第一章 13話『『元』究極メイド、自由市場に参加する』
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素材収集をした日から翌日。
駆け出し冒険者の街スターターでは月に一度、誰でもどんな商品でも出品することの出来る『自由市場』というものが開催される。
ある人はお手製のアクセサリーを、またある人は自分で狩ってきた魔物の肉や毛皮を、そのまた更にある人はお店で出す予定の新作のお菓子を試しに販売したりしている人もいる。
そして街の片隅の一軒家に住んでいる少女もまた、今回の自由市場に自らが作った物を出品しようと、開催の時間まで家にあるテーブルを前に腕を組んで、出品予定の物を見ていた。
透明な瓶に入れられた液体状のそれは青緑色に淡く輝いていた。
「うーむ……とりあえず作ってみましたが……」
アミナが唸りながらその回復薬を見つめる。
その理由の一つに、アミナが基本的に平和な第四大陸で生まれ育ち、その上領主の屋敷とその周辺しか行動範囲が無かった事が挙げられる。
バンカー周辺には魔物の報告が極端に少なく、回復薬やエーテル、エリクサー等の冒険者が使用する物を直接見たことはなかった。
アミナが今回作ったのは回復薬一瓶だけだ。
リヴァルハーブはまだ大量にあるが、とりあえず一つだけ作ったのだ。
アミナ自身が回復薬の構造や造形をあまり深く出来ていない点と、品質に疑問点があるという点から試作品だけを出品する予定だからだ。
構成成分的に考えて体に害のあるものとはならないハズな為、本当に一応の出店なのだ。
「回復薬の相場っていくらくらいなんでしょうか……?」
アミナが唸っているもう一つの理由がそれだ。
回復薬だけに言える事ではないが、この大陸での物の相場がよく分からないのだ。
魔物だらけで過酷な環境とは言え、食料の値段は対して第四大陸とは変わらず、むしろ第二大陸の方が安いくらいだ。
紙や本の値段が高いくらいで、他の物の値段はそう変わらない。
「あんまり変わらないと考えて良いのでしょうか。いくらに設定したら良いですかね?フィーちゃん」
アミナは横に座るフィーに声をかけて撫でた。
撫でられたフィーは嬉しそうに喉を鳴らした後に「にゃー」と鳴いた。
「にゃー、ですか……じゃあとりあえず銅貨2枚ということで出しましょうか。不完全な回復薬を高値で売るのは気が引けますしね」
そんな決め方かよ、と言いたげな表情でフィーは再び「にゃー」と鳴いた。
それからアミナは自由市場が始まる時間が近づいた為、広場へ向かう準備を始めた。
―――
準備を終えて、広場に着いたアミナとフィー。
彼女達は事前に出店することを報告していた為、スペースを個人的に確保してもらえていた。
「えーっと……あっ、ありましたよフィーちゃん。あそこが私達の出店場所です」
アミナが指差した先には大きな布が敷いてあり、そこには『アミナ様』と書いてある木の板が置いてあった。
他のスペースも似たような状況で、既に商品を並べ終わって広場が解放されるのを待っている人や、アミナのスペースのように木札が置かれている場所もあった。
「意外と広いですね。ここに回復薬だけを置くのはなんだか変な感じがしますが……」
そう言ってアミナは回復薬を布の上に置いて、『銅貨2枚』と値段の書いた木札を回復薬の前に立てかけた。
「売れてくれると良いのですけど」
正直、回復薬だけで言えば製造方法が確立されており、この街のギルド内でも売っているそうだ。
しかしギルドに入れるような肝の座った一般人などおらず、街中ではあまり見かけなかった。
それと同様に、エーテルやエリクサー等の魔法を使う時に使用する道具なんかも見かけなかった。
ここで私がいい感じの回復薬やその他の道具を作れば、冒険者の人達だけじゃなく、街の人にも色々な物を提供できるようになるかもしれない。
今日は大勝負です……!
心の中でそう叫んで握り拳を作ったアミナは、再び周囲を見回した。
するとフィーがどこかに行こうとしているのが見えた。
「あれ、フィーちゃん、どこかに行くんですか?」
フィーは一言「にゃぁ」と言って街の商店街の方へと行こうとしたが、アミナはそんなフィーを抱きかかえて自分のスペースへと戻した。
「ダメですよ、あなたはウチのマスコットキャラクターなんですから。お客さんをこうやって招いてください」
アミナはフィーを布の上に置くと、左手を丸くして肘を曲げ、手首だけを上下に動かして見せた。
それを見たフィーは早速真似をしてみた。
すると、危険度ランクS+の凶暴な魔物が、それはそれは愛らしく可愛らしい招き猫へと変身した。
「やっぱり可愛いです。誰かが回復薬を買ってくれたら街の探検に行ってきてもいいので、それまでよろしくお願いしますね」
仕方無いな、と言いたげな表情を浮かべているフィーだったが、内心はアミナの手伝いができることを楽しんでいるようだった。
準備を終えたアミナ達は自由市場が始まるのをただ待っていた。
そして少し経った頃、一人の女性が広場の中央に出てきた。
見覚えのあるその姿に、アミナは記憶を遡って思い出した。
するとその女性は、ギルドでアミナに祖母の家へと案内し、引取りの手続きをした女性だった事を思い出した。
あの人が司会進行役みたいな立ち位置なのか……と意外すぎる登場に、衝撃と釣り合っていない感想を心の中に浮かべた。
「さぁ皆さん!今月も自由市場の時期がやってまいりました!今日は思う存分、売って、買って、発散して!!盛り上がってまいりましょーー!!」
女性の掛け声にその場にいた全員が「おぉ!!!」と声と腕を振り上げた。
するとアミナは、周りの空気に感化され一層真剣な表情になった。
招き猫のマネを気に入ってずっと腕を動かすのを繰り返しているフィーが、真横がなんだか熱くなったのを感じて見る。
すると、アミナの目がいつもと違うことに驚いて飛び上がった。
その目には彼女には似合っていない、熱き闘志と燃え上がる商売人になろうとする根性が見て取れた。
今回の目的はあくまで回復薬の使用感のフィードバック。
しかしその目的よりも、『売ってみせる』という商売人が持っているものと同じものがアミナの頭の中を独占していた。
――この自由市場……お店を開くためにも、絶対に成功させてみせます!!
―――
一方その頃、スターター周辺の荒野にて、二人の冒険者が戦闘を繰り広げていた。
「くらいなさい!!『フリーズ』!」
女性の魔法使いが氷魔法を杖から放った。
冷たい風が吹き荒れ、対象を凍らせる魔法だ。
しかし、それは魔物にすんなりと避けられ、魔物は魔法使いに急接近する。
「きゃあぁ〜!」
魔法使いは思わず悲鳴を上げて杖を握りしめた。
すると
「あぶねぇ!!」
魔法使いの体を押しのけ、体格の良い戦士が魔法使いを庇って攻撃を受けた。
しかし戦士の体には傷一つ付いておらず、その防御力の高さが見て伺えた。
そして一度魔物を素手で殴って弾き飛ばし、魔法使いの元へ駆けつけた。
「大丈夫か!?」
「うん、ありがとう。流石、防御特化スキルの『防御壁』ね。すごい防御力だわ」
「そりゃどうも……けど――」
戦士は魔法使いに肩を貸して立ち上がらせる。
すると魔物はその隙を見計らったかのように次々と現れ、二人を取り囲んでいた。
「流石にこの数は厳しいな……」
「こいつ等全員、ランクBの強力な魔物よね……。どうしよう……私もう魔力残ってないよ……」
「俺もバリアの耐久値がかなり削られてきた。想像よりも攻撃力が高い……!次の攻撃をまともに食らったらやべぇな……」
一体でも太刀打ち出来ない程強力な魔物に囲まれ、絶体絶命のピンチに陥った二人。
魔法使いの方は先程の氷魔法で魔力がすっからかん。
タンクである戦士の方も、スキルが限界に達していた。
絶望に目を閉じようと俯く二人。
そこに――
「まだ諦めるなよ!!」
そう叫ぶ声と共に、光り輝く刃が魔物達を次々と斬り捨てていく。
その様子はまるで、光のが如き速度で動き、雷鳴のような衝撃を兼ね備えた一閃だった。
そしてあっという間にその場にいた魔物、計7体を一掃してしまった。
魔法使いと戦士は目の前の剣士に対して喜びの視線を向けている。
剣士は剣を鞘に仕舞い、二人の方を振り返った。
「すまない。ボスの魔物が少々手強くてな。二人とも怪我は無いか?」
二人はそう言われた瞬間、目の前の剣士に抱きついた。
魔法使いはともかく、自分より小さなその人に抱きつく程、その人を尊敬していた。
「ぶぇぇぇぇん!!!!ありがどぉぉぉ!!!」
魔法使いは泣きながら言った。
それに続いて戦士も礼を言う。
「助かったぜ『エルミナ』!流石――"若き女英雄"だぜ!!」
そう呼ばれた女性は、金色の髪を靡かせ、女性らしいプロポーションをしながらも、男勝りな喋り方をしていた。
「はいはい、分かったから離れてくれ。……さぁ後もう少しでスターターに着く。そしたらゆっくり話そう」
二人は「はーい」と各々違うテンション感で言い、歩みを進めた。
すると歩いている最中に戦士の男が口を開く。
魔法使いの方はまだ鼻が赤い。
「そういえばスターターでは今日、誰でも物が売れる市場みたいなのがやってるらしいぜ。休憩ついでに見に行こうぜ」
その提案に魔法使いは鼻声ながらも同意の声を上げた。
そしてエルミナも「へぇ、面白そうだね」と同意の意を示した。
英雄の組んだパーティーは、スターターを足早に目指した。
英雄と呼ばれる程の者が自分のお粗末な回復薬を見に来るかもしれない――
そんな事をアミナはつゆ知らず、ただただフィーと戯れながら、お客さんが回復薬を買ってくれるのを待っていた。
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