第9話 君と僕と、もう一人の恋のライバル
唯と哲也、ついに付き合い始めた二人が初めてのデートに出かける。しかし、二人の関係を複雑にする第三の存在、透はまだ諦めていなかった。
"彼と彼女はどこへ向かうのか?"――そんな恋の駆け引きを、初デートで垣間見ることになる。読者の皆さん、ドキドキのデートと予期せぬ挑戦を一緒に楽しんでください!
唯と晴れて付き合い始めた俺は、彼女との初デートに心を躍らせていた。約束の時間に駅前で待ち合わせ、唯が登場する。私服の彼女は普段と違う印象で、俺は思わず見とれてしまった。
「お待たせ、哲也くん」
「ううん、待ってないよ。唯ちゃん、すごく可愛い……(ヤバい、想像以上に可愛い……)」
唯は照れくさそうに微笑んだが、俺もつられて顔が赤くなる。デートプランを決めようと、2人で話し始めたが、ここから少し意外な展開になった。
「ねぇ、まずはショッピングしに行かない?」
「いいね。でも、映画も観に行きたいな。新作のアクション映画が面白そうなんだ」
「アクション映画?実は、私、恋愛ものの方が好きなんだよね……」
「あ、そっか……じゃあ、カフェでゆっくり話すのはどうかな?」
「うーん、でもせっかくのデートだし、遊園地とか行きたいなって思ってた」
お互いの趣味や好みが微妙にズレていて、ちょっとした口論になりそうだった。俺たちは笑いながら、「こんなに意見が合わないのも面白いね」と冗談を言い合う。
「じゃあ、次のデートは俺が唯ちゃんの好きなところに付き合うから、今日は俺の提案に乗ってみない?」
「わかった、じゃあ今日は哲也くんに任せる!」
「(良かった……無事にデートプランが決まった)」
こうして、俺たちはまずカフェに立ち寄ることに決めた。
カフェで向かい合って座ると、自然と会話が弾む。飲み物が運ばれてくると、唯が少しだけストローを吸って、俺の目を見て微笑む。
「哲也くん、こうやって2人で話すの、なんか特別な感じがするね」
「うん、俺もそう思う。付き合う前と違って、距離が近くなった気がするよ」
その言葉に唯は頬を赤くし、少し恥ずかしそうに目を逸らす。その姿があまりにも可愛くて、俺は思わず彼女の手を取った。
「え、ちょっと……みんな見てるよ」
「(つい、手を取ってしまった!でもここは引かない)いいじゃん。俺たち、もう付き合ってるんだし」
唯は驚いた表情を見せつつも、やがて優しく俺の手を握り返してくれた。カフェの窓から差し込む陽光が、2人の笑顔を照らす。
その後、俺たちは近くの公園を歩いていた。ベンチに腰掛け、唯は少し疲れた様子で、俺の肩にもたれかかる。
「今日はたくさん歩いたから、ちょっと休憩しよう」
「(うわっ!?唯ちゃんとの距離が近い、近すぎるっ!)う、うん。唯ちゃん、疲れたの?」
「少しだけ。でも、哲也くんと一緒だから楽しいよ」
「そっか、それなら良かった(この距離感に少しずつ慣れていこう)」
俺はそっと彼女の頭を優しく撫で、唯は目を閉じて微笑む。その瞬間、風が吹き、彼女の髪が揺れる。俺は思わず彼女の顔に触れ、唯も目を開けてこちらを見る。
「唯ちゃん……」
唇が触れそうな距離まで近づいたその時、不意に背後から声が聞こえた。
「楽しそうですね、哲也様」
振り向くと、そこには透さんが立っていた。俺たちの後をつけていたのか、驚きと共に彼の真剣な表情が目に飛び込んでくる。
透は1歩、2歩と俺たちに近づき、唯に軽く頭を下げた。
「唯お嬢様、今日はお2人の時間を邪魔するつもりはなかったんですが……どうしても気になってしまって」
「透さん……どうしてここに?」
「哲也様に伝えたいことがありまして」
俺は立ち上がり、透と向き合う。彼の眼差しには、まだ決して諦めていない強い決意が感じられた。
「哲也様、俺は唯お嬢様のことを本気で好きだ。お前が唯お嬢様と付き合い始めたことは知っている。でも、俺だって諦めるつもりはない」
透は拳を握りしめ、強く言い放つ。
「俺はまだ終わっていない。勝負はこれからだ」
その言葉に俺は息を飲んだ。唯も驚いた表情で、2人の間を見つめる。まさか、初デートの終盤にこんな展開になるとは思っていなかった。
「透さん……」
「唯お嬢様、どうか俺にもチャンスをください。哲也だけでなく、俺とも本当の気持ちを確かめてほしいんです」
唯は一瞬、考え込むように目を閉じたが、やがて静かに頷いた。
「わかった……透さんの気持ちもちゃんと受け止めるから」
俺は唯の言葉に驚きつつも、透の決意を感じ取り、再び彼と向き合った。
「分かった。俺も負けるつもりはない。唯ちゃんの気持ちを尊重して、正々堂々と勝負しよう」
2人の間に一瞬、静かな緊張感が漂う。しかし、同時に俺の中には、不思議と闘志が湧き上がってきた。唯を巡る新たな戦いが、ここから始まるのだと感じながら。
夕暮れの公園を後にし、俺たちはそれぞれの思いを胸に秘めて歩き出す。そっと唯の手を握りながら、俺は彼女の隣で新たな決意を固めた。
「唯ちゃん、これからもっと楽しい思い出を一緒に作ろう」
「うん、哲也くん……私も楽しみにしてるよ」
透との新たなライバル関係が生まれたことで、俺たちの恋はますます波乱に満ちたものになるかもしれない。しかし、その挑戦が二人の絆をさらに強くしてくれることを、俺は信じていた。
哲也と唯の初デート、いかがでしたか?微笑ましいやり取りの裏で、透が影から見守っているシーンは書いていて緊張感がありました。恋愛において、第三者の存在は時に不安や葛藤を引き起こしますが、これからどのように三人の関係が進展していくのか、次回もお楽しみに!
次のエピソードでは、透のさらなるアプローチや、哲也の心の揺れが描かれる予定です。応援や感想、ぜひお待ちしています!