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第二章 73話『『現』コルネロの英雄達、親友と向かう』

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「どうしたベルリオ。毛が逆立っているよ。少しは落ち着きなよ」


 本庁舎から走り、東部の城壁に辿り着いた武装騎士団総団長と兵器開発部門代表。イーリルは獣人らしからぬ足音と毛を立てている友へと言葉をかける。


「落ち着けるか。あの女に獣族の誇りを汚されたんだ。イライラが収まるかよ」


 苛立ちを全く隠さずにベルリオは言う。

 あの女――それはラウ・シェンメイの事で間違いないのをイーリルは知っていた。


 元凶はメイで、ベルリオの事を名前で呼ばずに「犬っころ」と呼んだ事が始まりだった。彼女のその呼び方が引っかかったベルリオはその事をメイに言及した。

 そこからの言い合いは、皮肉と誇りの投げ合いだった。メイは冗談染みた軽口を叩き、ベルリオは騎士団長としてのプライドを真剣にぶつけていた。

 無論、反省する気の無い軽口に真面目な人間が勝てるハズも無く、イーリルが間に入る事で、一応止める事が出来た。


 だがしかし、メイには別の思惑が合った事もイーリルは知っている。

 それは、街に残って身を隠している魔人会のいち早い殲滅と一掃の為だった。

 ベルリオの性格上、煽りやそういったものに弱い。メイは出会って短い間にそれをすぐに察知し、ベルリオを焚きつける為にわざと嫌われ役を買って出たのだ。作戦会議の時は普通に名前で呼んでいたのが良い証拠だ。


 確かにメイの獣族を貶す発言はいただけないが、それにしたってお互い素直じゃないな……とイーリルは苦笑いを浮かべざるを得なかった。


「でも、彼女のお陰で迷いは晴れたろう?」


 イーリルは苦笑しながら口元に手を当て、ベルリオに言葉を投げかける。彼の仕草と言葉に驚いたベルリオは焦ったようにして言葉を返す。


「なっ……!!俺は最初から迷っちゃいねぇよ!」


「いいんだよ、強がらなくても。……幸か不幸か、今この場にいるのは僕と君だけだ。総団長ともあろう御方が、部下の前で弱音は吐けないのは知っている。だが、僕は別の所属でのトップだ。君がどんな言葉を吐き出そうとも、君の部下達には喋らないよ」


 彼の優しい気遣いと言い回しにベルリオは少し口籠った。イーリルは黙ったベルリオに聞き返す事や話しかける事はせず、ただただベルリオ自身が口を開くのを待っていた。

 しばらくして、ベルリオは口を開いた。


「……俺ぁ不安だった。なんだか魔人会の連中が絡んできてから、俺は何一つ役に立ててねぇ。陛下が暗殺された時もその場にはいなかったし、この街が襲われ始めた時だって地下にいたからすぐには駆けつけられなかった……」


「それを言われてしまうと、僕も立つ瀬が無いけどね。1人でも実力者を地上に残しておけば、こんな自体にはならなかったかもしれない」


 イーリルの本音であり、ベルリオにこれ以上ベルリオ自身を下げさせない為に出た言葉だった。しかし彼はこの言葉に納得がいっていない様子だった。


「そんなの予測できねぇだろ。アジトがあるって分かったら普通そこにいると思って突入するじゃねぇか。それに、お前は技術で誰かを救う道を選んだ。だから現場にいなくたって仕方が無いと俺は思ってる。……でも俺は違う。俺は最前線で戦って体と命張って皆を救うんだ。でも、今はその役目すらメイに取られちまってる……」


 彼の言う最前線、それはきっと大将戦の事なのだろう。

 自身が全てを背負って立ち、戦う。同じく全てを背負った敵がそれを迎え撃つ。それこそが彼の誇りであり、己の役目だと認識しているに違いない。


 だが今のベルリオは、あまり知らない間柄のメイに命令されて雑兵掃除に駆り出されている。

 ベルリオ本人は戦っていない相手の実力は信用しないと言いつつも、メイの言う通りにしている辺り、何となく力量の差は理解しているのだろう。だからイーリルが仲裁した後に言及もしなかったのだろう。

 そんな彼の心境を考えると、イーリルは胸が苦しくて仕方が無い。

 ずっと一緒にいる相手だからこそ、自身もベルリオに似たような事をした経験があるからこその苦しみだった。


「……あー、ったく。いいんだよもう」


 突然ベルリオが頭をボリボリとかきながら言った。彼の目線はイーリルの顔にあった事をイーリル自身は知らない。大方、イーリルの浮かない顔を見て自分が嫌になったのだろう。


「もう、分かってっから」


 それだけ言われると、イーリルには全て伝わった。

 今、イーリルがベルリオに対して抱いていた考えや気持ちは、全て彼には理解出来ていた。

 先程の「もう、分かってっから」というのは、十数年の付き合いだ、言わなくてもお前が何を考えてるかくらい分かる。だから言いたくねぇ事は言うな。というベルリオなりの優しさだった。


「俺は今まで、強けりゃ皆を守れると思って強くなろうとしてきた。……でも、いつしか強くなる為に強くなろうとしてた。……だから、もうそれは辞めにする」


「ベル……」


「戦う為の戦いは終わりだ。これからはちゃんと……いや、もう一度だ。誰かを守る為に強くなる。誰かを守る為に戦うんだ」


 ベルリオは新たな決意を口にした。そんな彼の真意を、イーリルは理解していた。

 大将戦にこだわっていたのは、全てを背負えるから。それは守るべき国民や土地の事を大切に思っているからこそだ。

 しかし、いつしかその気持が薄れ始めていたに違いない。だからこそ、改めてここでそれを宣言する事で、己の中の新たな指標を立てたのだ。ついでに、イーリルの中の『言いたくねぇ事』を晴らす為でもあった。

 そんな彼の気遣いにイーリルは再び小さく苦笑する。


「自分がダメージ受けてるクセに、僕の心配してる場合か?」


「なっ!!べっ別に!!お前が勝手な妄想してっから、そんなモン聞きたくねぇから言わなくていいって思っただけだ!!」


「そうだね。悪かったよ」


 イーリルが一言謝った後、彼は「……さて」と呟いて城壁の方を向き直した。イーリルよりコンマ1秒早く、ベルリオも城壁の方を向いた。

 するとそこには、魔人会の構成員の着けている、独特で気味の悪い文様が刻まれた仮面が数十を超える数並んでいた。2人の話し声に、彼等はおびき出されたのだ。


「ようやくお出ましだね」


「あぁ、長々話した甲斐もあったぜ」


 魔人会の構成員はただ黙ってベルリオ達を見下ろしている。そして全員が全く同じタイミングで袖の中から武器を取り出した。彼等のその行動を見て、2人も自身の武器に手を当てる。

 ベルリオは腰から剣を抜いた。それは武装騎士団総団長にのみ与えられる宝剣で、絶対的なオーラを放っていた。

 対するイーリルは小型の魔道銃器を左手に、剣を右手で持って構える。彼の持っている剣は特殊な形状をしており、なんと既存の武器に自らが改造を施した一品であった。


「行こうか」


「あぁ、しっかりついてこいよ」


「それはどうかな……結構衰えてる気はするんだけどね……」


「しっかりしてくれよ。それでも俺と同じ血を引いてんだろ」


「超遠縁だけどね」


「はぁ……そういう屁理屈臭ぇトコは変わってねぇのな」


 先程の延長線上のような無駄話をした後、2人は魔人会が構えているザストルク東部の城壁へと走っていった。

 その2人の覚悟が決まったような目は獲物を狩る猛獣……いや、子供を守る親鳥のような、そんな思いを抱えた瞳だった。


「覚悟しろ!魔人会!!」


 ベルリオの大きな咆哮が放たれ、魔人会も武器を力強く構え直す。

 そして、ベルリオ・ナーダとイーリル・ノートの2人による、城壁東部攻略戦が幕を開けた。



最後までお読み頂きありがとうございます!


今回はベルリオとイーリルの2人が東の城壁に身を隠していた魔人会の元へ!!

そして2人の会話にまんまと顔を出した魔人会の連中はもっと警戒した方がいいぞ!!


それでは次回もお楽しみに!!

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