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第二章 83話『『現』ランクS+魔物、狩人を狩る3』

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「やっと出てくる気になったか」  


 瓦礫を蹴飛ばしていたロイドは、後ろからの気配を感じとり振り返る。

 そしてそこには案の定、傷だらけ血だらけのフィーが立っていた。

 しかし、高レベルの魔物だというのが幸いしたのか、その傷も塞がり始めていた。自己治癒能力では人間に負ける訳は無い。


「いい加減観念したのか?そんな体になってまでチョロチョロと小さくなって逃げ回ってよぉ。俺ぁ逃げ回る魔獣を殺すメルナス様みてぇな殺戮主義者じゃねぇんだが……ま、それも狩りの醍醐味として甘んじて受け入れてやらぁ」


 ペラペラと薄っぺらい言葉を並べてよく喋る。

 彼の無駄な動き、無駄な発言。それ等は、フィーがロイドという人物が大した事の無い人間なのだと理解するのには十分過ぎる根拠だった。

 そして気になる名前が出た。メルナス様――魔人会の幹部が敬称をつけるという事は、恐らくそいつが『結晶』の名を冠している魔人会最高幹部の天魔六柱の一柱なのだろう。


「なぁーんかさっきからぶつくさ喋って作戦立ててたみてぇだけどよぉ?そんなんじゃ俺には勝てねぇぜ。俺にはメルナス様と契約して分け与えて頂いた力があるんだからよぉ。……あーなんだっけか?俺のスキルが分かったとか抜かしてやがったな」


 ロイドは調子良さそうに言う。しかしそれはおかしな事だった。

 何故ロイドはフィーの言葉を理解しているのか。フィーは思わず、聞こえてたのかにゃ、と呟いた。


「まぁな。何年魔人会で魔獣狩りやってると思ってんだ。魔獣の声を聞くくらいお茶の子さいさいだっつーの」


(……一体どうやってにゃ)


「おぉっと、そいつぁ言えねぇなぁ。魔人会の摩訶不思議な超絶謎パワー。って事にしといた方が身の為ってモンだ」


 下らない言葉による応答。答える気はゼロ。ここまで軽薄でペラペラな男がよく魔人会の幹部なんて役職をやっていられるにゃ、とフィーは呆れ返ってため息しか出てこない。訊けば簡単に口を割る。しかもこちらだ訪ねた事の数倍の何かをプラスして。

 だがきっと、ロイドが幹部をやれているのは、ヤツのスキルが強すぎるというのと、ただ単純な身体能力が高いという事が理由なのだろう。人格や性格は考慮すれば最底辺の男だが、それ等だけは認めなければならない。 


(声が聞こえてたって事は、オレの動向はずっと分かってたって訳かにゃ。じゃあにゃんで、すぐに追ったりしなかったのにゃ)


「うえっ!やっぱりどの魔獣も語尾ににゃとかワンとか付けるんだな。それが人間の声として俺の耳に入ってくる以上、痛い人間がそう言ってるようにしか聞こえねぇ〜」


 ロイドは話を遮って自身の体を震わせた。いちいち面倒臭い野郎にゃ……、と内心呟いたが、ロイドがすぐに話の続きを始めたので黙って飲み込む事にした。


「いやぁよ。別に姿形が見えてた訳じゃねぇんだ。ただ声だけが聞こえてた。んでもって、俺は別に獣族でも何でもねぇ。音の聞こえる場所なんざ分かる訳ねぇのよ」


 堂々と、恥じた様子無くロイドは言う。

 彼の耳はメルナスという人物に与えられ、強力なスキルも契約によって分け与えられた。

 改めてこう考えると、ロイドは与えられてばかりだった。ロイドの吐いた余計な情報を聞いて、フィーは少しだけ安堵した。


(……少し、安心したにゃ)

 

「あ?何がだよ」


 低く呟いたフィーに対し、ロイドは不思議そうに尋ねる。ここまで自分で話しておいて何を言われるか察せない以上、もはやこの男は人間として終わっている。……いやむしろ、自分で余計な事を喋った自覚すら無いのかもしれない。


(強いのはお前じゃにゃくて、お前の能力だけって事にだよ)


 そこまで言われて初めて意味を理解したのか、ロイドは憤ったような顔をして「クソ猫ぉぉ!!!」と雄叫びを上げた。

 そして再びフィーと同等以上の速度足を回転させ、フィーの懐にまで迫る。フィーはそれを体を小さくする事で回避し、ロイドが繰り出してきた刃の上に軽々と着地して見せた。……無論、小さ過ぎてロイドには見えていないが。


 フィーは刃の上に座っている状態で体を2メートル程にまで巨大化させ、その刃を地面へとめり込ませた。刃を握っていたロイドの腕も一緒に巻き込み、突然かかる上からの力に彼の肩を脱臼させた。


「……ッ!!」


 圧倒的な質量の差。人間の身長で2メートルでも、魔物の2メートルには到底敵わない質量の差がある。

 戦える人間ばせいぜい百十数キロ代が限界だろう。しかし、魔物の2メートルは数百キロが当たり前だ。

 それが一瞬で肩にかかる負荷となる為、ロイドの右肩は千切れてもおかしくは無かった。


 ロイドは刃を手放して後退する。対するフィーは地面に埋まった刃を口に咥えてから遠くへ放り投げ、戦闘中に取れないようにした。

 脱臼した片腕を抑えながら、ロイドはフィーに向き直る。


「はぁ……はぁ……チクショウが。俺が弱いだと……?」


(あぁそうにゃ。お前は弱い。強いのはお前のスキルだけにゃ。それを自分の実力だと勘違いしてるにゃんて、片腹痛いってヤツにゃ)


 今度はフィーが煽り返す。すると何やら好感触だ。ロイドの顔がどんどんと歪んでいく。この調子で言葉で殴っていくのも悪くはないのかもしれない、とフィーは冗談交じりに思う。

 だが時間がないのは事実だ。早々に決着を着けねばなるまい。


「……我慢ならねぇ……勝手にこんなトコ連れて来といて、なんで猫になんかに罵倒されなきゃならねぇんだ……!!」


にゃ、にゃんだか想像以上にゃ反応だにゃ……。この話は地雷だったみたいだにゃ。


 フィーがロイドの過度な反応に困惑しながらも攻撃に備えて体勢を低くした次の瞬間、ロイドが鬼の形相でフィーを睨みつけて咆哮した。


「この……人間以下の下等種族がぁぁ!!!」


 そう叫び、ロイドは腕を大きく振るった。

 フィーはそれによって発生した風を、視覚、聴覚を最大限稼働させて使用した。そして軌道が読め、寸前でそれを回避した。


「!?」


 ロイドは一瞬驚いたのか目を見開いて額に血管を浮かべた。しかしそれを悟られないようにする為か、再びフィーへの接近を試みた。今度は左右に体を動かしながら迫ってくる為、フィーに狙いが定まらないようにしていた。


「クソ猫がぁ!!」


(そうにゃんどもクソとか言うんじゃにゃい!!)


 フィーはロイドが接近してくるタイミングを見計らって空中へと飛び上がる。すると、自身の出していたスピードをコントロール出来ず、ロイドはフィーの背後にあった瓦礫へと突っ込んでいった。

 ロイドは自分に覆いかぶさっている瓦礫達を今度は一気に吹き飛ばした。その規模は凄まじく、先程せっせと蹴っていた彼とはまるで別人だった。


(やっぱりオレの思った通りにゃ)


 ロイドの背後からフィーは声を掛ける。イライラした様子のロイドは「あ!?何がだよ!?」とキレ気味で叫んだ。もう叫んでいる時点で完全にキレているような気もするが。


(お前のスキルだよ。こんな分かりやすいものに気が付かにゃいなんて、オレもまだまだにゃんねぇ)


 煽るような口調で再び言う。実際にはダメージを受けたり与えたり、よく観察しないと分からなかったのだが、折角言うなら相手の精神面でも削れるような言い方をした方が、後々の戦闘で有利を取れる確率が上がる。

 その為フィーは、そこそこ苦労した事を簡単にやって退けたように言ったのだ。


「へぇ、言うじゃねぇか。だったら、お前のお粗末な考えがどんなモンか聞かせてもらおうじゃねぇか。別に当たってねぇ答えを聞くのは無駄だってのは分かってるけどよぉ。下等種族が下等種族なりに頑張った結果ってヤツを聞いてやらぁ」


(お前ホント救いようがにゃいヤツだにゃ……友達とかいにゃさそうだにゃ)


「話し反らしてんじゃねぇよ!それとも何か?煽っといて実は何も考えてなかったとかそういうパターンか?そういう生き方してて恥ずかしくねぇのか?あ、魔物だから羞恥心なんてねぇよなぁ?外で平気で排便するような下品で汚ぇ種族だもんな!!この嘘まみれのクソ野郎が――」


(耐性にゃ)


 フィーは1つの単語をポツリと呟く。その言葉を聞いたロイドは「あ?」と聞き返す。


(お前のスキルは自分か相手、もしくは物質への何かしらの耐性を下げたり上げたり出来るスキルにゃ。下げれるものは自由自在。でもその耐性を上下させるには、自分がそれを受けたり食べたり、そういった吸収が必要ににゃる。お前がオレの攻撃の一発目を喰らってダメージを負ったのに、それ以降はなかなかダメージが入っている様子はにゃかった。そして攻撃する度に減る手応え。それは攻撃を受ければ受けるほどスキルによって"オレの打撃への耐性が上がる"からにゃ)


 フィーは淡々と、観察ど推測で手に入れた言葉を並べる。

 そんなフィーを見ているロイドの顔は先程と同様、歪み始めている。分かりやすい性格で答え合わせが楽で助かる。


(そんで、オレの体が斬り裂けたのは――お前のその手首が原因にゃ)


 顔でロイドの手首を指し示す。だらりと未だ脱臼しているロイドは、袖の中から露わになっている手首をさっと隠す。そこには、フィーのつけた記憶のない切り傷が無数についていた。


(お前、あれにゃろ。敵の耐性を下げるにはまず自分がダメージを受けなきゃならにゃらにゃいんだろ)


 フィーの言葉に目を見開いただけで何も答えないロイド。これも図星か。と、フィーはそれだけを思った。


(お前は走ってる最中、自分の手首を斬り続けてたのにゃ。勿論、お前自身は"ロイドの繰り出す斬撃"に対して耐性が上がるにゃ。でも、オレの耐性を下げるには大量に自身の体を傷つける必要がある。魔物のものにしては明るかった血が付着してたのはそのせいにゃ)


 もう乾き始めていた赤い血は、ロイドの手首にべっとりとついていた。フィーからすれば、彼は体中が証拠の塊だ。それを見てスキルを言い当てている時のロイドの顔は、堪らなく面白い。


(そしてオレがお前の服を爪で刺して止めて殴り飛ばした時、お前はオレの体にお前が発生させた風を当てたにゃ。お前から発生した風――つまりそれは風の刃となる。結果として"ロイドの繰り出す斬撃"ににゃる。オレはお前のせいでその攻撃への耐性が下がっているから、僅かにお前が発生させた風にもダメージを受けた――これがお前のスキルと、オレの体が斬れた理由にゃ。異論はあるかにゃ?)


 フィーは片目を閉じてウィンクしながらロイドに語りかける。

 すると彼は顔に血管という血管を浮かべながら、目元をピクつかせ、口をパクパクと動かしていた。それは反論したいが反論の余地がない。そんな人間の取る行動であった。


(ついでに言うと、お前がさっきからせっせと瓦礫を蹴ってたのは、瓦礫という物質に対して、自分の打撃への耐性を下げる為にゃ。蹴って返ってきた衝撃で無理やり耐性下げさせるとか、無茶苦茶過ぎるような気もするが、結果的に上手くいってるのがその証拠にゃ)


 フィーはチラリと先程吹っ飛んでいった瓦礫達の方を見る。ロイドがちまちまと瓦礫に対して攻撃していたのは、瓦礫を蹴ったり殴ったりした時に返ってきた衝撃から、瓦礫に対して自身の繰り出す打撃への耐性を下げるという、まぁなんとも無茶苦茶な方法で耐性を下げていたのだ。


(さぁ答え合わせといきたいトコにゃが……あぁ、やっぱいいにゃ)


 フィーは不敵な笑みを浮かべて答え合わせが必要無いと言い放つ。

 何故なら、ロイド自身の顔が、「はいその通りです」と言っているようなものだったからだ。


(お前のその歪んだ顔――それだけで十分にゃ)



最後までお読み頂きありがとうございます!


ロイドの能力が判明!!

次回もフィーのパートとなります!!


それでは次回もお楽しみに!!

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