第二章 3話『『元』究極メイド、特殊な矢を作る1』
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『アミナ雑貨店』開店2日目――。
初日は盗品を修理に持ってきた不良冒険者の相手をし、午後には回復薬を作るという依頼をされ、本当の意味での最初のお客さんが来たりと、駆け出しは順調?だった。
私はとりあえず、オーロ民族のダガーはこの街の冒険者ギルドに預ける事にした。
私が持っていても仕方が無いし、何より少数民族となってしまったオーロ民族の歴史を物語る重要な文化財だ。
冒険者ギルドを通じて王都へ、王都から第三大陸へ送ってもらう手続きをしてきた。
ついでに、闇商人からの横流しの可能性も告げておいた。
聞けば、あのスキンヘッドの冒険者達はもうこの街には居ないそうだ。
何やらとても慌てた様子でそそくさと行ってしまったらしい。
お金がなくてクエストに行ったのか、また悪い事をしようと他の街に行ったのか、それとも私が怖いのか……って、最後のはないな。
すると今日は午前中の早い時間帯からドアベルがガランと鳴った。
「いらっしゃいませ」とアミナがお辞儀すると、そこには男性2人、女性2人の冒険者がいた。
パーティーメンバーだろうか。
「今日はどのようなご要件ですか?素材収集から道具の製作、修理までなんでも対応していますよ」
アミナが鋳型に流し込んだ金属のように商売上の決められた言葉を口にする。
するとアミナのその言葉に反応したのは腰に矢筒を携え、背中には立派な弓を背負っている男性の冒険者だった。
恐らくこのパーティーのリーダーで、職業は弓術士なのだろうとアミナは予測できた。
「実は、特殊な矢を一本作って欲しいんだ」
「特殊な矢……と言いますと?」
「実は俺達が今も受けている最中のクエストで『ガレキオーラ』を討伐する、というクエストがあるんだが……」
ガレキオーラ
危険度ランクAの大型の亀型魔物だ。
その甲羅の装甲は非常に固く、基本的には魔法使いの貫通系の魔法か、圧倒的なパワーによって叩き割るというのが攻略の基本となっている。
「そいつの体をぶち抜く火力が俺等のパーティーには無くてな、半ば諦めていたんだが、風の噂でその装甲を破れる矢があるって聞いたんだ。だからここでそれを作ってくれないか?」
確かにこのパーティーはどう見たって、アーチャー、盗賊、僧侶、戦士、と直接攻撃力になんだか欠けるパーティー編成だ。
普通ならクエストの選択ミスにしか思えないが……
アミナはチラリとそのパーティーの装備を見る。
その装備は先日やって来たスキンヘッドの男達や、回復薬を作ってあげた青年とは比べ物にならないほどいい装備をしていた。
装備見る限り結構ベテランだよな……
エルミナさんのパーティー程じゃないけど、誰がどう見てもクエストの選択をミスするパーティーには見えないな。
じゃあなんでそのクエストを受けたんだろう?
やっぱり本当にミスしただけ?
それとも何か事情が……?
「ご依頼の内容は理解しました。ではどんな素材を使用するかは分かりますか?」
アミナが依頼を承諾し、依頼物の詳細を聞こうと素材について聞いた。
するとそれを聞いたアーチャーの男性は少し申し訳無さそうにした。
「すまない……風の噂で聞いた程度だから詳細までは分からないんだ……」
「そうですか……」
アミナはその言葉に顎に手を当てて何かを考えた。
その様子を見た男性は
「作れないのなら断ってくれても構わない。こんな無茶な依頼に応えようとしてくれてありがとう」
と言った。
しかし、アミナの中に断るという選択肢は元より存在していなかった。
「いえ、どちらにせよその魔道具の構造を知る為に本から探し出さなければならないので、私の方でも探ってみます」
「店主さん……」
「絶対に作ってみせますので、ご安心ください!アミナ雑貨店は依頼者様の心強い味方です!」
アミナがそう言ってガッツポーズをとると、アーチャーの男性は何故か少しだけ瞳が潤んだ気がした。
後ろにいる仲間の人達も心底安心したような表情をした。
「どうか……よろしくお願いします……!」
しかしその瞳はお辞儀した彼の後頭部で見えなくなってしまった。
―――
とりあえずの期間は3日という事で依頼を貰った。
内容はガレキオーラの甲羅を貫ける特殊な矢。
私はその貰った3日間の店番をフィーちゃんにやってもらう事にした。
「にゃっ」
フィーはカウンターの上で紙に書かれた『依頼内容は?』という文字を手で指し示す。
これで依頼の内容を聞けるという訳だ。
それで言われた依頼品を制作するのにアミナが必要なのか、既にアミナが複数作っておいた回復薬等の既存の物を買えば済むのかを賢いフィーは判断していた。
ありがたいことに数人の依頼者が来た為それを実践してみた。
しかし、依頼者から返ってくる言葉は「可愛い〜!」や「偉いねぇ〜」と言った声ばかり。
その度にフィーは毎回困ったような鳴き声をあげる為、結局はアミナがカウンターの上で矢について調べながら店番をする事になった。
3日間のフィーの店番はフィー本人によって却下されてしまったのである。
「特殊な矢……硬い装甲を打ち破れる……」
アミナの矢の調査は難航していた。
最初は噂で聞いたという男性の証言から、街で情報収集をしていたのだが、それらしい証言は貰えなかった。
しかも買っておいた全ての本を読んでも、その矢についての情報は書かれていなかった。
そしてもう何周目か分からない本の最後のページをアミナは開いた。
「やっぱり無いですね……」
アミナはそうぼやく。
それもそうだ。
絶対に作ってみせると啖呵を切った割には進展が全くない。
この店の弱点が早速露呈してしまった。
それは図鑑や図面に無い素材で作られている道具を作れないというところだ。
このままでは彼に依頼品を納品する事が出来ない。
そうなってしまっては店の信頼以前に、私を信頼して依頼してくれた依頼者の気持ちを踏み躙ってしまう。
それだけはあってはならない。
それだけは、絶対に――
頭を悩ませていると、店の入口がコンコンと鳴った。
アミナは顔を上げて「開いてますよ」と声を出した。
すると、店にはローブを羽織った老婆が入ってきた。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご要件ですか?」
しかし老婆は反応を示さない。
その様子を不審に思ったのか、フィーは静かに毛を逆立てる。
アミナも何かを感じ、老婆の顔を伺う。
すると老婆は突然何かを差し出してきた。
「これは……?」
それはカチューシャのような物だった。
その老婆は突然カチューシャを差し出したかと思うと、ずっと閉じていた口を開いた。
ガラガラの聞き取りにくい声に耳を傾けてアミナは聞き取ろうとする。
「これはな、万物を知る事の出来る頭飾りさね。つけてみなされ」
老婆はそう言うが、「万物を知る事の出来る」という言葉にアミナは不信感を覚え「いえいえ、遠慮しておきます」と丁重に断った。
しかし無理やりアミナの頭に取り付けようとするので、仕方無くそれを受け取って自身が最初から着けていたカチューシャを取り外してそれを代わりに着けた。
「それを着けたら今知りたい物の特徴を頭の中で思い浮かべてみなされ。そうすれば、その頭飾りがその物の正体を教えてくれるだろう」
老婆はそう言った。
しかしほとんど信用していないアミナは半信半疑で頭の中で言葉を思い浮かべる。
本当なのだろうか……
えっと、知りたい物の特徴……特徴……
あのお客さんの矢の事でも思い浮かべよう。
えっと……貫通……ガレキオーラ……矢……魔道具……
アミナは続々と言葉を思い浮かべていく。
すると、脳内に鋭い突風が吹いたかのように頭の中が掻き回される感じがした。
「――ッ!!」
その感覚に一瞬驚き、頭を抑えた。
脳がぐちゃぐちゃと動き回り、様々な物の情報が一度に大量に流れ込んでくる感覚がした。
そして、しばらくそんな状態が続いた後、1つの物体だけが、脳の中に残った。
それは、矢尻が異様に頑丈そうに作られ、普通の矢とは似ても似つかない形状をしていた。
アミナは頭に入ってきた情報をそのまま口にした。
「《『絶対貫通の矢』……危険度ランクAの竜型魔物『シュバルドン』の牙から作られる矢……大昔のシュバルドンの主食はガレキオーラだった為、ガレキオーラを倒すにはシュバルドンの牙から作られる武器が必須……》ってなんですかこれ!こんなに詳しく……一体これは――」
アミナが顔を上げて老婆の顔を見ようとした時、老婆は既に目の前から消えていた。
アミナは急いで外に出ると、老婆が歩き去っているのが見えた。
「あの!これ!」
とアミナはカチューシャを取り外して示すが、老婆は何も反応をしない。
そしてアミナに聞こえないような小さな声で何かを呟き、道を曲がって人混みの中に消えてしまった。
アミナは不審に思いながら家の中に戻り、カチューシャを見つめて老婆の事を考えた。
「あのおばあさんは一体なんだったんでしょう……。それにこのカチューシャ、どう考えたって異質過ぎます。頭の中で思い浮かべるだけで欲しい物の情報が知れるなんて……」
アミナはそのカチューシャに恐怖の傍ら、少しだけ興奮を覚えていた。
元々知識に貪欲だった彼女が、知りたい情報を知れるというのは、願ってもない代物だった。
「……でもこれのお陰であのお客様の依頼を達成出来るかもしれない……。すみませんけど、使わせて頂きます」
アミナはそう言ってカチューシャを再び頭に着け、家の中で矢尻の素材手に入れる為の準備を整えるのだった。
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