第二章 72話『『元』究極メイド、嘘つきを知る』
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足りなかった最後の方を加筆いたしました!
この度は申し訳ありませんでした!!
メイ達が戦いに出てから数十分。
アミナ達本庁舎の治療組は、人手が足りずに、守備に回ってくれていたカルムの手を結局借りつつ、怪我をした住人達の治療と処置をしていた。
目まぐるしく現場は動き、常に猫の手も借りたい状況だった。そんな中、1人の男が救世主となっていた。
「こちらに回復薬を回して下さい!」
「はいよぉ!」
「ごめんこっちにも!」
「はいなぁ!」
「こちらは包帯を」
「よしきたぁ!」
その人物の能力によって、本庁舎の至る所から手が生え、アミナ達の足りない手を補ってくれているのだ。
治療が一段落して、アミナがエントランスの中央にいるその人物へと声を掛ける。
「ありがとうございます、ヒューリーさん。貴方のスキルのお陰で百人力です」
「お褒めに預かり光栄の至り……と言いましても、実際に私が出せる手の数は10本程度ですので、"五人力"と言った所でしょうか」
ヒューリーは冗談染みた事を言って場を和ませようとしてくれていた。そう、今この場に同情や傷の舐め合いより必要なのは、明るさだ。
人が多く集まる場所には喜びも生まれるが、それ以上に悲しみと怒りも溜まる。それ故に空気がピリピリとしており、誰一人として笑う者はいない。そんな中、道化師である彼だけは人々を笑わせようとしてこの重い空気に耐えながら自分にしか出来ない事を全うしようとしている。
「ほぉら、ここに私の手が6本ありますね?ご覧の通り手の中には何も握られておりません」
今度は近くにいた少女へと声をかけていた。少女の顔はあからさまに元気が無さそうだった。
「そこへお嬢さん、「ワン・ツー・スリー」とおまじないをどうぞ」
「わん、つー、すりぃー?」
少女の語尾は少々上がっており、本当に何が起きるのか分からない、と言いたげな表情と声音をしていた。
アミナもこれから何が起こるのか楽しみにしながらその光景を見ていた。すると、ヒューリーの全ての手がブルブルと細かく震えだした。そしてヒューリーは6本ある全ての手から一輪の花が飛び出した。
それを見た女の子の顔はパアッと明るくなり、アミナも目の前で起きたことに驚いてパアッとなった。少女は花を受け取ると、母親らしき人物の元まで早足でかけていった。
「さっきのどうやったんですか?」
単純な好奇心と、冷めやらぬ興奮から出た疑問だった。しかし息切れを起こしたヒューリーは「道化師の命である手品の種を訊くなんて……アミナさんは容赦がありませんね……はぁ、はぁ……」と返した。
その時アミナは失言だと自覚し、ハッとして口を抑えた。
「別に構いませんよ。……まぁこれは他者に真似出来てしまいますが、アミナさんなら構わないでしょう」
「そんな……私はそこまで信用を得てもらえるような人間では……」
アミナが手を振りながらヒューリーに対して言うが、ヒューリーは彼女の仕草を遮って「アミナさん」と微笑みながら赤い染料が塗られた口を開いた。
「他者を信用するかどうかは貴女以外の他者が決めるのです。だから貴女が貴女自身を卑下する必要も権利も無いのですよ。ですので自信を持って下さい。貴女は誰から見ても素敵な女性ですよ」
突然の褒め言葉にアミナは少し照れて俯く。これは彼なりの励ましなのか、それとも世渡り上手なヒューリーによるお世辞なのか。それはアミナには分からなかったが、嘘でも本心でも、少しだけ嬉しい。
「さて、先程の手品の種でしたね。……実はあれって魔力で作り出した花なのですよ」
「魔力で花を?」
「はい。適正の無い私が魔力を実体化させるのは中々に骨が折れるのですが、少々息切れする程度ですので大した問題ではありません」
「では本当に花が突然手の中から出てくるんですね」
「イカサマと言われてしまえばそこまでですが、嘘でもなんでも、誰かを笑顔にするのが、我々道化師の役目ですから。騙して誰かが救われて、私が嘘つきの汚名を着ようとも。それはそれ、これはこれなのです」
アミナはヒューリーの先程から発せられる言葉に感嘆させられるばかりだった。
人々を楽しませる道化として、そして1人の人間として、彼の発言や行動には一切の迷いが無く、尊敬する所と学ぶべき所が多すぎる。
「フフ……ヒューリーさんは私が出会ってきた中で、最も素敵な嘘つきです」
「それはそれは。嘘で人を楽しませる道化には最大の褒め言葉でございます」
ヒューリーの大袈裟な振る舞いを胡散臭く感じながらも、アミナとヒューリーはお互いの態度に笑い合った。
「そういえば話は変わってしまうのですが、ヒューリーさんの出身はどこですか?」
「私ですか?私は第二大陸出身ですね。ここより南……『ラターク』という国の小さな名もなき集落で生まれ育ちました」
心の中でラターク、ラターク、ラタークと繰り返すアミナ。ここ最近国の名前や土地の名前を大量に聞いた弊害で、すっかりゴチャゴチャになってしまっていた。その為、ちゃんと覚える為に心の中で数度呟く事にしたのだ。
「ラタークは行商人と芸人が多くてですねぇ……小さいながらも、私の住んでいた集落にも定期的に遊びに来てくれたりもしました」
ヒューリーは高い天井を見上げた後に目を閉じた。きっとあの瞼の裏には様々な思い出と記憶が鮮明に映し出されている事だろう。
「時にアミナさん。スキルというのは神からの呪詛だと言われているのはご存知ですか?」
「え?いえ……初耳ですけど」
初耳……初耳だよな?と自分に問いかけつつヒューリーの話に再び耳を傾ける。
もし仮にそれを聞いた事があったら、物作り屋なんてやってなかったかもしれない……と心の中で呟いた。
「そうですか。まぁ少なくとも、ラザールではそう言われていました。集落でのスキル持ちは私だけでした。至る所から腕を生やす子供なんて気味悪がられて仕方がありません。私は両親からすら、忌むべき対象として見られてきました」
スキルが神からの呪詛だ、というのにも驚きだが、ヒューリーさんは生まれ故郷でそんな待遇だっただなんて、今の彼からは想像もつかなかった。多分呪詛だと呼ばれているのは地域によるものなのだろう。
「そんなある日。月に一度か二度、私の住んでいた集落に芸を見せに来てくれる男性がいました。彼はスキル持ちの僕を、集落の他の人々と同じように接してくれたのです。そして来るたびに目を輝かせて手品や芸に見入っていた当時の私に手品の種や芸を教えてくれたのです」
ヒューリーの表情は生き生きとし始めた。最初から生き生きはしていたが、今までとは何かが違う。そんな雰囲気をアミナは感じていた。
「彼はいつも私に言っていました。『世の中嘘まみれだ』と」
「嘘まみれ……」
アミナは彼の恩人であろう男性が言った言葉を小さく繰り返した。するとアミナが呆気にとられたと思ったのか、ヒューリーはニコリと笑った。
「私も最初驚いてしまいましたが、彼は続いてこうも言いました。『嘘まみれの世界でも、きっとお前を心から受け入れてくれる所はある。だから、誇りと夢だけはどんな時も捨てちゃ駄目だ』とね」
「……とても素敵な方だったんですね……」
「はい。私にとっては絶望の日々から心を救ってくれた……命の恩人とも言える存在ですね」
聞いているアミナは、何故ヒューリーが差別されているような環境でここまで人道的に育ったのか疑問だったが、これで気持ちが晴れた。
ヒューリーにとっては心を救ってくれた存在。そのヒューリーにアミナは学ぶ所が多いと感じた。間接的にその人から人としての何かを教わった気がして、アミナもなんだか誇らしい気持ちになった。
2人がそう会話をしていると、突然「すみません!!こちらに回復薬を!!」という大きな声が聞こえた。
丁度話に区切りがついたように感じたアミナとヒューリーは立ち上がって声が聞こえた方向に顔と体を向けた。
「さて……まだまだ被害者の方がいるようですね。早く治して差し上げましょう。お話はまた今度」
「そうですね。急ぎましょう」
またしても大袈裟な振る舞いをしたヒューリーは、先を歩くアミナの背中を見つめながら微笑んだ。
そして彼女の仕事の手伝いをする為に、広い本庁舎の中をアミナの後ろについて歩いていった。
最後までお読み頂きありがとうございます!
今回もアミナパートでした!
そして区切りどころが少し微妙だったので、別視点はまた次回となります!
それでは次回もお楽しみに!!




