第一章 23話『『元』究極メイド、有り難みを知る』
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「なんと!!あの回復薬にそこまでの効能が!!」
エルミナは驚いていた。
アミナは今、エルミナが気絶してから今に至るまでの短い間に起きた出来事全てを伝えていた。
荷物を漁った事を謝罪し、もしかしたら回復薬が入っているかもしれないという期待を抱いていた事。
自身の回復薬に自信は無かったが、やるしか無いと覚悟を決めた事。
エルミナはそれらの出来事を大体察していたのだが、実際にアミナの口から聞くとそれはそれで現実味がなかった。
「普通の回復薬ではあれほどの傷は治せないハズだ」
「そうなのですか?」
「あぁ、回復薬と言っても様々な種類と呼び名があってな。まず一般的に売っている回復薬は別名ポーションと呼ばれ、火傷や切り傷、擦り傷に打撲程度なら治せる。その一つ上の回復薬が『上回復薬』と呼ばれるもので、一つ前の回復薬の効能を高めたものになる。その次が『特上回復薬』、『極上回復薬』と、それぞれ一つ前の回復薬の効能を上昇させた物になる。しかし、欠損した部位や体力そのものを回復できるのは『最上回復薬』ただ一つだけだ。アミナさんの作り出した回復薬はそれに匹敵する」
「……あまり実感無いですけど、とにかく凄い回復薬を私は作れている、という事ですか?」
アミナのよく考えていないその発言に、エルミナは思わず「凄いなんてものじゃない」と言った。
「分かりやすくなるか分からんが、回復薬が銀貨1枚、上回復薬が銀貨3枚と銅貨2枚、特上回復薬が銀貨6枚、極上回復薬が金貨1枚。そして最上回復薬は――金貨4000枚だ」
突然の値段の飛び級にアミナは目が飛び出そうになった。
金貨1枚の次がいきなり金貨4000枚!?
どんだけ価格に波があるんだ、と内心とても驚いていた。
「言わなくても分かっているとは思うが、金貨4000枚など到底稼げるものではない。だがそれにも理由があるのだ。回復薬を作る工程は、回復薬の元となっているリヴァルハーブを根気良く何度も抽出を繰り返す。そしてその濃度によって名称や値段が変化する。濃度が10%以下の物が回復薬、11%から50%の物が上回復薬、51%から80%が特上回復薬、81%から98%の物が極上回復薬。そして、何万、何億回と抽出を繰り返し、その内の数%だけが濃度99%となり、最上回復薬となれるのだ」
その話を聞いてアミナは疑問に思った。
その98%と99%の間にどれだけの差があるだろう、と。
所詮1%程度の差なら、いくら欠損部位が治せるとは言え、まだ安い極上回復薬を買ったほうが良いのではないだろうか、と。
「何故98%と99%の差でそこまで値段が違うのですか?1%じゃ大した差にはならないと思うのですが……」
疑問に思った事をそのまま口にする。
するとエルミナは一度頷くと、これから説明する、と言わんばかりの表情をした。
「実は、詳しくはまだ解明されていないのだが、その最後の1%によって回復薬の効能は著しく変化するようなのだ。それを研究対象にしている研究者も大勢いてな、解明されれば最上回復薬の量産が可能になるかもしれないからな。しかし人工的に作るのは現実的とはされていない。だからダンジョンの宝の中から出てくると、それはそれは高値で取引されている」
アミナは「なるほど……」と呟き、思考を巡らせる。
製造方法は一応確立されているが、現実的ではない。
しかし医者いらず――いや、医者ですら治せない怪我や病気を治せる回復薬は国としても絶対に欲しい。
だから一つ金貨4000枚という大金で取引されているのだろう。
あまりにも現実的ではない金額だ。
人間が一生で稼げるかどうか分からない金額だ。
しかし需要はあり、売った人間はしばらくの間は働かなくても食って生きていけるレベルだ。
「……アミナさん、今こんな事を言っている場合ではないのは重々承知している。だがレリック王国の研究員達に貴女の回復薬を提出する気は無いか?」
エルミナのその提案は突拍子のないもの……ではなかった。
その提案がされる可能性が大いに有り得ることをアミナ察していたからだ。
私の作り出した試作品の回復薬がもしかしたらこの大陸の回復薬の需要と供給が釣り合うようになるのかもしれない。
しかし私は――
「ごめんなさい。今の私にその気はありません」
アミナの言葉に少しだけ戸惑った様子を見せたエルミナは一瞬間を空けて「どうしてだい」と聞いた。
「前にも話しましたが、私は私の掌に収まる人だけを助けたいと思っています。私が仮にこの回復薬を大量に提供すれば多くの人が助けられ、回復薬の入手難易度もグンと下がるでしょう。それは素晴らしい事で、とても重要だと思います。……しかし、それが思わぬ人の手に渡り、よからぬ事に使われた事で何か被害が出たら私は私を許せません。でも、私を直接頼ってきてくれる人達なら、私の手で守る事が出来る。顔も名前も知らない相手の為に力を使う勇気を、今の私は持っていません。だから、ごめんなさい」
アミナは全てを話した。
するとエルミナは「そうか」と納得したように俯いて笑顔をみせた。
誰がどう考えたって回復薬を提出し、ある程度の印税を手に入れて暮らしていけば、何不自由の無い暮らしが出来る。
色々言っていたが、提出したくない理由はアミナにもハッキリは分からない。
プライドなのか、それともエルミナに言った理由がそのままなのか。
だが、目の前で死にかけの人が自身の力で生み出した回復薬によって、命の危機など嘘かのような状態まで回復させた。
恐らく、きっとそれが嬉しくてたまらなかったのだ。
いらないと思っていたスキルで人が助かる、人の助けになる。
その感覚を忘れたくない、それだけは確実だった。
彼女にとってスキルはもう、"いらないもの"では無い。
それはスターターに辿り着いた時から分かっていた。
しかし、認めるのが嫌だったのだ。
今まで使ってこなかったのにいざという時は頼る。
掌返しをする人間、その人物にこの土地へ飛ばされたからだ。
だからそうはならないようにしていた。
しかしこれでは認めざるを得ない。
スキルのお陰でエルミナが死なずにすんだ。
今までいらないものと扱ってごめんなさい、私に宿ってくれてありがとう、と――
「……それにしても私がアミナさんの人として初めての友人……かぁ〜。いやはや、良い言葉を聞いてしまいましたな。死に際にしては百点満点だ」
とエルミナが茶化すように言った。
アミナはその時に言った小っ恥ずかしい事を思い出し、ムキになって言い返した。
「あっ!!あの時は本当に死んでしまうんじゃないかって思って咄嗟に言っただけです!!べ、別に友達なんかじゃありません!!私の友達はフィーちゃんだけです!!」
「猫殿は家族では無いのですか?」
「〜〜〜~ッ!!うるさいうるさい!!その変な敬語やめて下さい!!」
九死に一生を得たエルミナはアミナに心から感謝を述べつつ、茶化した。
そんな2人は別れてしまったギーラ、ケイ、フィーと合流する為、荷物を背負い、再びダンジョン攻略を開始した。
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