最終話 忘れても君を想う
ここまで物語を追い続けてくださった皆様、本当にありがとうございます。この最終話では、哲也と唯が選んだ未来を描きます。彼らの物語が、少しでも心に残るものとなれば幸いです。それでは、最終話をどうぞ!
アリサが鈴を掲げた瞬間、鈴が強烈な光を放った。それと同時に哲也の体が不安定になり、猫と人間の姿が交互に現れる。哲也は苦痛の表情を浮かべ、崩れ落ちそうになる。
「哲也くん!」
唯は叫び、駆け寄ろうとしたが、アリサが鋭い声で止めた。
「唯さん、近づかないで!今の鈴は何が起きてもおかしくないわ!」
唯はその場で足を止めたものの、目の前で苦しむ哲也に耐えきれず叫んだ。
「でも、哲也くんが――!」
その時、唯のペンダントが光り始め、鈴の暴走する光と反応し合うように共鳴した。その光景に、アリサも驚きの表情を浮かべる。
「ペンダントが……鈴と繋がっている?こんなことが……」
哲也の意識が薄れていく中、唯の叫び声が響く。
「哲也くん、しっかりして!まだ終わりじゃないから!」
その声に応えるように、哲也が目を開け、弱々しく微笑む。
「唯ちゃん……大丈夫だよ。俺は……ここにいる……」
♦♦♦
鈴とペンダントの光が交じり合い、一瞬、周囲が静寂に包まれる。光の中に、未来のビジョンが映し出された。それは、完全に人間になった哲也が唯と穏やかに過ごす姿だった。
唯はその光景を見つめ、涙を流しながら呟いた。
「これが……私たちの未来……」
アリサが静かに説明を始める。
「鈴とペンダントが融合した力が、未来の選択を示しているのよ。でもね、この選択には代償が必要になるわ。唯さん、哲也さん……覚悟はある?」
唯は哲也を見つめ、力強く言った。
「代償が何だって、私は構わない。哲也くんと一緒に未来を作りたいから!」
哲也はその言葉に目を潤ませ、震える声で答えた。
「唯ちゃん……ありがとう。でも、もし俺が記憶を失ったら、唯ちゃんとの思い出も全部……」
「そんなの関係ないよ!」
唯は涙を拭いながら叫んだ。
「哲也くんがどんな状態でも、私はあなたを選ぶ!だから、お願い、一緒に未来を選んで!」
♦♦♦
二人が手を取り合うと、鈴が静かに揺れ、淡い光を放ちながら砕け散った。その光が哲也を包み込み、彼の体はゆっくりと安定し、完全に人間の姿となった。
唯は彼の顔を見上げ、震える声で呟いた。
「哲也くん……本当に……人間に……」
哲也は目を細め、唯を見つめたが、困惑した表情で首を傾げた。
「……君、誰……?」
唯の胸がぎゅっと締め付けられる。彼女は一瞬泣きそうになりながらも、静かに微笑み、答えた。
「私の名前は唯。哲也くんの……大切な人だよ」
哲也はその言葉を聞き、少し考え込むように沈黙した。
「唯……。初めて聞く名前なのに、不思議と安心する」
唯の瞳から一筋の涙がこぼれる。それを見た哲也は、反射的に手を伸ばして涙を拭おうとする。
「泣いてるの……?俺、君を悲しませたの?」
唯は首を振り、彼の手を取った。
「違うよ。哲也くんがここにいてくれるだけで、私は幸せだから」
その様子を見守るアリサが、鈴の残骸を手に取り、静かに呟いた。
「唯さん、本当に強い心を持っているわね。鈴もペンダントも、それに応えたのよ」
その時、病院の奥から、陽気な笑い声が響いた。
「フォッフォッフォ!まさか魔法の薬を超える奇跡を起こすとは……お主ら二人もなかなかの強者じゃのう!」
唯と哲也が振り返ると、そこにはおじいさんが立っていた。哲也は彼を見て目を丸くし、思わず声を漏らした。
「……なんだ、このジジイ……?」
おじいさんは肩を震わせて笑い、哲也を指差した。
「お主、わしを忘れるとは寂しいのう。まあ、記憶を失っておるなら仕方ないがの!」
唯が困惑する哲也をフォローするように話し始めた。
「哲也くん、この方があなたを助けてくれたの。魔法の薬をくれたのも、この人なんだよ」
哲也はおじいさんをじろじろと観察し、ぽつりと呟いた。
「……魔法の薬って、こんな怪しいジジイが作ったの?」
おじいさんは大声で笑い飛ばした。
「フォッフォッフォ!まあまあ、そう見えるのも無理はない。だが、わしの薬があったからこそ、お主はここにいるのじゃぞ!」
哲也は気まずそうに頭をかきながら、唯に小声で尋ねた。
「唯ちゃん、この人、本当に信用して大丈夫?」
唯は苦笑いしながら答えた。
「哲也くん、そのセリフ、記憶があった時も言ってたよ」
ジジイは手を叩きながらさらに笑い、肩を揺らした。
「フォッフォ!記憶がなくても変わらんのう!それにしても、お主ら二人の絆が奇跡を起こしたのじゃ。これからもその絆を大切にするんじゃぞ!」
アリサが鈴の残骸を唯に手渡した。
「唯さん、これはあなたが持っていて。二人のこれからの未来を見守ってくれるはずよ」
唯は鈴の欠片を握りしめ、力強く頷いた。
「私たちの未来、大切にします」
おじいさんは満足げに立ち去ろうとしたが、ふと立ち止まり、哲也を振り返った。
「忘れんでくれよ、お主。わしがいなければ今のお前はないんじゃからな!フォッフォッフォ!」
哲也はおじいさんの去る背中を見送りながら、呆れたように溜息をついた。
「なんなんだ、このジジイ……」
♦♦♦エピローグ♦♦♦
数週間後、哲也は唯と穏やかな日々を過ごしていた。朝食の席で、哲也がふと唯に尋ねた。
「唯ちゃん、俺、どうしてこんなに君のそばが居心地いいんだろう?」
唯は微笑みながら、軽く肩をすくめて答えた。
「それはね、私たちが一緒に奇跡を起こしたからだよ」
哲也は首を傾げたが、彼女の笑顔に釣られるように笑みを返した。
「そっか。それなら、これからも一緒に奇跡を起こしていこうか」
唯は頷き、心の中で改めて誓った。
「哲也くんとまた始められるなら、どんな未来でもきっと大丈夫」
胸元には、砕けた鈴の欠片を加工したペンダントが静かに光を放っていた。それは二人の未来を照らす希望の光のようだった。
おわり
最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます!哲也と唯が迎えた結末、いかがでしたか?彼らの選択や未来が、皆さんの心に少しでも響くものがあれば幸いです。この物語を通じて、絆や奇跡について考える時間を共有できたことに感謝しています。また別の物語でお会いできる日を楽しみにしています!




