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ノラ猫と女子高生の恋  作者: 藍瀬 七
第1章 猫と少女の奇妙な日常
7/29

第7話 夕暮れに映る君の夢

これは、夢を追う少女と、その夢を応援し続ける少年の物語です。

恋、友情、そして成長――誰もが心のどこかで追い求める『特別な存在』に出会う瞬間。

そんな奇跡のひとときを共有しませんか?

 その日の放課後、いつも通り補習を終えた俺は、唯がいるかもしれない場所を探して校舎を歩いていた。彼女に「気になる人がいる」と聞いてから、どうにも落ち着かなくて、心に引っかかりが残っている。


 ふと校舎の角を曲がると、唯が一人でベンチに座っているのを見つけた。夕暮れの光が窓から差し込み、彼女のシルエットを包み込んでいる。その姿はどこか寂しそうで、思わず足が止まる。


「唯ちゃん……?」


 気づかれないようにそっと声をかけると、彼女が振り返った。


「哲也くん……どうしたの?」


「あ、いや、何か……考えごとしてたみたいだから。もしかして、さっきの話、気になる人のこと……?(俺が気になるから聞いたけど、良かったかな……?)」


 自分の言葉が少し軽率だったかなと思い、内心焦るが、唯は優しく微笑みながら頷いた。


「うん。哲也くんにはもう話してもいいかなって思ってたんだ」


 心臓が跳ね上がる。俺は一歩前に進んで、彼女の顔を真剣に見つめた。


「……もし、俺にできることがあるなら、何でも言ってほしい。唯ちゃんのこと、応援したいって思ってるから」


 唯は一瞬驚いたような顔をしたあと、静かに話し始めた。


「哲也くん、ありがとう。でも、なんだかんだ言って、私もまだ勇気が出ないんだよね。相手がどう思っているのか分からないし……」


「そっか。でも、俺は唯ちゃんがどんな気持ちでも、その夢を応援するから」


 彼女が話した「夢」は、獣医として命を救いたいというものだけでなく、もう1つの夢──素敵な恋愛も含まれているんだろう。彼女のその夢を見守る決意を新たにしながら、言葉を続けた。


「それに、唯ちゃんが誰かに気持ちを伝えようとしてる姿、すごく素敵だよ。俺、そんな唯ちゃんを応援できることが嬉しい」


 唯は頬を赤らめ、少しうつむきながら呟くように言った。


「実は、私、哲也くんのことが——」


 その時突然、人気のない俺たちだけの場所に、軽快な足音が近付いてきた。


「唯お嬢様!こんな所にいらっしゃったんですか!どこにもいらっしゃらないので探しましたよ」


「透さん!?あの、待たせてごめんなさい。でも私、哲也くんに伝えたいことがあって……」


 唯は顔を真っ赤にして、うつむく。透は俺たちの空気を何となく察したのか、少し気まずい空気へと変化した。


「大変失礼しました。……唯お嬢様、先に俺から伝えたいことがあります。よろしいですか?」


「……うん、わかったわ。用件は何かしら?」


 透は少し眉間に皺を寄せて、一息ついた後、話始めた。


「突然の事で驚かせるかもしれませんが……俺は、唯お嬢様が好きです」


 唯の方を見ると、目を丸くしていて何も言葉が出てこない、といった表情で固まっている。


「幼い頃からずっと貴方の事を見てきました。『お嬢様』という立場で、気品があって気遣いができて……何より頑張っている姿が何より愛おしいです……」


 唯は戸惑った表情をしていたが、透の顔を見て続けた。


「透さん、私の事をそんな風に見ていてくれたの……?嬉しいわ、ありがとう」


 俺は、唯の気持ちが透に向いてるのかと不安に思いながら、側で見守っていた。


「でも、ごめんなさい。私には気になる人がいるの……」


「そう、ですか……。非常に残念です……」


 透さんが落ち込んでいる様子の中、唯は俺の方に体を向き直して、顔を赤くしてうつむいている。そして頭を上げ、真剣な眼差しで話し始めた。


「私、哲也くんのことが……気になる人、なんだよ」


 言葉が出なかった。何かを言おうとするたびに、胸の鼓動がさらに早まっていく。


「ほんとうに……?」


「うん。でもね、それを言ったら、もうただの友達じゃいられなくなっちゃうかなって、ずっと不安だったの」


 俺は目の前の唯に向かって、一歩、また一歩と歩み寄り、彼女の手をそっと取った。


「唯ちゃんが友達以上に想ってくれてたなんて、俺、すごく嬉しい。……俺も、唯ちゃんがずっと気になってたよ」


 唯の目に涙が浮かんでいるように見えた。その瞳に、俺も想いを込めて応えたいと思った瞬間だった。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!

唯の夢と恋、そして支える哲也の成長は、皆さんの心にも響く部分があったでしょうか?

ぜひ感想をお聞かせいただければ幸いです。続きで彼らの成長と変化をもっとお届けしたいと思います!

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