第一章 終幕『『元』究極メイドの、別れと始まり』
お店開店編最終回です!
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名も無いただの静かな朝。
冒険者達の騒音も鳴り終わった早朝。
ギルドで騒いでいた一定の連中は酒で寝静まり、駆け出し冒険者の街にはカンカンと釘を打つ音が鳴り響く。
「この辺でいいか?」
足場に乗って釘を打っているギーラが言う。
それを下から「大丈夫です」と言って、アミナは了承する。
「そっちはどうだ、ケイ」
と足場から飛び降りたギーラが家の裏に向かって声をかける。
「聖なる水の清らかなる力よ、穢れを一掃し癒しを与えたまえ『パージ』」
ケイがそう詠唱すると、家の裏にあったドブのような池が瞬時に浄化され、あっという間に綺麗な池へとなった。
「こっちも終わったわよー。エルミナはまだ戻ってないの?」
「今戻ったぞ」
その声を聞き、一同は声の下方向を見る。
すると肩に大量の木材を担いだエルミナが、余裕そうな表情でこちらへ歩いてきている。
「これでいいか?アミナさん」
地面にドスンと木材を置いたエルミナは腰に手を当ててアミナに問いかけた。
それに対して「ありがとうございます」とアミナは礼を言った。
早朝に行われていたそれらは、アミナの家の前で行われていた。
「すみません皆さん。お店の開店の準備を手伝って貰っちゃって」
アミナは申し訳なさそうに言う。
そう、ここにいる3人は、アミナが先日受けとった報酬で店を出すと知った為、その準備を手伝ってくれていたのだ
と言うのも、ギルドでクエスト達成の祝賀会をやっていた時、相変わらずギーラは泣き上戸になり、ケイは飲みに飲みまくって吐いたり、エルミナは悪酔いするで、あまりいい飲み方とは言えなかった。
しかしそんな時に出たアミナの「お店を開店しようと思います」の一言で、全員の酔い覚めたかのように真面目な表情となり、一斉に全員が「手伝う!!」と名乗りを上げてくれた。
ここまで一緒に過ごしたのも何かの縁だと思い、せっかくなので手伝ってもらう事にした。
ギーラには家の真ん中辺りに台座を設置してもらい、ケイには家の裏にあった汚い池を魔法で綺麗にしてもらい、エルミナには木材を周辺の森から少しだけ頂戴してきてくれと頼んだ。
エルミナにだけは少し酷な頼みをしたかと思ったが、「朝の運動がてら行ってくる」と言ってとっとと行ってしまった。
そして今帰ってきたら服がどうしてか血まみれだった。
「……魔物と戦いましたね?しかも素手で」
「いや、気の所為だ」
「戦いましたよね?」
「き、気の所為だ、気の所為……」
目線を逸らして言葉を濁そうとするエルミナの胸ぐらを掴んでアミナは体を揺さぶった。
「朝っぱらから何してるんですか!私が頼んだとはいえ、なんですぐ魔物と戦ってくるんですか!馬鹿なんですか!アホなんですか!なんでそんなに生粋の戦闘狂なんですか!この胸ですか!このけしからん体が貴女をそうさせるのですか!」
これでもかと罵詈雑言を浴びせるアミナに対して少しだけ悪びれた様子のエルミナが目をギュッと閉じて叫ぶ。
「だって!!最近の戦いに楽しいのが無かったから!!仕方なかったんだ!不可抗力だったんだ!だから私は悪くない!」
「全然反省してねぇー!!」
反省の色が全く見えないエルミナの言い分にアミナは思わず叫んだ。
するとエルミナは後ろで呆れ顔で見ているギーラとケイに助けを求めるように言った。
「おい、お前達もなんとか言ってやってくれ!戦いが楽しい敵とそうじゃない敵はいるだろう?私の意見が負けてしまう前に私の味方をしてくれー!!」
「いや、今回"も"アミナさんが正しい」
「そうよ。出発前に何してるのよ」
とパーティーメンバーの2人からも辛辣な態度を取られ、エルミナはとうとう観念したように「悪かった……」と不服そうに小さく呟いた。
それを聞くとアミナはエルミナの服から手を離した。
「まぁいいです。それよりも木材、改めてありがとうございます」
「別に構わないが……一体何に使うんだ?」
落ち込みからケロッと立ち直ったエルミナがアミナに問いかける。
するとアミナがもくざいを一本肩に担ぎ、道の端に寄せた。
「これは、こう使います……!!」
アミナはそう言って木材に向けてスキルを発動させる。一本の大きな木材が光り輝き、次第に形状を変えていく。
「おぉ……これは……」
出来上がった物に対して、一同が簡単の声を上げる。
何度見ても凄いスキルだ、とその場にいる全員がそう思った。
「看板か?」
出来上がった横長の巨大な物の名称をギーラが言う。
アミナは「ご名答」と出来上がったばかりの看板を持ち上げ、ギーラが設置してくれた土台にそれを置いた。
「あの台座はそれの為だったのか」
「えっとなになに……『素材収集から道具の製作までなんでもござれ〜アミナ雑貨店〜』」
ケイが看板に書いてある言葉を読み上げる。
「はい、それがお店の名前です。『アミナ雑貨店』いい響きだと思いませんか?」
「確かに、この街にはこれと言った雑貨屋が無い。これなら分かりやすいし、駆け出しの冒険者達も立ち寄りやすいかもしれないな」
エルミナがアミナの意図を詳しく説明する。
アミナの想定もそういったものだった。
しかしもう一つ、街の住人でも回復薬や、それ以外の冒険者専用のアイテムを販売出来るようにしたかったのもある。
買いに行くハードルを下げ、怪我や病気で困る人を減らせるだけ減らしたい。
世界中でそれを成し遂げたいとまでは言わないが、やはり手の届く範囲ならなるべく助けたい、そう考えていた。
「『アミナ雑貨店』……か。うん、なんだかとても、いい響きだ」
―――
「皆様ありがとうございました。何から何まで手伝って頂いて」
アミナはスターターの城門前で3人を目の前にしてお辞儀した。
エルミナさん、ギーラさん、ケイさんの3人は今日、王都へ出発するらしい。
なんでも先日の依頼達成の事で国王直々の招集がかかったとか。
最初は私も誘われたが、お店の準備があるだろうって、ケイさんが言ってくれた。
王都はここから一ヶ月と少しかかるらしく、その道中何かあった時の為に回復薬を3人分渡しておいた。
「なぁに、俺等のダチの新しい門出だ。こんくらい遠慮すんなよ」
「そうそう、困った時はお互い様だしね〜」
ギーラさんとケイさんが続いて言う。
そう言ってもらえると少しは心が軽くなる。
「あの、今更なんですけど、本当に皆さんは金貨40枚ずつで良かったんですか?」
「フフ、本当に今更だな。言っただろう、これは決闘でで私に勝ったアミナさんへのおもてなしで、報酬の金貨600枚の内8割を貴女にと。残りは私達で山分けするのは既に決まっていた。それに、財布の紐はギーラが握ってくれているからあまり変わらんしな」
「そうだぜアミナさん、受け取っとけ。あのクエストは、アンタがいなきゃ達成できなかった。だから8割胸張って貰う権利がある!!……それに、冒険者やってるんだったら、金貨120枚でも結構な大金だ。気ぃ抜くと酒代に有り金ぶっ込む飲んだくれがいる事だし、気にすんなよ」
ギーラはそう言って最後にケイの方を見た。
不本意な視線だった為ケイは「なんで私を見るのよ!!」と憤りを見せた。
その光景を見ていたケイを除いた3人はこぞって笑った。
「それじゃあ、私達はこれで」
エルミナがアミナに向かって言ってきた。
そろそろ出発する時間らしい。
アミナが見送ろうと手を出そうとすると、それより早くエルミナは手を出してきた。
差し出された手をアミナは握り、お互いに別れの言葉を交わした。
「貴女と出会えた事を、今後最高の幸福と思う」
「私も、貴女方に出会えてよかったです。どうか達者で」
「あぁ、またこの街に来る事があったら、必ず立ち寄らせてもらう」
「その時は、また手料理を振る舞わせて頂きますね」
そう言葉を交わし、握手をした後、アミナは3人が見えなくなるまで背中を見送り、手を振り続けた。
3人が見えなくなると、途端に辺りが静かで寂しく感じた。
そんな気持ちを誤魔化すように「さて」と呟いて腰に手を当て、アミナは自宅の方へと戻っていった。
―――
「この大陸に来てからお店を開くまで、なんだか長いようで短い、そんな毎日だったな……」
アミナは家の前に立ち尽くして看板を眺めながら呟いた。
「思えばあの髭領主の所にいたのが数週間近く前……リュウにこの大陸に飛ばされて、右も左もわからなかったけど、今こうしてなんとか生きている」
――そう、生きている。
生きていれば、どうにかなる。
生きていれば、また何度でもやり直せる。
だが、人生は何度でもやり直せるが、過去に戻れる訳じゃない。
その過去を受け入れて、今後どう生きていくのかが重要なのだ。
この土地に飛ばされた私は、普通の裕福な環境の、やりがいのある仕事から突き飛ばされ、どん底まで落下した気分だった。
でも、一番下から見える景色は真っ暗闇なんかじゃない。
しっかりと過去を土台にして立って、上を見上げれば希望の光で輝いている。
「さぁて、フィーちゃん。お店、開店準備しますよ!」
「みゃーう」
家から出てきた寝起きのフィーに声をかけながらアミナは言う。
過去に究極と呼ばれていようが、同僚や雇い主に軽蔑されようが、それを受け入れたから今がある。
思えば、究極と呼ばれていた自分に酔って、周囲を気に掛ける気にもならず、斜に構えた態度を取っていたかもしれない。
なら、ここから始めよう。
私が――本当の『究極』になるまでのお話を。
最後までお読み頂きありがとうございます!
第一章完結しましたぁぁ!!!
なんとか書き切る事が出来ました!!
これもひとえに、読んでくださっている皆様のお陰です!!
もっと多くの方に読んでもらえるよう、試行錯誤を重ね精進していきたいと思っております!
それでは次章からもお楽しみに!!




