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ノラ猫と女子高生の恋  作者: 藍瀬 七
第2章 唯の揺れる想い
20/29

第20話 心配しすぎな男子たち

冬の寒さが訪れるたびに、人の心は縮こまる――けれど、その裏では熱い思いが静かに燃えている。

これは、寄り添う者、守りたい者、そして揺れ動く彼女の心が交錯する、少し切なくて暖かい物語です。

読者の皆さんも、唯の選ぶ道と彼女を見守る人々の思いに触れながら、少しだけ胸の奥が温かくなるひとときを過ごしていただけたら嬉しいです。

 冷たい風が頬を刺す冬の朝、唯は自分の身体が重いと感じた。最近、ペンダントと鈴の影響なのか、妙に疲れやすい。哲也が心配して「無理するな」と言ってくれていたけど、学校を休むわけにはいかない。


 しかし、それが間違いだった。


 三時間目の授業中、唯は目の前がぐらっと揺れたかと思うと意識が遠のき、机に突っ伏してしまった。


「唯ちゃん!」


 哲也の叫び声が教室中に響いた。


 唯が倒れたと知るや否や、哲也は席を飛び出し、彼女をそっと支えた。冷えた彼女の手を握りしめると、心配の色が彼の瞳に濃く浮かぶ。


「唯ちゃん、大丈夫か?……すぐに保健室に運ぶ」


 クラスメイトたちがざわつく中、哲也は唯を背負い、急いで教室を後にした。


 保健室のベッドに横たわる唯の顔は青白い。その額には冷や汗が滲んでいた。


「唯ちゃん……、無理をしすぎたんだな」


 哲也は唯の手をそっと握りしめる。彼女の冷たい指先に、自分の手のぬくもりを少しでも伝えたかった。


「……哲也くん?」


 唯が微かに目を開け、彼を見つめた。その瞳には不安が浮かんでいる。


「ここにいるよ。大丈夫だから、安心して休んでくれ」


 彼の優しい声に、唯の瞳がわずかに潤む。


 しかし、その静かな時間は長く続かなかった。


「唯ちゃん、大丈夫か!?」


 保健室の扉が勢いよく開き、浩平が駆け込んできた。


「哲也、お前また唯に何かしたんじゃないだろうな?」


 浩平は疑いの目を向けながら、唯の側に駆け寄った。その言葉に、哲也の眉がピクリと動く。


「俺は唯ちゃんを守ってるだけだ。お前こそ、見舞いに来るのが遅いんじゃないか?」


「うるせぇ! 唯ちゃんに何かあったら俺が許さないからな!」


 唯は二人のやり取りに困惑しながらも、弱々しい声で「喧嘩しないで……」と呟いた。その一言で、哲也と浩平はようやく口を閉じた。


 唯が眠りについた後、浩平は哲也の背中越しに唯をじっと見つめていた。


 彼女の疲れ切った表情を目にしたとき、自分の中にくすぶっていた感情が一気に燃え上がった。唯を支えたい。いや、自分だけが支えられる存在になりたい――。


 浩平は小さく拳を握り、心の中で決意する。


(俺が唯を守るんだ。誰よりも、絶対に)


 ♦♦♦


 翌日、唯は少し顔色を取り戻しながらも、まだ本調子ではなかった。昼休み、保健室で横になっている唯を訪ねて、浩平は再び扉を叩いた。


「唯ちゃん、少し話せる?」


 唯が戸惑いながらも「うん」と頷くと、浩平は椅子を引き寄せて彼女の隣に座った。


「昨日は驚いたよ。お前、頑張りすぎなんじゃないか?」


 その真剣な眼差しに、唯は小さく肩をすくめた。


「そうかもしれない。でも、浩平くんやみんなに迷惑かけたくないから……」


 唯の言葉に、浩平は思わず声を張り上げる。


「迷惑なんかじゃない! 俺は唯ちゃんのこと、もっと頼ってほしいって思ってる。俺にできることがあれば、何でもするから!」


 その情熱的な言葉に、唯は目を見開いた。浩平がここまで本気で自分のことを考えているとは思っていなかった。


「浩平くん……ありがとう」


 その優しい微笑みが、浩平の胸に深く刻まれる。


(唯にとって、俺の存在が必要だって証明してみせる)


 ♦♦♦


 放課後、透が優しい声で声をかけてきた。


「唯お嬢様、無理しすぎです」


 その言葉に唯は、わずかに気が緩む。


「ありがとう、透さん。少しだけ疲れちゃったみたい」


 透の穏やかな眼差しと声は、唯にとって心地よい癒しだった。こうして気遣ってくれる存在がいることが、どれほどありがたいことか。


 ♦♦♦


「で、で?」


 日向がにやにやした顔で唯に近寄る。


「浩平くん、すっごい頑張ってるけど、あれってアプローチってやつ? それともただのおせっかい?」


「えっ!? アプローチなんて……そ、そんなこと……」


「いやいや、浩平くんのあの真剣な顔、見たことないもん! 唯も、少しは意識しちゃったんじゃないの?」


 日向のからかいに、唯は顔を赤く染める。


 唯を巡る二人の思い。それがさらに強く交錯していく気配が、物語の中に渦巻き始めていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

この物語は、「大切に思う気持ち」がどれだけ強さと優しさを持つのか、そしてその気持ちが他者へどう伝わるのかを描いてみたつもりです。

冬の空気が冷たい分、誰かの優しい声やぬくもりが、よりいっそう心に響くことってありませんか? 唯たちの選択が、そんな誰かの温もりを思い出すきっかけになれば嬉しいです。

次回もまた、唯の物語を楽しんでいただけるように精一杯書いていきますので、よろしくお願いします!

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