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第二章 92話『『現』プロの殺し屋、奇策を用いる』

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「―――」


 縦に巨大な大剣、鮫釈が振り下ろされる。

 それがメルナスの体を斬り裂き、逆の方向へ裂かれた体が倒れる。

 しかし当たり前のようにその体を起こすように短い手足が何本も生え、斬り裂かれた断面同士をくっつける。


「ちっ、もう何回目だよ。クソッタレが」


「お姉さんが懲りずに私を斬り裂いたのはこれで26回目。あと何回、お姉さんは生きてる間に私の血肉を見るのかなぁ?」


 メルナスは四肢を魔獣へと変化させ、メイへと殴りかかる。魔獣の腕が繰り出す強力な一撃を躱しつつ、腕を切り落とす。

 再生にある程度の時間がかかる事は確認していた為、その僅かな隙に何発も斬撃を叩き込む。


 メルナスの体から吹き出る血液には何故かダメージを与える何かがある。それを受けた事で理解していたメイは、血飛沫が舞えば鮫釈で防ぎ、腕力だけで血液を振り払ってから再び攻撃を仕掛ける。

 

 部下が彼女のスキルを勝手に明かそうとした時にメルナスも自身のスキルを明らかにした。

 そこからメルナスの攻撃手段が変化し始めた。


 今までは魔獣などを繰り出してメイと対峙していたのだが、つい先程までのように、体を変化させてからの肉弾戦が増えてきた。

 力のある魔獣の手足を再現し、前腕部分や膝から刃を再現して不意打ちを仕掛けたり、メイの振るっている武器に応戦してきたりする。

 しかしメルナスの再現してくるものには恐らく上限がなく、メイがいくら再現されたものを破壊してもまた無限に生えてくる。手数で圧倒的に有利をとっていたハズのメイが、どちらかと言えば今は押されている状況と言っても過言ではなかった。


「ねぇねぇ、お姉さんはいつになったら、どうやったら諦めてくれるの?諦めて私に全部をくれるの?やっぱりお姉さん好みの見た目になれば私にその体預けてくれる?」


 メルナスは困り眉毛になって人差し指を口元に当てた。

 そして体をまたうねうねと変形させて別の生物か、またはそれ以上の何かになろうとしていた。


「気持ち悪い事言ってんじゃねぇしやってんじゃねぇよ。生憎、男に欲情する歳は過ぎてんだ。お前がどんな見た目になろうが、私がお前の為に動く事ぁねぇよ」


「えぇ〜。でもほら、好きな人の為には尽くしたくなる人とかいるでしょ?それって結局見た目が好きだから尽くしてるんでしょ?だったらお姉さんの好みを伝えてくれれば、私はそれに沿った見た目に変化してあげられるよ?どうどう?その代わりにちょーっとだけお姉さんの体を好きにさせてよぉ。男が嫌なら、女の体で男と同じ事してあげるよ」


 またしてもメルナスは下半身を抑えながらモジモジしている。「そういう事かよ、気色悪い」と何かを理解したメイは呟く。


「凌辱姦、監禁姦、昏睡姦、睡眠姦、拘束姦、獣姦、輪姦、触手姦、恥辱姦、異種姦、催眠姦、精神姦、肉体改造姦――お姉さんがシたいの、大抵は出来ると思うなぁ〜」


「とうとうハッキリ言いやがったな。性の対象としてお前なんか見れねぇし、見られるような歳でもねぇって言ってんだろ。第一、お前が興味あんのは私の臓物じゃなかったのかよ」


「そんなに自分を低く見なくて大丈夫だってぇ〜。お姉さんの体は男を欲情させて、その血肉は私を興奮させる……。そんなお姉さんに魅力が無い訳無いじゃん〜!!しかも何?とうとう言ったって。まさかお姉さん、結構乙女だったりするの?それも可愛くて素敵だよぉ」


 メイは武器を降ろして呆れる。会話が成り立つと思ったら少しずつズレていく。「はぁ」とため息を付いてメルナスを見据える。


「へっ、私は魅力だらけだからよ、誰か1人選んじまったら他が可哀想だろ?だから選んでやらねぇだけだよ。お前も、他の連中もな」


 メイがそう言い切ってメルナスに言葉を突きつける。

 するとメルナスの態度が急に変化した。メイの言葉を聞くなり、彼女は笑顔だった顔を変え、歯ぎしりをして歯を砕き、歯茎から出血した。

 額には血管が浮かび上がり、その目は血走っている。今までここまでの反応がなかった為、メイは思わず身構えた。


「じゃあなんで……」


 メルナスは低く呟く。聞き取れなかった訳では無いが、メイは「何だと?」と聞き返す。

 

「じゃあなんで!!あの小娘達とは絡んでんだよぉぉぉ!!!」


 今までにない咆哮を上げてメルナスは大気を震え上がらせ、下水道の壁や天井を揺らす。あまりの風圧と圧迫感にメイは足を一歩下げて耐えた。


なんだ急に……!?なんで突然キレやがった……?今まで私の小言を気にもしてねぇような態度取ってたくせに、なんで今の一言でここまでなった……?これだから情緒が安定しねぇ野郎は面倒なんだよ。笑ってたと思ったら突然泣き喚く……まるでガキだな。


「なんでどうして!?私を選んでくれないくせになんであの小娘達にはいい顔してんだよ!!」


「あ?何言ってんだお前」


「私にはしてくれない笑顔を見せて!! 私には向けてくれない感情を向けて!!何……? 何が違うの? 私の何がいけなかったの?何で私には見せてくれないものを!あんな小娘達には見せるの!?ねぇ教えてよ!!何がいけないのか言ってくれないと分からないじゃん!!私はずっとお姉さんに対して得のある事しか言ってないじゃん!!それなのにお姉さんは全然私を認めてくれない!!私があげる得に対して見返りとして血肉をちょうだいって言ってるだけなのに!!私がお姉さんを愛してるのは本当なのに!!それを踏み躙ってあんな小娘達にぃ……!!許せない許せない許さない許させない許してやらない許せるもんか許せる訳が無い……!!お姉さんの血も肉も骨も……全てを私のものにしたら……次はあの小娘達を影も形も残らないミンチにしてやる……!!!」


 メルナスは1人で激昂している。

 しかも言葉の端々で気になる単語が聞こえてくる。


「……小娘って、アミナやカルムの事か……?」


「そうだった、そんな名前だったね確か……!!あのメイド服着てお姉さんに取り入ってるんでしょ!!お姉さんの優しさに潜り込む薄汚い害虫が……!!なんの得もお姉さんに与えられないくせにお姉さんからお姉さんの優しさを受け取って!!私にはそれが許せない!!好きな気持は私の方が上なのに!!何の取り柄も無いドブネズミがお姉さんの傍にいる事が私には許せない!!……はぁ。……お姉さんにここで会って、こんな気持になるなら、あの時殺しておけばよかった……」


 メルナスはアミナとカルムの生首を作り出し、それを地面へと落とす。その見た目の再現性は凄まじく、本物だと言われても気が付かない程精講にできていた。

 しかし彼女はそれを踏み潰し、何度も何度も踏み潰して2人への嫉妬の思いと怒りを現した。


 そして、あの時――。またしても気になる単語がメルナスの口から飛び出した事で、メイは頭を働かせる。

 まるで以前、彼女とアミナ達が出会っていたかのような口振りに、メイは思考を巡らせてありあえそうな可能性を導き出す。


「……お前もしかして、帝都でアミナ達に会った事があんのか……?ついでに私にも……」


 すると今度は、メイの言葉に顔が明るくなり、とても機嫌が良さそうになった。先程までとの表情の差は、数秒で冷水が沸騰し、沸騰した湯が一気に冷水になるような感覚に近かった。


「あ!やっと気がついてくれた?私ってしばらくこの国の帝都にいてね、つい数時間前にお城からこの街に着いたばかりなんだぁ〜」


 メルナスの機嫌が良さそうな言葉とは裏腹に、とんでもない事実を知らされた。

 メルナスは今まで帝都にいた。しかもついさっきまでは城にまでいた。

 つまりどういう事か――


「――お前はスキルを使って城に潜入していた、っつー事かよ……!!」


「ピンポンピンポン大正解!!帝都にお姉さんが着いて、皆がバラバラに行動してた時あったでしょ?その時にあのメイド服きた小娘と接触してたんだぁ〜。……コルネロ騎士団総団長の姿でね」


 メイは目を見開いてハッとする。そしてアミナの言っていた言葉を思い出す。

『ベルリオさんって義手してましたっけ』

 そして全てが繋がる。


「なるほどな……ようやく合点がいったぜ……。お前がアミナやフィーの事に知ったような口を利いた理由も、すぐにこの街が襲撃されなかった理由もな……!!」


「もう、ようやく分かったんだ〜。お姉さんに理解してもらえてぇ、私、嬉しっ」


「アミナみてぇな図太くて、周囲を良く見てるようなヤツが、義手なんて珍しいモンを見落とすハズがねぇ。でもあん時ゃ、アミナも見落としただけだと思った。だが今、お前の言葉を聞いてハッキリしたぜ。お前は帝都でベルリオを再現し、獣人を装ってフィーから情報を得た。そしてすぐにこの街が襲撃されなかったのは、お前が帝都からこの街に来るまで他の連中は待機してたからだ。……情報収集までして、戦闘にまで赴く……全く、再現っつーのの便利さに心底驚かされるぜ」


 メイの言葉にメルナスは何も返さない。


「どうしたよ。私の言ってる事がミリでも間違ってんなら、お前に私の臓物をくれてやるよ」


 自信たっぷりでメイは言う。

 それもそのハズで、メルナスの顔がミリのズレも無い。と言っているようなものだったからだ。


「〜〜〜〜〜ッ!!さっすがお姉さん!!!まんまと見抜かれちゃった!!」


 数秒溜めてから、メルナスは言い放った。


「まぁ私も話しちゃった部分はあるけどさ、それでも答えを導き出せるお姉さんはやっぱり凄いよ!!最初は嘘ついてお姉さんの血肉を貰っちゃおうかなって思ってたんだけど、あまりにお姉さんが私の考えを理解してくれてるからそれがもう嬉しくってつい本当の事言っちゃった!!……だって、お姉さんが私のした事を全部言い当てたって事はもうそれってお互いがお互いを理解してるって事じゃない?お互いをここまで深く理解できてるならそれはもうお姉さんも私の事好きなんでしょ?愛してるでしょ?相思相愛!!もうそれが嬉しくて嬉しくて……!!やっぱりあんな小娘達何かより私の方がお姉さんを理解しててお姉さんも私を理解しててお互いに愛し合って――」


 メルナスが言葉を並べている時に、メイは掌を前に出して言葉を止めるようにジェスチャーした。

 それに気がついたメルナスは喋るのを一旦止めてメイの方を首を傾げて見る。


「これだけはハッキリ言っとくからよぉく聞けよ。これには何の含みも意味もねぇ。だから、私が好きなら言葉の通りに受け取れ」


「うんうん、なになに?お姉さんの言葉なら何でも――」


「私はお前が嫌いだから殺す。そしてお前を好きになる事ぁ無ぇ。以上」


 メイがそう言い切ると、メルナスは暫く俯いてからフルフルと震えだし、そして大きく目を見開いてメイを睨みつける。


「あぁそう!!だったらもう、殺して私のものにする!!もう何もくれてあげないんだから!!」


 メイへと伸びてくるメルナスの左腕は、伸ばされた瞬間に巨大な獅子と狼が混ざったような生物へと変化を遂げる。全てを噛み砕かんとするその鋭い牙達がメイの体を抉ろうと鈍く輝いている。

 それを受け止める形で斬り裂いたメイは、その断面から生えてくるメルナスの上半身に対して応戦する為に、建で彼女の体が出現する直前にそこへ建を突き刺す。


「そんなので防いだつもり!?」


「早とちりすんな変態野郎……!!」


 次々と伸びてくる触手を切り落としながら、メイは下水道の壁中を駆け巡る。走っている最中もメルナスの攻撃がメイへと襲ってくる為、壁もろとも斬り裂いて防ぐ。

 滑るようにして壁から降りて床に着地し、再び避ける為に壁中を走り回ってまた斬り裂く。

 キリが全く無いその攻防でもメルナスは攻撃を止めずに、容赦なく魔獣や魔物を放ってくる。


 そしてメイにある程度の隙が見えれば自身も参戦して肉弾戦に持ち込みつつ、配下の魔物や魔獣に背後から襲わせる。

 しかしそんな攻撃にメイが屈する訳も無く、圧倒的な身体能力で全てを蹂躙して危機を脱する。


「早く死んで、私にお姉さんをちょうだいよ!!」


 頭を砕かれたメルナスが口だけになって言う。

 その口さえもメイは斬り刻み、地面へと叩きつける。するとその血溜まりから刃が伸び、メイの体を狙ったが、それを難なく防ぎ逆に刃を砕きながら再生するメルナスの体を貫いた。


「死ねって言葉も、聞き慣れるとここまで精神的余裕が出るとはな。お前と戦ってる間、学びが多いぜ」


 メイは皮肉混じりに言う。

 メルナスは自分の話をしてくれないメイに怒りを感じながら再び腕を魔物のものにしてメイへと殴りかかる。

 だがそれもメイは鮫釈で防いでから建で突き刺しながら斬り裂く。血飛沫が舞えば鮫釈で防いで先程の激痛を避ける。


 形勢はメイに有利に働いていた。……しかし、圧倒的に大きな問題がまだ残っていた。

 それは、メルナスの処分の仕方だった。

 今まで何度も斬り裂いたり爆裂させたりなど、多くの手段を取ってきたがどれも役に立っているかすら分からない。


「私を殺したいならさっさと方法考えて、実行したらどうなのっ……!!」 


「嫌われたって理解できたからって死に急ぐなよ変態野郎……!!……それに――」


 メイは少しメルナスから距離を取って彼女を見据える。

 見つめられたメルナスは嬉しさと憎さが拮抗して、ギリギリ嬉しさが勝ってしまい、頬を少しだけ赤らめた。


「――もう準備はとっくに終わってんだ」


 メイは自身が立っていた地面から少し横の壁を、思い切り殴りつけた。

 巨大なヒビが入り、大きな音を立てて瓦礫が落ち始める。

 壁にだけ入っていたヒビが地面や天井にまで走る。小さかった瓦礫は次第に大きくなり、終いには人より遥かに巨大な岩まで落ちてくる始末だった。上を見上げているメルナスはその事実へと驚きを隠せずに目を見張る。


「これって……」


「あぁそうだ。私達……特にお前が、自称相思相愛なんだろ?じゃあよ―――」


 メイは不敵な笑みを浮かべてニヤリと笑う。

 頭に瓦礫が当たって出血した事を気にしていないかのような笑顔は、メルナスの心をくすぐった。


「―――一緒に死のうぜ」



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