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ノラ猫と女子高生の恋  作者: 藍瀬 七
第1章 猫と少女の奇妙な日常
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第2話 転校生として

怪しいおじいさんに呼び出された黒長哲也くろながてつや

そこに、新たなキャラクターも現れて――!?

恋愛コメディの第2話登場

 訪れたアパートは、少し古めの、1人暮らしにちょうどいいと感じる個室の部屋だった。俺は何の警戒もなくノブを回したが、なんと鍵も掛かっていなかった。そして、先程のおじいさんが、ちょこんと座って待っていたようだった。


「なんて不用心なジジイだ……。下手したら誰かに入られちまうかもしれないじゃねぇか?」


「フォッフォ。心配はご無用じゃ。まだまだ若造には負けん」


「(何の話だ!?)」


 俺も机の向かい側に座り、詳しく話を聞いてみることにした。


「で、俺はこれから高校に入れるのか?」


「勿論じゃ。細かな手続きはワシの方で全て済ませておる。明日から、転校生『黒長哲也くろながてつや』として活躍できるわけじゃい!」


 手の上に乗せていた顎が外れそうなほど驚いた。


「なんでジジイが俺の名前を知ってるんだよ!」


「さて、どうしてじゃろうな?しかし、名前を知っておかねばお互い困るじゃろう」


「まあ、言われてみれば確かに……」


 少し考え込んでいた時に、おじいさんの後ろから明るい声が聞こえてきた。そしてひょっこり顔を出してきた。


「じゃじゃーん!私はおじいちゃんの孫の若槻日向わかつきひなたよ。同じ高校生同士、よろしくね♪」


「えっ!?高校生には見えないっ……!」


 日向は童顔で背も低く、小学生のように見えた。茶髪で髪は肩より短めのショートだ。


「失礼しちゃうわ!まあ、そんなこと言ってられるのも今のうちだけよ」


「なんだよチビひな」


「私、唯と仲良しだから……哲也くんの知りたいこと何でも知ってるかもしれないのよ?」


「唯って、まさか、あの女子高生!?(可愛い名前だな……)」


「名前も知らないんかいっ!彼女は、白石唯しらいしゆいって言うのよ。まあ、唯と仲良くなりたいなら私のことをチビ呼ばわりしないで欲しいのよ」


「日向様っ!」


 藁をもすがる思いで日向に近づく。


『極端すぎる』


 といった目で哲也のことを見つめる二人だった。ワイワイ騒いでいた中、部屋のインターホンが鳴る。ガチャリとノブを回して入ってきたのは、赤髪の短い髪と目が印象的な男だった。


「遅くなりやした。失礼しまーす」


 ペコリと頭を下げ、こちらに向かってお辞儀をする。


「僕は青山大地あおやまだいち。今日から哲也くんを担当する者だ。よろしくな」


 ニカッと笑い、俺に向かって挨拶をする。


「えっと、こちらこそよろしくお願いします。担当って何のことですか?」


 青山は俺たちがいる居間に上がり、俺の隣に座って話し始めた。


「なんだ、まだ何も聞いてないのか?爺さん頼むよ……全く。実は、僕たちは愛猫様っ!保護団体という組織に属していてな。世界に彷徨う猫たちの研究をしているんだ。猫に対して何を与えられるのか研究している所長が、この爺さん。俺たちは猫のサポート役を任されている」

「え、ええ!?」


 衝撃の事実に、俺は驚きを隠せなかった。


「まあ、明日からよろしく頼むよ」 「よ、よろしくお願いします……」


 日向はテキパキと明日の持ち物を机に並べた。どうやら俺が明日着る制服らしい。隣には鞄と筆記用具、資料、本など……山ほどある。


「一通り目を通しておいてくれ」


 と一言青山が呟く。分厚い資料が山のように置いてあるのを見て、なんだか急にやつれそうだった。


「本当にこれ全部読めってのか……」


「唯のためでしょ♪」


「ぐっ、全ては唯ちゃんのために~!」


「単純なヤツ」


「そろそろワシらも帰ろう。日向、青山。またの~」


 予想通り黒い煙幕が立ち上がり、三人とも姿を消した。なんだか賑やかだった部屋が急に静かさを感じる。しかし俺は明日の登校準備のために、あれこれと動き始めたのだった。



 そして、初登校日を迎えた。学校の場所も、専用のスマホを見て辿り着くことが出来た。


「よしっ、予定より早く着いたしイイ感じ」


 と自分に気合を入れて教室へ向かおうとしたその時だった。ミルクティー色の長いストレートの髪、そして緑色の目をした女子高生がいた。見覚えがあった。


「(ん?あれは……俺のすぐ近くを、唯ちゃんが歩いてる!?本物だ……!なんかすげぇ感動する!)」


 唯を見つめながら涙腺崩壊してしまった所を、唯本人に見られてしまった。


「えっ!?ちょっと、どうしたの?大丈夫?」


 そう言いながら持っていたハンカチを俺に渡してくれた。


「ありがとうございます!(優しいな……。あ、つい敬語で喋っちゃった……)」


「貴方、見ない顔ね。もしかして転校生?」


「俺、黒長哲也。今日からここに通うんだ。よろしくな」


「私は白石唯。同じクラスだと嬉しいな」


「俺、確か3組だった気が……」


「私も、同じね!良かった、仲良くしてね」


「(今のとこ凄くイイ感じじゃーん♡)」


 その足で自己紹介をした後、自分の席を確認していたら、なんと唯の後ろの席だった。


「(俺超ツイてるじゃん!これは先行き良さげだぞ)」


 そう思っていた、ところが……休み時間に入った途端、唯は寄ってきた男子クラスメートに囲まれて楽しそうに話をしている。先を越されてしまったと思いきや、俺の方にも女の子が寄って来る。2、3人ならともかく、10人位に囲まれてしまった。


「こんなはずじゃなかった……」


 激しく落ち込む俺の姿を見て、不思議そうな顔をする女子たちであった。そして女子の一人が何やら喋り始めた。


「もしかして、黒長くんも白石さん狙い?」


「えっ!?(なんて勘が良いんだ……!そんなにバレバレなのか?恥ずかしい!)いや、違っ……」


「転校したてでそんな訳ないっか!」


『あはは』 


 女子皆して爆笑の渦だった。こんなことで学校生活は大丈夫だろうかと少し不安になった。すると、話しているうちに予鈴が鳴った。同時に担任の先生が紙の資料を沢山持ってきているのが分かった。俺たちは慌てて席に着く。


「ま、次の時限のテスト頑張ろうね」


 と、さっきの勘の良い女子が斜め前からこっそり話しかけてきた。


「テスト!?」


 俺は大声を堪えながら、心底驚いた。


「哲也くん資料見なかったの?今日テストあったでしょ」


 横から日向が突っ込んできた。


「!?(マジか……俺、終わったかも……)」


 それからテストを受けたが、頭の中は真っ白だった……。俺の高校生活、雲行きが怪しい……そんな予感を覚えたのだった。

この作品を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!テツヤが人間の姿で挑戦する学校生活や、彼のひたむきな一途さを書きながら、私自身もたくさん笑い、時に胸がキュッとなりました。


一見、猫のままでいれば気楽に過ごせそうなのに、あえて「人間になりたい」という夢を抱き、冒険に飛び込んでいく彼の姿には、私たちが何か新しい挑戦をするときの気持ちが重なるように思います。少しでも皆さんの心に、テツヤの熱い思いが響いてくれたら嬉しいです。


今後も新たな物語でお会いできる日を楽しみにしています。それではまた、どこかのページで!




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