第一章 26話『『元』究極メイド、ダンジョンの最奥に着く』
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フィーの野生の勘?か何かのお陰で、アミナとエルミナ一行は、ダンジョンに入ったばかりの時より明らかにスムーズに探索を進める事が出来た。
それでもやはり罠や謎を完全に避ける事は出来なかった。
しかし、フィーの計らいかはたまた偶然か、その内容自体はアミナやエルミナが経験したものより遥かに簡単で、罠も命に関わるものは何一つ無かった。
―――
そして、アミナの体感時間にして半日――実際の時間では丸二日。
相変わらず空腹感は皆無、そのせいで食事を摂る事を全員が忘れている。
それはそれで危ない状況ではあったが、魔物が目の前に現れたことでそれを調理して食べ、なんとか体力は回復させていた。
そんな事もありつつ、遂に一同はダンジョンの最奥らしき階層へ到達した。
その階層まではただ通路が無限に選択肢と可能性を帯び、探索する側がその一つを選ぶ形となっていた。
そして、アミナ達がその階層を最奥と判断した理由は、明らかな景色の変化だった。
同じ道が永遠と続き、分かれ道が3つ4つ程ある。それが今までの道だった。
しかし今アミナ達がいる階層には大きな一つの部屋があり、その部屋へ何十もの通路が繋がっており、その先には一つの下へ向かう階段しか無かった。
これが表す事はただ一つだけ――
「どうやらこのダンジョンは、どの道から来てもこの部屋に辿り着くよう計算されて作られているようだな」
全てのまとめをエルミナが口にする。
探索員がどれほど内部構造を見て諦めたのかは知らないが、この構造を知っていれば諦めはしなかっただろう。
しかし誰も彼を責めはしない。現に中はとても広く、罠も危ないものも混ざっていた。
スキルがあるが故の先入観に囚われただけで、普通なら誰しもそう判断するだろう。
「この階段を降りれば、恐らくそこが最下層、ダンジョンの最奥だ。何が待ち受けているか分からない。ギーラ、ケイ、気を引き締めてくれ」
エルミナは、松明を持ってフィーの横を歩いているギーラと、その後ろを歩いているケイに向かって声をかけた。
ギーラとケイの歩き方には多少なりの緊張感が見て取れた。
冒険慣れしている2人でも、今回の事はかなりの大仕事らしい。
「おう」
「わ、分かった」
2人はそう返事をして前に向き直る。
そしてエルミナは次にアミナとフィーに声をかけてきた。
「アミナさん、フィー殿。何度もしつこく言ってしまってすまないが、我々の我儘について来てくれてありがとう。貴女には苦労をかけさせないを言っておきながら、貴女がいなければ突破できない謎もあった。本当に感謝している」
「別にいいですよ。私も想像より楽しかったので。それに素材だけでなく報酬が私にも入るというのが、金欠の私としてはとても嬉しかったですし。……でもまぁ、早く帰ってお風呂に入りたいってのもありますけどね」
「にゃうみゃう」
「ほら、フィーちゃんも気にしてないって言ってますよ。きっと」
本当にそう言っているかはわからない。
だがアミナのその言葉に、仕方無いな、と言いたげな表情をして後ろを振り向いた後、フィーは再び前を向いた。
階段を難なく降りる姿はとても可愛らしいが、少し危なっかしさも感じる。
「お、これじゃねぇか。最後の部屋」
ギーラが立ち止まり、目の前にある巨大な石扉を見上げる。
一同も縦列だったところを横に並び、扉の周辺を見回す。
特に変わった所は無いが、至る所にまたしても奇っ怪な絵が描いてある。
ここまでの道中で見たものと同じものだろう。
「この扉の先に、エーテリアの灯が……」
「あるのかもしれんな」
「特に仕掛けとか無さそうだし……この石の扉、開けられるのかな」
ケイがノックするように扉を叩いた。
するとエルミナが「試してみよう。ギーラ、手伝え」と言って2人で扉を押し始めた。
ケイは魔法の杖を持っている為、アミナが松明を受け取り、2人を照らした。
力自慢が2人、石の扉を全力で押している。
しかし扉はビクともせず、2人は諦めて一旦扉から離れた。
「ダメだ、硬過ぎる」
「仕掛けはねぇってのに開かねぇなんて……」
「恐らくこちらも攻撃しても壊れないだろう。ここに来て詰んだか……」
「ここまで来て調査終わりって言って帰るのもねぇ……」
アミナとフィーを覗いた3人が「んーーー」と唸りながら腕を組んでいる。
すると、アミナが扉へ近づき、松明を持っていない方の手で石の扉に触れた。
突然眩い光がアミナの手から漏れだし、石の扉はアミナが触れた面から避けるように端へと寄っていき、ド真ん中にまん丸の穴が空いた。
アミナは小声で「やった、出来た♪」と嬉しそうに言い、後ろを振り返った。
「これで行けますね……って、皆さんどうしたんですか?」
アミナがやった事に、全員がポカンと口を開けていた。
何故そうなっているのだろう、とアミナは疑問に思っていたが、その答えはすぐに聞けた。
「ア、アミナさん……どうやって……?」
ケイが震えながら言う。
するとアミナは何の気なしに普通に答えた。
「どう……って、スキルで穴空けました。お2人が押しても開かなそうだったので」
まだ3人はあまり納得していない様子だった為、アミナは説明を加えた。
「正直な話、一つ目の謎をエルミナさんと解いた時もふと思ったんです。攻撃系の行動が全て無効化されるなら、攻撃じゃないもので穴を空けちゃえばいいんじゃないかなって。ほら、私のスキルって本質は攻撃じゃなくて、物体の構築や再構築じゃないですか。だから攻撃判定にはならないんじゃないかなーって思ってたら、案の定でした」
「か、簡単に言いやがる……」
ギーラは感嘆と言うよりも、呆れに近い言い方をし、肩を落とした。
エルミナもつい可笑しくなってプルプルと震えていた。
そして一通り笑ったエルミナは顔を上げてアミナに言った。
「やはり、貴女は我々の想像の遥か上を行くお人だ!」
ギーラとケイもなんだか可笑しくなって、2人共笑いだした。
アミナとフィーは顔を見合せて首を傾げ、何故笑っているのか理解出来ていなかった。
「さて、アミナさんのお陰で入る事が可能になった。さっきも言ったが、何が待ち受けているか分からん。気合入れていくぞ!!」
「おお!!」
3人は腕を振り上げ、フィーも片腕を頑張って掲げた。
かわいい。
再び先頭をギーラにし、その後ろをケイ、フィー、アミナ、エルミナの順で並び、逸れないようにして慎重に進む。
ギーラが松明を持っているとはいえ、中は暗い。
先程の通路の方がまだ明るかった程に、部屋の中は暗く閉ざされている。
ここに、エーテリアの灯が……
アミナは見た事の無い古代の魔道具に心を躍らせた。
それはあるかも分からない代物だが、もしかしたら、と言われたら可能性を抱かずにはいられない。
別段、世界を平和にしたいとか、魔物をこの世から消し去りたいとか、デカい事は思っていない。
ただの好奇心として、魔力を安定させる事の出来る古代の魔道具が見てみたいのだ。
コツコツと足音が響く部屋をただ真っすぐ進んでいると、ふとした時に、前方に明るい光があるのが見えた。
その光は近づくにつれて光量を増し、直視出来ない程になった。
「くっ――かなり眩しいぞ」
「これだけ明るければ、もう松明は必要なさそうだな」
エルミナがそう言うと、ギーラは松明の火を消し、その眩しい光へ迫った。
するとそこにあったのは、台座らしき何かの上に置かれた、ランプのような物だった。
台座に接している面と、その反対側は石のような鉄のような何かで蓋がしてあり、円錐形の二つのガラスの先端同士が合わさったような見た目をしている入れ物だった。
そしてその中ではメラメラと力強く、それでいて優しい色の炎が静かに揺らめいていた。
「これが……エーテリアの灯……」
ギーラは光り輝くそれを手に取った。
熱いのではないだろうか、と声をかけようとしたが、ギーラのスキルの防御壁によって、熱のダメージは入らないようだった。
するとどうやら、それは台座に固定されていたようで、取り外すとプシューと空気が抜けるような音がした。
恐らく、この台座に設置していた事で、このダンジョン全体にエネルギーが行っていたのだろう。
これだけの光を放つならば、ダンジョンが明るかった理由も説明がつく。
「どうだ、エルミナ。これがエーテリアの灯で間違いないか?」
ギーラは手に持ったそれをエルミナに見せる。
エルミナはしばらく顎に手を当てて考えていた。
それを横目に、アミナはある事を考えていた。
回復薬の時の発言から察するに、エルミナさんは国に雇われている冒険者なのだろう。
ギーラさんもケイさんも恐らく。
だから国の研究員へと私の回復薬を提出する話が出たり、今もエーテリアの灯の形状をギーラさんが聞いている。
多分、形状を知っているのはあの人だけなのだろう。
一般の冒険者にこのクエストが受注できるハズもない。
英雄と呼ばれているきっかけになった出来事の話は聞いていないが、恐らく、その出来事によって、国が彼女を雇っているのだろう。
第四大陸にいた頃も、第四大陸の様々な国がお抱えの冒険者を雇い、いざという時にそれをチラつかせていた。
それがこの大陸にも適応されているというのなら、この国の切り札は彼女という事になる。
それぞれが最強だと思う冒険者を雇って、それをチラつかせる。
言葉にしてみると、お互いの国が条約を結び、平和だと思っていた第四大陸も、どうやら一枚岩では無いらしい。
まぁ、こんな事考えたって私には関係ないか。
アミナはふと振り返った。
特に意味も理由もなく、ただ振り返った。
するとそこには何か巨大な石像のような物が佇んでいた。
その大きな白い石像に、アミナは触れてみた。
「この質感は……石膏?こんな所で採れるなんて珍しいですね。ダンジョンを歩いている間に鉱山地帯にでも入ったのでしょうか」
ツルツルとした手触りが気持ちよく、ついつい撫で回していると、それは突如――動き出した。
「――ッ!!」
アミナは急いで体を翻して後ろに飛び退いた。
他の3人も、その音とアミナが後退してきた事で石像の存在に気が付き、武器を構えた。
「デ、デケェ……!!」
「まさか……これって……」
ギーラが腰を低くして拳を構え、ケイは少し怯えた様子で杖を構えた。
一歩前に出てアミナと石像の射線に入ったエルミナは剣を引き抜きながら呟いた。
「危険度ランクS+……"王国指定討伐対象"――『異形の彫刻家』だ……!!」
石像は気色の悪い口らしきところを大きく開け、空気の吹き抜けるような咆哮を上げた。
その勢いに思わず全員が一歩足を引き、飛ばされないように耐えた。
「ダンジョンの奥には強い魔物がいるとは聞いてましたけど……!!」
「流石にここまでとは俺達も思ってなかったぜ……!!」
「でも、やるしかないんでしょ!?」
ケイが最後にそう言い、エルミナは「あぁ……」と低く呟いて剣を完全に引き抜いて横に構えた。
「いわゆるボス戦の――開戦だ!!」
次回!戦闘シーン!!頑張りますッ!!
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