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第10話 炎の裂谷と裏切りの残響

アヴィア大陸の南東、焦土のような荒野を越えた先に、それはあった。

天を裂くような大地の亀裂、真紅に染まる岩肌、そして地下深くから吹き上がる熱風。エイラが辿り着いたのは、「炎の裂谷ヴォルカノン」と呼ばれる死地だった。


「ここが…次の光が示した場所…」


裂谷は絶えず唸り声のような音を響かせ、地面のあちこちから火柱が上がっていた。空には黒い火山灰が舞い、陽の光さえ遮っている。その景色は、これまで彼女が見てきた自然の美とは対極にあるものだった。


それでも、ペンダントは確かにこの場所を示している。彼女の旅は、いま正真正銘、過去の罪と真実に触れようとしていた。


焼けた大地に残されたもの


エイラは谷底へと慎重に降りていく。羽は熱風にあおられ、身体は汗で重くなる。だが、岩と火の迷宮を越えたその先に……ひっそりと、朽ちた石造りの都市跡が広がっていた。


廃都。空の神殿とは異なり、この場所には誰の気配もなく、ただ“かつての栄光の抜け殻”だけが残されていた。


巨大な円形の広場の中央には、崩れかけた塔があり、その足元に古びた碑文が立っていた。

ペンダントの光がその文字に触れると、遺跡全体が低く唸るように反応した。


碑文が淡く輝き、風のような声が漏れ始める。


> 「ここに記す。我ら空の民、“白翼の誓い”を破りし者、罪深き者として名を刻む…」

「力は信頼によって分かたれねばならず、独占は終焉を招くと知りながら…」

「我らは、それを選んだ…」


エイラは膝をつき、碑文を見上げた。

アヴィアンの一部が、かつて星の力を独り占めにしようとし、統合の盟約を裏切った。

その中心にいた者たちは、この裂谷の地に城を築き、星の封印を解く術を探っていた。だが、ある時突然、すべての構造が崩れ落ち、この都市は誰にも知られぬまま地図から消えたという。


エイラの胸の奥で、怒りにも似た悲しみが渦を巻いた。


(これは…私たち自身の過去…?)


“影”との邂逅


そのときだった。

裂谷の奥、崩れかけた神殿の残骸から、ゆっくりと黒い霧が立ち上り始めた。冷たい風が辺りを包み、熱で満ちていた空間の空気が一変する。


霧の中から、声が響いた。


「ようやくここまで辿り着いたか、アヴィアンの少女よ」


現れたのは、明確な姿を持たぬ“影”。だがその輪郭は、かつてのアヴィアンに似た翼を持ち、片目を覆うように灰色の面をつけていた。


「お前は誰…?」


「我は“影の継承者”の一柱。忘れられた意思、地に堕ちた翼の代弁者だ」


影の声はどこか哀しげだった。怒りに満ちているはずなのに、寂しさがにじむ。


「我らは裏切り者ではない。ただ、生き延びたかっただけだ。星の力を失えば、我らは他の種族に滅ぼされるしかなかった」


「でも、その力を奪えば…他の誰かが傷つくことになる」エイラは言った。


影はしばらく黙っていた。


「正しさは一つではない。だが、お前がその力を解き放つつもりなら、いずれ我らと対峙せねばならぬだろう」


そう告げると、影は霧とともに消えた。


エイラは拳を握った。影の言葉に、一部の真実があったことを否定できなかった。それでも、自分の選ぶべき道はひとつだった。


再び、空へ


裂谷の空に、一筋の光が差し込む。

黒雲の間から降り注いだその光に導かれるように、ペンダントが再び輝きを放つ。次に示されたのは――かつて盟約が交わされたという“中心の地”、オリヴィア高原。


そこは今や、各種族の境界線に位置する中立地帯。種族間の争いを避けるため、誰も近づかなくなった“交わりの消えた地”だった。


「行かなきゃ…今度は“繋ぐ”ために」


火の熱気に背を向け、エイラは羽ばたいた。影を見据え、心を決めて……。

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