第一章 24話『『元』究極メイド、迷宮で奔走する』
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少しだけ修正と加筆をしました
アミナとエルミナはなんとかガーディアンゴーレムを倒し、未だ合流できていないギーラ、ケイ、フィーと合流する為に迷宮遺跡・ララバイの内部を更に進んでいた。
松明を持って前を歩いているエルミナの後ろでアミナはガーディアンゴーレムの核を握りしめていた。
それは先程、ゴーレムを倒した時にエルミナが「貴女の作戦のお陰で勝つことが出来た。それは貴女が貰うといい」と言ってくれたのだ。
正直、何に使うかよく分かっていない。
だが貰えるなら貰っておこう、私貧乏性だし、と受け取った。
「いや、それにしても触れただけで床とアイツの体が同じ素材だとよくわかったな」
エルミナが言う。
それは先程のゴーレムとの闘いで、私がスキルでゴーレムの脚を地面と同化させた事を言っているのだろう。
「触った感触でなんとなく……一か八かの賭けでしたけどね」
「無生態魔物であるゴーレムを『魔物』としてではなく『物体』として捉える事でアミナさんのスキルが使えるようになった訳だ。だからゴーレムの体を地面の延長線上として作り変えることが出来た……あぁ!!なんという戦闘センスの高さ!!やはりアミナさんは素晴らしい!!」
ゴーレムとの戦闘時のかっこよさはどこへやら、顔は見えないが、どうせとろけているに違いない。
よだれを垂らしているだらしない顔が目に浮かぶ。
「それを言うならエルミナさんのあの魔法と剣を合わせた技、凄かったですよ」
アミナもエルミナが最後に放った技を褒める。
それは本心からの言葉であり、彼女が英雄と呼ばれる所以であるのだろと確信していた。
「あぁ、あれか。あれは7つの魔法の属性を合体させて放つ私の最高火力だ。私はケイと違って魔法は使えないが、基本属性である5つの属性『炎』『水』『風』『土』『雷』それに加えて『光』『闇』の素質自体は持っていたんだ」
「え?でも剣に魔法を込めてましたよね?」
そう言ってアミナは思い出していた。
スケルトンウォリアーと戦っていたときも炎の剣を使っていたし、更にこの遺跡に来る時も光の魔法を纏っていた。
するとエルミナが少し間を置いてから答えた。
「……確かに、全く使えないと解釈されてしまうと少し語弊があるな。正確に言うと、私は剣に魔法を込めなければ魔法が使えないのだ」
エルミナは松明を持っていない方の手を眺めたと思うと、次は腰から下げている剣を撫でた。
「この剣も特別な物でな。私はこれに魔法を注がないと魔法が使えない」
「ではその剣は……?」
エルミナの腰から下げている刀身が漆黒色の剣。
アミナが一時的に作った炭素による黒い木剣とは別の輝きを放ち、それが異質な物であるという事をひと目見ただけで理解させられる。
「これは黒刀・ニヴル。……先日、開拓者の話はしたね。」
剣の話から急に話が変わり少し戸惑ったが、アミナは先日教えてもらった開拓者の事を思い出した。
今エルミナ達が挑んでいるクエスト、エーテリアの灯が眠るとされている迷宮遺跡・ララバイの調査。
その発端となったエーテリアの灯を作り出した張本人であり、魔物の住む島だったこの第二大陸を切り拓いた人物だ。
「この剣は、その人の仲間だった鍛冶師、『ライデン』の打ったとされている剣だ。この剣は特殊でね。私は生まれつき自分の意志で魔力を外に出せなかったのだが、この剣は使用者の魔力を吸い取り、それを開放することが出来る。魔力を外に出せない私から、無理矢理吸い取っていくのだ。だから私はこの剣がなければ魔法が使えない。原理を言えば、こんな感じかな」
エルミナは少しだけ刀身を鞘から抜いて刃を眺めた。
黒光りしている漆黒色の刀身は見るものを引き付ける謎の魅力がある。
武器は専門外だが、その構造がアミナ自身も気になってはいた。
「おや、これは……」
エルミナが立ち止まり、松明の光を壁面に当てた。
暗い迷宮の中、2人が進む通路の脇に何やら彫刻が施されていることに気づいたのだ。
壁一面に描かれた絵は、古代の技術で彫られたような精巧さを持っており、今にも動き出しそうな迫力があった。
絵の中心には人型のような存在が描かれており、その両手には不思議な模様が刻まれた球体が握られている。
その周囲を囲むようにして、様々な動物や魔物のような形が放射状に並んでいた。
アミナはその彫刻に興味を引かれ、じっと見つめる。
「これ、何を表しているんでしょうか……?」と小声でつぶやいた。
「分からんが、この球体が妙に気になるな。古代の遺跡にはこういう象徴的なモチーフが付き物だが、単なる装飾じゃない可能性もある」
エルミナは指先で球体の部分を軽くなぞり、彫刻の感触を確かめた。
その先へ進むと、さらに絵は続いていた。
今度は人々が何かを崇めている姿が描かれており、先ほどの球体を中心にした光景が広がっている。
壁の隅にかすれた文字が刻まれているのを見つけたアミナがそっと近寄る。
「少し掠れてますが、文字が読めるかもしれません」
アミナが掠れた文字達を指でなぞった。
幸い、その言語はアミナの分かる言葉で書かれていた。
それをなぞりながら、ゆっくりと読み上げる。
「『調和を求む者、球体を通じて光を集めよ』……だそうです。」
エルミナはその言葉に眉をひそめた。
「つまり、何かしらの仕掛けを動かす手がかりってことか。調和というのが鍵になりそうだな」
アミナの読み上げた言葉に導かれるように、2人は壁の彫刻をさらに詳しく調べ始めた。
松明の光が微かな影を作り、彫刻の細部を際立たせる。
調和を意味する球体、その周囲を囲む放射状の模様は、何かの法則性を持っているように見えた。
アミナは膝をつき、彫刻の下部に刻まれた細かな模様に目を凝らした。
「この球体と周囲の模様、どうも星座のように見えます。けれど、これが何を意味するのか……」
エルミナは顎に手を当て、少し考えるように視線を巡らせた。
「星座か。迷宮の中で見るようなものじゃないが、古代人がこうした象徴を用いるのは珍しくない。どこかで見たことがある配置だが……」
アミナは手元に抱えたノートを取り出し、慣れた手つきで彫刻の模様を写し取った。
「上手いものだな」
エルミナがアミナの描いた彫刻の写し絵を見て呟いた。
「あ、あまり見ないで下さい。人に絵なんて見せた事ないので……」
アミナはすぐに写し終わり、隠すようにしてノートを鞄へ仕舞った。
エルミナはもう少し見たそうな顔をしていたが、アミナは気にせず道の先を見た。
「と、とにかく。少し進めば、これと関連する仕掛けがあるかもしれませんね」
エルミナが同意するようにうなずく。
「なら、一旦進んでみよう。遺跡はこういう手がかりを元に試されるものだし、この先にそれ等を総合した答えがあるかもしれない」
2人は彫刻を後にして、通路をさらに奥へと進んだ。
迷宮の空気は湿り気を帯びて重く、古びた石の香りが鼻をついた。
壁に時折現れる亀裂や崩れた部分が、迷宮の古さを物語っている。
「そう言えばこの遺跡って、元々は一体何に使われていたんでしょうか」
アミナがつぶやくように言った。
「考古学者じゃないから詳しくは分からんが……ただの墓や祭壇ってわけじゃなさそうだ。仕掛けや魔法の痕跡が多すぎる。だがハナから迷宮として用意されていたとしたらそれはそれでおかしな話だな」
エルミナは慎重に足元を見ながら進んだ。
やがて2人は大きな部屋に出た。
「ゴーレムがいた所程ではないですが、ここもかなり広いですね」
「あぁ、ただ――」
エルミナはとある方向に松明を向けそちらを見ている。
するとそこには大きな扉のような物があり、そこ以外に出口は無かった。
石造りの扉には複雑な模様が刻まれており、中央にはさっき見た球体の彫刻に似た模様が浮き彫りになっていた。
アミナは試しにその石扉を押してみた。
しかしびくともせず、開く気配はまったく無い。
「開きませんね……」
「ならば、私が斬ってみよう」
エルミナは剣を引き抜き、それを石の扉に向かって振りかざした。
アミナは、そんな力技で……と思ったが、先程の魔物を倒す調子で扉が開いてくれるのならそれでいいか、とも思っていた。
しかし、現実はそうはいかなかった。
エルミナの放った斬撃は、カキンッと音を立てていとも容易く弾かれてしまった。
その後も数度剣を振りかざすが、扉はびくともしない。
「これは……」
エルミナが心当たりあり気に呟く。
アミナはそれに対して「どうしたのですか?」と聞いた。
「どうやら、この扉には特殊な魔法がかけられているようだ。物理攻撃が完全に無効化されている」
そんな事がありえるのか。
アミナはそう言いたかった。
しかしそう言う前に、エルミナが説明してくれた。
「これは魔法によるものだ。魔法付与という魔法があるのは知っているだろう。それを建物に使用しているのだ。しかも一時的なものでは無く、長期的な事を前提としている。……破壊して通るのは無理そうだ」
「……という事は……」
アミナとエルミナは同時に部屋全体を見回した。
「この部屋の謎を解かなければ、この扉は開かないだろう」
エルミナが鋭い目つきで言い放つ。
部屋の中央には巨大な石碑があり、その表面には古代文字が刻まれていた。
四方の壁にはそれぞれ異なる彫刻が施され、動物や自然、星々が描かれている。
天井からは薄い光が差し込み、部屋全体をぼんやりと照らしているが、その光の源は不明だ。
アミナは石碑に近づき、その文字をじっと見つめた。
「これも何か書いてあります。掠れてて読みにくいですが……読んでみます」
エルミナは背後で警戒しながら、アミナが文字を解読するのを待つ。
「頼むぞ。こういう仕掛けは妙に時間がかかるからな」
アミナは指で文字をなぞりながら、慎重に読み上げた。
「『調和を求めし者、四つの光を正しき位置に導け。その時、新たなる道が開かれん』……だそうです」
「四つの光?しかも、また調和か……」
エルミナは辺りを見回し、四方の壁に目を向けた。
「もしかして、壁の彫刻がヒントになってるのか?」
アミナもうなずきながら壁を観察した。
左の壁には燃え盛る炎が描かれ、右の壁には流れる水の模様。
正面には風が吹き荒れるような渦巻きがあり、背後の壁には揺るぎない大地が彫られていた。
「これは……四つの元素を表しているんじゃないでしょうか。魔法の基本5属性の内の炎、水、風、土……」
雷が無いのを少し疑問に持ちつつ、アミナが推測すると、エルミナが石碑の周りを一巡して確認する。
「確かにな。で、どうやってこれを光に導くんだ?」
アミナは再び石碑の文字に目を戻した。
「光を正しい位置に導く、とありますが……あっ!」
彼女は石碑の足元に四つのくぼみがあることに気づいた。
それぞれのくぼみには丸い球体を置けるような形状があり、色が微かに異なる。
「このくぼみ、何かをはめる仕掛けみたいです。でも、部屋の中に球体なんてありませんよね……」
エルミナは松明を高く掲げて部屋全体を照らした。
「いや、待て。あそこを見ろ。」
部屋の隅に小さな台座があり、その上には透明な球体が一つ置かれていた。
エルミナが急いで近づき、それを手に取る。
「これがその球体だな。しかし、四つ必要なんだろう?残りの三つはどこだ?」
アミナは部屋を歩き回りながら考えた。
「この部屋全体が謎解きの一部だとすれば、他の球体も仕掛けの中に隠されているのかも……あっ、これを見てください」
彼女が指さした先には、壁の彫刻の一部に奇妙な穴が開いていた。
それぞれの元素を表す彫刻の中央に、球体を収めるような窪みがあったのだ。
「なるほどな。この窪みに何かをすることで、他の球体が現れるってことか。」
エルミナは燃える炎の彫刻に近づき、松明をその穴の中に差し込んでみた。
すると、彫刻が淡く光り始めた。
そして、その光が壁を伝って石碑の方へ流れ込む。
しばらくして、石碑のくぼみの一つに赤く輝く球体が現れた。
「一つ目、成功だな。簡単じゃないか。」
エルミナが満足そうに言った。
「次は水ですね……」
アミナは水を表す彫刻に向かい、その中央の窪みを調べた。
「ここに何か液体を注げば良いのかもしれません。」
エルミナは鞄の中を漁って水筒を差し出した。
「これで試してみよう」
アミナは慎重に水筒の水を窪みに注ぎ込んだ。
すると、今度は彫刻が青い光を放ち始め、石碑の二つ目のくぼみに青く輝く球体が現れた。
「順調ですね。次は風……」
アミナが風を表す彫刻の前に立つ。
彼女は一瞬考え込んだ後、自分のスキルを活用することを思いついた。
「私が風の力を再現してみます」
アミナは地面に落ちている木片と、自身の鞄の中に入っている木片とを二つ持ち、スキルを使った。
そして出来上がったのは簡易的な団扇のような物だった。
それを使って全力で風を送り続ける。
するとたちまちアミナの腕力によって風の渦が形成され、それが窪みの中へ入ったようだった。
そして彫刻が緑色の光を放ち、三つ目の球体が現れる。
「よし、行けた」
「最後は土か……」
エルミナが土を表す彫刻の前に立ち、足元の地面を軽く蹴った。
「土に関連する何かが必要なんだろうが……」
アミナは少し考えた後、「あっ!!」と言い、地面に落ちている石を集めた。
不審そうに見ていたエルミナが「何をするんだ?」と言うと、アミナは集めた石を両手に持ち、スキルを使った。
そして出来上がったのはなんだか変な顔をしている石の人形だった。
「これは……?」
「私の自信作、『土人形ちゃん・石形態』です。クヌフ森林で迷わないように土で作った人形の形が結構気に入っちゃいまして……その子が石化した、という設定です。一応。これなら土を表した物になるのではないかと思いまして」
そう言いながらアミナはその土人形改め、石人形を置いた。
最初は反応がなかったが、エルミナが「土の魔力を注いでみよう」と言って剣を抜き、魔力を注ぎ込むと、彫刻が黄金色に輝き始めた。
そして、最後の球体が石碑に現れた。
「これで四つ揃ったな」
エルミナは球体を石碑のくぼみに一つずつはめ込んでいく。
不思議な事にその窪みと球体の形状は寸分の狂いもないほどに正確で、石で作られているとは思えないほどの緻密さだった。
そして、全てがはまると、石碑が低い音を立てながら動き出し、部屋の扉がゆっくりと開いた。
「やった……」
アミナが息をついた。
「これで次のエリアに進めますね」
エルミナは微笑みながら松明を掲げ、先を促した。
「あぁ、行こう。これ程面倒な仕掛けなのだ。この先にもしかしたら本筋の道があるかもしれん。2人と猫殿とも合流できるかもしれんな」
エルミナはそう言って再びアミナの前を歩き、アミナもその後ろをついて歩いた。
そして、2人は開かれた未知が無限に広がる扉の先へ進んでいった。
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