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ノラ猫と女子高生の恋  作者: 藍瀬 七
第2章 唯の揺れる想い
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第27話 私が隣に選んだのは、君

今回の物語では、唯が夢と向き合いながらも、大切な二人との関係に揺れ動く姿を描いています。哲也と浩平、それぞれが唯にとってどんな存在なのか――唯が下した決断の背景をお楽しみください。そして、唯が見つけた「自分の夢を支える人」とは?

どうぞ、彼女の選んだ答えにご注目ください!

 唯は発表会で壇上に立ち、会場を見渡した。緊張で喉が渇いていたが、深呼吸をして話し始めた。


「私の夢は獣医になることです。小さい頃から動物が好きで、でも病気やけがで苦しむ姿を見るたびに無力だと感じていました。だから、動物を助けられる獣医になりたいと思うようになったんです」


 そのとき、唯の胸元で輝くペンダントが突然光り始めた。会場がざわつく中、ペンダントから淡い光が投影され、唯の幼い頃の記憶が浮かび上がった。画面には、泣きながら野良猫を抱きかかえ、「誰か助けて」と叫ぶ小さな唯の姿が映し出されている。


 哲也はその光景を見つめながら静かに呟いた。

 

「唯ちゃん、小さい頃からこんなに真剣に動物のことを考えてたんだな……」


 浩平も視線を投影に向けたまま、小さく笑った。

 

「唯ちゃんの夢って、本当に本気だったんだな……尊敬するよ」


 投影が消えると、唯は涙を浮かべながら言葉を続けた。

 

「そして、私を支えてくれた二人に感謝を伝えたいです。哲也くん、浩平くん。あなたたちがいなければ、私はここまでこれなかったと思います。本当にありがとう」


 ペンダントが光を止めると、会場は温かな拍手に包まれた。唯は深く頭を下げ、自分の夢をさらに強く心に刻んだ。


 ♦♦♦


 発表会を終えた唯は、哲也と浩平の温かい言葉に支えられながらも、自分の中に新たな疑問が生まれていた。

 

「私は、あの二人に頼ってばかりで、本当に夢を叶えるために何かをしているのかな?」


 その思いを胸に、唯は哲也の動物病院を訪れることを決めた。病院に入ると、哲也が手術の準備をしている姿が目に入った。

 

「哲也くん、何か手伝えることないかな?」


 哲也は驚いたように振り向き、微笑んだ。

 

「唯ちゃんが本当にそんな気持ちを持ってくれてるなんて嬉しいよ。じゃあ、この資料を整理してくれるかな?」


 唯は資料を整理しながら、獣医の現場に触れる初めての経験に胸を高鳴らせた。


 ♦♦♦


 一方、浩平は唯をリラックスさせようと動物イベントを企画していた。唯に連絡を入れると、「今度の休日、ちょっと面白いところに行こうよ」と誘った。


 当日、訪れたのは野外で動物と触れ合える施設だった。浩平は楽しそうに言う。

 

「唯ちゃん、これを見て。これからの獣医って、動物と飼い主の心を繋ぐ役割も大事なんだってさ」


 唯は浩平に感謝しながら、獣医の多様な役割を学んだ。


 ♦♦♦


 その夜、唯はペンダントを握りしめながら考え込んでいた。

 

「二人とも私にたくさんのことを教えてくれる。でも、このまま支えられてばかりでいいのかな?」


 哲也の言葉や浩平の行動を思い返しながら、唯は自分がどれだけ二人に支えられているかを改めて感じた。そして気づく。

 

「私にとって、一番近くで夢を支えてくれたのは哲也くんだった」


 唯は翌日、動物病院の外で哲也を待った。彼が病院から出てくると、唯はまっすぐ彼に向き直った。

 

「哲也くん、聞いてほしいの。私、あなたのそばにいると夢に向かって進める気がするの。だから……これからも一緒に夢を支えてほしい」


 哲也は驚いた表情を見せたが、すぐに優しい笑みを浮かべて答えた。

 

「唯ちゃん、それは俺にとっても一番嬉しい言葉だよ。これからもずっと君のそばで支えていくよ」


 唯はその言葉に微笑み、胸の奥から温かい気持ちが溢れるのを感じた。


 ♦♦♦


 唯は哲也と話した翌日、浩平に呼び出された。訪れたのは、二人が以前に訪れた野外の動物施設だった。浩平は施設の木陰で待っていた唯に気づくと、軽く手を振った。


「唯ちゃん、来てくれてありがとう。ちょっと話したいことがあったんだ」


 唯は頷き、浩平の前に座った。気まずい空気を感じながらも、自分の気持ちを伝えなくてはと覚悟を決める。


「浩平くん、実は私、哲也くんのことを選んだの」


 その言葉に、浩平は一瞬目を伏せたが、すぐに微笑んだ。

 

「そっか。なんとなく分かってたよ。哲也さん、ずっと唯ちゃんを支えてたもんな」


 唯の胸が痛む。浩平の優しさがかえって自分を責めるように感じられた。


 「浩平くん、本当にごめんなさい。でも、浩平くんのことも大事な存在だって思ってる。それだけは伝えたくて」


 浩平はしばらく空を見上げ、少し照れたように笑った。


 「唯ちゃんが謝ることじゃないよ。俺だって、唯ちゃんの夢を応援してきたつもりだけど、哲也ほどの覚悟はなかったのかもしれない」


 唯はその言葉に驚いた。浩平が自分を責めるのではなく、前を向いていることに感動すら覚えた。


 「浩平くん……ありがとう」


 浩平は立ち上がり、軽く拳を握りしめた。

 

「ま、これで俺も心置きなく前に進めるってことだな。唯ちゃん、夢に向かって頑張れよ。俺も別の形で動物たちを支える方法を見つけるからさ」


 唯は立ち上がり、深く頭を下げた。

 

「浩平くん、本当にありがとう。私、浩平くんに支えられたからここまで来られたんだよ」


 二人は軽く笑い合い、別々の道を歩むことを誓った。唯は哲也のもとへ向かう決意を新たにし、浩平は新たな未来を思い描いていた。

 

 ♦♦♦


 唯が動物病院に戻ったのは夕暮れ時だった。哲也が忙しそうに診察を終える姿を見て、唯は改めて自分の選んだ道に確信を持った。


「哲也くん、手伝えることはないかな?」


 と声をかけようとしたその瞬間、動物病院の入り口から慌ただしい声が響いた。振り向くと、アリサが駆け寄ってくる。彼女の表情は普段の余裕を失っており、深刻そうだった。

 

「哲也さん、大変よ!病院に関わることで緊急の問題が発生したわ」


 哲也の表情が硬くなり、一瞬だけ唯に視線を向けたあと、アリサに向き直った。


 「わかった。すぐに確認する」


 唯は驚きつつもアリサを見つめた。

 

「哲也くん、何があったの?」


 哲也は唯を一瞥したが、答えないままアリサと共に病院の奥へと向かった。唯はその背中を見送るしかなかった。


「哲也くん、私の知らない何かを抱えているの……?」


 唯は静かに胸元のペンダントに手をやった。ペンダントが微かに揺れ、その淡い光が病院の暗がりを照らすように揺らめいていた。その光は、未来への期待だけでなく、不穏な影をも映し出しているように見えた。

後までお読みいただきありがとうございます!今回の話では、唯が「誰を選ぶか」だけでなく、「夢を叶える自分自身」と向き合う姿を意識して描きました。彼女を支える哲也と浩平、どちらも彼女にとってかけがえのない存在です。それでも唯が選んだ答えが、読者の皆さんに少しでも納得や共感を与えられたら嬉しいです。


次回からは、哲也を中心とした新たな章が始まります。彼が抱える「秘密」とは何なのか、そして唯との関係がどう変わっていくのか――お楽しみに!

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