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ノラ猫と女子高生の恋  作者: 藍瀬 七
第3章 最後の選択と新たな日常
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第28話 忘れたくない、あの記憶

いつも読んでくださってありがとうございます!いよいよ物語はクライマックスに向けて動き出します。哲也が抱える秘密、そして唯が直面する選択——彼らの未来はどのように変わるのか。この章では二人の絆と運命が試される展開が待っています。ぜひお楽しみください!

 哲也は病院の奥まった部屋にアリサと入り、ドアが閉まると彼女が低い声で話し始めた。


「哲也さん、もう時間がないわ。ペンダントの力が暴走すれば、唯ちゃんにすべてが明らかになる。」


 哲也は深いため息をつき、壁に手をついた。その表情には迷いと恐れが滲んでいた。


「俺だってわかってる。でも、唯ちゃんにはまだ話せない。」


「でも、このままでは鈴も限界を迎えるわ。もし力が制御できなくなったら、あなたは……」


 アリサの言葉に、哲也は拳を握りしめた。


「唯ちゃんには負担をかけたくないんだ。俺がなんとかする。」


 ♦♦♦


 その頃、唯は待合室で落ち着かない様子だった。哲也とアリサが奥の部屋で話している間、唯は無意識にペンダントを握りしめた。


「哲也くん、何を隠しているの……?」


 その時、ペンダントが強く輝き始めた。唯は驚いて光の中に現れた映像を見つめる。それは幼い頃の自分が野良猫を抱きしめている記憶だったが、その猫の姿が哲也と重なって見えた。


「この猫……哲也くんなの?」


 唯が戸惑いを抱えていると、病院全体が揺れるような音が響いた。ペンダントがさらに強く光を放ち、鈴のような音を鳴らす。


 アリサが部屋から飛び出してきた。


「哲也さん、力が暴走してる!早く対応しないと!」


 哲也は急いで駆け出し、唯も追いかけようとするが、アリサが遮った。


「唯ちゃん、ここから先は危険よ!」


「でも哲也くんが!」


 アリサは厳しい表情で言い放つ。


「あなたがこれ以上関われば、彼を救えなくなるかもしれない。それでも追うつもり?」


 唯は足を止め、立ち尽くす。その間にもペンダントが揺れながら微かに光を放っていた。


 ♦♦♦


 その夜、唯は哲也とアリサのやり取りが頭から離れなかった。ペンダントを握りしめると、再び光が強まる。目の前に現れたのは、暗闇の中で孤独そうに座る哲也の姿だった。彼の隣には一匹の黒猫が寄り添っている。哲也がぽつりと呟いた。


「俺が完全に人間になるには……」


 その言葉と映像が途切れると、唯は息を整えながら決意を固めた。


 ♦♦♦


 翌日、唯はアリサを訪ねた。彼女を静かな庭で見つけると、真剣な表情で問いかけた。


「アリサさん、哲也くんの秘密を教えてください。何を隠しているんですか?」


 アリサは一瞬驚いたが、冷静に口を開いた。


「唯さん、本当に知りたいの?知ればきっと、あなたも彼も苦しむことになるわ。」


「それでもいいです。私は哲也くんを支えたいんです!」


 唯の強い意志を感じ取ったアリサは、静かに話し始めた。


「哲也さんが完全に人間になるには、猫としての"命"そのものを手放さなければならないの。そしてそのためには、あの鈴が必要なのよ。」


 唯は驚き、息を飲んだ。


「鈴……?あの鈴が……?」


 アリサは頷いた。


「そう。鈴は彼を猫に戻すことも、完全な人間にすることもできる。でも、どちらかを選ぶには、必ず何かを失う必要がある。たとえば、彼の"記憶"をね。」


 唯は言葉を失いながら呟いた。


「記憶を失う……私との思い出も……?」


「ええ。もし彼が完全な人間になると決めたら、あなたとの記憶もすべて消えてしまう。でも彼は、それを覚悟している。あなたが幸せになれるなら、それでいいとね。」


 唯は胸が締め付けられる思いだった。


 ♦♦♦


 その夜、唯は哲也に問いかけることを決意した。動物病院の帰り道、唯は彼の隣を歩きながら勇気を振り絞った。


「哲也くん、私、知ってるの。君が完全に人間になるために記憶を失うかもしれないことも、それを覚悟していることも。」


 哲也は立ち止まり、動揺を隠せない表情で唯を見つめた。


「唯ちゃん……アリサから聞いたんだね。」


 唯は涙をこらえながら哲也の手を握った。


「でも私は、そんなの許さない。記憶を失ってまで人間にならないで。哲也くんがどんな形で存在していても、私はあなたが大切だから。」


 哲也はその言葉に目を潤ませ、唯の手を震えながら握り返した。


「唯ちゃん……ありがとう。でも、もし俺が猫に戻ったままの存在になったら……君を幸せにできないかもしれない。」


「そんなことない。あなたがどんな形でも、私にとっては大事な哲也くんだから。」


 二人が強く結びつきを確認し合う中、アリサの冷たい声が響いた。


「唯さん、甘い考えはやめなさい。哲也さんを救いたいなら、覚悟が必要よ。」


 振り向くと、アリサの手には鈴が握られていた。その鈴がわずかに光を放ち、冷たい風が二人の間を吹き抜けた。


「この鈴の力を使えば、どちらかを選ぶしかない。その時、後悔しない決断をすることね。」


 唯と哲也は揺れる鈴の音を聞きながら、未来を決める選択に直面していた。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。この章では哲也と唯の関係がさらに深まり、物語の大きな転換点を迎えました。書いていて一番胸が熱くなる展開でしたが、皆さんにもその熱が伝わっていれば嬉しいです!引き続き応援よろしくお願いします!

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