第一章 15話『『元』究極メイド、英雄と戦る1』
事前に言っておきますと、今回変な所で途切れてしまって申し訳ないです!
戦闘シーンをいれると文章が長くなって読みにくくなってしまったので、戦闘シーンとその後の展開は0時頃投稿致します!
それではお楽しみ下さい!
アミナさん!!私と……戦っては頂けないだろうか……!!」
目の前にいる女傑はそう言う。
言っている意味の分からないアミナはただ「は?」としか答えられなかった。
しかし、エルミナは聞こえなかったものと勘違いし、もう一度言った。
「だから、私と戦って欲しいのだ!」
興奮と恥じらいが混ざったその態度で、アミナは更に何故そんな事を言ったのか分からなかった。
「えっと……どうして私に?」
そう聞いて当然の質問を投げかける。
もしかしたら何か事情が出来たのか?
いや、そうだとしても初対面の私に頼むハズが無い。
それに立ち去ってから時間もほとんど経過していない。
こんな短時間で私に頼み事が出来るなんてどうしたのだろうか。
すると、その質問にモジモジしながらも、エルミナは答える
「じ、実は……先程ケイ……ウチの魔法使いが、君が剣を砕けた理由を予想で何となくだが教えてくれたんだ。あれはスキルによるものだ……って」
はい、なんの事情もありませんでした。
まぁわかってた事っちゃ事か。
……というか、魔法使いはスキルを使ったとか、そんな事まで分かるのか。
「ただの予想だと思うかもしれないが、それが本当だとしたら凄い力だ!……だから、私と戦って力をもっと見せて欲しいのだ!」
そこがおかしい。
何故そこから戦闘に繋がるんだ。
大体、スキルを見せて欲しいなら戦闘にする理由が無い。
そもそも私のスキルは戦い専門じゃなくて物作りが専門だ。
身体能力だって大した事無いのに若くして英雄だなんて呼ばれてる冒険者に勝てる訳が無い。
よし、断ろう。
適当な理由をつけて断って、この人が街からいなくなるまで家で大人しくフィーちゃんと新しい遊びを探究しよう。
「す、すみませんけど、私そういった事はしてなくてですね……戦いも素人同然ですし……貴女にスキルをお見せする前に倒されてしまいますよ」
嘘……では無いが、適当な理由をつけて、アミナはその申し入れを断った。
それを聞いた瞬間、空気がピリピリと肌を刺激するような感覚に陥った。
それが何の仕業か、アミナにはすぐ見当がついた。
その元凶であろうエルミナの顔を見てみると、彼女の表情が変わったのが明らかだった。
そして彼女はフィーの方を睨んで、言葉を発し始めた。
「あの猫殿、魔物だね。しかも危険度ランクの高い強力な……」
ピリつく空気にアミナは息を呑む。
だったらどうした、と言い返したい気持ちが無理やり押し付けられる気がした。
「そんなのを使い魔にしている人が弱い訳無いだろう……?私は強い者との戦いに飢えている……だから戦って欲しい。だから嘘はいらない。本気の貴女と戦いたい。ただそれだけなんだ。」
エルミナは言葉を言い切り、アミナの返事を待っている。
すーーーーっ……どうしよう、この人全然人の話聞かない。
そもそも言ってる事が理由になってない。
それって理由っていうよりただの我儘ですよね。
私は飢えてる、だから食わせろってお店の人に言ってもお金払わなきゃ食べさせてくれないでしょ。
貴女が言ってるのはそういう事なんですけど。
それに、私が強い?
いやいやいや、フィーちゃんを見てそう思ったならお門違いというやつだ。
だって、フィーちゃんを倒した時にたまたま居合わせたハンスさんは、フィーちゃんについて何も言ってなかったからフィーちゃんが危険度ランクの高い魔物なんて事は無いだろうし、相手が武器を使ってきたから今回見たく剣を粉々に出来た訳で。
やっぱり私がこの人と戦う理由はこっちにこれっぽっちも――
アミナがそう考えていると、何やら周りがザワザワと騒がしい。
思考しながら、アミナはその声に耳を傾けた。
「凄い!あのメイドのお嬢ちゃん、英雄様に決闘を申し込まれているぞ!」
「いいなぁ!俺も申し込まれてぇ〜!」
「武を交えられるだけで光栄な事じゃなぁ。儂ももっと若ければ……」
「エルミナ様の決闘が見られるんですって!行きましょうよ!」
ワイワイガヤガヤワイワイガヤガヤ。
そんな感じの言葉が二人の頭上をずっと飛び交っている。
その言葉達を聞いていると、アミナは顔に汗をかきはじめた。
……不味い、この空気感。
誰もがエルミナさんの戦いを望んでいる……。
相手が私である必要性は皆無だと思うけれど、きっとこの人は私が相手じゃないとやらないだろう。
この街で生活していくならば、ここで住民達の信頼は勝ち取っておきたい……。
……だが!だとしても私がやる理由は本当に見当たらない!
大体何で皆すぐ納得してる訳なんだ?
私の意思は加味されないのか?
英雄の我儘は謎の英雄パワーで民衆を納得させる事ができるのか?
「……はぁ、こんな状況じゃ断れそうに無いですね……」
アミナは観念したように肩を落としながら言った。
民衆を味方につけた相手の誘いを断る勇気を、アミナは持っていない。
アミナの了承とも取れる言葉を聞いたエルミナは嬉しそうな顔をして「じゃ、じゃあ……!」と言った。
しかし、ここで終わらないのがアミナ節である。
「……だが断る!!」
アミナが決闘を受けるのを期待していた事によって、歓声に沸いていた住人達が一斉に黙る。
エルミナ自身も、その言葉に戸惑いながら「へ?」とだけ言う。
「だって、私に全く利点が無いじゃないですか。理由も意味分からないですし。……あと私、大多数を味方にして一を攻める人、嫌いなんですよね」
アミナはサルバンとリュウの事を思い出していた。
サルバンかリュウのどちらが指示したかは、今になっては分からないが、私がバンカーを去るとなった後、他のメイドや使用人は私と話そうとしなかった。
誰かの下に着いている以上、不可抗力というものがあるのは仕方が無い。
だがそれを理由に多数が少数を攻撃していいとはならない。
私はそれを、この土地に飛ばされてから学んだ。
今の状況は、個の受け取り方次第では、英雄の言葉に乗せられた大多数の民衆による攻撃となる。
これを私が逃げたい理由の為に無理矢理引用したと言うのならば好きにするがいい。
だが私は個の辛さを知った。
それを子供達や他の個に味わせる訳にはいかないのだ。
被害者が私だから良かったのだ。
それが幼い子供同士で起こったらどうだろう。
ほぼ確実にそれは虐めへと発展する。
英雄様にこう思うのは忍びないが、貴女の身勝手で振りかざされる刃は簡単に他者を傷つける。
それを理解して欲しい。
「まぁ、そういう事ですので、お引き取りください」
アミナは再び背を向けてスペースの片付けを始めた。
民衆は静かにザワザワと騒いだが、今更そうなろうとアミナには関係ない。
すると、彼女の言葉に驚かされたエルミナが冷静さを取り戻した後、口を開いた。
「……そうか、残念だよ。」
ようやく納得してくれたか。
少しだけ強く言い過ぎただろうか。
……まぁ、街中で会ったら話ぐらいは聞いてあげよう。
「……アミナさんが決闘を受けてくれないのなら、法律に頼むしかないか……」
片付けをしているアミナの耳にそんな言葉が入ってきた。
聞き間違いでは無いその言葉にアミナはまたしても「は?」と振り向いて言った。
「おや、知らないのかい?この国には『決闘法』という法律があってね、スキルを持つ者は挑まれた決闘を断れないという法律があるんだ」
なんだそのクソルール。
初耳だし理不尽すぎるだろ。
「元々は、魔物との戦争時に戦力が必要になったこの国が、スキルを持った人間を見つけ出す為に作られた法律らしいんだが、それが今も残っているんだ。決闘はその時の名残でもあるんだ」
おいおい、だから私がスキルを使ったって聞いて勝負を挑みに戻ってきたって言うんじゃないでしょうね。
それなら私が剣を砕いた頃から戦いたくってしょうがなかったって感じだったのか……。
「やっぱりスキルなんていらなかったかな……」
アミナは呟くように言って頭をかいた。
いくらこの大陸に来たのが初めてだからとはいえ、そんな事を言っても信用されないだろう。
これは断る道が無くなってしまったな……。
「……分かりましたよ。受ければいいんでしょう。でも、あまり期待はしないでくださいね」
アミナが嫌々承諾すると、エルミナだけで無く、周囲でザワザワとしていた住人達も声を上げて喜んだ。
やはり皆、エルミナの決闘が見たかったのだ。
騒がしい中、エルミナはアミナに更に近づき、手を差し出してきた。
「はぁ……はぁ……なら、向こうの空いたスペースに行こうか……!」
アミナがエルミナの顔を見ると、その顔は何故か気持ちの悪い程に嬉しそうだった。
そしてその異様な喜び様に、アミナはエルミナの異常を次々と見つける。
先程より息が荒い。
顔も赤いしヨダレまで垂れてる。
そして一つの答えへと辿り着く。
……あぁ、分かった。
なんやかんやそれっぽい事言ってたけどこの人――ただの戦闘狂だ。
―――
エルミナの誘導とこの街の冒険者ギルドの協力によって、アミナは自由市場の早めに撤収し、空いていたスペースまで案内された。
「ルールはシンプルでいい。貴女が私に一撃入れられたのなら貴女の勝ちだ。無論、私は貴女が諦めるまで貴女の攻撃を避け続ける。そうすれば貴女のスキルを見る事が出来る」
準備運動の為に体を伸ばしているアミナにエルミナは言う。
それは己が負ける事など万に一つもないと言いたげな程、自信に満ち溢れていた。
「そういえばさっきの戦士さんはどうなったんですか?」
伸びをしながらアミナは言う。
それに対して、エルミナがギルドから支給された木剣を見ながら答える。
「さっき宿屋に置いてきた。今はケイが様子を見てくれているだろう」
その言葉を言われた瞬間に、アミナは驚きと解決策を同時に頭に浮かべた。
あれだけの短い時間であの筋肉ゴリラを宿屋まで連れて行ったのか……。
身体能力はやっぱりずば抜けて高い。
こんなのに果たして勝てるだろうか。
……さっさと終わらせたいからってわざと負けると……多分分かるんだろうな、こういう人って。
「……まぁ、やるからには、負ける気なんて無いですけど」
アミナは木剣を構える。
準備が終わるのを待っていたエルミナも、木剣を正面に持って構える。
「さぁ、始めようか」
緊張感だけが二人を包み込む中、決闘の火蓋が今、切って落とされようとしていた――
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