。


水中から出てくるのを待っていたアミナとフィーだったが、突然水中から水飛沫がフィーに向かって飛んでくる。

その凄まじい速度で飛んでくる水飛沫を本能的にフィーは避けた。

すると着弾した先の地面がごっそり抉り取られた。


「あの威力……喰らったら不味いです。フィーちゃん、深追いはしないようにしてくださいね」


フィーは尻尾を振り回して返事をすると、再び水中から出てくるのを待った。

しばらくすると、今度はアミナの足元の地面が盛り上がり、そこを突破ってシュバルドンが大口を開けて飛び出してきた。


「なっ……!!」


アミナは咄嗟に飛び退き他の地面へ着地した。

すると、今度は地面や水の中に潜らず、そのまま陸上に出てきた。


「陸上にいる今がチャンスです!早急に叩きます!」


アミナは身を低くして近づく。

フィーもそれに合わせて素早く接近する。

そしてシュバルドンの体を両サイドから斬りつけた。

シュバルドンは短い手足では抵抗する事が出来ず、意図も簡単に斬る事が出来た。

しかしこちらもそこそこ硬く、アミナが斬った方は大した深い傷にはなっていなかった。


「膂力が私では足りないか……!」


アミナは手応えの無さに少しだけ下がり、その間フィーが戦う。

大口を開けたら後退し、口を閉じた瞬間に攻撃を仕掛ける。

そんな攻防が続いている。


このままじゃ防御力が上のシュバルドンがいずれフィーちゃんに攻撃を当てて傷を負ってしまう……。

何か……何か、シュバルドンの弱点を……。


アミナは必死に頭を働かせる。

すると一つ、ふと思いついた作戦があった。

それは生物的特徴を逆手にとった作戦で、タイミングを見誤れば大怪我では済まない、最悪死ぬ可能性すらある。

でも、やるしかない――

アミナは覚悟を決め、短剣を引き抜く。


「フィーちゃん!!すみませんがアイツを引き付けておいて下さい!」


フィーに指示を飛ばしたアミナは横に走り出す。

それを横目に見た後、フィーは再びシュバルドンと戦闘を始める。

その隙にアミナは遠回りに遠回りに走ってシュバルドンの背後へ向かう。

しかしそれを見逃すほど、危険度ランクAの称号は伊達ではない。

尻尾で地面叩き、凄まじい速度の砂粒を飛ばしてくる。

アミナは咄嗟に前へ飛び込んで避ける事に成功したが、またしても着弾した先の木が折れるほどの威力だった。


「そう簡単には後ろに回らせてくれないか……」


そう呟くが走るのは止めない。

地面から放たれる散弾の如き砂の雨がアミナを襲う。

走り抜け、腕を振り上げ、脚を畳み、頭を丸める。

そうして攻撃を躱していくが、一瞬踏み込むのを躊躇した事で頭を掠りそうになった。


「――!!」


その同様でアミナは少しだけその場に留まってしまった。

すると何が起こるのかは明白である。

なんとかギリギリで避けていたシュバルドンの攻撃が、一斉にアミナを襲う。

アミナは咄嗟に地面に触れてスキルを発動し、壁を作り出した。

しかし同じ強度の物体が威力を持った同じ物体に勝てるハズも無く、壁にはあっさりと穴が空き、アミナの左肩を貫いた。


「――ッ!!」


アミナは声を殺して痛みに耐える。

貫かれた部分が熱された釘を刺されているかのような痛みとなって腕全体に広がる。

血は絶え間なく流れ続け、メイド服の白を真紅に染める。

血の匂いを感じたのか、フィーがとてつもない怒号をあげてアミナに近づこうとするが、砂の散弾による牽制で中々近づけない。

完全にこの状況はシュバルドンに有利だった。

アミナは壁に空いた穴からシュバルドンを観察しながら思考する。


どうする……。

左肩、というか左腕は使い物にならない……。

かと言って片腕で作戦を実行するのだって不可能に近い。

だけど、一度やると決めたからには――やらない訳にはいかない。


シュバルドンはフィーに背を向けアミナに近づく。

後ろから奇襲をかけようとするフィーだったが、またしても砂の散弾が放たれ、微妙な距離感を保ってくる。


もう少し……あと少し……


ノソノソと近づいてくるシュバルドンを見ながらアミナは心の中で呟く。

そして、アミナのいる壁まで残り数メートルとなった。


今だ……!!


その瞬間、アミナは地面に触れてスキルを発動した。

砂が巻き上げられ、砂埃が発生する。

シュバルドンは困惑したような鳴き声を上げ、周囲を見回しながら鼻を動かす。

アミナの血の匂いを追おうとしているのだろう。

しかし、時は既に遅かった。


砂埃が晴れた一瞬、アミナは上空からシュバルドンの巨大な口めがけ短剣の刀身を限界まで細くし、レイピアのような形状にした。

長く鋭くなった刀身は、シュバルドンの上顎をを突き刺した。

しかしそれでも短剣では両方の顎を同時に貫く事は出来ず、硬い表皮の上顎に辛うじて刺さっただけだった。

作戦失敗か……そう思われたが、アミナの顔には笑みが浮かんでいる。


「やっぱり刀身が足りなかったか……でも!鉄ならここにあるじゃないですかッ!!」


アミナは自身の左肩から流れる血をスキルで分解、再構築しシュバルドンに突き刺してある短剣の刀身をみるみる伸ばしていった。

壊れるギリギリまで細く調節した刀身は、アミナの血中の鉄分によって少しだけ伸び、シュバルドンの上顎と下顎を完全に貫いた。

そして、短剣の先端を抜けないように形状を変化させ面積を広げた。


アミナは短剣を離し、後ろに飛び退く。

シュバルドンは自慢の口が開けられなくなって焦っている様子だった。


「鰐というのは噛む力に比べ、開く力が極端に弱いそうですね。流石にあなたに通じるかは一か八かの賭けでしたけど……口の開けなくなって動揺しているあなたに恐怖する要素はもう無い!……フィーちゃん!お願いします!」


シュバルドンが動揺して正常な判断が出来ない内にフィーは凄まじい速度で正面に回る。

シュバルドンは再び尻尾で地面を抉り、砂を飛ばしてきたが、明らかに威力と命中精度が下がっていた。

その為あっという間にフィーに距離を詰められた。


フィーの巨大化した腕が振り上げられる。

陸上では逃げ足の遅いシュバルドンに最早逃げる術は無い。


「やぁーっておしまい!」


アミナの掛け声でフィーはその巨大な腕を振り下ろした。

その一撃にはアミナに怪我をさせてしまった自分への怒りと、怪我をさせた張本人への殺意が込められた一撃だった。


すると振り下ろされた腕は硬い皮膚など無いかのように背中から押し潰し、腹部から行き場を失った大量の血液が飛び散った。

そしてシュバルドンは最期に尾を少しだけピクッとさせると、その後は動かなかった。


「……ふぅ……フィーちゃんのお陰でなんとかなりました……。ありがとうございます、フィーちゃん」


アミナは礼を言うが、それよりもフィーはアミナの左肩の傷を気にするように傷跡を見ている。

それに気がついたアミナは「大丈夫ですよ」と笑顔で言った。


「街に戻ったら回復薬で回復しましょう。それと……これも持ち帰らないといけませんからね」


アミナは無傷の右腕で短剣をシュバルドンの口から引き抜き、牙を切り取った。

その他の素材もなんとか片腕だけで分解する事が出来、持ってきておいた大量の川袋の中に下処理をして全て入れた。


全ての素材を回収し終わり、アミナとフィーはナタ湖を後にした。


「さて……今回も、一狩り完了です」


アミナは流れ続ける血液を布で縛りながら、戦いの余韻に浸っていた。



最後までお読み頂きありがとうございます!

そしてよろしければブックマークや感想の方をよろしくお願いします!

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それでは次回もお楽しみに!!

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