第一章 18話『『元』究極メイド、依頼の確認をする』
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「……これ、どこに向かっているんですか?」
広い平原を、エルミナ達の後ろをフィーに乗って移動しているアミナが前にいる3人に問いかける。
フィーはちょいちょいギーラにちょっかいを掛けながら歩いていた為、乗り心地は揺れに揺れてあまり良くなかった。
平原は草木が生い茂り、周辺に荒野しかないスターターとは無縁に思える場所だった。
だがアミナはこの平原に少しだけ見覚えがあり、フィーと出会ったクヌフ森林へと行った時に見た景色だった。
しかし逆に、そのことから東に進んでいるという情報しか得られなかったのだ。
そして、アミナのその問いかけにエルミナが答えた。
「そうだね、そろそろ詳しい説明をしておこうか」
エルミナはそう言って近くにあった木陰へと移動した。
全員が背負っている荷物を地面に降ろし、休憩を兼ねて今回の依頼内容を確認した。
フィーは相変わらずギーラに当たりが強く、全員が座っているにも関わらず、フィーはギーラの上に乗っかった。
「フフ、仲が良いですね」
「あぁ、本当だ」
「ちょっ!!微笑んでねぇで助けてくれよ!!あん時は悪かったって謝ってるじゃねぇか!!」
振り払おうとすると、フィーは更に体重をかけてギーラを潰そうとする。
しかしギーラも負けじと自慢の筋肉で耐えている。
そんな攻防を横目に見ながら、アミナとエルミナとケイは依頼の内容が書かれた木の板を取り出した。
この大陸では紙が貴重な為、クエストボードに掲示されているのは木の板に書かれているものらしい。
「今回の依頼はこれだ」
そう言ってエルミナは木の板に書かれた文字を指差す。
アミナを除いた3人は既にその内容を知っている為、アミナはそれを口に出して読んだ。
「ただのダンジョン攻略じゃ……って、ん?『エーテリアの灯』?」
聞き馴染みのない言葉にアミナは疑問系を最後に付け足した。
口にした言葉を理解していないのを察したケイが説明を始めてくれた。
「『エーテリアの灯』っていうのはね、この大陸を開拓した『開拓者』って呼ばれている人が作り出した伝承上の古代魔道具なんだよ。」
「魔道具って事は、何か特別な効力があるんですか?」
「うん。これは周囲の魔力を安定させて、周辺の魔物の活性化を防ぐ役割を持つの。だからこの大陸ではとても重要視されている魔道具なんだ。……ほら、ここ見て」
ケイは指を差した。
アミナはその差された所の文章を読む。
するとそこには『レリック王国特別指定依頼』と記載されていた。
レリック王国……スターターも確かこの国の領土だ。
古い遺跡や古代の技術を利用して建造された王都『ファーマス』を中心として発展した国家。
その技術力は第二大陸のそれとはまた違ったもので、同じものを作る工程ですら全く違う工程が存在する。
それほどに種類に溢れた様々な技術を持っている国である。
スターターに依頼が出されている……という事はこの国の中にあるのは確実……。
それに国がわざわざ特別認定してまで出す依頼と言う事は――
「この魔道具って、今までは失われていたってもっぱらの噂だったんだけど、最近になってエーテリアの灯があるとされている廃墟が見つかったの」
やっぱりね。
伝承上とは言え、魔物が蔓延っているこの大陸でそれの存在を完全に無視する事は出来るハズも無い。
しかしあるかもわからないものに時間と労力を割き続けるわけにもいかない。
それで今回あるかもしれないって廃墟が見つかったから依頼が出てたという訳ね。
「それで、その廃墟が魔物の巣窟になっているらしいから、そこの調査に行ってほしいんだって。あくまで調査だけだから、無理にエーテリアの灯を探す必要は無いらしいよ。今回見つからなくても大々的に国が調査隊を派遣するらしいし」
なるほど、魔物がいっぱいいたら困るからそれを先に駆除しにいけって感じか。
先にエーテリアの灯を冒険者が見つけたら何をするか分かったものじゃないから無理に見つける必要は無いって言ったのかしら。
「内容は理解しました。でもこの依頼においてやはり私はお力になれないように思うのですが。私は皆さんのように冒険者では無いですし、スキルだって戦闘向きではありません。報酬や素材収集の8割というのは大変魅力的なのですが、それ相応の働きは出来ないと思われ……」
半分本音で、半分嘘の言葉をアミナは口にした。
本音の部分は言葉の全てなのだが、それが謙遜だけでないのもある。
ただ単に面倒臭いというのが、言葉の裏に隠れた真の本音だ。
そもそも大した行動範囲を持っていないアミナがいきなりクエストに連れ出されてもただ困惑するだけだ。
その辺をこの英雄のパーティーは理解していない。
しかし、エルミナはアミナのその言葉に続いて口を開いた。
「大丈夫だアミナさん。言っただろう?今回のこの依頼は私達なりの貴女へのもてなしだ。だから無理に戦闘をしたりする必要はない。報酬はともかく、素材だって正直、私達が持っていてもあまり役に立てることが出来ない。ならば貴女のその素敵なスキルで活かしてあげたほうが素材達も喜ぶ」
決闘を仕掛け、仕掛けた側が負けると、その相手へと敬意を払ってもてなしをするのがこの大陸に残った風習で一応法律だそうだ。
今回ついて行くことになってしまったのも私が決闘でつい勝ってしまったからだ。
……しかし、こんな風に言われてしまったら断る道が無い。
まぁ、減るものでも無いし、ついて行くくらい良いだろう。
アミナが今の状況に納得し始めていると、エルミナは「ただ……」と呟いた。
「……ただ、ほんの少しだけでいいから、魔物の肉ばかり食べている私達にアミナさんの手料理を食べさせてほしい。でも、嫌だと言うならばそれでも別に私達は構わない。いつものことだからね」
そう言えばそんな事言っていた。
あんなに飲んだくれていたのに言ったことを覚えているなんて厄介な人だな。
もしこの人が仕事場の私の上司だったら、間違いなく飲み会で口にした失言を翌日掘り返してくるタイプだ。
「まぁアミナさんが乗り気じゃねぇってのも分からんでもない。でも報酬見てくれよ。そうすりゃちょっとは気が変わってくれんじゃねぇかな」
フィーに押しつぶされ続けているギーラはプルプルと震える手で依頼の書かれた木の板の少し下の部分を指差した。
そこには報酬が書いてあった。
その値段は――
「――金貨600枚!?」
あまりの額にアミナは叫んでしまった。
一度の依頼でここまで出すだなんてやはり国も重要視していると言うことか。
金貨600枚の8割……480枚………。
これだけお金があればお店をすぐにでも開店して、お客さんが来なかったとしてもしばらくは食いつないでいける。
アミナはしばらく頭を悩ませた。
その光景を、他の3人と1匹は黙って見ている。
そして「うーむ」と唸り終わった頃、アミナの中で一つの結論が出た。
「分かりました……行きましょう依頼!作りましょう食事!メイドとして恥の無い手料理を皆様に振る舞わせて頂きます!!」
その言葉を聞いて、3人はそれぞれ歓喜の声を上げた。
「あぁ〜〜よかったぁぁ〜〜もうゲテモノ料理は食べたくなかったのぉぉ〜〜」とケイ。
「魔物の肉も筋肉には悪くないんだが、やっぱり手の込んだ料理は嬉しいぜ!!」とギーラ。
「ありがとうアミナさん。私達に料理が出来る者がいなくてな。本当に感謝するよ」とエルミナは言った。
「まぁ私なんて物作りしか出来ませんから、そういった面からサポートさせて頂きますね」
とアミナは3人に向かって言った。
そしてそれと同時にケイとエルミナの発言内容が気になった。
料理出来る人はいないけどゲテモノ料理は食べていた……?
じゃあそのゲテモノ料理は誰が――
「そう言えば、今までは誰が料理を作っていたのですか?」
アミナのその質問に、明らかにケイとギーラは固まる。
そして、人差し指を自分に向け「私だ」とエルミナが名乗りを上げた。
それを聞いた後、ケイとフィーから抜け出したギーラがエルミナから少し離れた場所にアミナを連れて行き、小声で話した。
「どうしたんですか?」
「実は、俺達が今まで食ってきたのはエルミナの料理なんだ」
「そうそう」
「……?それの何が問題なのですか?」
「問題は味と見た目なのよ」
「まさか……さっきのゲテモノって……」
アミナの中で嫌な想像がされる。
その想像とは、エルミナが自信満々で作った料理が、この世のものとは思えない味と見た目で、二人はそれを食べ続けていた、という事だ。
もしそれが事実ならば、ギーラの発言も納得できる。
「あぁ、そのまさかだ。しかも本人は不味いとは思っていなくてな、だからある日から料理はせず魔物の肉をただ焼いて食べていたんだ」
「どっちもキツかったよぉ〜。どちらにせよゲテモノだしさ、どっちも見た目が悪かったらまだ味がマシな方選ぶでしょ?でも魔物も魔物で美味しくなくって……だからアミナさん!!私達の舌を救ってくれてありがとう!!」
ケイに手を握られたアミナは、別に料理作った所を見せた事は無いんだけどなぁ……と言いそうになって、その言葉を飲み込んだ。
ここで変に期待を裏切ってしまうのも可哀想だし、食べてもらってから期待通りか判断してもらおう。
「何をコソコソと話しているのだ?」
音もなく近づいてきたエルミナがいきなり声を発する。
それに驚いた3人は思わず悲鳴を上げて飛び上がってしまった。
「そんなに驚くことか?」
「い、いやぁ〜あまりに突然だったから。……ね?ギーラ?」
「お、おう。そうだぜ!……ってほら説明も終わった事だし、さっさと進もうぜ!昼の内の距離を稼がねぇと!!なっ!!」
そう言ってギーラはエルミナの背中を押して木陰の方へと歩かせていった。
その光景に苦笑いをしているアミナに向かって残っていたケイがまたしても小声で呟いた。
「本人は自分の料理美味しいと思ってるから、あんまり不味いとか言わないであげてね」
それを言って、ケイも木陰の方へと戻っていった。
難儀な人を抱えてるな、とアミナは更に苦笑いをする。
すると背中を何かに押される感触がした。
それはモフモフフワフワの巨大な毛玉だとアミナは容易に予想できた。
「分かってるって、話も行くから。フィーちゃんまたお願いしますね」
「にゃあぁお」
フィーは自ら頭をアミナの足の下に潜り込ませ、アミナを背中に乗せた。
そして先に荷物を持って出発の準備を終わらせていた3人の所へと戻った。
エルミナは味音痴。
報酬は金貨480枚。
今日知った事を心に書きとめ、アミナはこれから始まる冒険にほんの少しだけ、胸を躍らせるのだった。
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