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第一章 20話『『元』究極メイド、ダンジョンに入る』

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少しだけ加筆しました



「さて、晩ご飯を作りましょうか」


アミナは目の前に用意された、エルミナ達が倒した大量の魔物の肉や、彼女達が取ってきた野草達に目をやりながら言った。

その肉達はエルミナとギーラとケイが襲い来る魔物の群れを返り討ちにした事で手に入った素材達だ。


先程の彼女等の戦闘は目を見張る物があり――いやむしろ目を見張る物しか無かった。

ケイの繰り出す多才な魔法の数々、肉弾戦で最前線に殴り込んでいくギーラ、そして、剣術と魔法を組み合わせた流麗かつ圧倒的な威力を誇っていたエルミナ。

そんな苦労をしてくれた彼女等にアミナは約束通り料理を振る舞おうとしていた。

――彼女等は苦労とは思っていないようだが。


「ご飯楽しみだなぁ〜!何を作ってくれるの?」


ケイが体を揺らしながら聞いてきた。

アミナは食材の選定をしながら答えた。


「これだけお肉や野草や根菜があるのなら、一度に沢山具材を入れる事の出来るスープ系を作ろうかと思います」


「おぉ!スープか!美味そうだな!」

「あぁ、とても楽しみだ」

「にゃうぅ」


全員が期待の眼差しをアミナに向ける。

その視線を向けてくる皆の顔を見て微笑むと、再び食材達に目を向けた。

どれも見慣れない形や色をしているが、メイドとしての経験が豊富なアミナにとっては、それぞれがどのように調理すれば良いのか、既に頭の中に描かれていた。


「さて、まずは下ごしらえから始めましょうか」


そう呟くと、アミナは手早く魔物を捌き始めた。

その魔物の肉は漆黒の色をしており、一見すると固そうに見えるが、表面を覆う薄い膜をナイフで取り除けば、中は柔らかい赤身が現れる。

内蔵を切り取りながらそれらを端に避けていく。

脂身の少ない肉だが、筋が強いためそのままでは食べづらい。

アミナはナイフを使って筋を丁寧に切り分け、余分な部分を取り除いていく。

その動きは熟練の料理人のように無駄がなく、静かな夜にナイフが肉を切り裂く音だけが響いていた。


「へぇ〜そこって切り取るんだな」


と、ありえない事を感心したように呟くギーラは続いて「全部そのまま食ってたぜ」と言うので、ほっとく事にした。

まさか内蔵まで下処理せずそのまま食べていたんじゃないでしょうね、と言いたいの飲み込んで下処理を続ける。


「このお肉は煮込むことで柔らかくなるはずです。ですが、まずは焼いて旨味を閉じ込めておかないといけません」


アミナはそう言いながら、捌いた肉を一口サイズに切り分け、そこに森で採った香草を擦り込んでいく。

「ほうほう」と皆物珍しそうに見ている。

ハーブの葉を指で揉み砕き、その香りを肉に染み込ませるように丁寧に塗り込む。


「にゃあ」


フィーがアミナの膝のそばで見上げるように鳴いた。

アミナは笑いながらフィーの頭を撫でる。


「フィーちゃん、あなたの分もちゃんと用意してあげますから待ってて下さいね」


頭を撫でられたフィーは満足そうに近くでアミナの料理を見ていた。

するとエルミナが声をかけてきた。


「なぁアミナさん、スープを作ると言っていたが、鍋なんて無いが……どうするのだ?」


ギーラもケイも「確かに」と言った。

しかしそこも抜かり無く、アミナは胸を張っていた。


「ギーラさん、あの時私が砕いてしまった剣の破片、持ってきてくれましたか?」


「ん?おっおう。言われたとおり全部持ってきたぜ」


困惑した様子のギーラは自分の持っていた鞄の中から、先日アミナによって砕かれてしまった新品の剣だった物を取り出した。


「ありがとうございます、ギーラさん。新品の剣だったのにすみません」


「いやぁもうそれは良いっての。俺が100悪かった訳だしよ。……んで、それ何に使うんだ?ただの鉄くずだぞ」


「はい、これを持ってきてもらった布の上に広げて……」


アミナはそう言いながらギーラが取り出した袋を広げてその中の鉄の破片達に手をかざした。

その後鉄くず達が光だし、新たな物へと形を変えていった。

そして出来上がった物は鉄製の鍋へとなった。


「よし――これに具材を入れていきます。だからお鍋の心配はいりませんよ」


「ほう、流石アミナさんだ。スキルでただの鉄くずから鍋を作り出す……。全て抜かり無いとは恐れ入ったな」


「しかしこれだけでは少し足りないので、次はこちらを使います」


アミナはそう言って、フィーの体に吊るされていた鞄から石のようなものを取り出した。


「それは石かい?」


「はい、先程河原で拾ってきたものです。これを格子状に作り変えて……」


またしてもアミナはスキルを発動した。

すると今度は石の形がみるみる変化していき、格子状の薄い板のような物が出来た。


「本来は鉄で作るのですが、今回は素材の都合上石で作らせて頂きました。これを焚き火の上に固定して、十分に温まったらお肉を置いていきます」


香草をまぶした肉を一度グリルするために、アミナは焚き火の上に網を置き、そこに肉を並べていった。

火が強すぎると焦げてしまうため、火加減を慎重に調整しながら、肉がじっくりと焼けていく様子を見守る。

やがて、焚き火の中からパチパチと肉汁が弾ける音が聞こえ始め、香ばしい香りが辺りに漂った。


「うん、いい感じですね。次はスープ本体を作りましょう」


アミナは鉄鍋を取り出し、焚き火の上にセットした。

まずは森で採った根菜を一口大に切って放り込む。

見た目は紫色のじゃがいものようなものや、鮮やかな赤色をした人参のような野菜たちだ。

ナイフを入れると、その表面は新鮮そのもので、掘りたて独特の匂いがする。

それを見て、アミナは満足そうに頷いた。


「野菜の甘みを引き出すには、最初に少しだけ炒めるのがコツなんですよ」


教えるような口調でアミナは言うが、全員美味しそうな匂いで全然話を聞いていなかった。

「あはは……」と苦笑いしながら、アミナは次の工程へと移る。


アミナは鉄鍋に植物からスキルで抽出した少量の油を垂らし、そこに根菜を入れて軽く炒め始めた。

火が通ることで香りがさらに引き立ち、甘みが際立つようになる。

炒めた野菜に水を加え、そこに焼き上げた魔物の肉を投入した。

鍋の中では肉と野菜が煮込まれ始め、次第にスープの色が黄金色に変わっていく。


「にゃあ、にゃあ」


フィーが興奮したように鳴きながら、鍋のそばに寄ってくる。

アミナは笑いながら言った。


「待って下さい、フィーちゃん危ないですよ。それにまだ完成してないです。ほら、あなたの分は別で作ってあげますから」


フィーのためには、小さな石の鍋に少量のスープを取り分け、塩分を控えた特製のスープを用意する。

そこに少しだけ細かく切った魔物の肉を入れ、煮込んでいった。


スープが煮込まれている間に、アミナは付け合わせの準備に取り掛かった。

森で採った野草を細かく刻み、それを根菜のスライスと混ぜ合わせる。

これを焚き火の遠火でじっくりと炙ることで、カリッとした野菜チップスが完成する。


「これで野菜の付け合わせもバッチリですね」


アミナは完成したチップスを皿に盛りつけ、その上にさらに刻んだ香草を散らした。

最後にスープを仕上げるために、塩やスパイスを少量加える。

これらの調味料はアミナが旅の途中で集めたもので、どれも特別な香りや味を持っている。

調味料を加えた瞬間、スープの香りがさらに引き立ち、焚き火の周りに漂った。


「よし、完成です!」


その一言に一同は「おぉ〜!!」と歓喜の声を上げた。

アミナはスープを器に盛り付け、焼き上げた肉と野菜チップスを添えたそれを、それぞれに渡した。


「美味そぉ〜!!」


「本当にあの魔物と同じお肉なのかしら……!!全然そうは見えない!!」


「アミナさんの腕は素晴らしいな。とても美味しそうだ」


フィーには小さな器に特製スープを分け与えると、フィーは尻尾を振りながら嬉しそうに鳴いた。


「熱いので気をつけてくださいね。あなたは猫なんですから」


アミナの作った料理は、見た目も美しく、香りも素晴らしいものだった。

黄金色のスープには肉と野菜がたっぷりと入っており、その一口は疲れた体を癒やすほどの滋味深さがあった。


「そんじゃあ――」


「いただきます!!」


一同は手を合わせて言うと、アミナはそれに対して「召し上がれ」と言った。

エルミナ、ギーラ、ケイの3人が木製のスプーンでスープを持ち上げる。

ゴクリと喉を鳴らして、それを口へと運んだ。

そして、一度具材を噛みしめると、彼女等の目が見開かれた。


「うんまぁぁぁぁい!!!」


「なにこれすっごい!!本当に魔物のお肉なの!?こんな美味しい物、今まで食べた事無い!!」


「柔らかくてクセもない。今まで食べていた料理が嘘のようだ」


絶賛の嵐――3人だが。

しかし人に料理を振る舞うなど久しぶりだったアミナは少しだけ誇らしくなった。

アミナも静かにフィーの頭を撫でながら、自分も一口スープを飲む。

そして、満足そうに微笑んだ。

他の3人もとても幸せそうな顔をしている。

料理を作った側からすると、それ以上の幸福は無い。


「やっぱり料理っていいわねぇ〜」


「体の芯にこう、じんわりくるなぁ……俺、なんだか泣けてきた……」


「あぁ、とても温かい。それでいて優しい味だ。……武器や道具なんかは作り手の顔が見えると言うが、料理もさほど変わらんな。アミナさんの嫌々ながらも作るときには優しさが滲み出る。それをこの料理達が教えてくれている」


「おっ!エルミナ良い事言う〜♪」


「まったく……食べたら片付けは手伝ってくださいよ?」


「おうよ!任せとけ!木の皿なら割れねぇから俺でも出来るぜ!」


「本当か?なんなら私が見張っていてやろうか」


「なっ!舐めんなよ!それくらいできらぁ!!」


星空が煌めく平原に、少しの笑い声と温かい空気が生まれた。

こうして、アミナの料理の腕前は、彼女等の野営をさらに特別なものに変えていった。



―――



そして翌日。


「ここがその遺跡……」


昨晩の野営地から徒歩で半日程言った所に隠されるように建造されていた遺跡。

その巨大さと圧倒的な威圧感、それを相殺する程に朽ち果てた外観。

ボロボロなのに不気味に感じる。

そんな不思議な雰囲気を、遺跡全体が放っていた。


「あぁここが、エーテリアの灯があるとされている『迷宮遺跡・ララバイ』だ」


アミナは初めて見る遺跡に固唾をのむ。

そしてエルミナがララバイの説明を口にした。


「迷宮遺跡・ララバイ――その名の通り中は迷宮のように入り組んでいるそうだ。ここを発見した時に一旦中を探索した国の探索員がいてな。その人は『空間把握(マッピング)』という周囲の建築物の構造を理解できる、遺跡探索にはお誂え向きなスキルを持っていた。しかしその人が探索を諦めた理由が――」


「広過ぎた……という事でしょうか」


アミナの予測にエルミナは静かに頷く。


恐らくそのスキルを使える人は遺跡調査に慣れている人物。

そんな人が広過ぎるという理由だけで引き下がるのかは疑問だったけれど、逆に考えるとそんなに慣れた人ですらも投げ出す、もしくは中断せざるを得ない状況になってしまったを考えるのが自然だろう。

その中で一番考えられるのは広過ぎる、という理由だ。

準備も万全ではない、食料も体力も精神もいつまで持つか分からない、おまけにいつ外に出られるかも分からない。

スキルを使った時にその広さにゾッとするその探索員さんの顔が目に浮かぶ。


「確かにこれは報酬も危険度も釣り合ってますね」


「あぁ、だからこそ危険を冒すのが仕事の我々冒険者の出番という訳だ」


「よっしゃ!遺跡目の前にしたら気合入ってきたぜ!さっさと攻略して打ち上げしようぜ!」


「もう、また飲み過ぎて泣かないでよ?貴方の介抱大変なんだから」


それはお互い様じゃないのか?とアミナは言いそうになったのを苦笑いしただけに留めた。

そして、そんな空気の中、エルミナが声を発した。


「ケイ、ギーラ、この遺跡探索はかなり困難なものになる。だが、これだけは忘れるな。――アミナさんだけは絶対に守れ。彼女は強いが、きっと一人では危ない。だからお前達がサポートをしてやるのだ。悪いが死守だ」


ケイとギーラは顔を見合わせて一瞬ぽかんとした顔をしたと思うと、ニヤリと口角を上げて「おう!!」「任せといて!!」と自信満々に言った。

そしてエルミナは次にアミナとフィーへ声をかけた。


「アミナさん、猫殿。無理矢理誘ったのに来てくれて感謝する。……もう一度確認するが、本当についてきてくれるか?」


アミナは一瞬考える素振りをした。

しかし、答えはとっくに出ている。


「ここまで来て帰るのは惜しいですし、最後まで同行させて頂きますよ。私にも生活がかかっていますので」


アミナはそう笑顔で言った。

それがアミナなりの気遣いだという事をエルミナは察し、「あぁ。そうだったな」と言った。

一通りの会話を終えると、4人と1匹は遺跡の入口を見据えた。


「さぁ、遺跡(ダンジョン)攻略――開始だ!!」



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