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ノラ猫と女子高生の恋  作者: 藍瀬 七
第1章 猫と少女の奇妙な日常
6/29

第6話 唯の夢と告白

好きな人の夢を応援したい。

そんな思いで、少し不器用な哲也は今日も唯の隣に立ちます。

獣医を目指す彼女の未来、そして心の奥に秘められた淡い恋心。

『唯の夢と告白』は、応援と恋が交錯する高校生活の物語です。どうぞお楽しみください。

 次の日、学校に向かうと、昨日の透との会話が頭から離れず、少し落ち着かない気分で教室に向かった。唯の姿を見つけると、自然と笑顔になり、透の警告を思い出してさらに気持ちが引き締まる。けれど、彼女はいつもと同じく、優しい微笑みで俺に「おはよう」と挨拶をしてくれる。


「昨日、透さんに会ったよ」


 思い切って話しかけてみると、唯は驚いたように目を丸くし、すぐに照れたように笑った。


「(笑った顔も可愛い……!)」


「あら、そうだったんだ。哲也くん、透さんには驚かされたでしょ?彼、昔からちょっと厳しくてね、でも私のことをとても大切にしてくれてるの」


「うん、そういうの伝わったよ。唯ちゃんのこと、本当に大切に思ってるって」


 唯は少し照れくさそうに頬を赤らめたが、やがて真剣な顔つきに変わった。


「でも、透さんは私が自分の夢を追うためなら、何だって応援してくれるんだよ。だから哲也くんも、私の夢を応援してくれるなら、一緒に頑張りたいなって思う」


 俺はその言葉に心が温かくなり、思わず手を握りしめてしまった。


「俺、唯ちゃんがどんな夢を持っているか知りたい。もし俺にも手伝えることがあるなら、全力で応援したいんだ」


 唯は、嬉しそうに目を輝かせて答えた。


「ありがとう。実は、私、獣医になりたいの。私が幼い頃、猫を飼っていたんだけど、病気で亡くなっちゃってね。助けられる命なら、1つでも多くの命を救うことが夢なんだ」


 その瞬間、俺の頭の中には彼女が夢を叶える未来が浮かんでいた。彼女の夢を、自分の目で見てみたい。彼女が自分の居場所で輝く姿を、隣で支えられるならどれだけ幸せだろう。


 唯の夢を知ったことで、俺は強く心に決めた。透とライバルであることは変わらないけれど、唯が大切にしている人たちと一緒に、彼女を支えられる存在になりたい。


「実はもう1つあって……聞いてくれる?」


「うん、なんだい?」


「素敵な恋愛をしたいの」


 唯は両手を胸の前で合わせ、恥ずかしそうに俺の方を見つめてくる。なんだか、俺の方まで気恥ずかしい気持ちになった。その気持ちを隠しながら会話をする。


「へぇ……いいじゃん。唯ちゃんだったら良い人が見つかると思うよ(俺とかどう?って言うとチャラいよな……)」


「例えば、哲也くんとか!」


「へ?……えええぇぇ!?」


 俺は心の声が抑えきれず大声を挙げてしまった。周囲の人たちの目線が痛い。まずは落ち着こうと胸に手を当てて深呼吸をする。


「冗談だってば!例えばの話」


「なんだ、驚いたよ……(冗談かぁ、悲しい……)」


「でも、私、真っ直ぐで誠実な人、好きだよ」


 唯は照れくさそうな表情をしながら伝えてきた。どうやら今度は冗談ではなさそうだ。


「(何だろう?遠回しに好きって言われてる気分……いやいや、浮かれるな、俺)」


「私、気になる人がいるんだぁ」


 突然の唯の発言で、俺の頭は真っ白になった。何を言っていいのか分からず、沈黙が続く。俺のことが好きなのか?いや、別の人を好きでもおかしくはないし……と思考がまとまらない。


「でも、勇気が出なくて気持ちを伝えられないの」


「俺、唯ちゃんの夢なら何でも応援するよ。気になる人がいるなら思い切って気持ちを伝えてみた方がいいと思う。それに、唯ちゃんなら『素敵な恋愛』ができるって信じてるよ」


「哲也くん、ありがとう。うん、私からチャンスを狙って告白したい」


「頑張って、俺は見守ってるから」


 放課後、補習が始まった。俺は唯の気になる相手が誰なのか聞く勇気がなく、彼女の気持ちを応援することで気持ちがいっぱいいっぱいだった。これで良かったのだろうかと悩むが、自分ができるベストを尽くしたと信じたい。その足でバイト先へ向かうのだった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

唯の夢、そして哲也の告白はどこまで届くのか…二人の恋と夢がどう交わっていくのかを描くことができて、とても楽しかったです。

皆さんの中で少しでも二人の物語が響いていたら幸いです。また次の作品でお会いしましょう!

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