第21話 夢に隠されたペンダントの罠
夢を叶えたいと願うこと。それは素敵なこと。でも、夢を追う代償があるとしたら……唯の物語をお楽しみください。
冷たい風が頬を刺す冬の朝、唯は自分の身体が重いと感じた。最近、ペンダントと鈴の影響なのか、妙に疲れやすい。哲也が心配して「無理するな」と言ってくれていたけど、学校を休むわけにはいかない。
その日のホームルームでは、担任の先生が生徒たちに「将来の夢」をテーマにした課題を出した。
「皆さん、自分の将来について考えたことがありますか? 今日は、自分の夢を書いて提出してください。どんな小さなことでも構いません。何がやりたいか、どんな自分になりたいか、正直に書いてみましょう」
唯は少し戸惑いながらもノートを開いた。ペンを握りしめ、しばらく迷った後、ようやく書き始める。
『私は獣医になりたい。小さい頃から動物が大好きだったし、たくさんの命を助けたいと思うから。でも、本当にこの夢を叶えられるのかな? 最近、体調も良くないし、授業についていけるか不安……でも諦めたくない。』
唯は書き終えた文字をじっと見つめ、胸の中に温かな思いが広がるのを感じた。自分の夢を言葉にすることで、改めてその大切さを実感する。それは自分の軸となるもの。どんなに辛くても、絶対に手放したくないもの――。
しかし、授業が進むにつれ、唯は身体の異変を感じ始めた。
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翌日、唯は少し元気を取り戻したように見えたが、まだ体調は万全ではなかった。それでも「授業を休むわけにはいかない」という思いから、学校へ向かった。だが、彼女の体調はすぐに限界を迎える。
昼休み、哲也が心配そうに唯の側に寄り添った。
「唯ちゃん、本当に無理しなくていいんだ。先生にも言って、今日は休ませてもらおう」
唯は申し訳なさそうに首を振る。
「大丈夫、これくらい平気だよ。それに、生物の実験があるんだ。休んだら後で遅れちゃうし……」
哲也はため息をつき、唯の目をまっすぐに見つめた。
「唯ちゃん、君が倒れたら元も子もないんだ。夢を叶えるには、まず身体が大事だろ?」
その言葉に唯は少し戸惑いながらも頷いた。
「……ありがとう、哲也くん。でも、私、どうしても諦めたくないの」
哲也の胸の奥に、何か強く締め付けられるものがあった。唯の夢への情熱は誰よりも知っているからこそ、彼女をどう支えるべきか悩んでいた。
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その日の放課後、浩平が唯を呼び止めた。
「唯ちゃん、少し話があるんだけど……時間ある?」
唯が「うん」と頷くと、浩平は照れくさそうに後頭部を掻いた。
「その、最近頑張りすぎじゃない? たまには息抜きした方がいいと思うんだよね。だから、もし良かったら今度一緒に出かけないか?」
唯は驚いた表情を浮かべた。
「出かけるって……浩平くんと?」
「ああ。映画とか、食事とか。なんでもいい。唯ちゃんが好きなところに行こうよ」
唯は戸惑いながらも、その提案が彼の優しさから来ていることを感じ取っていた。
「……ありがとう。でも、私、どうしようかな……」
そのやり取りを廊下の陰から見ていた哲也は、胸がざわつくのを抑えられなかった。唯が浩平に微笑む姿を見たとき、心の奥に湧き上がる複雑な感情――それが嫉妬だと気づいてしまった。
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その夜、唯は部屋で哲也と浩平のことを考えていた。浩平の情熱的な言葉に心が揺れたのは確かだが、哲也の静かな優しさも彼女の中で大きな支えとなっていた。
思わず手元のペンダントを握りしめる。
「私、どうしたらいいんだろう……」
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翌日、唯は透に相談することにした。昼休み、静かな中庭で二人だけの時間を過ごす。
「透さん、最近みんなが優しくしてくれるのはすごく嬉しいんだけど、私……どうしていいか分からなくて」
透は穏やかな微笑みを浮かべながら答えた。
「唯お嬢様、それだけ皆さんがあなたのことを大切に思っているということですよ。でも、それがプレッシャーになるなら、もっと頼ってみてください」
唯は頷きながら「ありがとう」と小さく呟いた。
その瞬間、透は静かに続けた。
「……でも、僕にもチャンスがあるなら、唯お嬢様をもっとお支えしたいです」
唯は驚いて彼を見上げた。その瞳には、透の真剣な思いが映っていた。
「透さん……」
透の言葉が胸の奥に静かに響く。哲也の冷静な優しさ、浩平の情熱的な提案、そして透の静かな誓い――唯を巡る三人の思いが、さらに交錯し始める。
夢を追いかけることの難しさ、そして周囲の支えの大切さを少しでも伝えられていたら幸いです。この続きもぜひお楽しみに!




