第二章 2話『『元』究極メイド、初めてのお客さん』
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午前中は散々な目にあった。
第三大陸に住んでいる少数民族の貴重な品を墓場から盗み出してその修理を私にさせようとした連中が来たからだ。
まぁ改心……したかは分からないけれど、一応もうしない事を約束しておいた。
被害にあってしまった可哀想なダガーは今、私の横に置いてある。
「これどうしましょうか」
アミナはお昼ごはんのパンを齧りながら呟く。
フィーも昼食として、魔物の肉を食べている。
体が小さくなれば食費も浮くのはなんとも便利な体だ。
「盗品だからどこかに渡すのが正解なんでしょうけど……どこに渡すのがいいのでしょうか。この街のギルド?」
アミナは口をモゴモゴさせながら顎に手を当てる。
傷は確かに気になるけれど、重要な文化財だし何よりオーロ民族の文化の結晶だ。
手を加える事は絶対に許されない。
でも盗品とは分かったけど、あの人はどこからこのダガーを手に入れたのだろう。
第三大陸はかなり文化に差のある民族達が多く住んでいる。
有効的な民族もいれば、好戦的な戦闘民族も多く住んでいる。
その中でオーロ民族は内陸に住んでいる戦闘民族で、文明が発展している最中、オーロ民族の長は黄金を操る魔法を使えるようになった。
他の戦闘民族は内陸の森だったり、海辺に住んでいたりする。
私のスキルを見ただけで気絶するような人が、そんな戦闘民族を掻い潜って内陸に辿り着く事が果たして可能なのだろうか。
墓荒らしなんてどこ行ったって犯罪だろうし、それをオーロ民族の人達が許すとも思えない。
なら、ダガーの出どころは一体どこだ……?
予測として考えられるの事が一つある。
それは誰かがあの人達にこのダガーを横流ししたという事だ。
どこかの手練れの冒険者、あるいは財宝狩人が価値のある物を盗み出し、それに足がつく前に闇商人へと売り払う。
そしてそれを冒険者に更に高額で横流しして、その後は行方を晦ます。
そうすれば、取引に関して言えば素人の冒険者がマイナスを補おうと高く売り払おうとした時に盗品だとバレ、盗んだと罪を被せられる。
しかしこれにも疑問点が残る。
それは横流しする冒険者の選定だ。
盗品を堂々と道端やお店で売っているとも思えない。
売るとしたら明け渡す時に初めて持ち出すハズで、仕入れのルートも確立されているだろう。
しかしそれをどこでやっているか、何故バレないのか、それが疑問だ。
「逃さないで色々聞いておけばよかったですかね」
以前も言ったが、そんな世界中の人間を全て助ける気はない。
だが物を作って生計を立てようとしている私が黙って見逃すのも何か違う。
誰かの思いを踏み躙るのはこの世で最もあくどい行為だ。
誰かの作った物を盗み出して売るなど言語道断だ。
機会があればもう少し探ってみるのもありかもしれない。
そんな事を考えていると、店の入口がガランと音を立てて開いた。
それは設置したばかりのドアベルの音だった為、アミナは食べていたパンをサッとカウンターの下に隠した。
「ふぃらっふぁいまふぇ」
アミナが目を向けると、そこには一人の青年が立っていた。
歳は私と同じくらいだろうか。
シンプルだが動きやすい服装からして多分駆け出しの冒険者だ。
「あっ、すみません。お食事中でしたか」
「ふぃえ!らいじょうぶれふよ」
「いやだって、ほっぺた膨らんでるじゃないですか」
青年は怪訝な表情で言い、アミナは自分の口の中にまだパンが残っているのを思い出して、急いで噛んで飲み込んだ。
初対面から無様を晒してしまった……
この青年の顔がどんどん不安そうになっていっている。
「お見苦しい様をすみません。それで、今日はどのような要件でいらしたんですか?」
早速来たぞ〜あのスキンヘッドの人達の宣伝!
本当に宣伝してくれるとは思わなかったけど、これで初めてのお客さん確保だ!
アミナが浮き足立った気持ちを抑えながら問いかける。
すると青年はモジモジしたようにして口を開いた。
「じ、実は俺、駆け出しの冒険者で……ギルドで回復薬を買うのが少しだけ怖くって、その……」
なるほど、分かるぞ青年よ。
このお店を開く事を決めた理由の一つに、街の皆がそう思っているんじゃないかって思ったのもあるから。
それにしても結構整った顔の青年なのに可愛いところあるじゃないか。
そういうギャップにお姉さんは弱いのだよ。
「分かりました、回復薬ですね。個数はいくつになさいますか?」
「は、はい。3つ程お願いします」
「承知しました。それでは代金の制度についてご説明いたしますね」
その言葉に青年は驚いたような顔をした。
「え?相場通りの値段を払うのとは違うんですか?」
「はい。当店では少し特殊な支払い方法を採用しております。まずは素材を当店が補填する場合は、既製品でしたら相場よりお安く販売しております。ですがオリジナルの物となりますと、素材相応の金額となります。次に素材をお客様が持参して頂いた場合は、その素材を提供して頂いて使用する事で、更にお安く仕上げる事が出来ます」
青年はそのシステムに「なるほど」と呟いた。
「どちらをご利用されますか?」
「そうですね……素材なんて持ってないですし、素材を補填してもらう方でいいですか?」
「かしこまりました。それではこれより回復薬の生成を始めますので少しだけお時間を頂きます」
アミナがそう言ってカウンターの下を漁っているとまたしても青年は疑問の声を上げた。
「え、既に完成品があるんじゃないんですか?」
「はい、申し訳ありませんが当店ではその場で製造して手渡すというのを採用しています。ですがご安心ください。品質は保証致します」
すると青年は「そ、そうですか」となんだか納得していないような返事をした。
しかしアミナはカウンターの下を漁っていてあまり気にしていなかった。
そしてアミナはカウンターの下からリヴァルハーブを1つと、ガラスの瓶を4つ、それと水の入った瓶を1つ取り出した。
「さて、では今から製造を始めさせて頂きます」
青年はどうやってアミナが回復薬を製造するのか気になり、固唾を飲んで凝視している。
アミナはリヴァルハーブを両手で包み込むようにして持った。
すると次の瞬間、アミナの両手が光り輝き、眩い閃光の中から綺麗な青緑色のした液体が出てきた。
「凄い……!本当に回復薬の色だ……!」
「まだまだこれからですよ」
アミナはそう言うと、回復薬を1つ空いた瓶の中に入れた。
その後、残っている3つの瓶の中に回復薬をほんの少しだけ入れた。
「え?それだけなんですか?」
「いえいえ、まだですよ」
せっかちになる青年の気持ちも理解しつつ、次にアミナは水を回復薬を入れた瓶に大量に注いでいく。
「そ、そんな事したら薄くなって効果が……!」
「いえ、この状態で大丈夫です。私の作る回復薬は特殊でして、普通の回復薬として使用するならこれが丁度いいのです。もしあれでしたら、効能を試しましょうか?」
アミナはそう言ってカウンターの後ろに置いてある机から自身がこの大陸に来て初めて作った物である、短剣を手に取った。
するとその刃を見た瞬間「いえいえ結構です!」と焦った様子で青年が断ったので、短剣を革のベルトに仕舞った。
アミナは自身の手首を少し斬ろうかと考えていたが、青年は何か勘違いをしていたのだろうか。
しかし、通常ならば回復薬を薄める行為は闇製造の過程でしか行われていない為、目の前で薄められては青年のように疑問の声が上がるのは当然だ。
だがアミナの回復薬は金貨4000枚の価値がある最上回復薬と同等の効果がある。
それを安易に誰かに渡すのは得策では無いと考え、アミナは丁度上回復薬と同等の効能になるように回復薬を薄めたのだ。
なので効能の心配は必要ないという訳だ。
しかしこの青年にその説明をする訳にはいかない為、実演をしようとしたという訳だ。
「それではこちらが完成品となります」
アミナは今作り出した出来たてホヤホヤの回復薬を青年の前に差し出した。
「た、確かに色は普通の回復薬と同じ色だ……」
感心している様子の青年に、アミナは次の話題を投げかける。
「それでは代金の方ですが、リヴァルハーブ1つで回復薬が3つになりますので、合計金額は銀貨1枚となります」
青年は何度目か分からない疑問の言葉を浮かべて固まる。
「え、安すぎませんか?だって回復薬って1つ……」
「はい、相場では1つ銀貨1枚となっていますね」
「でもここでは?」
「3つで銀貨1枚です。正確には1つ銅貨3枚ほどで販売しているのですが、今回は3つという事でしたので今回のような金額になります」
青年はまたしても固まる。
一体どれだけ驚いたら気が済むのか、アミナは少しくどく思えてきた。
「え、えっとじゃあ銀貨1枚お願いします……」
青年はそう言って銀貨を1枚差し出してきた。
それをアミナは快く受けとって「銀貨1枚丁度頂きます毎度ありがとうございます」と笑顔で返した。
青年は終始よく分からないと言わんばかりの表情を浮かべていた。
まぁ、それも仕方が無い。
相場の3分の1の値段で3倍の数買えたのだ。店側からすれば損失は9倍。
でも私のお店ではそんな事はあまり関係ない。
何故なら仕入れも製造も全て私1人で事足りるからだ。
駆け出しだから騙されてるのかもって思うのも自然だと思うが、この店に関して言えば、別段気にしなくても良いというのに。
「そうだ、お名前を伺ってもよろしいですか?」
「ありがとうございました」と言って店を出ようとしている青年に、アミナは声をかけた。
すると青年は振り返って「何故ですか?」と聞き返してきた。
それに対してアミナは
「実は、お客様が当店を初めてご利用になったお客様ですので、お名前を伺いたく……それにウチはまだ小さい店ですから、お客様1人1人を大切にしたいと考えていますので」
アミナがそう説明すると、青年は納得したように頷き、「デビン・モローと申します」と言って、今まで見せなかった爽やかな笑顔を見せて店を出ていった。
初めてのお客が帰った店の中はやはり静かだった。
そしてアミナはうずくまって何やら震えている。
その様子を変に思ったフィーはカウンターの上から覗き込む。
すると、突然アミナが、バッ!と両の腕を高く掲げて立ち上がった。
「最初のお客さんとの商売、上手くいったぞぉぉ!!!」
そう叫んで、その場で嬉しそうにリズムを刻んだ。
最初はお昼ご飯食べてる最中だったから印象悪かったかもしれないけど、結果的に上手くいった。
よくやった私。
きっとさっきの盗品を修理に来た人達のお陰でお客さんに対するハードルが少しだけ下がってたんだ。
今だけはありがとう、ハゲのおじさん。
初めての仕事を終えたアミナは嬉しさのあまり柄にも無い事を連発してしまったが、彼女はそんな事気にしない。
それを見ているのは家族のフィーだけなのだから。
彼女の嬉しそうな声は、町中に聞こえそうな程……ではなかったが、少なくとも家中には静かに長く、響いていた。
――今回の依頼――
・依頼者:デビン・モロー
依頼内容:回復薬を3つ製造
必要素材:リヴァルハーブ1つ
結果:回復薬3つとリヴァルハーブ1つで銀貨1枚
――依頼達成――
最後までお読み頂きありがとうございます!
こんな感じでお店経営編では、お客さんの為に素材を回収しに行ったり、作ったり。
その過程で色々な事が起きたりする章となります!
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