表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/296

第一章 22話『『元』究極メイド、奇跡に縋る』

よろしければブックマークや感想の方よろしくお願いします〜!

今回結構過激な描写が多くあります。

苦手な方は飛ばして頂いて大丈夫ですので、ご注意下さい。



「エルミナさん!」


アミナは瀕死の重傷を負って倒れているエルミナに駆け寄る。

彼女の容態は深刻だ。

頭からは大量の血を流し、肋骨が皮膚を突き破って飛び出している。

彼女が今横たわっているの血溜まりは、全て彼女の体から流れ出した血液によるものだ。

女性の平均身長より大きなエルミナの全身が覆えるレベルの出血だ。

それほどまでに彼女の怪我は酷かった。


ゴーレムとの戦闘で負った傷の上に、アミナの指示による特大の魔法を放った事で気が抜け、倒れてしまったのかもしれない。

今考えればこのダンジョンに辿り着くまでの間、彼女は一睡もせず見張りを続けてくれていた。

その疲労も、彼女が倒れているのに関係していない訳が無い。


「ど、どうすれば……!!」


アミナは慌てる。

大きな傷から流れ続ける血を止める方法を彼女は知らない。

開いた傷口を塞ぐ方法も、飛び出た肋を治す方法も彼女は何も知らないのだ。


「す……まない……アミナ……さん……まさ……かここまでとは……」


エルミナは無理に笑顔を作ってみせた。

頭の傷口は見るに耐えないほどぐちゃぐちゃに潰れている。

そこから目に血が入り、片目を瞑っている。


「喋らないで下さい!!今、どうにかしますから……!!」


アミナは周囲に目を配る。

何か止血に使えるものはないか、と。

しかしここはダンジョンの中。

包帯のような物がある訳も無く、ましてや清潔とはとても言えないこの環境だ。

いずれにせよ落ちている物などに期待はできない。


「どうすれば……」


アミナは必死に声を震わせながら、何とかエルミナを助けようと考えを巡らせた。

しかし、心臓が早鐘のように打つ音が彼女の頭の中を支配し、冷静な判断を奪っていく。

エルミナは弱々しい呼吸を繰り返しながら、それでも目を閉じることなくアミナを見つめていた。

その目には薄れる意識の中で、何かを伝えようとする必死さが宿っている。


「アミナさん…落ち着いてください…貴女が…焦ると…良くない…」


「焦らないでいられる訳ないじゃないですか!」


アミナは叫び声のような声を上げる。

汗が頬を伝い、視界が滲む。

それでも目の前のエルミナの姿ははっきりと映っている。

体から溢れる血液は止まる気配がなく、彼女の肌は見る間に青白くなっていく。


「こんなに……傷だらけで放っておけるハズがないでしょう!だからお願いです、喋らないでください!」


彼女の叫びに、エルミナはかすかに微笑んだ。

その笑顔は、状況には全くそぐわないほど穏やかで、どこか母親のような優しさを帯びている。


「アミナさん……大丈夫だ……そんな簡単に私は死なない……」


「そんなの信じられません!」


アミナは声を荒げながら、エルミナの体に手を伸ばした。

彼女の血でぬるついた手が自分の肌を汚す感覚も、今の彼女にとってはどうでもいいことだった。

ただ何かをしなくてはならない——そう強迫的に感じる一方で、具体的に何をすればいいのか全く分からない焦燥感に駆られていた。


「私は……守られてばかりで。一人で生きるって決めたのに………こんなの……」


アミナの手は震え、エルミナの肩をそっと掴む。

エルミナはその手の温もりを感じたのか、再び微笑みを浮かべる。


「アミナさん……いいんだ。私が選んだことだから、貴女が悪いわけじゃ……ない」


「そんなこと言わないで!お願いだから…死なないでください!」


アミナの言葉は涙で途切れ途切れになった。

その声は切実で、どこか幼子が母親を呼ぶような懇願に似ていた。

エルミナはその声を聞きながら、わずかに首を振る。


「絶対に……何とかしてみせますから……!!」


アミナは言葉を詰まらせ、エルミナの顔を見つめる。

彼女の目に涙が溢れ、視界がぼやけていく。

しかし、そのぼやけた視界の中でも、エルミナの目はしっかりと彼女を見据えていた。


「何故……そこまでして……?」


「……確かに貴女は鬱陶しく私につきまとって来ました……でも、初めてだったんです。何でもかんでも斜に構えてやれば何でも熟せるメイドだってもてはやされていた私に出来た、初めての人のお友達なんです……」


エルミナはその言葉を聞き、目を見開いた。

その表情はまるで、驚きと困惑、そして幸福が混ざっているかのような表情だった。

そして「フッ」と口角を上げ、次の言葉を口にした。


「それは……この上ないな」


――次の瞬間、彼女の意識がかすかに途切れた。

頭がガクンと落ち、彼女の呼吸が浅くなっていく。


「エルミナさん!?ダメです、眠らないでください!意識を保って!」


アミナは慌ててエルミナの肩を揺さぶる。

しかし、彼女の反応は鈍い。焦燥感がさらにアミナの心を締め付ける。


「どうすれば…どうすればいいの…?」


彼女は自問しながら血走る目で周囲を見回した。

目に飛び込んでくるのは暗いダンジョンの壁と、血に濡れたエルミナの体。

それ以上の助けになるものは何も見当たらない。

何か、何かないのか。

アミナは脳みそをフル回転させ、何か見落としがないか、忘れている事は無いかを確認していった。

しばらく頭を悩ませた後、とある可能性を期待した。


「もしかして……エルミナさんの荷物の中に……!!」


アミナは部屋の隅に落ちているエルミナの鞄の方へ走った。

それは走るほどの距離ではなかったが、それほどに彼女は焦り、その可能性に賭けていた。

エルミナの鞄を開き、中身を漁る。

他人の荷物を漁っている罪悪感は今はどこかに行ってしまっている。

水筒や砥石、就寝時に使う布等、鞄に入っている物達を退けながら漁っていく。


そして一つ。

布に包まれた両の掌に収まる大きさの物が出てきた。

それはアミナの目当ての品に間違いなかった。

中に入っているものは硬い感触があり、叩くとコツコツと音がなる。

逸る気持ちでその布を取り払って捨てると、中からは青緑色をした液体の入った瓶は出てきた。


「ハァ……ハァ……私の作った、回復薬……」


アミナはすぐさまそれを大事そうに抱え、エルミナの元へと戻った。


彼女は小瓶を握りしめ、エルミナの体へ目を向けた。

その姿は、ただ目をそらしたくなるほど無残だった。

頭から滴り落ちる血が彼女の顔を覆い隠し、飛び出た肋骨が不自然な角度で折れ曲がっている。

呼吸は浅く、胸はほとんど動いていないように見えた。

もし今ここで手をこまねいていれば、エルミナの命は確実に失われる。それは分かりきっていた。


アミナは息を呑み、手の震えを抑えるようにして膝をついた。

エルミナのそばに寄り、その傷ついた体を少しでも楽にするために慎重に頭を持ち上げた。

髪には血がこびりつき、冷たく乾きかけていた。

それでも彼女の命を繋ぎ止めるため、アミナは躊躇しなかった。


まずは頭部の傷から処置を始めるべきだと判断したアミナは、小瓶の栓をゆっくりと引き抜いた。

栓が外れると共に、ほのかに甘い香りが立ち上る。

これが、ただの液体ではなく魔法の力を秘めたものである証だった。

アミナは一瞬だけ小瓶の中身を見つめた後、その液体をエルミナの頭部の傷口に流し込むように注ぎ始めた。


薬液が傷口に触れた瞬間、じゅっという音と共にかすかな蒸気が立ち上った。

それはまるで、命が炎を取り戻すような光景だった。

血に濡れた髪の間から覗く皮膚が徐々に再生し始める。

ぐちゃぐちゃだった肉が滑らかに繋がり、その下で骨の形が整っていくのが目に見えるほどの速度で進行していった。


しかし、エルミナの体全体を見れば、まだまだ傷は多すぎた。

特に飛び出た肋骨とそこから溢れ出る血は、見ているだけで気が遠くなるようだった。

アミナは焦りを押し殺し、小瓶を持ち直してさらに液体を注ぐ。

傷口に直接流し込むのではなく、飛び出した骨の周囲に沿うように慎重に液体を垂らした。

薬液は血液に混ざり合いながら内部へ染み込み、魔法的な効果で肋骨を元の位置へ引き戻していく。


その過程は見ていて息苦しいほどだった。

骨がゆっくりと音を立てて戻り、皮膚がそれを覆うように再生していく。

アミナはその様子を見守りながら、小瓶を少し傾けては傷の様子を確認するという動作を繰り返した。


やがて、エルミナの胸部の傷がほぼ塞がり、呼吸が僅かに深くなったように見えた。

彼女の唇が微かに動き、何か言葉を発しようとする仕草を見せる。

しかし、アミナは耳を傾ける余裕を持たず、まだ残る傷の処置を急ぐ。


回復薬の残りは少なくなっていた。

アミナはそれを見て、焦りと恐怖が再び胸を締め付けるのを感じた。

これだけでは全ての傷を癒せないかもしれない。

だが、それでもやれる限りのことをしなければならないと自分に言い聞かせる。

今は迷う時間すら惜しい。


アミナは次にエルミナの腕に目を向けた。

そこには、深い裂傷が走り、筋肉が露わになっている箇所があった。

彼女は小瓶の中身を慎重に垂らし、傷口全体を覆うように手で押さえた。

液体が浸透していくと同時に、裂けた皮膚が徐々に閉じていき、赤い筋肉の上に新たな皮膚が張り巡らされていく。


その一方で、アミナ自身の体力も限界に近づいていた。

呼吸は荒く、手足は痺れたように感覚が鈍くなっていた。

しかし、エルミナの命を救うという意志だけが彼女を動かしていた。

最後の一滴を傷口に垂らし終えると、小瓶は空っぽになった。


アミナはその場に膝をつき、疲れた体を支えるようにしてエルミナを見下ろした。

傷口は完全に塞がり、血の跡だけが彼女の体には残っている。

しかしまだ安心はできない。

先程唇の動きは確認できたが、この一瞬の間に命を失っているかもしれない。

死体に回復薬をかけてもその傷は塞がるという事を学んでいたアミナは、その余計な知識に苛立ちを覚える。


しばらくし、目を開かないエルミナにアミナは「もうダメか……」と呟いた。

やはり私は死体に回復薬をかけてしまっていたのか、と希望の縁に立てたと思ったら目の前に広がる絶望に叩き落された気分だった。

アミナが俯き、エルミナの体を支えている。



諦めかけたその時、エルミナの右手が弱々しく動くのが目に入った。


「――ッ!!」


アミナが驚いている暇もなく、エルミナは突然体を起こして咳き込み始めた。


「ゲホッ!ゲホッ!ゴホッ!!カハッ!!」


震えるアミナを余所に、エルミナは絶えず咳をしていたが、しばらくすると咳が止まり、周囲を見回して呟いた。


「私は……生きてる……のか?」


周囲を見回している内にアミナと目が合う。


「あれ、アミナさん。私は一体―――」


そう言おうとした瞬間、アミナに優しく抱きつかれた。

そして小さく「よかった」と呟かれ、エルミナはなんとなく状況を把握した。

自身の為に全力を尽くしてくれた彼女に敬意を払い、エルミナもアミナの体を抱き寄せる。

そんな状況がしばらく続いた。


エルミナは目を端にやると、自分の荷物が漁られているのを見つけ、アミナの足元には回復薬が入っていた瓶を見つけた。

そして「また貴女に助けられてしまったな」とエルミナは小さく呟いたのだった。



最後までお読み頂きありがとうございます!

そしてよろしければブックマークや感想の方をよろしくお願いします!

評価も頂けるととても励みになります!!

それでは次回もお楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ