第二章 78話『『現』ランクS+魔物、誘導作戦に出る』
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フィーが体を小さくしてザストルク西部の城壁へと入ってから数分。彼の作戦は未だ続いていた。
背を向けて走り抜けるフィーの小さな体に、魔人会の構成員達がこぞって剣を振り下ろす。しかし、素早く小さいフィーの体には一撃も当たらず、壁に剣を打ち付けたり、跳ね返ってきた剣の刃に負傷したり、入り乱れる狭い通路の中で仲間同士の攻撃が当たったりで、中々フィーには攻撃が当たらなかった。
(本当にアホな連中にゃ。1人ずつ慎重に斬ってくれば当たるかもしれにゃいのに。ま――)
フィーはチラリと後方を確認した後、前方を向いて感覚だけで振り下ろされる刃を回避した。自身の攻撃が避けられた魔人会の構成員は、剣を振り下ろした勢いで前方に倒れ、後ろからフィーを追ってくる他の連中に踏みつけにされた。
(当たってやるつもりは毛頭にゃーが)
跳んで避けた先には、1人の男が剣を振り上げており、それをフィー目掛けて振り下ろす。しかしその一撃はフィーに当たらずに地面へとぶつかる。
その隙に男の顔面へと飛びかかり、首元を噛みちぎって絶命させる。そして再び城壁内部を走り回る。
この狭い通路内での仲間同士での事故による斬り合いや、強制的に一対一を作り出す事で的確に相手を殺すのが、フィーのとった作戦だった。
そんな中、先程首を噛みちぎって殺した魔人会の構成員の仮面が取れて、素顔が一瞬見えた。
中年程の男で、額に何やら赤い線が交差した模様が刻まれていたのがなんだか特徴的だった為、フィーは一瞬何かと考えた後に、再び素早く駆け出した。
(今ので大体20人ちょいかにゃ。聞こえる音の限り、まだ28人いる臭いにゃね。……40人なんて真っ赤な嘘じゃにゃいか)
文句を垂れつつも、フィーは次々に構成員達の命のロウソクをかじり取る。1人、また1人と倒れていき、城壁内は血が溜まる程死体で溢れかえっていた。
(流石にこいつ等の肉を食う気にはなれないにゃね。アミナにも人は食べちゃ駄目だって言われたし)
今考えれば少しおかしな話だ。アミナに一度負けた事で魔物である自身が人間に従うなど。
だがしかし、その事を嫌に思っている訳では決して無い。むしろ、これからの猫生で、アミナ以上に人間を好きになる事など絶対に無い、とフィーは断言できた。
彼女の中の謎の魅力がフィーを惹きつける。それが一体何なのかは、フィー自身にも分からないが、あの森で出会った事はきっと運命だったのだと、今になって思う。
だからフィーはアミナに付き従い、一緒に暮らしている。誰になんと言われようとも、その考えは決して変わらない。
(森にいた頃もそこそこ楽しかったにゃが、今の方が騒がしくて退屈しないしで悪くはにゃいにゃ)
そんな懐かしい記憶を思い出していると、フィーは、そろそろいいかにゃ、と後ろを振り返って後方にいる魔人会の構成員の人数を確認した。
目視できるだけで14人。耳も使用すると17人残っていた。
(これくらいにゃら)
フィーはそう呟いて、城壁内の壁に空いている穴から外へと飛び出した。
そんなフィーの様子を見た構成員達は、フィーの予想通り城壁の上へと上がり、そこから飛び降りてフィーを追ってきた。
(よし。ここまで出たら、体大きくしてもいいにゃね)
外に飛び出して全ての構成員もついて出てきたのを確認すると、フィーは自身のスキルの1つである『肉体拡縮』を使用して体を大きくする。徐々に徐々に大きくなっていくフィーの体を見て、一瞬構成員達は怯んだ様子を見せたが、すぐさま構わずに剣を振り上げて飛びかかってきた。
(フンッ)
フィーは飛びかかってくる構成員達を掌ではたき落とした。普段なら柔らかいハズの肉球が、今は岩のように頑丈になっている。それをまともに受けた構成員達は、地面が抉れる程の威力で地面へと落ち、続々と気絶や死亡していく。
(ふふ……虫みたいにゃ)
残酷な魔物ジョークのようなものを呟き、フィーは倒れている者とまだそうでない者の数を数える。
倒れているのは8人。まだフィーに飛びかかってきていない臆病者が9人。剣は構えているが、隙だらけで戦う意志を持っているかすらも怪しかった。
しかし戦わない訳にもいかず、構成員達は半ばヤケクソ気味にフィーへと走って近づく。
視界に入らないようにする為か、急所である頚椎を狙って複数人が飛び上がる。そしていとも容易くフィーの背中に乗り、首元を目指す。
(ムッ……痒いにゃ)
フィーは首元のくすぐったさが気になり、巨大な手を伸ばしてそこへ叩きつけた。無論、フィーの首を目指して走っていた構成員達はぐちゃりと潰れ、フィーの手の中に残骸として残った。
(ムズムズするからそういうのやめろにゃ)
聞こえるハズも、理解できるハズもない猫の言葉を発しながら、残った数名を掌で潰したり噛みちぎったりして終わらせる。
そして最後の1人。もはや背中を見せて走って逃げていたが、急に正面に現れたフィーによって頭を刎ね飛ばされ、そのまま膝をついて絶命した。
(さて、これで終わりにゃんかね)
振り返って血の海と化した西部城壁前を見てフィーは呟く。魔人会の構成員を打ち付けた事以外では街の破壊はしておらず、巨大さとパワーでどうにかするフィーにしては実にお上品な戦闘だった。
「どこ行くんだ。猫ちゃん」
アミナに報告しに行くか、東部で今も尚戦っているであろうベルリオとイーリルに加勢するか迷っていると、後ろから何やら不気味な声が聞こえてきた。
フィーは唐突で予想外の出来事に一瞬で振り返って間合いを取る。
「えっ、いや。ビビり過ぎだろぅ……」
(なんにゃこいつ……!!オレの耳でも鼻でも気が付かにゃかった……!!)
先程フィーが確認した残りの魔人会構成員の数は全部で17人。そしてすぐ近くで倒れている構成員達の人数も何度数えても17人だった。
つまり目の前にいる細身の男は、暗い真夜中でも昼間同然に見えるフィーの目と、どんな音も聞き逃さないフィーの耳と、人間の数十万倍程鋭い鼻。この全てを完璧に掻い潜ったという事になる。
「まぁいいや。一応上司として、部下殺されて任務邪魔されて、ただでお前を返す訳にはいかんのよ」
細身の男は、一般の魔人会の構成員が着ている服を着ていたが、体から放たれるオーラから、今まで相手していた構成員とは一線を画す存在だとフィーは野生の勘で感じ取った。
「俺は魔人会最高幹部、天魔六柱。『結晶』の副官――魔獣狩りのロイド=バズノーズ」
袖の中から二本の刃を突き出させ、それを交差させながら、ロイドを名乗った男はフィーを見つめた。
体のサイズをいつも通りの大きさに戻したフィーは、どうやらここからが本番みたいだにゃ……と面倒そうに呟いたが、ただ勝利とアミナからの労いの言葉を見据えている事自体に、変わりはなかったのだった。
最後までお読み頂きありがとうございます!
ようやく全員の敵が出揃いました!!
次回から暫くの間は戦闘になると思われます!!
でも時々アミナ達の様子が映ったりもします!!
それでは次回もお楽しみに!!




