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第二章 77話『『現』コルネロの英雄達、過去の英雄と戦る1』

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「なぁなぁイーノ。お前はどれが一番好きなんだ?」


 授業の終わった放課後。幼き日のベルリオは、とある教科書を広げながら、鞄に荷物を詰めて帰宅の準備をしていたイーリルに声を掛ける。


「うーん、そうだなぁ……」


 彼の手に持たれていたのは歴史の教科書だった。それが指し示す事はただ1つ。

 当時のコルネロ帝国の子供達の間では、歴史に登場するどの偉人や英雄が好きかなどを話すのが流行っていた。その流れは勿論バルグレアにもあり、ベルリオとイーリルはその英雄談義に花を咲かせていた。


「ネスケルが好きかなぁ。底が無いって言われてる大穴を作った人はやっぱり凄かったんだろうなぁって毎回思うんだ」


 なんでそんな無駄な大穴なんて作ったのか。当時の子供がそんな事考えるハズも無く、ただただ大きいものには感動して目を光らせたという経験が誰しも一度はあるハズだ。


「確かにでっかいものはオトコのロマンってやつだよな!でもこの国の人間じゃねぇじゃんかぁ。他にはいねぇのか?」


 ベルリオの言った通り、ネスケルはコルネロ帝国より西に位置している国の人間だ。将来はコルネロの騎士になろうと言っている彼に対し、確かにそれはあまり面白くない答えだっただろう。

 再びイーリルは考えてもう一つ思い浮かべる。


「えっと……あっ、フェルムスも好きだよ。戦う人じゃないけど、技術や話術で戦況を変えた凄い人だし」


「確かコルネロ帝国の大臣なんだっけか。確かにすげぇよな。偉そうにふんぞり返ってるだけじゃなくて、ちゃんと敵陣まで足運んで話しつけちまうんだからよ!」


 今回の答えは好感触だった。ベルリオもテンションが上った感じで、心做しか語尾も上がっている。

 そんな話し合いと、自分が思う英雄や偉人達の偉業の比べ合いはドンドンヒートアップしていく。

 しかしこういった会話の最終的なゴールは大抵決まっていた。


「でもぉ……?」


「なんつってもぉ……?」


 2人はお互いの鞄をゴソゴソと漁って何かを取り出す準備をした。

 そして同時に何かを取りだし、お互いのを見せ合う。


「最高なのは、灰燼のリグザ!!」

「最強なのは、灰燼のリグザ!!」


 揃いに揃った発言と共に、お互いの鞄から取り出された本を見せびらかす。イーリルの持っている本には『軍神リグザ・デザルドム、戦場の記録』と記されており、リグザの出陣した戦闘での細かな事が載っている本だ。

 対するベルリオの持っている本には『覇道の頂に立つ者 〜リグザ伝〜』と書かれており、表紙には勇ましく屈強な男のイラストもある事から、伝記のようなものだと分かる。


「何と言っても僕のおすすめは、リグザが命を懸けて人々を守った、あの伝説の一戦!敵は残虐非道な傭兵団、『血風の獣』。村を襲い、財産を奪い、抵抗する者は容赦なく殺す――そんな悪名高き連中が、ある日とある小さな村を狙ったんだ。絶望に染まる村人たち。誰もが諦めかけたその時、彼は現れた。そう、リグザだ!たった一人、村の入り口に立ち塞がり、敵に向かって言い放ったんだ。「この村に指一本触れてみろ。その瞬間、お前らの命は終わる」しかし、敵は数百。リグザがどれだけ強くても、一人で守り切れる人数じゃない。そこで彼は、村人たちに「逃げろ」とだけ言い残し、 絶対に背を向けることなく、矢の雨を浴びながら前に立ち続けたんだ!敵の矢が何本も彼の体に突き刺さる。強力な魔法が彼を襲う。それでもリグザは、まるで痛みすら感じていないかのように微動だにしなかった。 その鋼のような意志に、村人たちは逃げる足を止めかけた。だが、彼は振り向かない。振り向くことなく、敵を斬り伏せ、ただひたすらに守り続けたんだ!そして、すべての村人が無事に逃げ切った時――彼はようやく剣を構え直したんだ!次の瞬間、リグザはまるで嵐のように動いた。 怒涛の剣戟、閃光のごとき斬撃! 傭兵たちは悲鳴を上げる間もなく次々と倒され、わずか数分後、そこに立っていたのは、たった一人の男だけだった。無傷のまま、村を守り切った戦士。彼は何も語らず、そのまま静かに立ち去った……。聞いただけで鳥肌が立つでしょ!これが リグザの本当の強さ。剣だけじゃない、彼は「背中で人々を守る男」なんだよ!」


「俺は リグザが単騎で要塞を陥落させた伝説の戦い だ!あれはもう、語らずにはいられないぜ!まず敵は、鉄壁と名高い グランバルド要塞!歴戦の猛者がひしめき、数万の兵が守る難攻不落の砦だ!普通なら攻略不可能、だがリグザは違う! たった一人で乗り込んで、まるで風が吹き抜けるかのように敵を蹂躙していったんだ!しかもリグザは、ただ力任せに暴れたわけじゃない!最初に夜闇に紛れて城門に取り付き、 音もなく見張りを始末!そこからが衝撃的だった!なんと 一瞬で門をぶち破り、そのまま本陣へ一直線! 慌てふためく敵兵たちは、リグザの圧倒的な剣技に次々と沈められていく!!そして極めつけは、要塞の大将との一騎討ち! 三手―― それで決着がついたんだ!最後の一撃が振り下ろされた瞬間、敵軍は戦意を喪失!要塞は、たった一人に落とされたんだ!どうだ! 圧倒的すぎるだろ!これぞリグザの戦歴の中でも屈指の名場面! 戦場の覇者の名は 伊達じゃない ってことが、これ以上なく分かるエピソードだぜ!」


 物凄い文章量をお互い一息で言い切った2人はハァハァと息切れを起こしながら、頬を紅潮させて興奮気味に会話をしていた。

 教室に残っていた他の生徒達は2人の熱烈な英雄談義の盛り上がりの熱量に、少し引き気味で帰宅していった。

 その後2人は家に帰る時も鍛錬の休憩時間も同じ様な語り合いをし、「いつかリグザみたいに強くなろうね」とイーリルは言い、「いいや!リグザを俺達は越えてやるんだ!」そう野原の上で寝転びながら語り合っていた。 


―――


 そんな思い出が蘇る。

 目の前にいる屈強な肉体を持つ寡黙でただならぬ風格を漂わせている男。青い炎に灰色の肌が特徴的でその見た目と能力から『灰燼』と呼ばれている英雄。それが今まさに2人の若き英雄の前に立っている。


「まさか……俺達の最強の原点が目の前にいるなんてな……」


「あぁ。当時の僕等に言っても信じないだろうね……」


 ベルリオとイーリルは経過しながら冗談交じりの会話をする。緊張と炎の熱で汗が毛穴から吹き出す。それが頬から落ちて顎に伝う。そして地面へと汗が落下した瞬間、ベルリオは目にも止まらぬ速度でリグザの首目掛けて上段蹴りを繰り出す。

 

 ゴッ!!


 鈍く低い音が鳴る。ベルリオの蹴りは確かにリグザの首を直撃している。

 しかし、彼の首を蹴ったベルリオの感想はただ1つ。


大木……!?


 蹴った瞬間に超巨大な木のイメージがベルリオの頭を支配する。その隙にイーリルは魔道銃器でリグザの肉体目掛けて弾丸を放つ。しかし、それはリグザの体に触れるなり地面に落ち、全く傷がついていなかった。


「硬い……!!」


 リグザの首から飛び退いたベルリオもイーリルと似たような感想を述べて姿勢を低くする。

 すると、ずっと腕を組んで何も喋っていなかったリグザの重く閉ざされた口が動いた。


「ふむ……たった数十年で帝国の技術は随分と成長したらしいな。この俺が痒いと感じてしまった」


「ンだよ……喋れんなら最初から口開きやがれってんだ」


 突然の言葉にベルリオは悪態をつく。それに対しリグザは「すまんな。力量を知りたかったのだ」と返した。すまん、と言っている割にはそんな雰囲気は微塵も感じられない。

 そんな中、イーリルは小刻みに震えて俯いてた。そして1つの質問を投げかける。


「喋れるなら教えてくれ……何で魔人会なんかに……!!貴方は何十年も前に戦死したハズだ!!」


「質問が多いな若造。……ふむ、まぁ面白い玩具を見せてもらった礼だ。答えてやろう」


 そういうリグザの手には、イーリルの手にあるハズの魔道銃器が握られており、一瞬にして握りつぶされて粉砕されてしまった。いつの間に奪ったのか、奪われた本人ですらよく理解できていなかった。


「あれはもう50年以上前になる。当時は遠方への遠征任務が多くてな。その中の1つでたまたま魔人会と遭遇してしまったのだ。そこが俺の運命を大きく変えた」


 重々しい声が2人の耳に入ってくる。それだけで足が震えそうで仕方無かったが、ここで臆していては何も守れない、と踏ん張りながらリグザのプレッシャーに耐えている。


「俺は人生のほぼ全てを鍛錬に捧げてきた。それなのにだ。俺の相手をした少女は、俺の攻撃など一切効いていない様子で平然と立っていた。その時、俺は思い知らされた。世の中、どうにもならない才能と実力の差があるのだ、と」


「―――ッ!!」


 何か諦めたような態度。顔は変わっていないが、そんな雰囲気を醸し出しながら、リグザは少し俯いて瞳を閉じる。

 彼のそんな態度を見たイーリルは握り拳を力強く作り、爪がめり込んで出血していた。


「だが俺は更なる可能性を知る事が出来た。その少女に殺されそうになった瞬間、少女は俺に提案を持ちかけてきた。『契約を交わして、私の配下になってくれるなら力をあげる』とな」


「そんなありがちな話に……あんたのような人が乗っかったってのかよ……!」


「あぁ。最初は渋々了承したのだが、力を手にした後の高揚感は今でも忘れられないものとなっている」


 リグザは手を握ったり開いたりして指をボキボキと鳴らした。その握力で握られたらひとたまりもないだろう。

 そんな中、「違う……」と1つの言葉が放り出される。その言葉を発したのはイーリルだった。


「僕の知ってる英雄は、そんな事言わない……」


「ほぅ。お前が俺の何を知っている。戦場を知らない子供が学びの延長で知ろうとした事実など、そもそもが怪しいものだ」


 己の子供時代の憧れが、目の前でそれそのものを否定してくる。これ程の苦痛に耐えられる人間がどれ程の数いようか。しかしイーリルは震える足をピタリと止め、まっすぐリグ座を見据える。


「……僕は……英雄リグザの事を沢山知っている。とても力があって、勇気がある事。でも人や動物や植物にまで優しくて、一人一人の声にちゃんと耳を傾けてくれる優しさを持ってる事。傷を負っても決して臆さない根性。任務遂行の為の冷徹さの中にある少しの甘さを。……ベルが貴方を志して最強を目指したように、僕も貴方の生き様に憧れて、人を守りたいと思うようになった……!」


「そんなものは全てまやかしだ。現に俺はもう魔の手に落ちている」


 するとその言葉が気になったベルリオが「魔の手に落ちた……それに契約って……」と呟いた。彼の言葉を聞き取ったリグザは、「感が鋭いな獣人」とベルリオに向かって言った。


「俺は魔人会の最高幹部の1人と契約を結んだ。それが今のこの俺だ」


 そう言うと、リグザは掌に得体の知れないドス黒いエネルギーの塊を作り出した。赤く、黒く、そして何よりおぞましい見た目をしている。

 そしてそれを見せつけた後に握りつぶすと、暗黒の波紋が周囲に広がり、ベルリオとイーリルを更に威圧した。


「今の俺はコルネロ帝国武装騎士団8代目総団長ではない。――魔人会最高幹部、天魔六柱。『結晶』の副官――リグザ・デザルドムだ」



最後までお読み頂きありがとうございます!


戦る1とありますが、詳しい戦闘やらはまた次回となります!

憧れていた壁と戦う2人!一体どうなる……!!


それでは次回をお楽しみに!!

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