第二章 98話『『元』究極メイド、帝都に帰還する』
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「そうか……そんな事が……」
帝都に治療の為帰還したメイやベルリオから事の顛末を聞き、神妙な面持ちでそう言ったのは、この国の大臣でアミナ達を呼んだ、ネブロ・コルネディアだった。
その横には、アミナとは初対面になるこの国の実質的なトップ、ノプス・コルネディアもいた。
「……まずは謝罪を。我が愚兄と愚弟の為に来て頂いたというのに挨拶もできず申し訳なかった」
向かいに座っているアミナに一つ頭を下ろし、謝罪の意を示した。そしてその後顔を上げると眉間にシワを寄せた。
「アミナ殿……すまない。何故か城中のリヴァルハーブや回復薬がゴッソリと消えていたのだ。貴女の力があれば、すぐにカイドウ殿の治療が出来るのだが……」
「医者の話じゃ、回復薬の効果を阻害する魔法は解除出来たらしい。だが脳に対してのでかい衝撃のせいでいつ目覚めるかは分からねぇってよ」
自身が治療を受けた時に聞いた事をメイは言った。
気休め程度の気遣いなどせず、ありのまま聞いた事を口にした。
すると今度はネブロが口を開いた。
「今回襲撃してきた魔人会の死体全てを、今しがた回収させてきた。それを確認した所、額に赤い十字がある者が確認できた」
「なっ……!!それは本当ですか……!!」
イーリルが驚きの声を上げる。
帝都の医者に、両腕を治療の一端として固定されているメイがその事について言及した。
「……額にある赤い十字……それは聖なる者の証だ。それが雑兵の額にあったって事は……」
「あぁ。魔人会の構成員の一部は―――聖騎士だった」
ネブロの口からその事実が語られた。
全員が黙ってその事実を噛み締めて黙り込む。
「今回の襲撃に加担した魔人会の構成員の数は121名。その内の73名に十字の証が確認できた。理由は分からんが、聖騎士が歪んだ思想を抱いている魔人会に加わり、ザストルクを襲った。そんな事を仕掛けてくる所は一箇所しかあるまい」
「ちっ……!!またククルセイなのか……!!」
イーリルが握り拳を作って震わせる。
ククルセイ――ザストルクの隣国で、レリックを大本としている小さな国家。
聖騎士団が組まれており、魔法や剣術に秀でた人材を多く育成し、聖なる誓いを立て、日々国民の為に尽力している。
そんな国だが、コルネロ帝国に難癖をつけて戦争を仕掛けてきた過去を持っている。その頃から国王は代わっていない為、そこがノプスの語った可能性の根拠となるところだった。
「大方、この国から戦争を仕掛けさせて冷戦状態をやめようとしてるってとこか……。昔よく言ったもんだな。戦争の必勝法は、最初の一発目を相手に撃たせる事だってよ。それを狙ってんのかは知らねぇが」
メイが続けて言った。
その冷静で俯瞰で現状を見たような発言の後に、ネブロが座っていた椅子の肘掛けを思い切り殴りつけた。
鈍い音と小さな衝撃が部屋中に走る。
「何にせよ……!!民の命を助けて頂いたお客人に対して何たる狼藉……!!おのれククルセイ……!!」
彼の怒りが完全に爆発したのだ。
自身が呼びつけてしまった事に対する怒りと、犯罪組織を利用して国に対して大きな損害を与え、挙句の果てには他国の人間を勝手に傷つけた。
それら全てが怒りに代わり、彼の額には血管が浮かび上がっていた。
「……戦争じゃ」
ポツリとネブロが呟く。
その言葉を覚悟して聞いていたノプスも、自身の弟の言葉に小さく頷き、鋭い目を覗かせる。
「もう向こうの掌の上など関係無い。恩人にこれだけの仕打ちをした事……ヤツ等に後悔させてやらねばならん……!!」
戦争を再開したいのはククルセイの作戦だろうとは誰もが用意に想像できた。
しかしこの2人には、そんな事どうでもよかった。ただただ国としての恩人に対して起こってしまった出来事にケジメを付けずにはいられないのだ。
ネブロは通信用の水晶を手に取り、そこに向かって大声で叫ぶ。
「至急!!全騎士団員を集めろ!!帝都にいる者は速やかにだ!!帝都の外で警備をしている者は引き続きそこで待機!!兵器開発部門は使用可能な魔道銃器や武器を点検した後、すぐに城の訓練場に集まれ!!偵察部隊はククルセイの国境線沿いを監視し、待機している聖騎士がいなければ即座に森へ侵入!!リヴァルハーブを回収し次第帰還せよ!!そして、聖騎士を見つけ次第誰であろうと構わん!!」
再び肘掛けを、血管の浮き出た腕で殴りつける。
「……抹殺せよ」
それを聞いた帝都中の騎士団員や兵器開発部門の職員、偵察部隊のメンバーはすぐさま行動に移す。
ネブロの普段からの人望により、彼等に疑問を抱く余地がなかった。ただただ、感じ取ってネブロの怒りに対して共感し、それに付き従っているだけだった。
「……これでリヴァルハーブが手に入ればカイドウ殿は助かる……。アミナ殿。もう少しだけ辛抱してくれ」
ネブロがアミナの方を向いて小さく言う。
その表情は、アミナに対しての深い謝罪と、カイドウを心から心配している。そんな顔だった。
だがアミナは依然黙っている。ザストルクを出発してからも、帝都に到着してからも、ずっと黙りっぱなしだった。
そんな時、1人の騎士団員がその重苦しい雰囲気が漂う部屋の扉を開けた。
「ノプス大臣!ネブロ大臣!こんな水晶が届いておりました!!」
騎士団員は届いたという水晶を2人に見せた。
それは何の変哲もない通信用の水晶だった。宛名も無く、ただ置かれていたそうだ。
騎士団員が軽く魔力を込めると、それは淡く光だし、音を発した。
『やぁ、コルネロ帝国の大臣……いや、今は兄が死んで皇帝になったのかな?』
その声はアミナには聞き覚えがなかったが、ノプスとネブロには聞き覚えしか無かった。
「貴様―――!!」
「ノードラス・クルセリア!!一体何の用だ!!」
『でかい声出さんでも聞こえるわ。まだ貴様等とは違い、耳は遠くなってはおらんのでな』
ノードラス・クルセリアと呼ばれた男は、掌をひらひらと動かして2人を煽る。
『今回はそちらの宣戦布告を受け取ってやろうと思ってな。前回はそちらがこちらに難癖を付けてきていたが、今回の件は前のようにはいかんぞ。貴様等が我々に使用方法の分からぬ魔道具を押し付け、その挙げ句、誤射してしまった事に対しての報復が殺害とは許せん行為だ!!』
「何を言うか!!貴様等が魔人会を利用してザストルク襲撃に加担しておる事はとうに分かっておる!!宣戦布告をしたのは貴様等じゃ!!」
と理由の分からない言い分を主張するノードラスに対してネブロが怒りを露わにした口調で強く言う。
『その言い訳は数年前に聞き飽きたわい。……いいか、私が貴様等ごときにわざわざ水晶を送りつけたのは、この一言を言ってやる為だ』
ノードラスが発そうとしている言葉を、一同は待った。
そして数秒溜めた後、ノードラスはその言葉を口にした。
『戦争だ……。冷戦状態などという甘えた現状を打ち壊し、今度こそ、貴様等コルネロ帝国を、我々ククルセイが滅ぼしてくれる』
想定通りの言葉が聞こえ、全員に緊張が走る。
しかしノプスはうろたえずに、そのままノードラスに向かって言い返す。
「上等じゃ!!貴様等こそ!!我が国の客人に手を出した事を後悔するがいい!!」
『フッ。威勢がいいではないか老害。……開戦は4日後の朝。舞台はそちらの鉄鉱平原といこうではないか。……せいぜい覚悟しておるがいい』
そこで水晶からの音声は途切れた。
騎士団員から水晶を奪ったネブロは地面に水晶を叩きつけて割った。生きを荒げているネブロは歯を食いしばる。
「……我が国の恩人への礼儀……思い知らせてくれる……!!」
メイですらも声をかけるのが憚られる雰囲気を漏れ出させるネブロは、ただそう呟いて、砕かれた水晶の破片を見下していた。
最後までお読み頂きありがとうございます!
次回は会議的な感じで会話が多くなると思われます。
それでは次回もお楽しみに!!




