第23話 そのキス、ズルくない?恋の主役は譲らない!
恋の主役は誰だ!?キスで始まる三角関係バトル、開幕です!
夢と恋の狭間で揺れる彼らの物語を、どうぞお楽しみください!
その頃、哲也は街中を歩きながら、唯のことを考えていた。浩平とのデートの話を聞いたとき、胸の中に嫉妬心が湧き上がったのは事実だ。だが、それ以上に、唯が自分の夢を語るその姿を応援したいという気持ちの方が強かった。
「唯ちゃんの夢を支えるために、俺には何ができるんだろう……」
哲也はふと足を止めた。目の前には小さな動物病院があった。窓越しに見える中の光景――診察台の上で優しく動物を診る獣医の姿を見て、唯の未来の姿を重ねた。
「そうだ……」
哲也は店の中へ入り、受付の女性に声を掛ける。
「あの、僕、ここで何かお手伝いできることってありますか?」
受付の女性は少し驚いた様子だったが、哲也の真剣な表情を見て微笑んだ。
「動物が好きなんですね?」
「はい、大好きです。(どっちかと言うと俺が動物なんだが)」
哲也は力強く頷いた。
「実は、スタッフが足りなくて困っていたんです。掃除や簡単なお手伝いならお願いしたいんですが、大丈夫ですか?」
「もちろんです!」
哲也の目が輝いた。
♦♦♦
その夜、唯が自分の家に帰ると、哲也が門の前にいた。彼は笑顔で出迎えた。
「唯ちゃん、おかえり。デートどうだった?」
「え! 哲也くん、どうしてここに?」
唯は少し驚きながらも、その笑顔に安心感を覚えた。
「楽しかったよ。浩平くんが、いろいろ話を聞いてくれて……体のことも夢のことも、改めて考えさせられた。で、それで、その……」
唯は少し頬を赤らめてから、哲也の顔色を気にして話した。
「その、キス、されちゃった……でも、ほんの一瞬で、冗談みたいな感じだったの。でも、哲也くんに誤解されたくないから、ちゃんと話しておこうと思って」
「えっ!?(なんだって!? 浩平のヤツ!)」
「いやでも、口じゃなくて、頬に軽く、誤解しないでね!」
「キスされたって事実には変わりないじゃん」
哲也はムスッとした表情で唯を見つめた。少し何かを考える素振りをした後、哲也は唯の唇にキスをした。
「な、哲也くん……!」
突然のことだったので唯の顔は真っ赤になる。
「もう、哲也くん……不意打ちは反則だよ!」
哲也は少し照れくさそうに頭を掻きながら笑った。
「悪い。でも、浩平のことばかり話されると、つい張り合いたくなるんだよ」
唯は呆れたようにため息をつきつつも、どこか嬉しそうな表情を浮かべた。
「ほんとに、子どもみたいなんだから」
哲也はそんな唯の顔をじっと見つめ、ふっと優しい笑みを浮かべた。
「これで上書きだな」
唯が苦笑しながら哲也を軽く押した。その仕草に和みながらも、哲也は少し真剣な表情に変わり、静かに口を開いた。
「でも、唯ちゃん、無理しないでね。君の夢が叶うのを、俺も応援してるから」
唯はその言葉に胸が温かくなった。
「ありがとう、哲也くん。私、もっと頑張れる気がする」
♦♦♦
その夜、哲也はベッドに横たわりながら、これまでの出来事を振り返っていた。動物病院での受付の女性の言葉が頭をよぎる。
「動物が好きなんですね?」
哲也の中に1つの決意が生まれた。彼は現在、カフェでのバイトを続けているが、これからは動物病院でのバイトも掛け持ちすることになる。それは唯の夢を支えるための第一歩だった。
「唯ちゃんの夢を支えるために、俺は人間としてもっと成長しなきゃいけないんだ」
彼は目を閉じ、唯の笑顔を思い浮かべながら、自分にできることを探し始めた。
唯は学校での課題で近隣の動物病院を訪れることになった。その小さな病院のドアを開けたとき、彼女の目に飛び込んできたのは白衣姿の哲也だった。
「哲也くん!? どうしてここにいるの?」
唯は驚いた表情で声を上げる。哲也は一瞬驚いたものの、すぐに軽く笑って答えた。
「ちょっとしたアルバイトだよ。掃除とか手伝いとか、簡単な仕事だけどね」
「でも、急にどうして?」
唯の問いに、哲也は一瞬言葉に詰まる。そして、軽く肩をすくめて笑った。
「まぁ、色々と。唯ちゃんが夢を叶えられるように、俺も少しは勉強しないとなって思ってさ」
唯はその言葉に少し驚きながらも、どこか嬉しそうに微笑んだ。
その後、唯は病院のスタッフに案内されて院内を見学する。哲也が動物たちに接する姿を遠目に見ていると、彼が小さな犬に優しく声をかけ、緊張をほぐしている様子が目に入った。
「(哲也くん、こんな一面もあるんだ……)」
唯は心の中でそう呟きながら、彼への新たな感情を抱き始めている自分に気づく。
♦♦♦
一方、浩平は唯とのデートが終わった後も、彼女のことを考え続けていた。夕暮れの街を歩きながら、彼はポケットに手を入れ、深いため息をつく。
「唯ちゃん、あんな風に夢を語ってくれるなんて……」
彼女が抱える悩みや不安を知ったことで、彼の中に芽生えたのは、彼女を支えたいという強い思いだった。しかし、その一方で哲也の存在が心に引っかかる。
「哲也には俺以上に何か特別なものがあるのかもしれない。でも、それでも……俺は唯ちゃんを笑顔にしたい。何かいい方法はないか……?」
その日の夜、浩平は唯を元気づけるために何かできないかと考えた。そしてふと、唯が動物カフェで見せた笑顔を思い出す。
「次は何か特別なことをしよう。唯ちゃんがもっと笑顔になれるように」
浩平はある計画を立てることにした。その瞬間、彼のスマートフォンが震えた。画面を見ると唯からのメッセージが届いていた。
『浩平くん、明日少しだけ時間あるかな? 話したいことがあるの』
浩平はメッセージを見つめながら、期待と不安が入り混じる表情を浮かべた。
「話したいこと……唯ちゃん、どうしたんだろう?」
彼の胸の中に、次の日への高鳴りが広がっていった。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
恋の行方や夢の実現に向けた展開は、まだまだこれからです。
次回もぜひお楽しみに!




